2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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澤円氏(以下、澤):今回はこうして特別な場においでいただく形になったわけですが、そのわりに打ち合わせはせいぜい2秒ぐらいしかやっておりません。究極のぶっつけ本番という。「まあどうにかなるだろう」というような感じでやりたいと思います。
大概の方は知っていると思いますが、有香さんのことをご存じない方もいらっしゃるかもしれませんので自己紹介をしていただいてもよろしいでしょうか。
谷本有香氏(以下、谷本):はい。Forbes JAPANに去年2月からジョインしまして、その前は、十数年間にわたって金融経済専門のキャスターとコメンテーターをしておりました。ですから、そうですね。その畑が長いですかね。
澤:そうですね。テレビでご覧になった人もいらっしゃるのではないかと思いますが。でも、最初からテレビのアナウンサーをやっておられたわけではないんですよね。
谷本:そうなんです。なんと最初は……本当に歳がバレそうですが、山一證券という会社におりました。元4大証券の一角です。そこで経済キャスターというものを社員さん向けにやっていたのです。それが最初のキャリアスタートでした。
澤:そこで社員向けのアナウンサー、キャスターをやっている延長線上でテレビに出演されるようになり、最終的に今はForbesでやられている。すごくおもしろいキャリアの流れだなと。
澤:キャスターもそうですが、今はそれこそ、とにかくいろんな方にインタビューをされています。そのインタビューをされた相手というのが、ものすごく有名な方が多いのですよね。
谷本:本当にすごい方たちのインタビューをさせていただいておりまして。これまで3,000人ぐらいの方々にしてきたのですが。
澤:3,000人。
谷本:そう。例えばすごい方ですと、スターバックスの創業者であるハワード・シュルツさん。イギリスのブレア元首相。『ハーバード白熱教室』で有名な、マイケル・サンデルさんなど。
澤:白熱教室の。
谷本:まだ「マイケル・サンデル? 誰?」という時期に映像でインタビューした最初の人間が私だと思います。
澤:そうなんですね。何年ぐらい前ですか?
谷本:あれは、どのぐらいですかね、もう10年以上前かな。
澤:10年ぐらい前。
谷本:そのぐらいにはなるかもしれませんね。また、最近ですと、Apple創業者の1人であるスティーブ・ウォズニアックさん。
澤:ウォズニアックさん。最近よくあのポスターでね。
谷本:ねえ。「はたらいて、笑おう」でお見かけするあの方ですとか、とにかくものすごい面々にたくさんお会いさせていただきました。
澤:すごいですね。
澤:やっぱりそういった方々は……今回の本の内容はプレゼンテーションですから、その辺りにも触れていきたいと思うのですが。今お話されたような方々はやっぱりアウトプットが非常に派手というか、人を惹きつけるものがあるのでしょうか?
谷本:それは本当にそのまま、今回の主役でいらっしゃる澤さんにお聞きしたいのですが。私が思うに、澤さんはものすごく優秀で天才的なプレゼンターですから。
澤:そんなことないですよ。
谷本:思うのですよ。私自身、いろんな方のプレゼンテーションを拝見してきた中で、やっぱり「プレゼンテーションの上手い・下手は技術ではない」というのが結論です。人間性なのですよ。人間性でどれぐらい惹きつけることができるかなのです。そういったところが重要だと思っています。
澤:まあ、僕の人間性はとりあえず置いておいてですね。ただ本の中でも書いたのですが、話し方でどうにかカバーできると勘違いしている方が多いですね。
話し方によってとれる点数は、もとが仮に100点満点だとすると20点がマックスだといいます。やっぱり8割はほかのところで決まっている。もっというと、その8割はステージ上でしゃべる前にもうだいたい決まっちゃっているのです。一応、それが僕の持論なのですが。
ですから、お会いになられた方というのは、おそらくもうその8割部分では、通常の人間の持ちうる8割のボリュームをはるかに超えている方々だと、そういうことかなと思うのです。
谷本:いわゆる社長さんというのは、必ずしゃべりがお上手な人が多いですよね。定期的にいろいろな方の前でお話をされているから。ですが、私の中で今まで3,000人にお会いした中で印象に残っている人というと、本当にすごく少ないんです。
澤:そういうものなのですね。
谷本:その数少ない人たちというのが、いわゆる私がトップ・オブ・ザ・トップと呼んでいる方たちです。
つまり、プレゼンの上手さは、それによってやりたいことやビジョンがどれだけ人に伝わるか、ということですよね。その言葉が従業員に伝わり、ステークホルダーに伝わり、メディアに載ってさらに多くの人々に伝わっていく。
結局どれだけメッセージが強いかというのは、その人が成し得たいものが本当に世の人たちにとって刺さるものであるか、応援されるに値するものかということだと思うんです。
澤:もちろんすごい成功者というのは、その成功エピソードもたぶんものすごいと思うのです。この人がどれだけ失敗したか、どこかに欠落している部分があるのかといったところでも、もしかしたら影響があるのではないかと思うのですが、そこはどうでしょうか?
谷本:本当にそのとおりです。それをひっくるめて「人間力」だと思うんです。その経験値や、人間臭さがメッセージとなって伝わりやすくなるんです。
今、プレゼンテーションは決して社長のようなトップの方だけがするものでなく、おそらく多くの人たちがプレゼンテーションをする機会を持っていらっしゃる。プレゼンテーションの本や情報も多々手にとることができますし、技術的にはうまい方が増えてきています。
ただ、それでますます伝わりにくくなっているという側面もあるように思うんです。どの人のプレゼンもうまいから、記憶に残らない。
だから私は、しつこいようですが、プレゼンテーションではなにが一番重要かというと「人の心の琴線に触れるかどうか」「人の心を動かすかどうか」という総合力、つまりは人間力に行き着くと思うのです。
例えば、流れるように立て板に水でよどみなくしゃべる、アナウンサー口調でしゃべるなど、一見上手く見えるプレゼンがありますよね。でも、実際にそういうものはぜんぜん響かなかったりするわけです。
それよりも、たどたどしくも、自分の言葉で、自分の経験値に基づいて話したりして、その人の人間らしさが伝わるほうが、聞いている者の心に残る。感情を動かせるように発信できるかどうかが、私は重要だと思っています。
澤:やっぱり、その前にどれだけきちんと自分の中で考えているか、どれだけ熱量を持って人になにかを伝えたいと本気で思っているかですね。
それこそ僕のところに「プレゼンテーションを教えてください」と聞きに来る方がいるのですが。やっぱり、ステージ上でなにかしらの失敗をしてしまったり、恥をかいた、うまくいかなかったという、そういったトラウマのようなものがある。そして「それを克服したいからしゃべり方を教えてください」というのが、だいたい最初に言われることなのですよね。
「どうすればうまく話せるようになるのですか」「噛まないようになるにはどうしたらいいですか」「緊張しないためにはどうすればいいですか」。そうしたハウツーの部分というのを聞かれることがすごく多いです。
実際にこの本を書くにあたっても、「ハウツー本を出すのですね」とよく言われるのですね。このあともプレゼンテーションがありますので、そこでもお話しますが。ハウツーの部分というのは確かに言語化をしてしまえば再現できるんですね。例えば、立ち方、しゃべり方、声の出し方、手の動かし方というのは再現できるのです。
しかし、正直「それで伝わるの?」と思うわけです。というのは、話し方だけを工夫しても伝えている側もなんか上滑りしたりするんですよね。
その印象に残っていない方々というのは、そこの時点で「自分は完成されている」と、もしかしたら勘違いしちゃっている人たちなのかもしれませんね。やっぱり社長さんなどは、そのポジションにいることで、あとはもう「うまくしゃべればいいや」ぐらいの感じになっていたり……それが誰かはわかりませんが。
谷本:あのですね、例えば澤さんが絶対的にすごいと思うのは、もうどんな講演の依頼でも必ずまず受けていらして。
澤:そうですね。
谷本:しかも、どんなスタッフの人にも同じテンションで、敬意を払って、必ず会話をされていますよね。そういうところを私はずっと拝見してきて思うのは、プレゼンテーションだけじゃないんだな、ってことです。プレゼンはすごくうまいけれど、スタッフさんたちを邪険に扱うといった講演者が案外多かったりするのを見て、余計に思います。
澤:ええ。
谷本:結局、そのプレゼンテーションの場を作り上げているスタッフさんの応援がないと、本当の意味でのプレゼンの成功につながらないんです。また、舞台袖では仏頂面をしていた人が、舞台上でだけ営業スマイルをつくっても、そういうのってオーディエンスに伝わるんです。だからこそ、やっぱり人間性というところなのではないかと思うのですよね。
澤:そうなんです。僕はとりあえず講演の依頼が来ると、内容はあまり気にしなくて、オーディエンスが誰であるかもほとんど気にしなくて、まず「はい」か「イエス」で答えるのですね。まず受けてしまって、あとで考える。
しゃべったことがない内容というのもよく来るのですよ。僕の場合はITなので「ITに関する製品の説明をしてください」「テクノロジーのことを話してください」というものであればわかりやすいのです。しかし「あなたはこういうテーマで話せますか?」というオーダーのされ方もものすごくある。
ですが、話したことがない内容でも、まずは受けちゃう。安請け合いをする。とにかく安請け合いを基本にして、受けたあとでやり方を考える。そうしたやり方なのですね。そうすると失敗するかもしれませんが、ただ1回やると話すから、ネタが1個増えるのですね。引き出しの中に入れておくものが増えるというのと……今回もそうかもしれません。
あるテーマがあると、それをもとにしてものを考えるクセがつく。IT的に言うと常駐タスク化しますから、脳内でずっとそれが動いてる状態であるために情報がどんどん入ってくる。その入ってきたものをプレゼンテーションによってアウトプットする。このアウトプットするのが実は楽しみになっているのですね。
アウトプットが楽しいとわかっているので、インプットが苦にならないのですね。結果的にそれでどんどん幅が広がっていくというか、節操がなくなっていくのですが。
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