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著者と語る朝渋『人生の勝算』著者・SHOWROOM代表取締役社長・前田裕二さん・幻冬舎編集担当/箕輪厚介さん(全8記事)

『多動力』の編集者、箕輪厚介氏はなぜホリエモンを口説き落とすことができたのか? ベストセラーを生み出す「見極め力」を語る

2017年7月21日、Book Lab Tokyoで毎週開催されている会員制朝活コミュニティ「朝渋」の人気企画「著者と語る朝渋」にて、SHOWROOM代表取締役社長で『人生の勝算』の著者である前田裕二氏と、編集者の箕輪厚介氏を招いてトークセッションが行われました。幼少期から異色の経歴を歩んできた前田氏と、堀江貴文氏の『多動力』、見城徹氏の『たった一人の熱狂』など、数々のヒット作品を手がけてきた箕輪氏がタッグを組んだ『人生の勝算』を軸に、自身の仕事論や生き方について、余すところなく語り尽くします。

コミュニティの真髄はスナックにあり

西村創一朗氏(以下、西村):その前田さんが、やっぱりWebにどっぷりの方なので、Webの世界からいろいろ参考にしているのかなと思いきや、コミュニティの真髄はスナックにあるらしいんです。スナックをものすごく研究されていて、「地方に行くと必ずスナックに行くんだ」というお話をされていたのがすごく斬新で、勉強になったんです。実際に行かれているんですか?

前田裕二氏(以下、前田):(箕輪さんとも)一緒に行きましたもんね。

箕輪厚介氏(以下、箕輪):AKBの総選挙が新潟で開催したとき、前田さんが偉い人たちとご飯食べてて。僕は幻冬舎の普通の人たちとご飯食べてた。

(会場笑)

箕輪:「お互い終わって時間あったら飲みに行きましょう」って言ってたんです。前田さんがスナック好きとは聞いてたけど、そのときは本当にそこまでとは思っていなくて。

そしたらタウンページ的なものを開いて、謎のスナックを丁寧にいっぱいピックアップして、「ここが1番良さそうです」というところへ行きました。本当に雑居ビルの、新潟のスナック。

前田:暴力団みたいなことが書いているスナックがあって。行きましたよね。

箕輪:なんか店員なのかな、やたらずっと手品を見せてくれる。

前田:あれがマスターで、ママです。マスターって言われてましたけど、あの店のママみたいな存在です。

箕輪:その手品が下手なんだけど、前田さんが言うには「これが余白です」みたいな(笑)。

(一同笑)

前田:本当によかったんですよ! 手品するとき、「スプーン曲げします」と言って、スプーン折れちゃうんです。

(会場笑)

前田:折れちゃうけど、「あれ?」って感じでなかったことにする(笑)。それでもう1回やりだすんですね。もう最高だなと思って。最高じゃないですか?

西村:天然でやってるんですよね。計算じゃなくて。

前田:天然なんです。最高だなぁと思って。たまにうまいことやるんですよ。「おぉうめぇ」みたいな感じになる。

箕輪:六本木の超高い手品バーの完璧な手品はコンテンツだけど、あの下手な手品は、ミスしたらみんな見て見ぬ振りをしちゃう(笑)。

西村:みんなでなかったことにしようとする(笑)。連帯感上がってますよね。

スナックを抽象化した前田氏

前田:失敗はなるべく隠しながら、「いいところは見出して褒めてあげなきゃ」という雰囲気にこっちがなってくる。「すごいですねー!」と、そんな感じになってくるんです。

箕輪:共犯関係になるというか。

前田:そうそう。ほかのお客さんに「すごくないですか!」とかって言って、そんな雰囲気になっちゃうのが感動的なんです。スナックを出たら、そのときの現象を超興奮して抽象化しまくる。

箕輪:朝4時くらいに寝て、朝早い新幹線で帰るときに前田さんから異常に長いメールが来たんです。「スナックを抽象化しました」と、鬼のように「スナックのここがすごい!」みたいなLINEが届いた(笑)。

西村:おもしろい。それめっちゃ見たいですね。

箕輪:「頭イカれてるわ、この人」と思って(笑)。すごすぎる(笑)。

(会場笑)

前田:スナックに行って、「なんか異質な空間でおもしろいな」と思って帰るじゃないですか。普通だったら、「おもしろいな」くらいで止まると思うんです。例えば、(前田氏の)ツイートを見てくれている方は知っているかもしれないですけど、以前に森山直太朗さんっていう歌手の……。

竹田:あ~知恵袋。

前田:そうそう。知恵袋。「はじめまして。森山と言います。歌手をしています。この度、曲を出すんですが、プロモーションのやり方に悩んでいます」というようなことが書いてあって。「森山直太朗って最近なにしてるの? 売れてるの?」という空気感が一般的に流れている中で、真剣に相談している感じがいいねみたいな。

みんな言語化できていない

前田:ネット上で「おもしろい!」「天才!」とか言ってるんですけど、それがおもしろいのか、天才なのかを、みんなはちゃんと言語化できてないなと思いました。日々、意外と僕らがおもしろいと思うことは抽象化しきれていないまま「おもしろい」と言っちゃってることが多いと感じたんです。

僕自身も言ったことを、おもしろいとは思うんですけど、自分自身なにがおもしろいのかということが、説明できないなと思った。それを考えたら眠れなくなって、書いたメモを誰にも送るはけ口がなくて、箕輪さんに送ったんです(笑)。

西村:内臓を擦り合わせてる箕輪さんしかいなかった。

箕輪:たぶんね、その熱量に負けてスタンプでポンって返した(笑)。

前田:そうそう!

(会場笑)

西村:絶対読んでないやつですね(笑)。

箕輪:だって、この前、見城さんがプレゼンツしている劇を見に行ったとき、ずっと隣の前田さんがガサガサしてる感じがしたんです。隣を見たらずっとメモしてました。こんな(両手を広げて)長い感想のLINEを送ってきた。劇が終わって、「僕1メートルくらいのライン書けます!」って(笑)。長さで言うなと思いましたね(笑)。

西村:ギネスですよね(笑)。見たことない、1メートルのLINE(笑)。

箕輪:終わんないですよ、ずっと(笑)。

西村:スクロールが(笑)。

前田:(LINEの画面を見せながら)これだ、1メートルのLINE。見えるかな? ここから始まるんですけど。

西村:長いことだけはわかりますね。

竹田:うわ~すごい! すげぇ!

箕輪:しかも内容がすごいんですよ。

前田:「感想が10個あります」って書いててあって。10個もあるんですよね。

(会場笑)

箕輪:見城さんの返信が「冷静に狂ってるね」。

(会場笑)

前田:「君は冷静に狂ってるね」(笑)。自分の感動した度合いが、たぶん見城さんに感想を送る人は1,000人くらいいるだろうと思ったんですけど、本当にその1,000人の中で僕が1番心が揺れた自信があると思った。

それくらい感動したから。どうやって表せるだろうと考えてたら、まず長さだなと。1000人が送るLINEの中でもたぶん僕が1番長くなると思ったので、それくらい書きました。

箕輪:だからインプットとアウトプットの繰り返しは半端じゃないなと思います。

西村:これは前田さんだけじゃなくて箕輪さんにもお聞きしたいですね。「インプットとアウトプットの質を高めるために、やっていることは何か?」というのを。どういう情報収集をしているのかという質問が、けっこうありました。お二人いかがされてらっしゃいますか? めちゃくちゃ忙しい中で。

箕輪:僕は編集者なんで、インプットしたくなくても前田さんみたいなおかしな人と毎日会う仕事なんで。

西村:おかしな人(笑)。

箕輪氏の人を見極める力

箕輪:それは自動的にそうなっちゃう。ただ、学生のときからちょっと世の中を斜めに見る嫌な人間だったんで、作家に対して、「あ、こいつ普通だな」と思う力が強いんです。「この人すげぇいい人だけど、本にすることはないな」「みんな騒いでるけど、今たまたまこの発言がバズっているだけで、内容はなんでもないな」という見る目があるとは思います。

だから、この人の言ってることは本当にオリジナルなのかを見極めながら、その人たちと会っている感じです。この人はどれだけおもしろいのかという才能を、自分の目線で選ぶ。当然そうじゃないと本がおもしろくならないので。そういう人とたくさん会ってる。だから、まぁ本当に疲れますよ。一生に1回でも会ったら人生が変わるレベルの人と、毎日5人くらい。

前田:すごい仕事ですよね。

西村:今となっては箕輪さんと言えばという感じで、いろんな方からのオファーが舞い込むという状況だと思います。ただ、逆にそうなるまでは、どういうふうにおもしろい方と会うような努力をしたのか。

箕輪:それで言うと、僕はまっさらで、本当なにもなかった。まず僕が入ったのは出版社の広告部で、ギャル雑誌を担当していました。カラコンの広告を取ったりして。でもそのギャル雑誌があまりにも売れてなくて、反響がゼロ。もはや僕の営業力を活かしてトンカツの広告とかペットが飲む水の広告を取ったりしていました。

竹田:ギャル雑誌なのにトンカツ(笑)。

箕輪:もう白紙の雑誌でも同じというくらい。金持ちの社長と「読モ呼びますから飲みましょう」と言って、それ代みたいな。

前田:飲み代みたいな感じ。

西村:対価が違うわけですね(笑)。

箕輪:もうギャル雑誌は売れてないから、価値はtoB向けのギャルたちを接待すること。当時はそこまで言語化していなかったですけどね。でもそれでギャルたちと仲良くなって、金持ち社長を探すっていうモードに入って。そのとき与沢翼が……。

西村:なるほど~。ヒルズ族。

箕輪:3,000万とかダーンってやってて。「あ、こいつはまさに!」って思って。

(会場笑)

西村:こいつ……(笑)。金づるって言ったらあれですけど(笑)。

箕輪:すぐ会いに行って、「雑誌作りましょう」って言いました。「いくらかかりますか?」と言われて、僕は編集部じゃないんで、雑誌がいくらで作れるかわかんないから「3,000万です」と言った。

西村:適当に?

箕輪:適当に。あとで調べたら、普通に作れば、500、600万で作れる。

(会場笑)

西村:どんぶり勘定もいいとこですね!(笑)。

みんな勝手に枠を決めている

箕輪:気になったら会いにいく。それで、その雑誌を作りました。僕、編集になって行って1番最初に会いに行ったのが見城さんで、その次がホリエモンなんで。幻冬舎の新人の人が、「当たる人がいない」と言っているのが信じられなくて。それって勝手に「ここは当たれないよね」と思ってるだけで。別に見城さんなんて普通に生活してるわけだからいけるし、ホリエモンにだって会う方法はいくらでもあるのに、あそこはまだ早いとか言う。

西村:勝手に枠を決めちゃってるんですね。

箕輪:そうです。変なところを積み上げれば時間がかかりまくるし、僕が1番ダメだと思うのは、今の自分に才能ないからって同じレベルの人に行くこと。自分自信で自分をそのレベルだと洗脳しちゃって、その殻を永遠に破れなくなるから。

最初に身の丈に合ってないくらいのところに、好きだったら行くほうがいいと新人には言っているんですけど、やっぱいかないですね。

西村:難しいですね。頭でわかってても腹に落ちない。行動できない。

箕輪:僕はそうやってガンガンいってた感じですね。上から順に。

前田:箕輪さんとの最初のやり取りを見返してたんですけど、(携帯の画面を見せながら)これ懐かしくないですか?

箕輪:懐かしい。

西村:いつごろなんですか? 最初のやり取りは。

前田:2015年の12月7日ごろ。

箕輪:その頃はまだ僕がまじめだった。今、そんな長いのは送らない(笑)。

前田:そう、超まじめですよ。

西村:まじめだったころ(笑)。

前田:19時12分にFacebookでメッセンジャーもらって。

西村:突然のご連絡だったんですか? 面識はなかった中で?

前田:突然。

箕輪:ホリエモンが言ったんですよ。「箕輪君、前田さんの本出したほうがいいよ」って。堀江さんがそんなこと言うのって超めずらしい。

前田:たぶんメールでもらっていたら見逃してた可能性が高くて、しかもFacebookもそんなに全部返さないんです。返せないことも多いし。でもこの時は19時12分にもらって19時27分に返している。

西村:30分以内に返してるんですね。

前田:確かに箕輪さんのようにFacebookに突っ込んでくるのは新しかったですね。

箕輪:イケハヤさん(注:プロブロガー、イケダハヤト氏)とかは、あの人はがっつり仕事モードでいくと逃げちゃう人なんです。だから「川が好きで高知の川に行きたいので、イケハヤさんの本を作りたいって会社に言いたいんですけど、いいですか?」と言って(笑)。「すごく綺麗な川ありますよ。ぜひぜひ」みたいな。

(会場笑)

西村:四万十川ありますよね。

箕輪:実際それは本当なんです。でもたぶんイケハヤさんに企画書を添付して、『まだ東京で消耗してるの?』という本を作りたいんですけどって言うと、「重!」ってあの人たぶん逃げちゃったと思うんです。

西村:そうですね。

箕輪:だから面識なかったけど、Twitterを見て、たぶんこの人は、そういうのが好きだろうなと思いました。前田さんと同じで、「この人は何を嬉しいと思うだろうか」っていうのはよく考えますね。

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