2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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高山達哉氏(以下、高山):そうですね。トークセッションはいったんこの時間で切り上げて、この後、質問タイムにいきたいなと思ってます。
……が、その前にですね、いったん今日のお二人のお話をみなさん聞いていただいたと思うので、またもう1回前後の方、もしくはお隣の方と、聞いてみての感想や、この後質問コーナーがあるので、「こういうこと、ちょっと聞いてみたいよね」ということなどを、改めてシェアしていただけるとうれしいなと思います。これもお時間3分ほどでけっこうですので、どうぞよろしくお願いします。
(3分経過)
高山:はい、ありがとうございます。
青木耕平氏(以下、青木):ありがとうございます。
高山:たぶん今いろんなアウトプットが、すごい生まれてると思うんですけれども、よろしいでしょうか?
青木:ありがとうございます。
高山:では、みなさんお隣の方とおしゃべりもしていただいたところで、ぜひお二人にこういったことを聞いてみたいということがあれば、手を挙げていただければマイクをお渡しするので、どなたか質問のある方いらっしゃいますでしょうか?
青木:こういう時に最初に手を挙げる人って、めちゃくちゃありがたいんですよね。
(会場挙手)
青木:はい、きた!
高山:じゃあ。
質問者1:今日はお話ありがとうございます。
青木:ありがとうございます。
質問者1:このファンっていうものは、一番最初はやっぱり社員だという話がすごく印象に残っています。それこそ社員の声をしっかり傾聴して、しかもオーガニックな声を引き出すって、社外の人より難しいと思っているんです。
青木:あー、確かに(笑)。
質問者1:ヒエラルキーというか、雇用関係であったり。
青木:確かに。上司に「どこが好き?」と聞かれたら、言わなきゃいけないみたいな(笑)。
質問者1:はい(笑)。「これ言ったらなにかに響くのかな」とか、なにかそういう怖さみたいなものとかもあったりするじゃないですか。なので、社内のメンバーがいかに本音をさらけだせるか、社員の安心、安全みたいなものを確保できるかが、やっぱりファンベースをする時にすごく大事になってくるなと思っています。
そもそも社長とかに対して、「いや、今年、増収増益する必要があるんですか?」とか、「売上ここまでいく必要あるんですか?」とか、けっこうそれ、そもそも……みたいなところが。
青木:NGワードみたいなことになっちゃいますよね(笑)。
質問者1:そうですよね(笑)。でも、(社員は)けっこう思ってたりすると。
青木:わかります、わかります。「そっちが先じゃないですよね」みたいな話ですね。
質問者1:そうですね。それで、青木さんたちの『クラシコムジャーナル』で、長尾彰さんとかの記事を見て。この1年間でリーダーシップの取り方をけっこう変えたというか、これまでは自分が決めて、それを社員さんに投げてこなしてもらうスタイルで、任せることがあんまりできてなかったけど、最近はちょっとそのスタイルを変えていこうと思ってる、みたいな青木さんの書いた記事があったんです。
結論から言うと、青木さんの社員の方に対する接し方は、今、変わってきたりとか、こういう『ファンベース』の本とかを読んでそうしてるんですか、という質問です。
青木:これね、さっき「上司から聞かれたら、部下は答えにくい」というのがあるじゃないですか。これ、社員が聞いてる場でそれに答えるって、けっこうなプレッシャーですよね(笑)。
(会場笑)
質問者1:公開処刑みたいな感じなんですけど(笑)。
青木:これ、「おまえ、調子いいこと言ってんな」と思われたらちょっとイヤだな、みたいな(笑)。
(会場笑)
青木:それで、さっきおっしゃっていただいたことは、要は「任せる」とか「任せない」というよりも、本当にわかってないことをわかってるふりしない、というふうにしようと思っただけなんですよね。
わかってることは「いや、わかってるからこうだよ」と指示もしますし。自分でわざわざクイズみたいに、正解を知ってるのに「はい、じゃあ、考えてごらん」みたいな、「なーんだ?」みたいな感じで。
(会場笑)
それで、答えたら「ブー」みたいなのって、ちょっと失礼じゃないですか。だから、わかってることは言うんですけど、実際わかってないことがどんどん増えていってるんですよ。それはやっぱり10年以上経営してきて、当初想定してたことから今の状況って、ずいぶん変わってきていて。
市場環境もどんどん不透明になっている中、わかってることが多いほうが嘘くさいじゃないですか。だから、わかってない時に「いや、わかんないんだよね」というだけの話かなと思っています。なので、それはそうしようと思ってます。
思ってるけど、どのぐらいできてるかは、ちょっと正直自分で言っちゃうと恥ずかしい場なので。ただ、そうしないと僕も不幸になっちゃうというか、僕が(わかってる)ふりを続けて不幸だと、みんなにも(わかってる)ふりをさせることになりますよね。
「俺もさ、こんなにがんばって、わかんないものをわかってる体でやってんのに、おまえ、俺の下のマネージャーとか、なんですぐ『わかんない』とか言ってんの?」となっちゃうじゃないですか。
でも、僕がもし「わかんないんだよね」ということを共有して、みんなが許してくれたとしたら、その下の人たちもわからないことは「わかんない」と言えるし、僕も自分が言っちゃってるから責められない。
という関係で、さっき言った心理安全性みたいなことで言えば、連鎖すると思っています。でも、みんなが心理安全性を感じてるかは、たぶん社員の人がいるので、後でちょっと個別に聞いてください(笑)。
質問者1:ありがとうございます。
高山:他はいかがでしょうか?
(会場挙手)
高山:はい、じゃあ。
質問者2:今日は貴重なお時間ありがとうございます。業界柄、ちょっとクラシコムさんのように、お客さんが20代から60代までいて、すごく長い期間でファン(になっている)というような状態ではなくて。まあ、ベビー業界のところなんですけど。
お客さんが3年おきに新しく生まれ変わるというところで、どうやったら短いその3年の間のファンを継続していけるのかを、ちょっと佐藤さんにうかがってみたいんです。
佐藤尚之氏(以下、佐藤):……俺か。
(会場笑)
青木:僕が答えられないんで(笑)。
佐藤:あ、そうか(笑)。でも、クラシコムさんから始まったからさ。ごめんなさい、何業界?
質問者2:ベビー業界。
佐藤:ヘビー?
質問者2:はい。
佐藤:あ、ベビー。はいはいはい。
質問者2:なので、やっぱりお父さんとかお母さんが3年ぐらい子育てをしていく中で。
佐藤:ベビー業界は、本当にファンを大事にしてたほうがいいですよね。もちろん3年でみんな卒業していっちゃったりするんですけど、未経験者がどんどん参入してくる。その時に、経験者に必ず聞くじゃないですか。
ということは、「絶対これがいいよ」と薦めてくれる状況をつくっておくのはとても大事です。ベビーとか、家とか、車とか、そういうものは本当にファンをつくっておいたほうがいいと思います。
佐藤:そのファンをずっと継続する必要はないと思います。ただ、3年間の「これはすごくいい」という感情的なことも含めて、とくにベビーに対するその企業、ブランドの考え方をちゃんと共有できるようにして、根強いファンにしておくことがすごく大きなことだと僕は思います。……そういう質問じゃない?
質問者2:いや、すごい、やっぱりファンを大事にしていくというところなんですけど、(スライドを指して)このAからIのところで、どれが大事なんでしょうか。
佐藤:どれが?
質問者2:3年のファンをその後に継続させるという意味では、どのポイントが大事なのかというような。
佐藤:3年のファンというか、すごくいい体験を残しておくことによって、その後、次のお客さんたちが聞いてきたり、自分からも子どもが生まれたら「あそこのあれを使うといいよ」と言いたくなるとすると、どこなのか。というふうに見ていくと、たぶんいくつもありますね。……だと思います。
質問者2:ちょっとざっくりした質問になってしまいました。
佐藤:いえいえ。
青木:学校のマーケティングとかと近いような気がしますよね。OBとかOGみたいな人たちを大事にすると、結果論として学校ってマーケティング的に良くなるじゃないですか。そういう意味では、卒業した人を、卒業後は関係のなくなる人としてとらえないことが、入口としては1個ある気はします。
佐藤:そうですね。
高山:ありがとうございます。
高山:では、他の方いかがでしょうか?
(会場挙手)
高山:じゃあ、あちらの方お願いします。
質問者3:今日はありがとうございます。今、刃物メーカーに勤務しておりまして。
佐藤:ハモノ?
質問者3:刃物メーカーですね、包丁とか。一昨年ぐらいから、うちでもファンミーティングを開催しております。だいたい10人ぐらいの規模で、各地方を回って、このへんにいるメンバーでやってるんです。
先ほど、「ブランドの価値はファンに聞くのが一番いい」とおっしゃってたんですけど、短いファンミーティングの中で「なんで好きなんですか?」と聞いてもなかなか出ない、というのが現状としてあります。
先ほど奥さんに例えられてたと思うんですけど、奥さんに「僕の何が好きか?」と聞いても、たぶん2、3時間で出てこないのかなと思うんですけど(笑)。
(会場笑)
青木:「忙しい!」とか言われてね(笑)。
(会場笑)
質問者3:「好きだからこそ出てこない」ってあると思うんですけど、そういう時の魔法の言葉じゃないですけど、引き出し方みたいなコツとかあれば。
佐藤:それ、どういうふうにファンミーティングやってらっしゃいます? 最初の入口とかどうやって……、入口というか、最初は例えばクイズしたりとかいろいろやるんですか?
質問者3:そうですね、クイズはやってますね。
佐藤:クイズをやった後、何をやりますか?
質問者3:クイズの前に、家庭用品を出してるので料理教室を簡単にやります。最後、インタビューというか、グループディスカッションみたいなのをして、それぞれに聞いたりするんです。「いい会だったよね」とはなるんですけど、ブランド価値までは僕らも導き出せてないな、というのがあるんです。
佐藤:一応もし……、そうですね、ブランドとかジャンルによるかもしれませんけど、ファン同士が会って、普通に放っておくと、意外と盛り上がるは盛り上がるんですけど、そこで「どういうあたりが好きか」という言葉があんまり出てこないのであれば、「実は私ってこうなんだけど、そこはどう思う?」と、奥さんだったらね(笑)。
(会場笑)
佐藤:なにか、「自分たちはこういうふうに考えています」と。それで、「こういう価値観で物をつくっています」、もしくは技術者なんか出てくると、「こういう思いで、毎日こうやって削ってるんだよ」みたいな話とかを、ちゃんとこう。
ある種のプレゼンテーション的なことを、堅苦しく上から登壇とかそういう感じじゃなくやっていくと、反応としてリアクションが出てくると思います。そこらへんですかね。
例えば、日用品とか飲食だったりするとリアクションは非常に出やすいんですけど、刃物でそういうのが出にくいのであれば、自分たちの非常に大事にしてる姿勢とか、そういったのを1回相手に当ててみて、そのリアクションから話を盛り上げていく、ということが必要かもしれないですね。
青木:さっきの奥さんの例えにすると、「俺の好きなところどこ?」と聞いて、「うるさい。忙しい」と言われて、「例えばさ、こういうとことか」と聞いていくと、明らかに「あ、そうかも」という反応をするみたいなことがあったら、そこはチャンスみたいな感じじゃないですか。
だから、今おっしゃったように、こっちから「これ、これ、これ」というよりは、うまく投げられると、人間ってすごく正直だから、当たった瞬間ってけっこう明確で、「あ、これかも」みたいなのは(あると思います)。
僕も今までいろんな、別にファンミーティングにかぎらず、社員とかでもそうですよね。ざっくりした質問で「うちの会社さ、今後どうなったらいいと思う?」と言ったりすると、もうフワッとしちゃうじゃないですか。
でも、「例えばさ、こうなったらどう思う?」というふうに深堀ると相手のリアクションとして、明確に違うものが出てくることはあるので、それは1つありかなと思いますね。
佐藤:本当にそう思います。
質問者3:ありがとうございます。
高山:はい、ありがとうございます。
高山:では、まだお時間ありますので、どなたかいらっしゃいますか?
(会場挙手)
高山:はい。じゃあ、前のお二人なので、まずは緑のパーカーを着られてる方からお願いします。
質問者4:今日は貴重なお話ありがとうございました。私、今NPOにいて寄付関係とかをやっているので、ファンって大事だと思うんです。
青木:そうですよね。
質問者4:悩むのが、「ファンのためにどれぐらい偽るか」みたいなことです。
青木:偽るか。
質問者4:要するに、何て言ったらいいんでしょう。例えば社会問題を話す時に、かなり強く打ち出していかなければいけなかったり、団体としてキチッとやらなければいけないことになると、意外と団体としては「これはできてないです」とか、あんまり出しにくいなと思うことがけっこうあるんですね。
今のお二人のお話をうかがうと、比較的もう数自体は、この組織自体はあって、それを素直に出していくことが非常に大事だと、私としてはとらえました。意外と社会問題を取り扱う現場では、比較的、とはいえ見せていかなきゃいけないことがある中で、どっちに寄せていくのがいいのかなとすごく悩みます。
例えばアーティストでいけば、矢沢永吉さんがいたら、みなさん矢沢を求めるわけです。でも実際、矢沢永吉さんは家でパジャマ着てることもあると思うんですけど、みんなそれは見たくないみたいな。
青木:見たくないですかね?
佐藤:僕は見たいですけど。
青木:俺も見たいですよ。
(会場笑)
佐藤:いや、NPOはもともとの組成がきれいごとじゃないですか。であるからこそ、もう内側とか、裏側にある苦労は、見せないよりも見せたほうがいいです。
そこにしか共感はないですし、あとはこう訴求したいとか、「このためにこうこう、これが大事なんです!」と正論を言うより、それを言うのもありだと思いますけど、自分たちの思いと裏側の苦労と、そういったストーリーを出せば出すほど、人は「あ、応援しよう」「もう少し協力しよう」というふうになっていくと思います。
質問者4:なるほど。
青木:ダメなところとか弱みって、僕はインターフェースだと思ってるんですよ。人とつながっていくためのインターフェースで、USBみたいなものです。それで、どこがダメかを提示しないと、周りの人はどうやって関わっていいかわからないんですよ。
質問者4:うーん、なるほど。
青木:なので、「いや、なんか本当はこうしたいんですけど、ぜんぜんダメなんですよ」と言ってると、手伝ってくれる人ができたりします。「そうだよね。そこって難しいよね」「でも、1歩でもきれいごとに近づこうよ、一緒に」みたいな人が集まってくるじゃないですか。
でも、「完璧なんですよ」と言うと、「いや、本当は接続したいんだけど、USBポート、マジどこにあるかぜんぜんわかんねーよ」という話になってしまうケースがあると思うんです。
だから、もちろんそれ(弱み)をドロッとそのまま出していいかは別として、インターフェースとしてどうソフィスティケートできるかに、クリエイティビティを発揮するポイントがあるんじゃなかろうかと思います。
佐藤:いや、本当にそうですよ。僕は震災支援で団体を4つぐらい立ち上げたんですけど、寄付とか難しいですし、震災支援をするのは絶対善に近くなっちゃうので、裏側の苦労とか見せると逆にイヤがられたりとかします。
「そんな苦労とか言ってんじゃねー!」みたいなね、「一刻も早く助けに行くんだ」みたいなところが出ちゃうんですけど、今言ったみたいにそこにクリエイティビティが必要なんです。
あんまりそこを出さないと、みんなも協力しにくいですよ。だから、出し方としては、苦労とか……。苦労って出すと、イヤなのにやってるみたいな感じになっちゃうので、(そういう)方向の苦労はダメだけど、これを真っ直ぐやってる時に、「こういうところがどうしてもキツくて、なんとかみんなの協力がないと無理なんだ」みたいなのを上手に言うとか。これはもう試行錯誤なんですけど。
質問者4:なるほど。クリエイティビティですか。
佐藤:クリエイティビティって言うとちょっと遠いですけど……。
青木:工夫みたいな。
佐藤:工夫みたいな感じで。
青木:だから、「偽る」という言葉を「クリエイティビティ」と言い換えたほうがいいですよね。「どう偽ろうか?」と言ったら、自分も楽しくないじゃないですか。ズーンとなっちゃいますけど、「この弱みをどうクリエイティビティを発揮して魅力に変えようか?」とか、「インターフェースに変えようか?」とか、そういう考え方で言う。
佐藤:そうですね。お腹を見せちゃったほうがいいですね。
青木:そうですね。
質問者4:はい、ありがとうございます。
高山:はい、ありがとうございます。
高山:じゃあ、最後に前の方にマイクを渡していただけると。
質問者5:本日はありがとうございました。私の悩みでもあるんですけれども、ファンのみなさんと共感であったり、愛着であったり、信頼というものを構築するにあたって、やっぱりお互いの感情を交換しあうってすごく大事なんじゃないかなと思っています。
お客さまとそのファンベースをより強くする時に、その感情を交換しあう時に、企業のこちら側も感情をお伝えしたい時に、個人の顔で接することがいいのか、それとも、いわゆる仕組みで展開できるように、企業としての存在というかたちでコミュニケーションをするのか、どちらがいいのかを聞きたいと思っています。
それを聞きたい理由としては、私は個人の力量みたいなところでコミュニケーションをしてしまうタイプなんですが、「それはあなたのファンを増やすことであって、もしあなたが死んじゃったり、いなくなった時どうするの?」と。
「仕組みで展開できるようにして」という時に、どういう感情を交換しあう仕組みを持つのがいいのかを、おうかがいできればと思います。
青木:これ、僕、すっごい佐藤さんの後に答えたい、という誘惑がすごいんですよ。
(会場笑)
佐藤:……それは「おまえ、先に言え」という話ですか?
(会場笑)
青木:なんですけど。
佐藤:今みたいなのがテクニックですよ? わかります? クリエイティビティ。
青木:いやいや(笑)。そうなんですけど、これ、僕が後に答えたら、すごい潔さがどうなのかなとか思って。
佐藤:どんな言い訳ですか?
(会場笑)
青木:どうしたらいいですかね(笑)。これ、どう思います?
佐藤:質問忘れちゃいましたけどね。
青木:要するに、ファンで個人性を押し出してやるのがいいのか、みたいな。
佐藤:あー、ファンになるというよりも、共感をつくるとか、愛着をつくるというふうに考えたほうがいいです。人は人にしか共感しないんですね。人は会社というものに共感するわけじゃなくて、人が共感するのは人なんです。なので、個人を出さないと、基本的には共感しないと思います。
だから、会社というすごくブラックボックス的なところの向こう側に、ちゃんと人間がいて、日々悩み、傷つき、喜び、というふうにしてるんだとわかると、その会社に対して急に体温が通って見えるんです。だから、個人を出すほうが絶対にいいとは思います。
佐藤:だけどそれはある種、人によっては「それは属人的だよね。この人が辞めちゃったら、その共感はなくなるんじゃないの?」と言いますけど、でも、それはあなたの人生を出すというよりは、その会社の延長線上の個人を出してるだけなんです。
その会社という……、会社というか、その仕事とか、いわゆる商品とかが体現している、生活者の課題を解決したものがあるわけじゃないですか。そこの部分に対する共感……、そこの部分に対する……、ええと違うな。
そこの部分の価値は、属人的じゃなくてずーっと持っていけるものなので、この価値を、自分の個人の目で見てちゃんと出すことさえすれば、属人にならないですよね。
Twitterの中の人とかも、今ウケてる人とかいて、その人たちが辞めちゃうと「もうダメじゃん」となったり、意外と引継ぎがうまくいかなかったりすることがあるんですけど、それはもう個人の性格は全部違うので、前の人の真似はまったくできないです。
なんですけど、その商品の解決している課題の枠を守った個人を出していくのであれば、例えばアカレンジャー、アオレンジャー、キレンジャーとか投稿者が分かれていても、その枠に対してそれぞれ全部に共感はできるんですよね。
だから、そこは取り替えも効くし、属人的じゃなくいけるんです。ただ、アカレンジャーもアオレンジャーもキレンジャーも、個人を出さないと共感は生まれない。「あ、俺と同じように生きてる人間なんだ」とわからないと、「単なる黄色い奴だ」となるとダメなんですよね。
青木:(笑)。
佐藤:あれ、答えになってるかな?
青木:いや、もうめっちゃいいと思います。
佐藤:あー、そう。
(会場笑)
青木:めっちゃいいっていうか……、なんか今、めっちゃ上からっぽかったですか?(笑)。
(会場笑)
青木:すいません(笑)。ただ、この後に答えられる心理安全性。
(会場笑)
佐藤:どうぞ。
青木:いやいや、付け足すことはほとんどないんですけど、1個だけ言うとしたら、属人性が良くないということは、僕は今の時代、まず疑ったほうが超いいと思ってるんですよ。例えば、「永続する」とか、「誰が変わっても大丈夫である状況をつくれ」とよく言うじゃないですか。あの、僕もけっこう会社で言うことがあって(笑)。
(会場笑)
青木:だけど、属人性は悪である、あるいは、非効率である、非生産的である、合理性がない、というのは、僕は疑ったほうがいいなと思っています。
なぜかというと、さっきのファンベースの話で言えば、「属人的なつながり、情緒的なつながり以外に、差別化を維持できるポイントはないのである」という話をしてるわけですよね。
そうすると、結局、その属人的でない状態でファンベースがつくれるのであれば、それはそんな素敵なことはないんだけれど、現実論として、それはもう無理なのであるという現状がある。であれば、属人だろうがなんだろうが、ファンをつくらないとしょうがないし、ファンと関係性をつくらないとしょうがないよねと思うんです。
ということで言うと、僕はそのテーゼから考え直したほうがいいし、属人的にうまくいっているものを、「じゃあ、属人的にうまくいったのは1段ロケットであって、2段ロケットである非属人化にしましょう」と言った瞬間に、たぶん壊れちゃうと思うんですよ。
なので、例えばTwitterの中の人が、「ある人が担当している3年間は超良かったよね。でも、交代したらダメになっちゃった。ほら、属人的にやってたからじゃん」とよく言われるポイントだと思うんです。
でも「いやいや、3年良かったという、この事実が良かったことであって、属人性に気を使ってたら、3年良かったことさえ起こらないんである」と、僕はこれをすごく考えたほうがいいと思うんですよ。
だから、せっかく成功している属人的な取り組みを、意味のわかってない上司がつぶすという案件が多いと思うんですよ。でも、例えば国で言えば、「ある人が総理大臣で3年間良かったよね。でも、総理が変わったらダメになった」「いや、3年でも良かった時期あって良かったじゃん」みたいな話もあるわけじゃないですか。
だから、「ある総理大臣、超いい総理大臣が1000年生きて、ずっと統治してくれたらそのほうがいいよね」という話ならいいですけど、そうはいかないとなった時に、「じゃあ、どうなの?」という話と一緒だなと思うんです。なので、「もう属人性を廃するということは、現代においてほぼ無理なんじゃないですか?」という前提から考えてみるのはどうでしょうか、という提案ですね。
佐藤:すげえいい!
(会場笑)
質問者5:めっちゃいい回答ありがとうございました。
(会場笑)
高山:ありがとうございます。では、ちょうどお時間となりましたので、これにてトークセッション終了にしたいと思います。本日は佐藤さん、青木さん、ありがとうございました。
(会場拍手)
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