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AI時代を生き抜く(全5記事)

地頭を良くするのは、“遊び・コミュニティ・未知の環境” 大人になってもできる情報編集力の鍛え方

2018年9月7日~17日にかけて、日本財団「SOCIAL INNOVATION FORUM」と、渋谷区で開催した複合カンファレンスイベント「DIVE DIVERSITY SUMMIT SHIBUYA」が連携し、都市回遊型イベント「SOCIAL INNOVATION WEEK SHIBUYA」が開催されました。本セッションでは「AI時代を生き抜く」と題し、藤原和博氏が登壇。「情報処理力」と「情報編集力」の鍛え方についてアドバイスをしました。

情報編集=掛け算

藤原和博氏:これで(情報編集力とは何かということが)5割の理解から6割ぐらいになったかな、という人は拍手してみて。

(会場拍手)

じゃあこれを今から75パーセントぐらいまであげますからね。(情報)処理力と(情報)編集力、まだちょっと迷ってるかもしれません。これから、処理、編集(の違い)がビシッと分かる簡単なワークをやります。

まず先ほどの3、4、5人のチームで、世の中で「白が当たり前、白が常識、白が最初だよね」という商品をいっぱい挙げてください。時間は1分間しかあげないので、20個挙げたら立派です。まず例えばホワイトボードがそうだとか、牛乳がそうだとか、そういうノリ。今の2つも入れちゃっていいので、ガンガン挙げてください。これは早く正確にバンバンあげてほしいんです。行きますよ、3、2、1、はいどうぞー! 

(会場ブレスト)

はい、ではそこまでにしてください。そこまでにしていただいて、この短い時間で、20個は大袈裟だけど、10個以上あがったところは手を挙げてください。ほとんどですね。もう勘が良い人はわかったと思います。今みなさんが発揮されたのは情報処理脳です。(スライドを見せ)こっち側ですね。

知っていることを早く正確に挙げたと思うんですよ。知らないことは言わなかったと思うし、混じり合ってもいない。例えば組み合わせでなにかを言ったわけじゃないですよね。これから、これ(情報処理脳)をガチャっと情報編集脳に切り替えるわけです。処理脳から編集脳に切り替えるときには、掛け算が必要なんですよ。

情報編集力は掛け算の力だと思ってもらってもいいです。何をかけるかというと、本来は白い商品に黒をかけます。黒をかけるとどんなふうに付加価値が上がるか。

たぶん、今10個以上挙がった商品の中で、黒にすると意外や意外、売れるかもしれないねというものがあると思うんですよ。高級感が出るとか、かっこよくなるとか。自分だったら黒い方を買うわ、っていうものがあると思うんですよね。

今度は数撃ちゃ当たるじゃなく、これを3つから4つ選び出してもらって、その中で他のチームが考えそうなものを捨ててもらって、一つを磨き上げてもらいたい。それをどう売れば売れるかというところまで行けたらおもしろいと思います。1分半ぐらいで(やってみてください)。

常識や前例にとらわれない掛け算が付加価値を生む

みなさんは気づかないかもしれないけど、今、脳がすごく繋がりやすくなってるの。つまり、この授業を受けただけで、情報編集力が磨かれてるんですよ。なので意外と早く良いアイデアに到達するんじゃないかと思います。

本当はこれは言わないほうがいいんだけど、まあ言っちゃえば、例えば綿棒ってあるじゃないですか。黒くした綿棒が売ってますよ。ちょっと気持ち悪いんだけど、耳かきをするとすごく(耳垢が)見えるという。

そういうことです。だから綿棒はもうすでにダメよ。綿棒以外でこれいいんじゃないのっていうのをちょっとやってください。これはまあ半分洒落なんだけど、本当に佐藤鈴木田中脳(いろいろな人と脳が繋がる状態)というのがぐわっと出てくると、化学変化が非常に早くなって、すごい案が出る可能性があります。今日この場で。

本当にすごい案が出た場合は、ぐっとこらえて言わないほうが良いです。それを来週特許庁に登録した後に言いふらすっていう。要するにみなさんそこまで(脳が)鍛えられてるから、今までなかったようなすごい商品が出る可能性があるんだよ。

というわけで、ぜひ綿棒を超えてもらいたいと思うので、いきますよ。これが掛け算ですから、情報編集脳になります。要は要素を掛け算をして常識、前例が解き放たれ、違う要素を掛け算することで付加価値を生むということですよね。違う価値を生み出すっていう。

たった今この瞬間おそらく、日本中、世界中の数万社数十万社の会社で同じことをやってると思います。常識や前例を疑って、掛け算して新しい商品を生み出すということです。というわけで、その擬似的なワークです。いきますよ。白を黒にしたらすごい価値が出るんじゃないの? っていうワーク、行きましょう、3、2、1、はいどうぞー! 

(会場ブレスト)

ヒット商品は常識を疑うことから生まれた

はい、じゃあそこまでにしてください。今まさに、仮説がいっぱい出たと思うんです。仮説が出るうちに納得いく仮説も出たんじゃないかと思います。それが納得解ですね。いいですか。これがどれくらい頭を柔らかくつなげるかという勝負だってことです。

実際にこういうブレストで生み出された商品いっぱいあるわけですが、先ほど綿棒について言いましたけど、例えばトイレットペーパーも黒いものが発売されて、実はホテルではかなり高級感が出るということで売れました。

今「トイレットペーパー 黒」というふうに検索をかけてもらえれば、通販で売っています。本来は家庭用というわけではないね。家のトイレは壁も含めて、たいがい全体的に白っぽいじゃないですか。そう言われるとあんまり似合わないけど、要するにホテルのちょっと暗い感じのダウンライトがあるようなウッディなこげ茶色とか黒っぽい色のところには高級感があります。

それから、まな板も白が常識なんですが、これも常識を疑って黒いまな板を発売しました。僕は、帝国ホテルのシェフに友達がいるんですが、使ってると言ってました。白い野菜を切るとき非常にはっきり見えて、怪我をしない。速く切れる。そういう商品はすごく多いと思います。

他にもいろいろ(あります)。みなさんが言った商品は、ほとんど商品化されていると思いますが、もしかしたらされてないものあるかもしれないので、来週ちょっと狙ってみてください。今日言わなかったような、いい案が浮かんだ人はですよ。

このように、情報の処理脳編集脳、わかりましたよね? もう一度繰り返しますが、基礎的人間力の部分を磨き、かつ編集力の部分で勝負する。言ってしまえば、処理的な仕事はどうせ奪われるわけですから、こっちは今任されたらなるべく要領よく、左から右へさっさとやっちゃうのが良いんですよね。

こっち(情報処理)で身につくものってそんなにないですから。処理がうまいっていうことを極めても、それはAIにはかなわないと思うので。というわけで、こちらは今のこの10年くらいはもうさっさとやっちゃってできれば頭使わないでさっさと左から右へ処理しちゃって、出来る限り自分の脳をこちら側に持ってくるというね。

AIは情報編集力を獲得できるか

出来る限りこっち(情報編集)側に持ってきて、発想していけるようにすると良いんじゃないかと思います。企業のあり方も一緒なんですよ、こっち(情報処理)側の仕事を正社員にバンバンさせてるようではもうブラックにならざるを得ないですよ。こっちの仕事を早々と機械化しちゃって。

あるいは機械化の次はIT化とか言ってましたよね? 次がロボット化、AI化なんですが、こっちの仕事を徹底的にそういうふうに公有化して、社員の全てをなるべくこちら側に頭を向けさせる。社員の全てがこっち(情報編集)を考えているようにすると、ものすごく付加価値が生まれる会社になりますよね。わかります? 

Googleがその極致だと思います。というわけで、この処理力編集力ですね。そうは言っても、どのように発想しどのように創造的な案を出すか、その仮説を出す編集力でさえも、おそらくAIがやるようになると言う人もいるわけです。

ホリエモンや落合陽一君くらい、先のことがわかっている人たちは、これはもう時間の問題だと。つまり世の中で仕事と言われるものは全て(AIに)置き換わると(言っています)。そうかもしれません。

そうかもしれませんが、10年、20年かかる可能性があるので、人間はこの(情報編集)力を磨きながらこちら側に頭を寄せる。それが得策かなということは分かってもらえたんじゃないかなと思います。

頭の良さとは、頭の柔らかさと回転の速さ

一応ここまで納得してもらえた前提で、ちょっとその最後仕上げにですね……。情報処理力と編集力について、どうすればもっと高まるのか、自分の情報処理力・情報編集力を高めるためにはなにをやったら良いの? っていうのをブレストしてもらって、それで私の考えをちょっと述べて、最後の仕上げにいきたいと思うんです。

わかりますよね? 情報処理力は何をすると高まるのかというと、これは頭の回転の速さなんですね。情報編集力は頭の柔らかさ。結論を言っちゃいますと、頭の回転が速くて頭の柔らかい子のことを、頭の良い子と言うんです。

子じゃなくても、ここにいる(大人の)みなさんも一緒です。頭の回転が早くて頭が柔らかい人を頭の良い人と呼ぶんですよ。間違いないんですよ。というわけでこのバランスが大事なんです。こっち(情報処理力)だけでもダメな時代に入っているとは言っても、こっち(情報編集力)だけで「俺はクリエイティブだ」とか言ってても、仕事を処理できない人はけっこう相手にされませんので、こっち(情報処理)とこっち(情報編集)のバランス。

今までは9対1だったり、学校教育は97パーセント対3パーセントだったような感じなんだけど、それが2020年代を通じて、7対3くらいでこちら(情報編集力)にシフトがかかってきます。

受験勉強や速読で身につくのは情報処理能力

2020年代中ね。そういうことをやるために2020年から大学の入試……、共通テストっていうんですが。君たち受けたかな? センター試験が変わっていきます。記述式になったり、数学でさえも筆記が出たり、あるいは英語についてはもうセンター試験でなにかを選ぶようなかたちじゃなくて、リスニングやスピーキングについては外の試験も使うようになったりですね。

そういう、こちら(情報編集)側を何とか見極めようと。それから二次試験についてはもっと面接重視、あるいはグループディスカッションをさせて、面接官が注意深く見たりとかですね。

それから自分が高校時代に何をやってきたか(をテーマに作文を)2,000字くらい書かせるとかですね。そういうことがメインになってきます。日本の試験制度も、こちら(情報処理)からこちら(情報編集)側に、ぐーんと時代に合わせてシフトしようとしているということをちょっと覚えてもらったら良いと思います。

では軽く1分ちょっとで、まず処理能力を高めるためにはどうしたらいいのか。僕が先に、学校の勉強をちゃんとやるとか、塾や予備校に行ったら高まりますね、と言っちゃったんだけど、他にどんなことがありますかね? 何をやると情報処理力が高まると思うかをちょっとディスカッションしてみてください。

バカな意見を言ってもいいです。行きましょう、3、2、1、はいどうぞー。

(会場ブレスト)

はい、じゃあそこまでにしてください。これはどんな仮説がみなさんにあってていいです。これが正解です、と言うつもりはないんだけど、当然勉強したら(情報処理力は)つくよね。一生懸命やればつくと思う。百マス計算をやればつく。処理仕事、処理業務を徹底的にマスターするということですから。

それから受験。僕は高校受験であれ大学受験であれ、とにかく記憶力に物を言わせて自分はどこまで覚えられるかと、徹底的にやってやるみたいな感じです。もう死に物狂いでやってとにかく病気になる寸前まで記憶しまくる。

自分のメモリーを鍛えるんです。自分のメモリーがどこまで広がるのか。そういう意味で、受験というのは一回激しくやった方が絶対いいと思いますね。これは処理能力を鍛えると思います。

あと、例えば漫画でも良いかもしれないんだけど速読だよね。要するにある文章をさっと読んだ時に、さっと中身が要約できるとか、そういうとにかく処理能力。大人になったら、というか君たちが社会に入ったら、社会に入ってる人はみんなわかるんだけど、とにかく文章量が半端じゃないですから。

とにかく昔みたいに書物しかなかったんじゃなくて、もうメールからなにからバンバンきますから、資料を読んで、要点がわからないとダメなので、これは要するに読解の処理能力ですよね。

それは早い方が良いので、これはかなり左側(情報処理力)に効くと思います。では、こっち(情報編集力)はどうでしょうかね。こちら(情報処理力)側が予定調和と、速く正確にやるということなんですけど、予定不調和の中で、どういう対策を出すのかとか、どういう説明を加えればうまくいきそうかということ。情報編集力を鍛えるためにはどんなことをやると鍛えられるか。

10歳までに思いきり遊ぶと、情報編集力が鍛えられる

「子どもの頃どうだったのかな。今どうなのかな。社会ではどういうことで鍛えれば良いのかな」っていうのをちょっとイメージしながら、ちょっと議論してみてださい。

いいですか。これはなかなかね、「バカなことから言え」って言われても困っちゃうかもしれないけど、「こんなんでどうかな」っていうバカなことからちょっと言ってみて。

いきましょう、3、2、1、はいどうぞ。情報編集力を高める機能です。「編集の仕事をすればいい」「編集者になる」というような、つまらないことは言わないでね。

(会場ブレスト)

はい、じゃあそこまでにしてください。これもたった一つの解があるわけじゃないです。できたらみなさんも3つくらい意識して、自分のオリジナルの案をそれでそれを意識するようにしたらいいんじゃないかと思います。

まず一つ、結論からいいますと、これは絶対に外せない。こちら(情報処理力を鍛えるのは)勉強でしたよね。こちら(情報編集力を鍛えるの)は遊びなんですよ。すごくはっきり言いますが、10歳くらいまでに思いっきり遊んだ人は、間違いなく情報編集力のベースができています。

10歳までで思いっきり遊んだって人どれぐらいいる? ちょっと手あげてみて。その人はベースができてると思います。

遊びの中に正解が一つではない問いかけが行われていて、それに対して、すごく真剣に対処しないといけなかったと思うんですよ。命かけてという感じですよ。例えば、遊びに行ったときに雨が降ってきたらどういう風にするのかとか。

それから小学校5年の時に、みんなが誘いに来てくれてワッて遊びに行くんだけど、小学校2年の弟がついてきちゃった時、どういう風にルールを変更すればいいかというような話。

遊びの中にはそのように、とにかく想定外、あるいは二律背反だったり、こっちが立てばこっちが立たないというようなものがたくさん出てくるので、そこに無限に対処した経験がどれほどあるか。それが頭の柔らかさを作ります。つまり、ずーっと勉強しかしてなかった子はかなり厳しいです。

今は、青学の初等科でも中等部でもいいんだけど、有名私立中学校に入れるために徹底的に幼児から勉強させるようなことをもしやってると、けっこう厳しいと思います。わかりますよね? 頭の柔らかさは遊びによって作られるので、遊んでいない人は厳しい。だから、今からでも遊んで、ということが一つ。

世界観を自ら再編集し直すことの大切さ

それから留学も圧倒的。10歳くらいまでに遊びをさせられませんでした、後からどうしたら良いですか、という親御さんからの相談をよく聞くんですよ。もう留学しかないです。それも、外国が一番いいですね。できたら2年以上です。1年だと、いいところしか見ないで、お客さんのままで帰ってきちゃうから。

2年だと、だいたい財布やなにかを盗まれるんですよ。それから、ドミトリーで同室の子がイスラム教徒で、夜通しお祈りしてるんですけど、どうしたら良いですか、というような。自分で交渉しなきゃならないですから。自分で交渉してなんとか通過していかなければならない。 

とにかくお母さんの支配下から逃れてですね。お母さんは、環境を整えていったり条件を整えていったり、(子どもにとっての環境を)気持ちよくしてしまうので。お母さんの支配領域から出て、自分で世界をもう一度再編集するということをやったかやってないかは大きいですよ。

別に日本のなかで、海外じゃなくてもいいんですよ。とにかく寮に入って、自分の世界観を自分で編集しなおした経験があるかという話ですよ。例えば会社に勤めたり転職して全然違う風土のところ……僕だったら学校という、リクルートの風土とは100パーセント違うところへ行きましたから、もう一回、人間との関係つくり方から再編集せざるをえないですよね。そういうふうに場を変えるということをやったかどうか。

3番は、会社の組織とは別に、コミュニティに足場を作ってそこで揉まれたかどうか。コミュニティというところは役割ですべてが決まったりしませんから。そういう場所に自分が投入されたときに、どれぐらい立ち振る舞えるのかという再編集がかかります。

例えば今だと被災地に行って、被災地で名刺交換もしないまま、いろいろな人たちと共有が始まるというような。この間行方不明になった男の子を救ったようなおじいちゃんから、熊本から駆けつけてるような人から、いま、広島にはいろいろな人が行っていますよね。

東日本大震災の直後もですね。実は世界中で一番優秀なやつが、東日本震災の直後、石巻に集まってたんですよ。例えばそれがAppleの人だったり、ハーバードを出た人だったり、在学中の学生だったり。なぜかわかります? そういう一番優秀な人たちはやっぱりなにかで世界に貢献したいんですよね。

その時に本当に悲惨な、本当に欠けちゃった状況を見ておきたいとか、自分がそこに投入されたときに何ができるのかを試したいという気持ちがすごくあるわけですよ。

だから当時、石巻、それからバングラデシュに最先端の本当に優秀な人が集まってましたので、そこで新しいネットワークを作るということも可能だったわけですね。

というように、コミュニティに足場を作るというのも一つの方法です。ちょっと覚えておいてください。なんとなく、情報処理力と情報編集力はどうすれば高まるのか(が分かって)、納得感がある人だけ、ちょっと拍手くれる?

(会場拍手)

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