
2025.02.06
ポンコツ期、孤独期、成果独り占め期を経て… サイボウズのプロマネが振り返る、マネージャーの成長の「4フェーズ」
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藤田晋氏:人も事業も自分たちで育ててきたと言ってきましたけれども、事業の規模をどんどん拡大していく中で、どうやって(新しい事業を)生み出しているのか。サイバーエージェントは子会社だけでも100社を超えます。「なんでこんなにいっぱい会社が創れるんだ?」というのは、もう仕組み化されているからなんです。
逆に言うと、例えばスライドの中のゲーム会社が作ったゲーム、僕が威張って言うようなことじゃないですけど、(藤田氏が)やったことのないゲームなんていっぱいあるんです。要はリーダーとして細かいことに口を出さないし、必要もないんです。
それでは、どのように(新規事業を)生み出して、どのように管理運営しているのかをこれからご説明します。この事業のアイデアがどのように生まれるのか。
実は一番たくさん生まれているのは「あした会議」という、だいたい半年に1回、50人くらいでやっている会議体です。
会議体と言っても軽井沢に行ったり箱根に行ったり、50人くらいで泊りがけでやるんです。この日のためにその50人くらいが一生懸命新規事業を準備してくるんですね。合宿中に実施可能なところまで詰めます。
先ほど言ったとおり役員が8人で、そのうち僕を除く役員がリーダーとなり全社員の中からドラフトでだいたい4、5名を指名して最初にチームを組むんです。そのチームごとに新規事業を3案ずつくらい用意してきて、この合宿の会場でどんどん発表していく感じです。その発表のアイデアに点数がついていって、役員ごとのランキングが発表されていきます。
そこには当然競争のような仕組みがあるんですけれど、うちの社員はそれ以上にここで出たアイデアが本当にどんどん事業になっていくことをよく知っているので、ここで決めてしまいたい事業とかを持ってきますね。新規事業だけじゃなくて課題解決とかもあるんですが、大きく組織を変えたいものをここに持ってくるのが習慣になっています。
ここで「今ある事業チャンスで見落としているものはないか」「それとももっと大きくできる機会はないか」というのを、うちの役員とドラフトで選出されたエリートの社員たちが血眼になって探しまくります。だいたいこれが終わると「もうないわ」という感じになります。
ここで決めたものを会社……累計27社決まったと言いましたが、子会社を設立したのが27社です。ちなみにゲーム事業に参入して、それがもう会社の事業の柱の1つになっていますけど、「ゲーム事業に参入する」というシンプルなことが決まったのもこの会議のときですね。
「なんでそんなに会社がいっぱいできるのか」というと、これはルールが決まっているんです。「スタートアップJJJ」とスライドに書いてありますけど、まずこちらを見ていただきますと100社以上の会社が創られています。新しく創ったらJ3で、その下にスタートアップJJJというのがあります。
そこから入って、サッカーで言うとJFFみたいなものからJ3、J2、J1になる。JはJリーグのJじゃなくて、事業のJですのでお間違いのないように。J1、J2、J3と。利益の規模によって昇格・降格します。昇格するケースがほとんどですけれども。
これも利益の額によって変わるんですが、撤退ルールというのがあるんです。「2四半期連続で減収減益になったら、原則撤退を検討する」というものです。AbemaTVだけ会社の注力事業として別ルールでやっているんですが、月の赤字額をこれ以上上回ってはならない。いわゆる投資額ですね。
そういうルールがあるので、1個会社を創ったらどの程度マイナスがあるのかが計算できる。月の赤字額で「MAXでもここまでしかないんだ」というのがわかる。その中でうまくいったものはもちろんJ2、J1と伸ばしていくし、ダメだったものは撤退ルールに基づいてやめると。
最初に撤退ルールを決めておくのは大切です。飲み食いで潰れる会社はないけれど、だいたい潰れるのは趣味みたいな事業を始めたときだと言われることが多いんですよ。
事業というのはすごくコストがかかるんですけど、1回始めるといろんな関係者を巻き込んでいるので「やめる」と非常に言いづらくて難しい。
最初に撤退ルールが決まっているので、おもしろい事業アイデアがあってやる気のある社員が「自分が社長でやりたいです」と言ったら、ぜひやってみてくれと。うまくいったらもちろん伸びるし、ダメだったら撤退していくというルールがあると。
Jリーグのような仕組みをやっていたんですが、個々の規模が大きくなって、我々の会社で新規参入で始める事業が渋谷界隈でたくさんあるスタートアップの会社に対して目立ちづらくなったんですね。
「目立つ」というのも社員を活性化させる・やる気を出していくきっかけになるんです。同じ事業に参入しても目立ちづらいので、新規事業だけをやる人たちを評価して、社内で「スタートアップJJJ」として取り組んでいます。
これは単純に、うちの会社の中で始めたばかりの事業を我々が株として投資する場合に「いくらの時価総額だったらいけるか」「買収するんだったら何億まで出せるか」を時価総額として評価します。赤字の事業であっても高い時価がつくことがあるんですよ。
「時価総額ナンバー1」と喜んでいますけど、「もし売るなら30億円くらいで売却できる」とか、そういうことで社内でランク付けをして活性化しています。
これがサーバントリーダーシップの具体的なものかどうか、僕自身も自信はないんですけれど。そういう意味では、本当に会社のリーダーというのはいろんな人がいて。
例えば楽天の三木谷(浩史)社長はまったく僕とはスタイルが違って、それはそれで筋が通っていてすばらしいと思います。ビジョンを掲げ、戦略を練り上げて、きっちりとマネジメントをして結果を出していくスタイルのリーダーもいますし。
僕はリクルートに強い影響を受けていると自負していますけれども、リクルートのようにいい人材を採用して、その人材の能力開発によって会社を伸ばす。このリーダーシップのとり方の違いはなんだか宗教の宗派の違いのようなもので、根本に考え方の違いがあるのでどれが正しいというのはないと思います。
ただ、僕としては、新しい時代にはサーバントリーダーシップという考えが主流になるだろうと思っていますし、それが正しい答えであると思います。
最後に、僕が学生時代に学んだ……当時は未熟だっただけなんですけれども、オックスプランニングとインテリジェンスという会社について。両方ともリクルートを辞めた30代前半の仲間たちでやっていた会社なんですけれど、かたや伸びて、かたや10億円くらいの売上でずっと横ばいだったんですね。
その違いはなんだと思ったときに、いかに良い人材を採用して、その人材を活性化させて待遇もがんばっていても、やっぱりリーダーシップはある一定の枠組みを設けてその中で仕切らないと、ただの烏合の衆になってしまう。
我々の会社のビジョンは「21世紀を代表する会社を創る」。これは『ビジョナリーカンパニー』を読んだときから、自分の中では一歩もブレてないつもりです。要は会社を創るというのが会社のビジョンであると。
インターネットを通じて世界を変えるとか、そういうことではないんです。会社というのが我々の作品であり、「これをすばらしいものにしていくんだ」というのが会社のビジョン。
「それは具体的にどういうものですか?」とよく聞かれるんですけれど、20世紀にソニーやホンダみたいな会社が世界に誇れる日本企業になった。そういう会社を新しい時代に創ることが我々のビジョンなので、やっている事業はなんでもいい……と言うとあれですけど、基本的にこだわりはないです。
「すばらしい会社を創る」。21世紀を代表すると言われるためには、その条件として世界に強い影響力があり尊敬されるような会社でなければならないし、もっと言うとグローバルに成功している会社でなければならない。これが最終的に創り上げたい会社のビジョンです。
そのビジョンをやっていくには「なんでもいいよ」と言いましたけれども(笑)。「基本的にこのルールは守ってね」というのをミッションステートメントとして掲げています。
目標がビジョンだとすると、(ミッションステートは)それを達成するためのルールブック。これを守ったうえで「あとは好きにやっていい」ということで、このミッションステートは社員にもかなり浸透していると思います。
我々はインターネットで会社を成長させているので、その成長分野から軸足をぶれさせない。放っておくと自分たちが万能みたいな気になって、かつてのライブドアみたいに「ぜんぜん関係ない産業も我々がやったら魔法の杖みたいに変えられるんだ」と思い始める人もいます。
そうではなくて「成長産業から軸足をぶらさず、連動する分野にはどんどん参入していく」ということをよく言っていますね。
スライド下から5番目に、先ほどの「挑戦した敗者にはセカンドチャンスを与える」、上から5番目に「採用には全力を尽くす」と書かれていますが、これもしっかり社内に浸透しています。「採用活動に協力してくれ」と言われたら、みんな喜んで協力するというか。採用には全力を尽くすというミッションステートメントがあると。
そんなふうにビジョンがあり、そのルールブックであるミッションステートメントを掲げて、結果的に我々の会社の社員は非常にのびのびと自由そうにやっていると思います。
私の話は以上です。どうもありがとうございました。
(会場拍手)
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