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勝つためのセルフプロデュース(全5記事)

人材育成は「しつけ・自主性・主体性」を織り交ぜよ スポーツ指導の現場から教育メソッドを学ぶ

2019年2月9日、「SCJ Conference 2019 ~壁を超えて、繋がる~」が開催され、ビジネス界やスポーツ界の枠にとらわれず、多様な分野で活躍する第一人者が一堂に会しました。その中の分科会C「勝つためのセルフプロデュース」では、静岡聖光学院中学校・高等学校 校長・星野明宏氏、早稲田大学ア式蹴球部 監督・外池大亮氏、ソフトバンク株式会社人材開発部 部長・杉原倫子氏が登壇。指導・教育現場の課題や未来を語りました。

勝つためのセルフプロデュース

杉原倫子氏(以下、杉原):先ほど打ち合わせをちょっとしまして、この会は緩めにいこうかなと思っています。あまり、きっちりかっちり進まないと思いますが、ぜひお許しいただきたいと思います。「勝つためのセルフプロデュース」ということで、今日は星野先生と外池さんと私、杉原でお送りしたいと思います。ではさっそく、まずは星野先生から簡単に自己紹介をしていただけますか? お願いします。

星野明宏氏(以下、星野):はい。みなさまよろしくお願いします。私は星野と申します。大学卒業して桐蔭学園でしたから、当時1学年が1,500人ぐらいいたんですかね。卒業アルバムがこんなに広くて……という状態で学生生活が終わり、電通には9年弱おりました。

今、紆余曲折があって、学校法人静岡聖光学院の常務理事をやっております。企業でいえば常務取締役副社長のようなかたちで、今は学びの現場を退いて、どちらかというと先生たちのマネージメントとか学校全体のマネージメントという経営者の立場で仕事をしています。今日はよろしくお願いします。

(会場拍手)

杉原:ありがとうございます。これだけ聞くとかなり輝かしい経歴をお持ちだと思いますが、あとでギャップを出していただこうかなと思っています。では、外池さんお願いします。

外池大亮氏(以下、外池):はい、外池と申します。よろしくお願いいたします。僕は早稲田大学を卒業したあとに、Jリーグで11年プレイさせてもらって、7クラブにいて3回戦力外通告を受け、2回トライアウトを受けて、優勝は1回ちょっとなんとなく絡んだかなぐらいの感じです。

いっぱいいっぱいながら、11年プレイしました。その後引退をして、33歳のときに星野さんとなぜか(電通というのが)一緒だったという…一緒のタイミングではないんですけども、電通で大手飲料メーカーさんの担当営業をして、サッカー日本代表のオフィシャルスポンサーみたいなかたちの作業をさせてもらっておりました。

その後、今現職でもあります、スカパーJSATに転職をいたしました。僕が入った当初はJリーグの放映権がありまして、そこでJリーグ周りの制作や編成、営業みたいな、コンテンツ事業のところをやらせてもらいました。今はJリーグからは離れてしまったんですけども、海外のサッカー、それこそベルギーとかドイツのブンデスリーガ(を担当し)、それと国内のJリーグ以外の育成だったり、僕は今大学にいて大学スポーツに携わらせてもらっています。

早稲田大学がなぜかプロ監督をやってほしいということで、昨年からスカパーと大学で業務委託契約を結んでもらって、スカパーに籍を置きながら、大学の監督を業務の中心に置いて活動しているというかたちです。よろしくお願いいたします。

(会場拍手)

杉原:よろしくお願いします。そうなんですよね。(早稲田大学ア式蹴球部が)2部から1部に上がった年に優勝しちゃうというね。

外池:はい。昨年、まだ1年と2週間ぐらいしかやっていないという状況の中でした。

杉原:そうなんですよね。こんなことが起こっていいのかというぐらい、サクセスストーリーな感じです。

外池:学生たちががんばったというか。

杉原:はい、その辺の話もぜひお聞きしたいと思います。ありがとうございます。私はソフトバンクの人材開発部で、ソフトバンクユニバーシティという企業内大学やソフトバンクイノベンチャーという新規事業提案制度を担当しております、杉原といいます。

ボランティアでこのスポーツコーチングJapanもお手伝いさせてもらっていまして、今日はモデレーターでお話をさせていただくことになっております。本題に入る前に、今日のカンファレンスですが、この前の回で、星野先生の教え子の風間君がウルトラさわやかに話していたのを聞きました(笑)。

「仕込み・自主性・主体性」が重要となる

星野:風間くんがさわやかに(笑)。前の回に参加された方はいらっしゃいますか? 主体性の美しいところばかりがフォーカスされていますので、裏話とかさせていただきたいと思います。午後一のこういうセッションって、学校でいうと5時間目の授業で一番苦しいですね。眠くなるというのと、「何かちょっと思っていたのと違うぞ」と思っている人がいたりすると思います。

外池さんが電通出身だったと聞いて、基本的に電通なのでちょっと変わっている人間がやっているのがわかったのと、私の同期でかなり一緒にふざけていたやつが、外池さんの先輩にいたみたいなのと、私たちは上司が同じだったんですよね。というのがわかったので、5分ぐらいで意気投合してしまいました。

とにかく、電通・ソフトバンク・ラグビー・サッカーでといった時点で心が離れる人が多いと思うので、どちらかというと裏話でいきたいと思います。静止画はいいんですけど、動画はちょっとアップしないでいただきたいとお願いしたいと思います。

(会場笑)

杉原:オープンにできない話が、いっぱい出てきちゃうという感じですね。

星野:そうです。さっきの風間君ですね。どこかにいると思います。主体性ということで、要するに自分たちで考えて、自分たちで運営して「コーチなんていらねえぜ!」みたいなところを今ウリにしているんですね。

社会に出て必要な人間は、やっぱり主体性のある人間なのは間違いないですね。私は、主体的な人間を育成する3つのステップがあると思っています。1つ目が「仕込み」です。これは躾とか強制といっていいと思っています。

2つ目が「自主性」です。3つ目が「主体性」だと思っています。今までの日本の教育は積み上げ式なので、躾の段階が終わったら次に自主性、最後に主体性とやっていくんですね。主体性と自主性の違いは、簡単にいうと自主性は言われたことをきっちりやる。主体性はプラスアルファをやる。

今までの日本の教育って、積み上げ式でやっているわけですよ。例えば、私は社会と体育の免許があります。日本史なんか、私たち世代は一番詳しいのが縄文時代なんですよ。本当にいるかいらないかわからないのに、卑弥呼のことや高床式倉庫、前方後円墳にやたら詳しかったりとか。この知識はまったく意味がないですよ。一番大切な近代史のところまで追いつかなくて「あとは夏休みにやっておけ」というかたちですよね。

英語も……英語の先生がいたら申し訳ないですけども、要するに読み書きができて、リスニングができて、最後にスピーキングだよというから間に合わなくて、本当に一部の人だけがスピーキングができる。いま教育が変えているのは、中1から読み、書き、リスニング、スピーキングを、スピーキングは「出川イングリッシュ」でいいから同時に進めていこうという考えが出てきています。

体育の授業で、種目が上手くなった人ってほとんどいないんじゃないですか? 最初にルールを教えられて、つまらないミニゲームみたいなのをやらされて、だんだん人数が増えて、最後の2時間だけゲーム大会みたいなのをやって終わると。

私はいまだにサッカーでセンタリングでボールが上がらないんですよ。水泳も平泳ぎしかできないんですよね。何が言いたいかというと、「躾・自主性・主体性」の順番ではなくて、どんどん織り交ぜていく。必要に応じてその比率を変えて同時並行、同時進行させるということですね。

今まで以上に主体性のある人間が必要となる

星野:これを勉強に置き換えるとすごくわかりやすいです。躾は一方向次元です。今この状態です。私が100伝えることが、80伝わる生徒もいれば、50伝わる生徒もいれば、つまらなくて外で景色を見ている生徒なんかには20しか伝わらないわけですよ。これが躾・仕込み。これはいかに伝えるかということですね。自主性は勉強でいうと宿題です。

大人が見ていないところで、大人が100やってほしいことを、見てないところでどこまでやるか。自主性(宿題)は100やらないと怒られますよね。

主体性は、家に帰って1時間かかる英語の勉強を工夫してマネージメントして50分で終わらせます。残り10分を「ああ残り10分早く終わったな。何やろうかな。この間、物理であいつに負けたから出し抜いてやろう」と、物理を10分勉強して「やべえ、これわからねえや」といって、翌日先生に職員室へ質問しにいって短い時間で効率的に成果を残す。プラスアルファですよね。

これからの時代は、今まで以上に主体性のある人間がほしいわけですよ。言われたことしかやらないのじゃなくて、プラスアルファで新規事業をしたりとか人脈を広げたり。こうなると、風間は主体性のところをすごく言っていたんですけども、実際にはめちゃくちゃ仕込まれています。

(会場笑)

(静岡聖光学院ラグビー部の)ホームページを見てください。スタッフもそうそうたるメンバーです。60秒でミーティングして振り返りをするんですね。これはなぜかというと、ラグビーってトライを取ったあと、取られたあと、だいたい次のプレイが始まるまで60秒かかるんです。だいたいのチームは、その60秒の間ミーティングをしているんですね。話し合っている。だいたいのチームは結論が60秒話し合ったあと「よし気合い入れて行こうぜ!」といくわけですよ。

(会場笑)

「気合い入っていなかったのかよ、お前ら!」という話ですね。なので、ちゃんと「Good・Bad・Next」を検証して、それを「Fix」というやり方で次にいくと。静岡聖光はトライを取ったあとも取られたあとも、チーム力が上がる。ほかのチームは精神論だけ語る。そういうロジックでやっているんですね。それもその分野で専門性高いコーチに事前にめちゃくちゃ仕込まれているわけですよ。あと週3日は全体練習でいくわけですね。それ以外はいわゆる自主性。

(練習がない)月水金はどうしているかというのは、指導者がちゃんとそういうシートを作ったりします。夏休みの30日の学校がない間には、菅平の合宿しかないんですよ。みんな、24日間は家にいるんです。だからそれをいかにPDCAを回すかというシートを指導者が作ってくれて、それを訓練したりします。

あと、今の佐々木(陽平)監督はハーフタイムは指示しないんですね。試合の最初からずっと指示がありません。そのスタイルになったのは最後の大会だけです。それまでは指示していました。最後の花園予選と花園だけはそうして、最後はガッといくかたちなので……。ちょっと誤解しないでくださいね。いきなり主体性で行くんだと、みなさん危惧していますよね。

主体性というと……そうなんですよ、生意気になるんですよ。ちょっと優しかったりする先生をバカにし始めます。ラグビー部の関係者以外からはちょっと評判が悪くなったりするわけです。

環境のマネジメントをいかに成功させるか

星野:だから昔ながらの「こうあるべき」という指導者は、そこで「だから主体性はだめだ」と言うんです。けど、私はそうは思わないんですね。主体性にチャレンジしたから、また新たな課題が見えたから、じゃあバカにさせないために、どういうメンタリティに持っていくかということを、数珠繋ぎでやっていけばいいんです。

そういう意味で、風間たちは常に完璧で格好いいということではなくて、そんな日々をずっと繰り返して今日まで至っているということですね。風間のことをバカにすると、静岡聖光がバカにされて経営が苦しくなるから、あまり言わないほうがいいですね。ほどほどにしますね。

杉原:そうですよ(笑)。でも今の話だと、仕込みがすごくしっかりされているということは、先生方や指導者の方たちが、ものすごくクオリティの高い指導をなさっているということなので、今のは完全に宣伝になっていると私は思いました(笑)。

星野:ありがとうございます。仕込みのときの指導は、はっきり言ってラグビー村とかスポーツ以外の人にもどんどんやってもらっています。とにかく60秒のミーティングをよくしたいのであれば、別に先生じゃなくてもいいし、ビジネス界の人でも、メンタルトレーナーでもいいんです。今、佐々木という監督がそういった方々をピックアップして、そういうことを与えているということですね。環境のマネジメントはやっぱり上手くやっています。

杉原:なるほど。いきなり、すごくいい話をありがとうございます。

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