2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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谷本有香氏(以下、谷本):プレゼンテーションはやっぱり総合芸術だと思うのです。
澤円氏(以下、澤):ええ。
谷本:もちろん表現力としての言葉の使い方であったり、しゃべり方であったり、アクションであったり、パワポの見せ方であったり、それも重要なのです。しかし、本当にそれはプレゼンのごく一部であって。構成も、入ってくるときの雰囲気も、アイコンタクトも必要で、すべてオーディエンスの方はご覧になっているのです。
ですから、「プレゼンがうまくなりたい!」という人は、まさにしゃべり方やスライドといったテクニック論に陥りがちなのですが、そうではないところに気をつけていくことが肝要だと思います。
澤:そうですね。よくプレゼンテーションの講習の中で言われるのが、「しゃべっているときに緊張をするようなら、目の前にジャガイモが転がっていると思え」「話しかける相手の鼻を見ろ」「顎を見ろ」などというアドバイスがあるのですが。僕、すごいこれ……ダメなんですね。
だって、人はジャガイモじゃない。ジャガイモに話しかけることなんてありませんよね? 話しかけたことがある人というのは相当変わった人じゃないかと思うのですが。ジャガイモに話しかけても、プレゼンテーションのモチベーションは上がらないのですよね。
やっぱり人に話しかける。そうするとなんらかの形でフィードバックをもらえるからこそ、プレゼンテーションすることに対してのモチベーションを持つことができる。
人に対して話しかけるのであれば、その人にとってその時間が良い体験になるように考えたほうがいいだろうし、そうすれば結局プラスのフィードバックが返ってきて、自分にとっても成功体験になるのですね。そして、成功体験のバリエーションが増えてきたのです。
結局プレゼンテーションというものは、アウトプットしているように見えて、オーディエンスからフィードバックをもらうことで、自分がすごく成長させてもらえるといった側面が多いのですね。
谷本:私、日本人はプロファイリングを重要視する必要があるのではないかと思うんです。
FBIの方がおっしゃっていたのは、人をプロファイリングするし、されるのだと。とくにプレゼンテーションで言えば、私の場合は自分の企業のなにかを買ってもらうというプレゼンをする機会はないのですが、なににおいても、なにかを伝えたい時、一番重要なのは信頼してもらうことですよね。
澤:そうですね。
谷本:信頼していただくためには、なにをすればいいのか。そのプロファイリングが非常に日本人は弱いのだそうです。それはどういうことかというと、みなさんが笑っているつもりでも、ぜんぜん日本人の笑いは笑っていないのだと。引きつった笑いに見えるから、自信がない、信頼おけないと思われる。
でも、外国の方々はすごく笑顔がうまいですよね。あれと一緒で「本当にわかりやすくきちんと笑って『この人は信頼がおける人なんだ』『好印象を持てる人なんだ』という、笑顔をきちんと見せなさい」「歩き方も、きちんと『この人は何百万、何千万とお金を持たせてもいいぐらいの信頼に値する人なのか』ということを考えながら歩きなさい。服装も同じだ」とおっしゃっていて。
まさにプレゼンテーションというのは、そういったすべてをプロファイリングされる場じゃないですか。
ですから、澤さんのことで言うと、ルックスやしぐさ、言葉の選び方もそうですが、入った瞬間から「この人は絶対に面白いプレゼンをしてくれそうだ」とみんなを惹きつけ、その集中力でもって、ドッと笑わせることができる。そういうことがプレゼンの天才と言われる所以ですよね。
澤:見た目のギャップが大きい、というのはもちろんあります。要は「こいつは何者なんだ」と言う疑問から入って来てくれているからギャップを作りやすいんですね。
ちょっと歩き方で思い出したのですが、この間パリに行ってカミさんと驚いたのが、全員がとにかくオシャレなんです。めちゃくちゃオシャレ。
でも「パリの人はやっぱりおしゃれだな。どうしてだろうな?」と分析をすると、決して高い服は着ていないのですよね。場合によってはH&Mだったりもするのですが。高い服を着ているのではなく、安くても身体にピッタリ合っているかどうかをとても大事にしているのですね。きちんと自分の体型を理解していて、それにマッチする服を選んでいるというのがまず第1点と。
もう1点が、歩いている姿が明らかに他人から見られても恥ずかしくない歩き方をしているのですね。要するに、歩き方が美しいのです。
そういった話と、あとは大人が大人であることをすごく楽しんでいるという話を聞いたのですね。大人であることを楽しむ、人生を楽しんでいるということが、結果的にはプレゼンスという形で外に出ている。だから、立ち姿が美しく、歩き姿が美しく、結果的にちょっとオシャレに見える。そういうことなのですね。
これってきっとすぐにできることではないですよね。一朝一夕にはできなくて、ふだんからずっと意識していないとなかなか身につかないものだと思うのです。だからパリというのはもう本当に全員がオシャレな街だし、全員がその意識がすごく高いレベルで維持されている。
だから、他人の目を気にするというと、日本人はちょっと違う意味に感じてしまうのですが、そうではなくて、他者に対して見せているという意識を持つことが、結果的にはああいったいい姿を生み出すのではないかと。それをちょっと思い出しましたね。
谷本:楽しむというのは、すごく重要なポイントだと思います。例えばプレゼンの時も、いかにもビジネスライクにやっている方と、本当に楽しそうに笑っている方とでは伝わり方がまったく違うわけですよね。
澤さんはプレゼンをいつも楽しそうにやっていらっしゃるじゃないですか。そのワクワク感が会場に伝わるんですよ。
実は私自身も金融経済のニュースを長くやっていて、普通に淡々とやっていた時期があったのです。冷淡に刻々と数字を伝えるという。そうすると、もちろん伝わることは伝わるのですが、ある時から「番組はエンターテイメントだ」だと割り切って、エンターテインする、自分も楽しんでやるようにし始めたら、金融経済の堅いニュースなのですが、視聴率がものすごく上がったんですよ。
人というのは、楽しいものや、なにかおもしろそうなことの周りに集まるものなのです。ですので、まず自分自身がプレゼンを楽しむという姿勢で臨むのがいいと思うのですよね。
澤:そうですね。気分は伝染しますよね。例えばそれが……今はブラウン管じゃないな、電波を通じて、モニターを通じて、そういう気分や雰囲気というのが伝わっていく。そこが大きな違いであって。とくにテレビの場合、空気を共有している状態ではないですよね。
そこは実は、苦手な部分でして。テレビは苦手なのですよ。まず慣れていないというのもありますが、テレビカメラがあって、その前でしゃべるのがちょっと苦手なのですよね。
どうしてかというと、オーディエンスの反応というのが、その場でダイレクトに来ないじゃないですか。だから「この人はなにを考えているのかな?」ということがわからない状態でしゃべらなきゃいけないので、「自分はもしかして世界で一番滑っている人間なんじゃないか」と思ってしまうのですね。そういうことはなかったですか?
谷本:そうですね。確かにもともとがカメラにしゃべることからスタートしているので。
澤:ああ、そっか。そちらからですもんね。
谷本:そうですね。ただ、確実に「こういう人」という視聴者像を自分の中で作って、その人に向かってしゃべってはいます。その人の反応を意識しながらしゃべっている感じかもしれませんね。
澤:やっぱり時差があるかもしれないけれども、オーディエンスをイメージするということなのですね。オーディエンスをイメージしながらしゃべると、どうなるのか。結局オーディエンスをイメージしないでやるというのが、いわゆる独りよがりなプレゼンテーションですよね。
澤:あとは日本人がすっごく陥りやすい話なのですが……。これは会場のみなさんに聞いてみようかな。営業系の仕事をしている人はどれぐらいいらっしゃいます? 営業系の仕事をしていますよという方。
(会場挙手)
あ、そんなに多くはないですね。エンジニア系の仕事をしている方はどれぐらいいらっしゃいますか? エンジニア系。
(会場挙手)
ありがとうございます。
営業系のことをやっている人も、エンジニア系でやっている人も、わりとこれは共通しているのですが、主語が製品になるプレゼンは基本的に全部つまらないです。自分が売っているものについてなにかをしゃべるということをやっているのは、だいたいつまらないですね。
どういうことかというと、「私の会社の製品はこうです。この製品はこういうことができます」というように、製品を主語にしているものは取扱説明書の朗読になりがちだからです。
そうではなくて、「あなたはふだんなにかをしていますか?」、それに対して「例えばこのようにやってみたら」と具体的なエピソードを挟む。そういうことを最近すごく意識してプレゼンテーションをやっていますね。
やっぱり相手側の視点というのをどれだけ意識できるかと言うことが、プレゼンテーションをやっていても活かせると思うので。
谷本:そうした意味においては、やっぱり社長さんなどでも、プレゼンテーションのうまい方というのは、肩書きを超えてしゃべりますね。つまり社長としてしゃべるのではなくて、例えば、ハワード・シュルツはどうであるか、それをスティーブ・バルマーはどうなのか。そういうことですね。
だからよくプレゼンでは「Weでしゃべりましょう」と言うのがありますよね。でも、私はWeの前に「I」があると思うんですよ。
どうしてかというと「この人はどう思っているのか」、「この人はどう信用に値するのか」、「この人を自分は好きになってもいいのだろうか」というところを見せるために、Iでしゃべる。それで、きちんと相手とコネクトができたところで、Weでしゃべるということで、成功されている方が多いのですね。
澤:なるほど。やっぱりプレゼンテーションの主体は人にあるということですね。ありがとうございます。
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