2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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川原崎晋裕氏(以下、川原崎):けっこう誤解を受けがちなんですけど、僕らはメディアポリシーを2つ持ってます。まず、左側の対談・スピーチと書いてある一般のイベントの場合は、話者の伝えたかったことを伝えるというのを非常に重視しています。要は、言い間違ったり口が滑ったり、ちょっと他社をディスっちゃったりって、その人の本来言いたかったことじゃないわけですよね。
それを取り上げてもただの揚げ足取りにしかならないので、そういうことはやっていなくって、実は登壇いただいた人にはご自身の話した箇所は全部事前にチェックいただいているんですね。おかしかったところがあったら直してください、というふうに言っています。それでもみなさん内容自体は削らないので、内容はそのまま届くと。
逆に報道の方は、一切容赦はしないと(笑)。口が滑ろうがなんだろうが、社長がパブリックな場所で公式に喋ったこととか政治家が話したことは、一言一句そのまま伝えるという二通りのスタンスでやっています。
菅原弘暁氏(以下、菅原):これはちょっと意外だったんですけど、ログミーさんはけっこう誤解されてると思うんですよね。
川原崎:みたいですね。
菅原:けっこう広報の立場としては、ぶっちゃけ怖かったんですよ。こっちの対談・スピーチでも、ちょっと口滑ったり、ちょっと口悪いこと言っちゃうと、直せないという(笑)。
川原崎:(笑)。そうですよね。
菅原:そう。だからログミーさん入ってちょっと怖い、だったり、「イベント広めたいんです」と言って「じゃあログミーさん入れれば良いんじゃないですか」って言うと「いや、ちょっと書き直せないじゃないですか」みたいなことがけっこう多くて。
だからけっこう意外だったんですよね。何か直せるって言うと、ちょっと誤解を招くかもしれないですけど。その話者の伝えたかったことを重視してくれるって、意外と伝わってないんじゃないかなと思って。今日いらっしゃってる方、何人かうなずいてますけど。
川原崎:そんな怖くない(笑)。
菅原:怖がられてましたよ。
(会場笑)
川原崎:うちも態度をちょっと変えてきていて。僕がもともとマスメディア(出身)だったので、マスメディアにおいては普通の関係性なんですよね。「あなたそれ言いましたよね」と。だから、例えば飲み会であろうが、クローズなイベントであろうが、メディア関係者がいたら絶対に口を割っちゃいけないというのがルールなんですよ。それは言った方が悪い、というふうになります。
菅原:それはね。報道の方にはね。権力の監視ですもんね。
川原崎:そうです。僕はITにまったく知識も興味もなかったのに、たまたまIT業界に飛び込んでしまったんですが、そうしたら広報の方とメディアがけっこうなあなあになっちゃっていて、すごく忖度をするというのに最初は驚きました。
菅原:なるほどね。確かにイベントで喋ってる側って目の前にいる人を喜ばせようとか、けっこう振り切るんですよね。その時にオンラインだったらどうなるかなって(会場笑)。普通に考えて、たぶん耐えられないですよね。それをけっこう、広報担当ってヤキモキするんですよ。
川原崎:そうですよね。
菅原:そう。うちの社長ちょっと調子いい性格だし、エンタメ精神高いから、余計なこと喋るんじゃないかみたいな。会場ではオフレコで通るかもしれないけど、メディアに載ったら、株主が見たらどうすんのとか。けっこうびびりポイントですね。
川原崎:そうですね。社長さんによっては「困るんだよね」みたいな。昔は「イベントだから好きなこと喋れるのに邪魔しやがって」みたいなクレームを受けることがあったんですけど。
一方で、「いやいや、気にすることないよ。それはもう言った方が悪いんだから。どうせマスコミ相手だったら絶対許されないんだから、練習だと思ってログミーどんどん書き起こした方が良いよ」と言ってくださる経営者の方もいて。
メディア馴れしている大企業の経営者のほうが理解していただけるケースが多いですね。それはそれでありがたいけど、「困るよ」って人の気持ちも考えなきゃなということで、一般のイベントに関しては今は非常に軟化しております。
(会場笑)
菅原:でもそうなんですよね。伝えたかったことが、テキストにすると意味が逆になっちゃうとかは防いでくれるってことですよね。
川原崎:そうですね、それはもはや編集力の問題なので。我々は編集力のあるスタッフがつくっているので、そこは問題ないんですよね。ただ、言ったこと自体がヤバいみたいなところは勝手に直せないので、事前にお見せして調整しています。
菅原:ログミーは怖くないというのは、今日ちょっとお伝えしたかったことの一つなので。
(会場笑)
川原崎:怖くないですよ(笑)。
川原崎:ログミーがやろうとしていることは、ユーザーのニーズが書き起こしを読みたいのかというとそうではなくて、良いコンテンツが読みたいと。
イベントに行かなかったら聞けない話とか、動画を全部観ないとかいうのを、オンラインでテキストで簡単に読める。だからさっきのメディアポリシーでやってますよ、ということになりますね。ということで、編集しないことでコンテンツの価値をより高めるといったことをやっています。
最後に、ちょっと言い訳がましいことなんですけど、僕は編集者のことを非常にリスペクトしています。僕はもともと編集者になりたくてサイゾーに入ったんですよね。出版社にどうしても入りたくて。
なんで今編集者じゃないかと言うと、自分には編集の才能がないと思ったからです。サイゾーにいた編集者はみんなすごすぎて、自分は絶対こうはなれないと思ったので、ビジネスの側というかプロデューサーになりました。
なので100点の価値の情報があった時に、ログミーはそれを読みやすく直しているだけなので、せいぜい110点とか120点のものしか作れないなと思っていますが、本当の編集というのは、100点のコンテンツを200点とか300点にする。それが編集の力だと思っています。
ただ、紙の業界からインターネットに来てすごく思ったのは、編集があまりうまくない人が非常に多いと。ただ価値が下がるだけならまだましで、逆の意味で伝わっちゃったりしてマイナスになることさえある。
ただの書き起こしであるログミーが、自分の編集した記事よりたくさん読まれるという状況が起こったら、この人たちはたぶん、もっと良い編集をしなきゃいけないなと思うんじゃないかなと思っていて。そういった意味で、ある意味コンテンツの平均点みたいなところをログミーが担えれば、インターネットに良いコンテンツが増えるんじゃないかなと思って日々がんばっております。
菅原:はい、ありがとうございます。
菅原:僕は以前危機管理の仕事をしていたことがあって、すごい感じるんですけど、やっぱり悪意のある報道ってあるんですよね。謝罪会見って実際には3時間とか5時間とかやるんですけど、テレビで放映されるのって20秒とか、本当に一瞬じゃないですか。しかもそれで視聴率を稼がないといけないので、本当はすごい謝ってるのに、あたかも謝ってないかのような報道があったり。
記者も数字を取りたいので、同じことを聞き直したり、わざと意地悪な質問をするんですよ。聞いたのに耳こうやってやる(ふさぐ)とか。僕もメディアトレーニングの時、その役をやっていたんです。地方の若い記者って役で。
(会場笑)
「一発当てて上京したるで!」みたいな役作りをして。それで、挑発をするんですよ。挑発をするとちょっとムッときたりとか、同じ質問されたら「さっきも言ったじゃんそれ」みたいな、呆れた笑顔をするじゃないですか。
そしたら、それ一発アウトなんですよね。お茶の間には「反省の色なし!」みたいな。
(会場笑)
あれは完全に悪意のある編集ですし、仮に悪意がなかったとしても、やっぱり20秒で伝えなきゃいけないとなっていて。そういうのが結局、本当は誠心誠意謝っているのに、それが伝わらないという最悪の現象になっちゃってるんですよね。
川原崎:そうですね。
菅原:そういうのがやっぱり起きがちだなというのが、けっこうログミーとか見ていてちゃんと伝わっているなとか。さっきのIRのところ以外でもやっぱりその価値を感じる部分だなとは思います。
川原崎:報道の書き起こしはすごい読まれますね。
菅原:やっぱりみんな、真実を知りたいんですよね。それこそオリンピックのロゴの問題があったじゃないですか。パクった、パクってないみたいな。あれちゃんと見ると、別に誰も悪意があってしたことじゃないんですよね。
ちゃんといろいろ調べて、ちゃんと作ってるけど、結局パクってるじゃんみたいな書かれ方とか報道のされ方をすると、その印象になっちゃうんですよ。でも、中の方はすごいちゃんとやっているのが伝わらないのが、こっち側の人間としては非常に心外だなと思って見ていて。
川原崎:なるほど。
菅原:そう。そういうのは結局、さっき川原崎さんが言った、インターネットのメディアがコンテンツの価値を下げてしまうことにつながるなとお話を聞いてて思いましたね。
川原崎:記者会見とかを伝えるメディア側が伝わる“量”しか見てないからということに尽きると思うんですね。視聴率や購買数、インターネットで言えばPVですね。僕は昔やってたサイトでPVを稼ぎまくった反動でPVが嫌いになっちゃって、ログミーは社内にPV指標がないんですよね。広告メニューにも載っていません。
編集者に対してPVの話を基本的にしないことを徹底してやっていまして、ユニークユーザー数とか再訪数といったものしか見てないです。なんでかというと、PVを作るのって簡単なんですよ。タイトルの付け方だったり、取り上げるネタの種類だったり、あとはまあページ分割みたいな手法もあったりはしますけど。
あれらは記事やメディアの価値基準としてはぜんぜん本質的ではなくて。PVを目指してメディアを作ってしまうと、広告代理店さんに売ってもらう時もPVが基準になってしまうじゃないですか。
あの争いに巻き込まれたくなかったので、うちは、もちろんクライアントの記事がどれだけ読まれたかとかは開示したりレポーティングはするんですけど、想定PVとか、ましてやPV保証みたいなものは一切広告メニューには書いてない。そういった感じの運用をやっています。なので代理店さんは、ぜんぜん売ってくれないんですけど。
(会場笑)
PR会社さんは理解があって、ちゃんとクライアントにそれを説明して伝えてくれるので。なのでうちは直のクライアントさんと、PR会社さん経由のクライアントさんでほぼ100パーセントといった感じになってますね。
菅原:編集って言葉の使い方もあると思うんですけど、読みやすくしたりするのを編集と言うんだったら、そういう意味での編集はするんですよね。どっちかと言うと、記者の個人の感情とか視点は入れないという意味での編集はしないという理解でいいんですよね?
川原崎:そうですね。うちスタッフ全員、編集の経験者ばかりなんですよ。結果的になんですけど、紙の編集者ばっかり集まっていて。なんでかと言うと、守破離みたいなもので、編集しないためには編集できるというのがどういう状態か、知っていなきゃいけないんですよ。編集というのはこういう状態で、編集しないのはこういう状態だという。編集できない人が編集しないコンテンツは作れないんですよね。
菅原:ただそこもミスリードされがちな部分かもしれないですけどね。編集しないと何も手を入れないと思われるので。
川原崎:そうですね。書き起こすとコンテンツになると思ってる人もいるんですけど。やっぱり、編集の方や広報の方もそうだと思うんですけど、コンテンツに多少なり知見がある方が見れば、ログミーの記事は相当手直しをしてるんだなというのが伝わっていると思います。ありのまま伝えるというのが、意外とめちゃくちゃ難しい。
川原崎:ログミーって最初はクラウドソーシングを使って1分20円とかで書き起こしまくって、それをそのまま掲載するだけだからすごいラクじゃん、て思って始めたんですけど。実は死ぬほど大変だった(笑)。僕はほんとに、大変過ぎて3ヶ月で辞めようかなと思ったんですけど、ありがたいことにファンがついてしまったので、がんばって今5年続けてるって感じです。
菅原:臨場感を出すための工夫とかって、けっこう難しいだろうなと思うんですけど、どういうふうに工夫されてるんですか? テキストになると、本当に盛り上がってたのになとか、けっこう熱量こもってたのになと、表現しづらかったりすると思うんですけど、そういう工夫ってどういうふうにされてるんですか?
川原崎:よくぞ聞いてくださいました! あの、これ仕込みじゃないんですけど(笑)。
(会場笑)
そこが、うちが今一番コストをかけているところです。何かというと、この文章を作るのにめちゃくちゃ苦労しているというのがありまして。人が喋ったことをそのまんま文字にしても、要は音を文字に変換しても、ほぼ読み物にならないんですよね。かといって、新聞とか書籍みたいな完全な文語体というか文章に直してしまうと、今度は堅くて読みづらい。
その中間の、その人の口癖とかをちょっと残しつつ、でもスラスラ読めるみたいな、良いあんばいの文章に直しています。文を整えるって意味で、整文と言っているんですが、これがやっぱりなかなかサービスがスケールしづらい理由だったりしますね。外注がきかなかったりするので。
菅原:そうですよね。けっこう語尾のところとか、かなりこだわられてやられてるなと。
川原崎:そうですね。(会場笑)があるかないかだけで、意味が180度変わっちゃったりとか。そこはタイトルもそうですね。ログミーのもう一つ難しいところは、タイトルをつけるのが非常に難しい。なんでかと言うと、これ敵を増やしそうなんですけど、ほとんどの9割方のイベントってただの雑談なんですよね。
(会場笑)
すみません(笑)。9割方ですよ、みなさん残りの1割だと思いますけど。
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