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次世代の「ファン創り」プレゼンとは?(全3記事)

澤円直伝、人をハッピーにさせるプレゼンの秘訣 「行動が幸せになるように仕向けてあげる」

2018年10月24日、新しいプレゼンのあり方を考えるイベント「次世代の『ファン創り』プレゼンとは?」がファンぷれ!主催で行われました。イベントには、その道の第一人者である澤円氏が登壇し、プレゼンのノウハウや心得などを明かしました。

誰かに何かを伝えることは、全部プレゼン

澤円氏(以下、澤):(プレゼンの)スタイルはいろいろですよ。こうやって人の前に立って話をするスタイルもあれば、僕はいつも言っているんですけど、朝起きたときに家族に対するあいさつ、これだってプレゼンテーションです。それによって1日の過ごし方がぜんぜん変わるわけですよね。

これ、プレゼンなんですよ。そういうふうに考えてください。プレゼンテーションっていうのは、こうやって人の前にマイクを持って、そして話をする。スクリーンに何かを映して、話をする。これじゃない。これだけじゃないんです。

これももちろんプレゼンです。ですけれども、みなさんが誰かに対して何かを伝えるのは全部プレゼンです。そういうふうに考えています。それがまず思考の第一歩です。

プレゼンテーションというのは、成功へのスタートラインです。まちがいないですよね? だって朝一のあいさつですらプレゼンだとしたら、全部これスタートラインなんです。成功するまで。それを分析していきます。分解していきます。それを僕はいつも「ビジョン」「核」、それから「実践テクニック」の3つでお話をしているんですね。

プレゼンテーションの講師の方いらっしゃいます? それはいらっしゃらないかな。ありがとうございます。プレゼンテーションの講師の方っていうのは、だいたい頼まれるのはここなんですよ。しゃべり方なんですね。

どういう声の出し方をすればいいのか、どういう立ち方にすればいいのか、スライドをどう作ればいいのかって話なんですけれども。(それも)もちろん大事です。大事ですけれども、その前に考えないといけないことっていうのを2つ言語化しました。それが「ビジョン」と「核」というものになります。

まずビジョン。プレゼンテーションにおけるビジョンって何なのか、というお話をしていきたいと思います。

いいプレゼンの条件は「動機づけ」

:まず、すばらしいプレゼン、残念すぎるプレゼン。すばらしいプレゼンを聞いたことのある方は、どのくらいいらっしゃいますか? あのプレゼンテーション良かったな~、すげープレゼンテーション聞いたなって方? 少なっ! 

(会場笑)

:はい、どうぞ。具体的な名前でもいいし。

参加者:近しいところでいうと、伊藤羊一さん。

:羊一さん、いいよね~。でもあのおっさん、ちょっと前まですんげーつまんないおじさんだったんだって。

(会場笑)

あの人、トランスフォームしたんですよ。村上臣さんがインタビューでそう言ってましたけど。あの2人、すごく仲良いんですよ。村上臣さんってLinkedInの日本法人代表の村上さんですけど。その人が「すんげーつまんないおじさんがYahooに来た」って思ったんだって。

(会場笑)

だけど彼は、そこから努力してトランスフォームして、すんごいいいプレゼンをするようになったんですね。この物語だけでも3杯飯が食えるくらいに、すごくおもしろいんですけど。まぁそれは置いておいて。すばらしいプレゼンですね。

では残念すぎるプレゼン。残念すぎるプレゼンを聞いたことがある方? あれは聞くんじゃなかった、やめておけばよかったって方? あれ、これもあんまりいないな。じゃあ、ちょっと、こちらいきましょう。差し障りのない範囲で。傷つく人もいるかもしれませんからね。

(会場笑)

参加者:内容よりも、声が小さくてよく聞こえないとか。

:聞こえないとか。はい、ありがとうございます。それは残念ですよね。

参加者:すごく残念。

:でも、おそらくはホモサピエンスが両方やっているわけです。

(会場笑)

生き物としては、生命体としては一緒なんですよね。だけど、それだけ差がつくんです。だいたいすばらしいプレゼンっていうのは、何かの動機づけになる。何かしたくなってくるわけです。これがいいプレゼンの特徴です。そして残念すぎるプレゼンっていうのは、しまいには腹がたってくる。「もういい加減にせえや」って。

この差は何なのか。結果がどのようにちがうのかを一言で言うと、アクションなんです。プレゼンテーションは行動させるためにする、というふうに思ってください。まずこれが第1歩目。

そして、もう一歩踏み込みます。言葉としてもう一歩踏み込みます。行動させる、さらにそれでハッピーにする。行動というのが、不幸に突き進むんじゃなくて、行動が幸せになるように仕向けてあげるというのが、これがプレゼンテーションの一番根っこの部分。

先ほどからしつこく言っている朝起きた時のあいさつ。これもプレゼンテーションですよって言いました。その朝の気持ちのいいあいさつによって、家族の人とか、あるいは朝一番にあった人が1日を気持ちよく過ごせるかもしれない。ハッピーですよね?

朝すんごい不機嫌な顔であいさつをされてハッピーになります? そういう人はあんまりないんじゃないかなと思うんですよね。いたらあとでちょっと個別に……

(会場笑)

「誰がどうハッピーになるのか」を考えよ

:貴重なサンプルとして、いろいろ実験させていただきます。でも、ほとんどはちがうじゃないですか。やっぱり気持ちのいいあいさつって、ハッピーになりますよね? これなんです。原点はそこです。それをマインドとして常に持てるかどうかで、プレゼンテーションが決まります。

それを具体化するんですよ。誰がどういうふうにハッピーになるのかって。漠然とするんじゃなくて、それを具体的にしていく。これが大事なんですね。その具体的にするときの1つのポイントを1個、ちょっとお話をしたいと思います。

時間というパラメーターなんですね。時間という要素を入れます。例えば、具体的な話をすると、1日のどの時間帯に使うのかとか、直前にするのか、年にどれくらい効果が出るか。

これが製品に関するプレゼンのときに、入っているかどうかで、ビジネスの中でいいプレゼンか悪いプレゼンか、いまいちなプレゼンか、はっきりわかるんですね。

これを言われると具体的なイメージができるんですよ。これがすっごく大事なんですね。実は僕がさっきから言っている中にも、時間のパラメーターが入っているのに気づきました? 「朝一番であいさつする」って僕言いましたよね? これが時間のパラメーターなんです。そうすると具体的になりますよね。朝が来ない人います? それは軸が歪んでいますからね。

(会場笑)

違う世界に生きてますからね。だいたい朝は来るんですよ。だから、その時のあいさつって話なんですね。さっきのマーティン・ルーサー・キングさんの話に戻りましょう。この人の時間のパラメーターはどこか。これ未来の話です。「アイ・ハブ・ア・ドリーム」というフレーズ。これは18分間のプレゼンテーションの中の、12分ぐらいのところが8回繰り返されています。

そのあとに「私には夢がある。将来自分の息子たちが、白人の子どもたちと一緒のテーブルで食事ができるように」というようなフレーズが入るんですね。それを何種類か繰り返していくというパターン。本当は黒人が生活できるように、今すぐにでも政府に何か政策をとってほしいんですよ。だけど、今すぐといったって無理なわけですよね。その時点では。

だから、時間はかかるかもしれないけども、それに向かっていきたいということで「アイ・ハブ・ア・ドリーム」というフレーズを選んだんです。政府はこうすべきだという言い方をしたって、その時点では動きづらいんですよ。だったら、私には夢があるという言い方で、この夢に対して賛同しないか? というふうに問いかけることができるわけですよね。

このプレゼンの3年後ぐらいに、彼は撃ち殺されているわけです。射殺をされてしまいます。だけど彼の夢がどうなったかっていうと、もう言うまでもないですよね。50年ほど経ったら、オバマ大統領が生まれているんですよ。夢がかなっているんですね。これがプレゼンテーションの動きです。

プレゼンには「時間の要素」を加える

:じゃあ次。このおじさん(ヒトラー)。このおじさんが言ったのは、これは「今すぐ」なんです。「労働者に仕事とパンを」。この当時、世界恐慌でものすごく仕事がほしいと思っいる人と、そして食糧事情が悪くてお腹が空いている人に満ち溢れていました。5年待ってなさい、お腹いっぱいにしてあげるって、どうだって話ですよね? 今、腹減っているんだよ。

そこでワーディングがすばらしいんです。「パン」。仕事と「食事」じゃないんです。仕事と「パン」なんです。パンってイメージできるじゃないですか。つかんで、ちぎって、口に入れるって動作が、なんとなくわかるじゃないですか。これがポイントなんです。だから漠然としているのではなく、具体的である。そしてそれが今すぐ、というところにつながっている。

そして今日、ファンづくりって話がありましたけど、ナチスが形成されて、ヒトラーさんのまわりにいる人たちっていうのは親衛隊と呼ばれるようになりました。彼はアイドルだったんです。だから人が寄ってきた。それで親衛隊というのが組織されて、彼はナチスをどんどんどんどん大きくしていったんですね。

まさにプレゼンテーションでもってファンをつくっていって。行動が残念だっただけなんですよ。そこだけは、ずれちゃってたんですけど。ただパターンとしては、それぐらい、人が震えるくらいプレゼンテーションってのは効果があるっていう、1つのサンプルでもあるわけです。

ウォルト・ディズニーの場合。彼はちょっと違う観点で。夢の時間。要するに、ディズニーランドの中にいる間っていうのは、夢の時間なわけです。そこに集中できるように、すべてがセットされています。ディズニーで働いていたことがある方、どのくらいいらっしゃいます? 僕は働いていました。僕、4年ちょっと働いていたんです。今働いていたらカリブの海賊の向こう岸ね。

(会場笑) 

ジャック・スパロウですね。

(会場笑)

あそこはどういう作りになってるかっていうと、中に入るとまわりが見えないんですよ。まわりの建物って、基本的に見えないようになっているんですね。全部ヤシの木で囲われていて、中に入ったら日常から切り離されて、夢の時間が過ごせる。これがコンセプトなんです。全部時間のパラメーターが入っているんです。

だから時間の要素を加えてください。何か商品の説明であったりとか、何かしらを見せる時には、必ず時間の要素を加えてください。いつとか、どれぐらいとか、頻度とか、なんでもいい。それがないと、具体的なイメージがなかなかつかめません。

ビジョンはプレゼンの北極星である

:ビジョンというのは、プレゼンテーションを正しい方向性に導いてくれる、北極星にあります。ですのでここを設定しないと、どこにも行けません。これをまず言語化してください。言葉に落とさなかったから、絶対にこれうまくいきませんから。言葉に落とすことをサボらないでください。

次、核です。2つ目の要素いきますよ。核。こちらはまず、しゃべりがうまいというのと、プレゼンがうまいってイコールだと思っているところから疑ってみましょう。これをいつも僕が例え話で言っているのは、レストランです。レストランを繁盛させるためには何が必要でしょうか? 何が必要ですか?

参加者:おいしい食事。

:そうですね。おいしい食事ですよ。まずかったら、1回は行くかもしれないですね。「あそこ、すんげーまずいらしいよ」「人間の食い物が出てくるわけじゃないらしいよ」「うっわ、まっずい!」「どうやって作ったんだ!? 信じられない」「明日も来よう!」って思います?

(会場笑)

思わないでしょ? 思うわけないんですよ。人を行かせることはありますよ。「あそこ、まずいんだってよ」「お前行ってこいよ。俺、絶対行かないから」。それはあるかもしれないけど、リピートはしないんです。これがすごく大事なポイントです。

さらに食材が新鮮だったりとか、立地が良かったりとか、清潔だったりとか。やっぱりゴキブリがそこらへんで運動会していたら、いやですよね。何が言いたいか。開店の前に、ほとんど勝負が決まっちゃっているんです。わかります?

プレゼンは再現がすべて

:要は何でこんな話をしてるかって言うと、しゃべりっていうのはどこかということにつながるんですけど、実は配膳のパートです。配膳のパートというのは、要するにインターフェースのところなんですね。配膳している最中にお盆の上のものを3回に1回全部ぶちまけちゃったりしたら、レストランは繁盛のしようがないですからね。

(会場笑)

大事ですよ。だけど、いくらウエイトレスさん、ウェイターさんが愛想が良かったりとか、きれいな顔をしていても、肝心のメシがまずかったりとか、ゴキブリが飛び交っていたらいやでしょ? 行かないですよね? そういうことなんですよ。だからここだけ磨いても、せいぜい配膳がうまいレストランにしかなりませんよ、って話なんです。

だから、まず自分がどういうふうに見えているのかっていう、そもそもの棚卸しからしてください。要するに、レストランのコンセプトを作っていく。そういったプロセスになります。自分がどんな人間なのか? どう見せたいのかのももちろん含まれますけれども、まずどんな人間なのか? そのギャップを理解していかなきゃいけないんですね。これをちゃんと理解したうえで次に進む。

それを言語化する。これがすっごく大事なんです。言葉に落としていく。要は漠然とわかってるだけじゃないんです。これを誰にでも見せられるように、言葉に落としてください。書いてください。再現してください。再現はすごく大事です。プレゼンテーションは再現がすべてだと思っています。

そして、相手のことも考えてください。誰に向かってしゃべるのか? 今日は7割ぐらいが(三木)アリッサさんのファンだというのは知っています。

(会場笑)

でしょ? 3割くらいは、今日は初めましての人がいるかもしれないですね。

聴衆に「プレゼント」する心意気を

:それはともかくとして、今日はプレゼンテーションの話を僕から聞きに来ているわけだから、なんとなくわかりますけれども。そうじゃない場合もあるわけです。期待値が読めないところもある。それはイメージしなきゃいけないんです。

できる限りリサーチしないといけない。そしてできる限り具体的にイメージして、そんな人たちに対してプレゼントをしていく。こういうやり方をするんです。

プレゼンテーションが得意な方、どれくらいいらっしゃいますか? 

(会場挙手)

じゃあ、苦手な方はどのくらいいますか? 

(会場挙手)

ありがとうございます。じゃあ日常的にやらなきゃいけない方は、どのくらいいます?

(会場挙手)

これもけっこういますね。ありがとうございます。何をしたかっていうと、リサーチをしたんですね。アイスブレイクも兼ねて質問するわけですね。そうすると、なんとなく相手との距離が縮まるということで、対話できますから。

それによって、どういう人口分布なのかを知ることができるんですね。最終的には、大丈夫ですよ、ここにいらっしゃる方みなさんが対象になりますよ、なんていう話をそこの中に入れていきます。

プレゼンテーションが苦手とおっしゃった方、安心してください。世界中でどこに行ってアンケートを取っても、もっとも怖いものは何かっていうと、パブリックスピーチ、人前で喋ることというのが、トップランキングに入るそうです。アメリカでは2014年の調査によって、それまでずっとトップだった高所恐怖症を抜いて、パブリックスピーチが1位になった。

アメリカ人もそうなんです。要はみなさんだけじゃない。みんな仲間だってことなんです。心配しないでください。とくにアメリカの場合には、それプレッシャーがすごいですよね。しゃべらなければならない、といったところがあるんじゃないかな。その上で、誰でも歓迎な準備をするということなんですね。

プレゼンテーションというのは、「プレゼント」です。贈り物だと思えばいい。贈り物だと思えば、あげるのって、いたずらじゃなければ、いい迷惑なものはあげないですよね。時々あるハワイのヤシの実のブラジャー。あれはもう本当に、いやがらせ以外の何ものでもないですからね。

(会場笑)

そういうのもありますけど。あれだって、これそのものをつけて歩いてくれっていうわけじゃなくて、シャレであげるでしょう。まぁ、冗談であげるわけですね。何らかの形で喜ばせるためにやっています。だからプレゼントっていうものは、喜ばせるためにやるもんだっていうふうに考えてください。

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