2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
尾原和啓×西野亮廣(全1記事)
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尾原和啓氏(以下、尾原):『革命のファンファーレ』、大ヒットおめでとうございます。
西野亮廣氏(以下、西野):『モチベーション革命』、おめでとうございます。ヒットメーカーですね。毎回ベストセラーになってますよね。
尾原:ありがとうございます。一応Kindleでは1位をいただいているんですけれども。今回、実はめっちゃ反省していることがありまして。
西野:ほうほうほう。
尾原:今回の僕の本は、「比較的インターネットに苦手意識の薄い若手の方々に、変化の時代でも勇気を持ってもらおう」と思って書いたのだけど、結局、今1位になっているのって、すでにインターネットに詳しい人のおかげだけ、なんですよ。
西野:なるほどなるほど。
尾原:「これをもっともっと広めていかなあかん!」と思っていて。
以前、ご一緒させていただいた楽天主催のトークイベントで、インターネット上で絵本を無料公開したお話をうかがったんですけれども。それで『革命のファンファーレ』を読んでいたら、さらにラディカルで、「ビジネス書も無料公開できる」って書いてあるから。
西野:尾原さんがその部分を切り取ってメッセージを送ってくださいましたよね。絵本の場合は、情報と物質の価値が近いですから。
尾原:親が子どもに読み聞かせるには、「本」が必要ですからね。
西野:絵本はコミュニケーションツールとして、「本」という物質が必要だから、ネット上で情報を出しても、ちゃんと絵本を買ってくれる層がいるだろうという、そこまでの予測は立つと思うんですけれど。一方でビジネス書はどうか? ビジネス書を無料で全編公開したら、ビジネス書は情報が命だから……。
尾原:そう、中身を出すしかないじゃないですか。
西野:中身を出したら売れるのか、どうなのか、っていうところで、結局「売れる」っていうことになったんですけれど。だから、「情報を出しましょう、そして散らしましょう」と。
例えば、「1章は堀江さんのメルマガ、2章はキングコング西野のFacebook、3章は誰それさんのブログ」という感じで、情報を公開する場所を散らしてしまえば、その情報を集めるコストよりも紙の本を買うコストの方が安いから、単純に売れるだろうと。
尾原:そうですよね。しかも、ホリエモンのブログで1章を読んでしまえば、西野さんのブログで続きを読みたくなるから。
西野:「もう、紙の本買っちゃった方が早い!」っていう。紙の本がまとめサイトのような役割を果たす。
尾原:それって、実は僕、『ITビジネスの原理』の時にも書かせてもらっていることとすごく似ていて、iモード育ての親の夏野さんが、「100円ライターの議論」っておっしゃってたんですよ。
これはなにかというと、結局、人間は家にどんなに高価なジッポライターがあったとしても、タバコを吸いたくなったときに、家までライターを取りに帰るやつはおらんと。コンビニで100円ライターを買うてしまうやろ、と。
僕らがiモードをやる時に、「情報なんて無料になっていくから、誰がお金を払うんだ」という話もあったんですよね。けれど100円ライターのように、情報が欲しいとなった時に、「すぐ100円あったら買えるで」っていう状態を作っておけば、「お客さんは買うてくれるで」って言って、始めた。
そしたら案の定、「渋滞の抜け道どこやろ」とか、東京でいうと、「地下鉄で乗り換えるのは大変や」とか、「芸能ニュースでスキャンダルがあった時に人より先に知りたい」とか。そこで頑張ってネットで探したら、見つけられるかもしれないけど。
情報がどこにあるかを探すコストもそれなりやし、それがほんまもんなんかどうか、わからへん。それを疑うのもコストやから。そこに人はお金を払うっていう話で。
でも、悔しいのが、自分はそれをわかっていたはずやのに、西野さんに言われて「ハアア!!」って(笑)。
西野:なるほど(笑)、情報としては頭に1回入っているわけですもんね。
尾原:ビジネス書はやっぱり中身が命と思っている自分がいて。実際にやったわけですよね? 西野さんも。
西野:やりました。『革命のファンファーレ』は、昨日発売になったんですけど、もう内容に関しては全部どっかに出てます。
尾原:マジですか!
西野:Facebookとかブログだとか、場合によっちゃ僕の講演会の動画だとか。回収すれば全部集まるんですけれど、集めるのはムズイと思います。7~8万字だったかと思うんですけれど。
僕のニュースってけっこういっぱいあるから、そこからあの8万文字を回収するのはほぼ不可能なので、だから売れるだろうと。
最近、堀江さんとずっと言っているんですけれど、もう「本は売れる」って言うてるんです。「本は売れるもんなんだ」と。で、売れてない本があるとするならば、それはなにか売り方が故障している。
出版社の人がよく「本は売れない」って言っているのを聞くけれど、それは売り方を失敗しているだけの話で、「本は売れるだろう」っていうところからスタートしているんですね。すると、売れていないならなにか原因があるなと考えた方がいい。売り方っていろいろ見つかってきますよね。
尾原:結局、中身はあるけど、中身を伝えるための導線だったりとか。
西野:あと、『革命のファンファーレ』にも書いたんですけど、本屋さんで本が売れない理由は、お客さんがお金を持っていないのではなくて、本を買うきっかけがない。
尾原:そうですね、1,500円くらいですからね。
西野:はい。本屋さんで本を買っても、例えばキャバクラ嬢にシャンパン入れるってなったらキャバクラ嬢の支援になる。最終的に「俺がお前を助けてあげたんだぞ」って言えるけれど、本屋さんで本を買っても自分のポイントを上げることはできない。
尾原:ああー、はいはいはい。
西野:だから本屋さんが本を売るきっかけが、本屋さんには、あまりにもない。
尾原:それ『革命のファンファーレ』の最初の方の話に近いですね。
西野:最近、絵本で試しているんですけれど、「えんとつ町のプペル」って、日本だと2,000円なんですね。でも僕のサイトで売られている値段は2,500円なんです。
尾原:ええっ?
西野:だから、ぼったくっているんですよ(笑)。500円。
尾原:(笑)。そうですね、はい。
西野:じゃあこのぼったくったもんをなにに使っているかというと、利益分で「えんとつ町のプペル」を買って、世界中の子どもに配るんです。すると人は2,000円の本と、海外の人に配られる2,500円の本、どっちを買うかといったら、けっこう2,500円で買うてくれるんですよ。
尾原:選んじゃいますね。自分のためだけじゃなくて、人のためになる。
西野:つまり人は安いものを買うのではなくて、「買う理由があるもの」を選んでいるんです。だから、モノを売ろうと思ったら、買う理由を何通りも作ってあげるという。
例えば5,000円のものが1万円になっても、値段が上がっても後者を買う理由の方が勝っていたら、売れるであろう。そうすると、売り方がどんどん見えてきます。
尾原:どうしても今の人って、今は本があふれているし、本を買う場があるから、せいぜい買う場所の見せ方の工夫だけを考えるんだけど。
そうじゃなくて、そもそも買う理由だったりとか買う楽しみとか、そっちにさかのぼって「ちゃんと作ろうよ」(が重要)だし。もっというと、どうやって仲間になっていくか、みたいな。
西野:ああっ、どっちかっていうとそうですね。お客さんを増やすよりスタッフを増やした方が、売上が上がる。
尾原:っていうお話ですよね。それをやっていこうと。
西野:はい。
尾原さんが今、『モチベーション革命』の第1章をまるまる公開したんですよね。
尾原:そう、西野さんのおっしゃる通り、とりあえずやってみようと。
西野:すごくいいと思います! 第1章まるまる公開するの。
尾原:西野さんのブログでもうドーン!って。無料公開。
西野:第2、3章ってどうするんですか? それもやっぱり公開していくんですか。
尾原:そうです。だいぶ決まってきているんですけれども、2章は「偏愛」とか偏った趣向の話をしているので、これはニッポン放送アナウンサーのよっぴーさん。
3章はコルクの佐渡島さんのところで。4章は、前半が経済的な話なので、『MBAより簡単で英語より大切な決算を読む習慣』というベストセラーを書いたシバタナオキさん。ラストは広告的なマーケティング的な話に近くなるので、田端信太郎さん。
西野:ああ~、面白いですね。
尾原:西野さんとお話していて「うまいなあ」と感心させられるのが、西野さんは他の人を利用しているように見えて、利用しているわけじゃないんですよ。
僕、西野さんをプロレスラーみたいな感じに思っていて。相手の必殺技を引き出そうとするんですよね。相手の必殺技で見せ場所を作った上でさらに勝つ! みたいな。でもそれって相手の強いところを出すから、相手のことを好きになるじゃないですか。
西野:本当にそうですね。
尾原:だから前田裕二さんの『人生の勝算』の1章を無料公開したのは、前田さんのピュアさというのと、西野さんのピュアなんだけど「俺ちょっと仕組みわかってんねん、えへへ」という、この2人の強みのキャラクターが生きるから、両方が生きるっていう感じですよね。
西野:前田さんの時に改めて思ったんですけれど。僕、最近、CMとか極力断るんですよ。お金をもらってなにかを宣伝するっていうのがちょっと。そうじゃなくて、いいものは、お金をもらわなくてもとにかく宣伝するっていう。
尾原:ああ! そうですね。
西野:すると、前田さんの本で本当に面白かったのが、「本当に面白いですよ」っていうことを自分のブログまるまる割いて、1章をまるまる公開して、その前田さんの本が面白いとなった人は、「西野さん、教えてくれてありがとう」っていってくれる。
尾原:感謝の連鎖ですよね。
西野:本当に面白いモノを紹介したら、それがちゃんと自分のポイントになるっていうことがわかったので、「あ、もうこれでいいな」って。
尾原:多分、共感って、渡すとこっちにもプラスになるんですよね。そこがぜんぜん違うところで。僕とかは、どちらかというと、もともとGoogleとか、電通の子会社だったオプトとか、広告の中にいた人間だから。
西野さんのやることが、僕らの前提条件をどんどん壊していくから(笑)、楽しくてしょうがなくて。どうせ壊しにいくのなら、僕も踊る側になりたいなって。
西野:ぜひぜひ。ありがとうございます!
尾原:こちらこそありがとうございました。
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