2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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小霜さんは「売れる」と言っているし、売っているという実績もあると思うんですが、デジタルで物を売るって、ただ話題にするのとは違いますよね。「どうやったら物が売れるのか」に関して、どういう企画や考え方でやっていらっしゃるんですか?
小霜和也氏(以下、小霜):まず「デジタルでどうやったら売れるんですか?」と聞かれたことがあるんですけども、僕に聞いてくる人たちって要はバズ動画をつくっている人たちですよ。バズ動画って、売らないですよね。
バズ動画でなにか売れたって話を聞いたことがないですね。実際にそう聞かれるんですよ。僕が思うにバズ動画をつくるということは、Webをメディアと考えてないんじゃないかなという気がするんですよ。
要は、テレビだと考えたら「バズらせよう」と思わないじゃないですか。ちゃんと商品の優位性や特徴を伝えようと思う。そうすると、そこで価値観は変わるということですよね。普通にメディアと考えたらね。なにかそういうものだとという捉え方をしてないんじゃないかなと思うんです。
以前はWebというと「インタラクティブ」と言われていましたよね。インタラクティブがWebの本質なのかみたいな感じになってた。
インタラクティブで考えると、広告クリエイターには手も足も出ないテクノロジーが入ってきちゃう。そうじゃなくて、テレビと同じように、もうメディアだと捉える。そして、そこでその情報を送るのだと考えれば、それをキャッチした人たちが普通に買うんだよね。それだけのことじゃないかと思っているんですよ。
司会者:「もうWebがメディアとして機能しているんだから、ちゃんとそこにCMを載せてターゲティングして配信すれば買ってくれるよ」ということですね。
小霜:テレビや新聞、放送に広告を配信するのと同じようにWebに配信すれば、「それは買うでしょうよ」というのは基本です。ただメディア特性が違うので、Webで出すときにはWebの流儀みたいなものでやると、さらに効率良くなるよねっていう。
司会者:その「Webの流儀」と今おっしゃったのが……例えば一度配信した人にまたリタゲしてというような。
小霜:そうですね。それは基本だと思いますけど。
司会者:本田さんは本の中で「買う理由をどうつくるか」について書かれてました。それはまた、今の小霜さんのお話とはニュアンスが違うのかなと思います。
本田哲也氏(以下、本田):そうですね。どちらかというとコモディティ化したものだという話もだいぶ違います。しかし、食品や日用品だと物として差別化できないんです。そういうものも世の中、世界中にいっぱいあります。それがちょっとぐらいの違い、自分たちだけで信じている「ここがいいんだ」をどれだけ訴求しても、それ自体が買う理由にならない。
だから、さっきのベビーカーみたいなことですけど。どちらかというと「なんでそれが必要なんだっけ?」という理由や背景そのものを訴求しないといけない考えなんですよね。だから、そういうものがいらないものもあるということです。最初から趣味性が高いものや、どちらかというと住宅や自動車といったわりと高額商品は、買いたい前提でネット検索したりするので。
どちらかというと、検討プロセスをどれだけ早めるか、情報をフィードするかということになります。あまり戦略PR的な香りをそこに与えるというのは、レアケースなのかもしれないですね。
司会者:ある意味では、ベビーカーも、買う人が限られる商品ですよね。赤ちゃんがいるお父さん、お母さんということだと思うので。
本田:そうですね。数百万人がターゲットですね。
司会者:そこに向けた空気づくりをしたということですよね。
本田:そうですね。空気づくりというとなにかこう日本全国の世論を巻き起こすみたいな、そういう部分でかつてはハイボールムーブメントとかそれこそありましたけど。
どちらかというと、お母さん、それでも数百万人の人口規模なわけです。そういうところに対して1つの共通認識みたいなものをつくっていく意味では、空気というと非常に大きすぎる共有かもしれないです。でも、原則はそうですよね。
小霜:本田さんにちょっと聞きたいですけど。例えばキュレーションサイトなど、ああいうWeb PRサイトがありますよね。DeNAで問題になったりとかしましたけど、ああいうサイトの記事を活用すると、それこそ空気づくりはできるんですかね。
本田:まっとうなコンテンツで活用すれば、ニーズはあると思うんですよね。空気づくり、これはキュレーションメディアが出る前から言っていることなんですけど、結局、同時多発的に同じようなことが出る。それはさっきのアフィリエイトみたいに浅はかな「私もこれ買いました」が一気にいろんなモデルから出てくるとかそういうことじゃないものです。
テレビやラジオでも取り上げてるし、新聞でも見るしネットでも同じことをやってるみたいなことが、空気づくりに必要だと言った時に、キュレーションサイトもすごくいいんですよね。結局、広げて効率が良くなるわけですから。
ただ、WELQの問題などでちょっとキュレーションサイトのダークサイドが見えちゃったんで、倫理とかは問われると思うんですけど。メディアの手法論としては、むしろ空気づくりに適正じゃないかなと思ってます。
司会者:よくPRで言われるのが、「PR=パブリシティじゃないよ」という話だと思いますが、本田さんは本を約8年ぶりに改訂されて、その間で、誤解がだいぶ解かれてきたというか、理解が進んできた感触はありますか?
本田:そうですね。やっぱり8年目でおかげさまでというか、それで救われた従事者も多いのではないかなと思います。それは喜ばしいことですけど。とはいえ、まだ日本だとパブリシティが別に必要ないと言っているわけでもなく重要なんですよね。本質的には「パブリシティで終わるな」ということなので、僕らもPRの仕事をしてて、「パブなんかどうでもいいですよ」と言わないわけですよ。
目的意識が先ほどのバズると一緒で、それが目的になっちゃうと「記事が100個出たからいいか」「それでなにが起こるんですか?」みたいになる。
なので、もっと立体的に巻き込んで目的を達成していかなければいけない。だけど、やっぱりパブリシティというものがある程度出ないと起こることも起こりません。途中過程として、やっぱり確実に必要なところでしょうね。
司会者:パブリシティはPRパーソンにとって、「ただの歯磨きのようなものだ」という話も本に書いてありましたよね。「やって当たり前」という。
本田:それはありますね。それは前に言われたことなんですけど、それを目的意識にしないようにというのはポイントかもしれないですね。
司会者:ありがとうございます。
司会者:ここからは、どのようにPRと広告が組み合わさるともっともパワーが出るのだろうかということをうかがいたいと思っています。結論を出すのは難しいとはないと思うんですけど。
施策上、どう組み合わせればいいかということでもいいですし、「PRパーソンとアドパーソンはこんなふうに協業するといいよ」という話でもいいのですが。ずばり、小霜さんいかがでしょうか?
小霜:すごく引いた目線で言うと、戦略PRから土壌をつくってくれて、ある商品の持っている特徴というか、そういうものが社会的に必要という認識をつくってくれた上で、その商品が出て行くのが一番きれいな姿ですよね。
デジタル時代というか、デジタル広告が増えてきた中で、それをどう訴求するということが、ちょっとテクニカルなことも含めて、課題として今もまだあるのかなという考えは持っています。
例えば「Web PR記事は動画がくっついているほうが効果が高い」みたいな話があったりします。テクニカルな部分での絡ませ方みたいなものは、まだ理想的なやり方ってきっとあるはずです。そういったものを開拓していきたいと思ってますね。
司会者:今日最初に小霜さんが「認知は全部を動画でやる必要はなくて、このパート動画であるCMでやればいいし、このパートはリタゲというように分けて考えたら」とおっしゃっていたのと同じように、最適な手法を組み合わせるということですよね?
小霜:そうですね。あれはアウトバウンド型の広告の基本形です。本当はそのさらに手前に、PR的な商品認知の前の価値の認知というものがあるのかもしれないなと思うんですけど。
司会者:本田さんは、いかがでしょうか?
本田:そうですね。全体になっていくと今、小霜さんがおっしゃった通りでもともとデジタルかどうかという、PRと広告の役割分担みたいなところがPRパーソンとその後をどうするとか、PRが土壌をつくってあげるとか、すごく普遍的なところはデジタル時代でも多分変わらないと思うんです。しかし、やっぱり人が違う領域で別々に育っているので、PRも含めて、そこがもっと融合していかないといけないと思います。
メディアの話といいますか、コンテンツの話になった時に、「最強のコンテンツ」とはアドとしても成立してて、PRとしても成立しているものなんですよ。例えば、広告脳の人がコンテンツを美しくつくるんだけども、そこには「ぜんぜんPRじゃないです」というものがある。それをどこに置こうが絶対広がりませんという。お金かけてビューティフルにできているという。
PRの人は、どうやったら情報が広がっているかという知見はわりとあるわけです。メディアが取り上げるだろう、こういうふうにしたらインフルエンサーは紹介してくれるだろう、など。ただ、やはりPRの人はクラフトに弱い。例えば、動画をつくるなど、コンテンツを具体的に生成するのに慣れてないんですね。
「すごくクラフト的にハイクオリティのものができるスキルと、どうやったら拡散していったり広がっていくかという勘所と実体験がありますよ」とか、そういうことがガチっと制作現場レベルとか企画の段階で交わると、キャンペーンだったりアドがPRとしてすごい融合するとか。まだまだそこはわからないと思うんですけどね。
司会者:海外だと大きなPR会社の中に、クリエィティブチームを持ってたりしますよね。
本田:そうですね。残念ながらそこは海外のほうが進んでいるかなという気がしますよね。
司会者:私も取材でお話をうかがっていると、「広がるものをつくりたいから、最初からPRの知見のある人に入ってもらうようにした」というケースがどんどん増えているなと思います。
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