2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
尾原和啓×佐渡島庸平(全1記事)
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(企画の)3週目ということで佐渡島さんとやっていきたいんですけれども、そもそもこの仕組みでいいかどうかをチューニングできるギリギリ最後なので、そのへんのご相談とかしたいです。
なにしろ今回は『モチベーション革命』3章、まさにチーム編・組織編の話ですね。偏愛やストレングス・ファインダーとか、そのへんの話を徒然に10分ぐらいお話しできればと思っています。
佐渡島庸平氏(以下、佐渡島):はい。
尾原:最初のご相談が、これのやり方なんですよね。もともとは西野(亮廣)さんの『革命のファンファーレ』で、「ビジネス書はもう全文公開しても大丈夫だ」と彼は言っていて。
それは公開する場所を散らせば、その情報を取るコストが気になるから、人はおもしろかったら、やっぱりすぐ読みたくなるよねというやり方です。
僕はそこにLINEマンガ形式で、要は1週間ごとに限定公開していく、前のやつは1週間で読めなくなることをやって、僕の大好きな友達のブログやnoteに公開していこうと決めました。
このことを相談したら、けんすう(古川健介氏)がやっぱりすごいおもしろいこと言ってくれたんですよね。けんすうが言ったのは、「いや、なんかマーケティング的な頼り合いだけだと、あんまりおもしろくない」と。
「やっぱり今の頼り合いはお互いのブランディングの頼り合いだ」。つまり、「お互いそれぞれ持ってる強みが、これを通して強化されるのがいいなと思っている」と言っていました。
それは、例えば前田裕二さんの『人生の勝算』を西野さんがばらまくのは、前田さんのピュアさに共感して、西野さんがちょっと露悪的でいいことをお互いの強みのキャラを生かして仕組み化する。
だからすごくフィットするから、結局あれを見た人が「西野さんっぽいな」「前田さんっぽいな」ということが外に広がるので、そうするとお互いがどんどん強みが生きる。漫画のキャラ化をしていくみたいなところがありますね。
尾原:こういうところを含めて、僕も実際試してみようと思ってるんですけど。こういう仕組み自体、佐渡島さんが最初に聞いてどう思ったとか、いつものようにどんどんお願いします。高校の後輩なんだけど、なぜかいつもダメ出しされるという、この関係のなかで(笑)。
佐渡島:いえいえ(笑)。
尾原:率直な感想を聞きたいんですよね。
佐渡島:今のけんすうさんの話って、リアルなときって、ある業界でうまくいってることが横の業界に展開しづらいんですけど。ネットだとトライアンドエラーが早いから、ある業界でうまくいってることが、結局、相似形で全部ほかの業界でも適用できるということが起きるんですね。
尾原:なるほど、なるほど。
佐渡島:それで、けんすうさんの話って、ライブの対バンとか前座と同じ仕組みなんですよ。
尾原:ああ! え、どういうこと? ちょっとそれ教えてください。
佐渡島:ライブって例えば、今、ミスチルが若手のすごくいいのと組んでツアーを回ってますよね。
あれってミスチルファンからしてみると、いつもとライブがちょっと雰囲気が違って楽しいってなるし、もう片方のバンドのファンからしてみると、ミスチルと同格に並んでいることで自分たちの応援しているバンドの格が上がってうれしいし。
同時にミスチルも聴けてうれしい。だからミスチルは相手の格を上げて、相手のお客さんの一部に両方のファンになってもらう。
尾原:実は取り込んでいるという。
佐渡島:そうです。お客さんを入れ替える作業があるんですよ。
尾原:なるほど、なるほど。
佐渡島:というふうにしてコミュニティの中の人を、対バンを組むことによって、ちょっとずつ交換していく。ちょっとずつ交換していきながらコミュニティの中に新しい風を入れてコミュニティを大きくするのが、前座とか対バンによって機能してるんです。
尾原:なるほどね。でも、そういう仕組みって実は漫画の連載とかもそうですよね。
佐渡島:そうです、漫画の連載もそうです。
尾原:『週刊少年マガジン』の中に新人を入れていきます、みたいのもそうですね。
佐渡島:最近のモーニングの例だと『島耕作の事件簿』とか。
尾原:ああ、そういえばそうですね。かけ算を、クロスを入れていくのが最近の流れですもんね。
佐渡島:そうです。というのが今どんどん起きやすくなってるんですよね。
佐渡島:だから先ほどの、それぞれがオウンドメディアみたいなかたちでブログとかでメディアを持てるようになってきてるなかで、そのメディア同士でコラボをするのは基本的にはそれぞれのファンの入れ替え、コミュニティの活性化なんですよ。
尾原:そうですし、 構造的に言えば、ビジネス書のほうが知的な情報の刺激を提供するから、対バンだとどうしても「前の人の音楽。それで、佐渡島さんの音楽」みたいな感じになるけど、こういう知的交配が本当は起きるはずですもんね。
佐渡島:そうなんです。そう考えたときに、尾原さんと西野さんとかとなにが違うのかっていったときに、尾原さんはコミュニティがまだ存在しないから、まず全文無料公開ということ自体は価値がない。
尾原:そうですね。うん。
佐渡島:全文無料公開しても人が来てくれないので。
尾原:はいはいはい。確かに、確かに。
佐渡島:西野さんがこの前とか全文無料公開しましたけど、その何年も前から、西野さんはファンと直接手渡しでチケットを売ったりとかをしていて。
尾原:そうですよね。しっかり蓄積をしてますもんね。
佐渡島:コミュニティを作ってるんですよ。自分のコミュニティができているところに全文無料公開すると、コミュニティの中には入っているけど、買うほどじゃなかった人たちが興味を持って拡散して買ってくれて。たくさん人が買っている様子を見て、コミュニティの外の人も買ってくれる状況が起きるんですね。
だから尾原さんが今すぐ全文無料公開をしてもそこまでのバズにはならないんですね。
尾原:なるほどね。
尾原:そのバズをまず、仲間がいるから、全文公開ということに仲間が騒いでくれる。
佐渡島:そうです。今、尾原さんがやらないといけないことは、ネット上に自分のコミュニティを作っていくことで。全文無料公開は本を売るためじゃなくて、自分のコミュニティを作るための……。
尾原:なるほど。
佐渡島:コミュニティに使ってもらう会話の種としての全文無料公開なんですよ。売上をあげるよりも、このあと数冊の本をどうやって広げていくための準備を始めるってことなんです。それで『ITビジネスの原理』とか『ザ・プラットフォーム』とか。
過去の本の著作物のデジタル周りの権利とかを作家が全部持っておいたほうがいいのは、コミュニティを作るときに、常に新作しかコミュニティに出せないというふうになると、すごく苦しくて。
「今からネット活動するぞ」人が作家活動を20年間してるんだったら、過去のコンテンツは全部コミュニティの人たちが盛り上がれる素材にできたほうがいいよという思想だから、著作権を一括管理する必要があるんですね。
尾原:なるほど。それでコルクの話なわけですね。
佐渡島:そうなんです。
尾原:実際おっしゃるとおり、結局コミュニティの人たちがいかにちゃんと自分のもので遊んでくれて、それが広がっていくかが仲間づくりになっていくから、そこの種を提供したいってことですよね。
佐渡島:だから、僕だったら『ITビジネスの原理』と『ザ・プラットフォーム』をまず無料公開するんです。それでガーッと議論が起きるようにしていって、その延長線上として『モチベーション革命』がある見せ方をする、というふうにやっていく。
というので、それがまず自分のコミュニティを強くしていく方法なんですけど、同時に、先ほどけんすうさんが言ってたような、コラボをしていくかなと。
LINEマンガというと、LINEというプラットフォーム上に日常的にマンガを見にくる、ゆるーいコミュニティがあるんです。だから無料連載が機能するんです。
尾原:それで成り立つんですよね。
佐渡島:だから、ほかの漫画書店とかがすぐに「おお、無料連載したらあんな売れるんだ」というふうに思って無料連載を出版社に取りにくんですけど、取りに行くと惨憺たる結果になるわけですよ。
尾原:なるほどね。だから結局さっきの対バンと同じで、お客さんが活性化する信頼の交換の裏側には、しっかりしたコミュニティがあって、そこのコミュニティを活性化し続けるためのネタをどれだけ投入できるか。でも、実は過去にネタっていっぱいありますよね。
だから、そういう意味で言うと、僕っていろんなところに連載はしてて、連載のときに著作物の再利用権を一応確保してるんですよ。『ITビジネスの原理』だけは処女作だったので、いろんなこともあってそこは難しいんですけど、そのほかは提供できるし。
実は今回の『モチベーション革命』って、若い方に向けて「自分の心のエンジンってなに?」と説く本ではあります。
4章とか見ていただくと、もともとずっと僕「ネットが人を元気するよね」「自分らしくするよね」っていうことを言ってるので、ネタ自体はけっこういろんなところにあるので、そこをちゃんと棚卸しすることが1つ目と。
今言われてみて、あともう1つは、やっぱりコミュニティ自体を僕自身がきっちりもう一度温め直すということですよね。実際、宇野(常寛)さんとラジオに出演して、人生相談をやったりして、やっぱり一部の方とかは僕のことを好きでいてくれる人とかもいるし。
そこをきちんと確認した上で、先ほどの、ミスチルの対バンみたいなものをやるんですよね。西野さんとかとコミュニティを交換したりというところを、きっちり育み合っていくことですよね。
佐渡島:今の尾原さんの活動の仕方って、他人のコミュニティに行ってガーッとおもしろい話して。
尾原:そうですね。「おもろかったー」ですね(笑)。
佐渡島:わーっとおもしろい話してというトリックスター的な動きなんですよ。
尾原:そうですね。どうしても僕それが好きなんでね。
佐渡島:自分の核となるコミュニティがなくて。
それで昔の出版の構造も、雑誌というコミュニティがあって、そこに作家さんがお邪魔しますという感じで、作家個人のコミュニティを管理してなかったんですよ。
このコミュニティを管理するのがけっこう大変なビジネスだったわけですけれども、それがネットによって簡単になったので、作家は個人で管理した方がいい。
尾原:明らかに簡単になったし、なによりもコミュニティの中にいるメンバー同士が創発して、どんどん二次的・三次的に起こしてくれるようになったし。なるほど。
佐渡島:っていうことですよね。だから僕は、まずは尾原さんは可視化されるコミュニティがまだできていないので、その前にやることは、コミュニティがあるところに行って、そこの人たちに「僕のコミュニティに入りませんか?」って声をかけることなんですよ。
だとしたら、NewsPicksであったりcakesだったりとかで、無料連載をそこでさせてもらう。
尾原:確かに、確かに。そうですね。
佐渡島:全文公開をするときにnoteは、もう自分のコミュニティがある人なんですよ。
尾原:確かに。ちょっとそれやります。いろいろ逡巡してたけどやっぱやろう。うん、そうですね。
結局そういうふうに、実際コミュニティの可視化が起こると、次になにが起こるかというと、今言ったみたいな対バンみたいのが起こるし。もともとマガジンという漫画だったり『モーニング』っていう漫画だったり、ないしは『文藝春秋』という塊も、実はコミュニティだったりするし。
今回とくにわかったことって、やっぱり同じ時代に同じ方向を向いている仲間がいっぱいいて、やっぱり似たような志向性の本を書いている人がいっぱい出てきているんですよね。
それが、きっちりそれぞれの下にコミュニティがいると、今言ったような対バンという連鎖反応が起きやすくなるので、なによりもやっぱりユーザーにとって、「やっぱりこの人もこの人も仲間いたんだ」みたいに勇気づけられますよね。
やっぱり、ちゃんとコミュニティやろう。僕、情報を発信するのは得意なんですけどね。
尾原:あ、1個だけあと相談で。僕、自分が発信するものに興味持ってもらえるのは、すっごい好きなんですけど、自分に興味を持ってもらうのすごい嫌いなんですよ。
佐渡島:ああ、わかります。
尾原:どうすればいいですか?
佐渡島:自分に興味持ってもらうのは別に関心じゃないってことですよね。
尾原:そう。だし、むしろどっちかというとコミュ障なので、バックパッカーなので自分から声をかける人間にはすごい大丈夫なんですけど、向こうから声をかけられるとすごいビビるんですよね。だからコミュニティに組み込めない。
佐渡島:わかります。僕もストレングス・ファインダーで、自我20番ぐらいですから。
尾原:おっしゃるとおり。同じ同じ(笑)。
佐渡島:この前ヤフーのインタビューで、どうやったらコミュニケーション能力が上がるかって話をして、僕がこういう会話が得意なのは、僕がふだん考えてることを質問されてるからなんですよ、という話をしました。
尾原:そうですよね。
佐渡島:自分の考えてることをしゃべる分には、いくらでも誰とでもしゃべれるんだけど、僕がふだん考えていないことをしゃべらなきゃいけない雑談となると、急に無理になるんですよ。
尾原:同じ(笑)。そうなんですよね。でも、どうしてもコミュニティ持つと、僕が話していることじゃなくて僕に興味持つ人って増えちゃうじゃないですか。そこってどううまくコントロールすればいいですか?
佐渡島:いや、それはコミュニティを作るときに、なにをもってコミュニティを作るかを旗印を明白にすることがすごい重要です。
だから『宇宙兄弟』のファンコミュニティのすごくおもしろいのは、毎回は、イベント会場に小山宙哉がいなくてもいいのです。小山さんがいるから話せる話と、いないから話せる話の両方が存在する。
尾原:なるほど。おもしろい。
佐渡島:だから尾原さんが考えている「次の世の中ってこうなるよね」というお題をみんなでしゃべるときに、尾原さんも答えを知らないんだけど、尾原さんがいると答えを知ってるふうにみんなが感じて議論が進まない可能性もある。
尾原:そう、みんな僕に斬られると思ってコメントしない問題があるんですよね。なるほど。
佐渡島:そう。だから必ずしも、コミュニティを作ったときに自分が中心にいても、その矢印自体が自分に向かないようにするってことはできるんです。
尾原:そうですね。だから極端な話、最初コミュニティできたときに「2週間ぐらい僕入りません」と。「もしコミュニティの中で『こんなのが煮詰まってきたので、尾原さん入ってくるとおもしろいと思いますよ』って言われたら入るよ」みたいなものでもいいわけですよね。
佐渡島:さすがにそのやり方だと誰かファシリテーターがうまくいてくれないと回らないので、誰かが代わりのファシリテーターを見つけられたらそれはありだし。
そうじゃなかったら、はじめの1ヶ月間とかでもいいから、尾原さんがいろんな会話のファシリテーションしかしないというのを徹底して。
尾原:そうですね。影を消す、ファシリテーターとしてはやる、という話を(コミュニティの参加メンバーに)することですね。
なるほど。すげえ勉強になりました。ようやく自分もコミュニティを持てる勇気が持てました。なんか結果的に、対談じゃなくていつものように相談になってしまいましたけど、本当ありがとうございます。
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