2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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MEGUMI(以下、MEGUMI):なるほど。今お話をうかがっていると、本当にありとあらゆる角度からさまざまなことを考えていらっしゃいますよね。
小泉文明氏(以下、小泉):そうですね。とくにユーザーのマインドというのが……メルカリは物の売買というところでいうと、なにか「儲けた」ような話があると思います。
テレビ局からよくあるのが「メルカリで売れた一番高い品物をフィーチャーしたいです」「メルカリで100万円以上売った人をフィーチャーしたいです」といった、いわゆる“メルカリ長者”みたいなことを言われますが、うちではそれを全部断っているのですよ。
どうしてかというと、先ほどの共感の話もそうですが、今の消費者を見ていると、やっぱり自分事(じぶんごと)化していないものに対してはまったく反応しないのです。
では今の若い子たちの共感度合いはどのぐらいかというと、ちょっと売れて、自分の承認欲求がちょっと満たされる。そして翌日のランチがちょっと豪華になるくらいの、いわゆる「日常の延長線上にあるちょっとした楽しさ」なのです。
それをまたインスタなどのソーシャルメディアにあげたりすることで、いろんなところで自分が少しハッピーになれればいいのです。「それをみんなに共感してほしい」といった流れなので、100万円稼いでいる人を見ても「別に私関係ない」という感じなのですよ。
MEGUMI:あまり興味がないんですね。
小泉:興味がない。「別に私100万も売りたくないし、売るものを持ってないし」というような。
昔のコンテンツの作り方は、どちらかというといわゆるランキングに近いですね。ランキングと同じように「上ほどいい」ような。けれども、そのランキング的な考え方がちょっと落ちてきていて、日本国民全体がどうなのかというより「自分の周りはどうなんだ?」というところに来ている。
MEGUMI:もう、人の欲のようなものがまた違う種類になってきているんですね。
小泉:違う種類になってきていますね。ですからメルカリの場合も「稼ぎたい」という人も当然いるのですが、どちらかというと「自分が出したものが売れてうれしい」という承認欲求のほうがすごく強いのだろうなと思っています。
MEGUMI:でも、見ているといろんなものを売っているんですよね。使った化粧品とか。
小泉:売れていますね。
MEGUMI:すごい。私、もう信じられないと思うのですが。でも、そういうものが……。
小泉:めっちゃ持っていますよね?(笑)。
MEGUMI:めっちゃ持ってます。「売っちゃおうかな」みたいな(笑)。ああいうのはすごい感覚ですよね。今っぽいのでしょうかね。
小泉:今っぽいですね。
結局、化粧品も肌に塗って長時間つけてみないと変化がわからないじゃないですか。百貨店などの鏡の前で見て「良さそうだな」と買って、家に帰って1日つけてみたら、夕方ぐらいに「この色のくすみ方、私じゃない」「使いたくない」というような。
MEGUMI:どうしてそんなところまでわかって。なんでそんな事情を知って(笑)。
小泉:いや僕、女性のインサイトなど、そういうの好きなのですが。
MEGUMI:(笑)。そうなんですか。
小泉:それを、ああいったもので「1回使ったけど、もう使いたくないな」を売るというのは。まあでも、なんか……。
MEGUMI:でも、買い手がいるわけですもんね。そこがすごいですよね。
小泉:僕らは「捨てるをなくす」という言葉をすごく使っています。ある人にとっては価値がないのだけど、ある人にとっては価値があるものというところは、インターネットで一番情報が流通しやすいというか、マッチングしやすいと思っています。
MEGUMI:あと、紙袋ですね。ショッパーだけ売っていたり。
小泉:ショッパーはすごく売れてますね。
MEGUMI:ねえ。あれだから、地方の方で自分のところにはお店がないけれども、都会の店舗のものが欲しいということですよね。
あとね、お金。
小泉:お金ね(笑)。これはちょっと本当はやめてほしいやつですね。
MEGUMI:ねえ。あれはどういうことなんですか?
小泉:あれはですね……。僕らの趣旨としては、とくにオークションでは、例えば50円玉の穴がちょっとずれているやつとか、紙幣番号がゾロ目など、いわゆるプレミアム硬貨と言われているものがあるので、それが健全に流通されるのではないかと思っていたのですよ。
ところが蓋を開けてみると、最初はそれが当然多かったのですが、普通の1万円札がちょっと高値で売れているような。
MEGUMI:どういうことなんでしょうか、それは?
小泉:どういうことかというと、僕らもよくわからないのですが。一応メディアの人たちがいろいろ詮索するには、クレジットカードのいわゆるクレジット枠とキャッシング枠があるじゃないですか。キャッシング枠で借りすぎちゃった人が、返済前にクレジット枠で買える現金を探して換金しているんですよ。
MEGUMI:なるほど。切ないですね。
小泉:メルカリの現金はクレジット枠で買えるのです。
MEGUMI:なるほどね。だから現金がほしい人ですね。
小泉:はい。
MEGUMI:今、手元に現金がないから「メルカリを使ったら現金もらえるらしいよ」というような。
小泉:もらえるらしいというので、それで現金を買うと。
MEGUMI:もちろん違法な……どうなんでしょうか?
小泉:僕らの利用規約でいうと、マネーロンダリングに該当するので運営元としては当然やめてほしいのですが。
MEGUMI:そうですよね。
小泉:そういう僕らも意図しない使われ方があるので、そこはかなりカスタマーサポート側で消していますね。
MEGUMI:ああ、そうですか。
小泉:はい。
MEGUMI:でも、だんだん大きくなってくると、そういったお金の問題にしても、いろんなネガティブなことが増えていくじゃないですか。そのあたりの対処や考え方はどのような感じでやっていらっしゃるんですか?
小泉:考え方としては先ほど言ったように、個人がエンパワーメントされるということがインターネットの基本的な良さだと僕は思っているので、そこはあまり制限したくないんですよね。
どんどんきっちり細かくしてやっていくと、どんどんつまらなくなっていく。なので、基本的にはなんでも売れるというメッセージというか、考え方は残したい。ただ一方で、ユーザーの不利益や不便さというところに対しては応えていかないといけないです。
僕ら今280人ぐらいカスタマーサポートがいてですね。
MEGUMI:そんなにいるんですか?
小泉:そんなにいますね。
悪さをしようとする人はかなり目立つのですよ。メルカリでは1日100万品ぐらい出ているので、変な商品を売ろうとするときはだいたい検索ワードに入れるのですよ。そういったものを。
ですから、僕らはいわゆるNGワード的なリストをたくさん持っていて、それでシステム的にぐるっとずっと巡回しています。そこからピックアップされたものを人力で見て、問題があれば消す。もしくはそのアカウントごと削除するといったことをやっているので、かなりシステム的なのですね。
MEGUMI:へえ。じゃあわりと細かい作業になってきますよね。
小泉:システムと人力の、両方でやっていますね。
MEGUMI:でも、そうやってなにかいたずらというか悪いことをしようとする人は、わかりやすくなにかを提示しているんですね。
小泉:わかりますね。やっぱり悪いことをしようとする人も気づかれないと意味がないじゃないですか。なので、悪いことをしようとしている人の特徴をたくさん持っていますね。
MEGUMI:でも、メルカリは私たちからするとアパレルのイメージだったんですね。ファッションというか、どちらかというと。CMもわりとそういったイメージですが。本当にいろんなものが売られているというのは、なにか制限や、そういったものは最初からあまり絞っていなかったんですか?
小泉:利用規約で制限してますが、基本的な考えはなんでも売り買いできることですね。ただ、最初は車などはやめていたのですが、今だと出品できますし。
MEGUMI:ええー!
小泉:しかも売れているんですよ。写真4枚で車が売れているんですよ。
MEGUMI:本当ですか!?
小泉:写真4枚と説明文で売れているんですよね。
MEGUMI:でもeBayとか、アメリカだったらみんなそれで車を買ったりしていますが。
小泉:日本もですね……いやでも僕、10年前はあれですね、「誰があのネットで服を買うの?」と言われていたのですよ。「いや、買うでしょ」と僕は言っていたのですが、けっこう大人たちからすごく懐疑的なことを言われていたんですよね。2003年〜2004年の頃。
MEGUMI:サイズ感などね。
小泉:でも、女性からすると、自分の好きなブランドのサイズはみんな覚えているじゃないですか。だから買うんですよね。今の子たちも、逆にいうと写真4枚でも十分わかるわけですよ。とくに自分の好きなブランドは。
ですから、比較的人間の可能性というか、そのあたりはあまり否定しなくてもいいんじゃないかと思っています。
車もなんとなく、もう例えば、田舎の人で、ダイハツ「ムーヴ」で、白でこの年式と言ったら、だいたいあんな感じだなということがわかるので。僕らは手数料10パーセントしか取りませんから、車はだいたい中古車市場に出すと、やっぱり彼らが数十パーセントぐらい手数料になるですよね。
MEGUMI:そうですよね。日本で買うと高いですよね。
小泉:だから、中古車でもやっぱり高いんですよ。その優位性みたいなところを提供していきたい。
さらに、僕らでいうと最近野菜がすごく売れていて。果物などもすごく売れているんですよ。
MEGUMI:えっ、食もやっているんですか? 扱いが難しそう。
小泉:どうして売れるかというと、これはたぶん普通にやると売れないのですが、僕らのサービスはいわゆる相互に評価をするのですよね。
取引が終わったあとに、「じゃあMEGUMIさんのこの取引よかったですか?」というと、僕は「はい」のボタンを押す。そうすると自分の「いいね!」情報がどんどんたまっていくのです。
要は、野菜や果物を買うときも、僕も買いますが、やっぱり「いいね!」の情報が高い人は、基本的にみんなから野菜を売って信頼されている人です。なので、安心して買えるのですね。
MEGUMI:なるほど。すごく納得しました。
小泉:これまでの社会というのは、先ほど言った資本主義がかなり社会を保証していたと思うのですよ。なんとなく「イトーヨーカドーで売っているものは間違いなくいいものだ」といった、そうした資本主義がある程度そこの社会の信用を担保していたと思いますが。
これからはどんどん、個人がインターネット上の活動で自分の評価がたまっていく。そうするとどんどん個人で社会に出ていって活躍できる人や、そうやってものを売れるであるとか、個人の信用がためやすい世の中になっていっているのではないかと思っています。
MEGUMI:ある意味チャンスですよね。
小泉:チャンスです。
MEGUMI:自分のやりたいことをインターネットを通じて発表していって、社会とつながっていく。だから、最近は子どもですごくお金を稼いでいる子もいる。
小泉:ぜんぜんいますね。
MEGUMI:なにかそういうことにどんどんなるから、逆に私たちの世代の人たちはアナログも経験している分、やりたいのだけど、わりとアナログ好き感があってやりにくい人もすごくいたりしそうです。
メルカリを使っている20代前半〜中旬の子は自分でどんどん発信できると思うのですが、ちょっとやっぱり30代後半になってくるとわりと難しいと思っている人も多いでしょうね。
小泉:まだいますね。これは1回使うと簡単なのですが、その1回目のハードルがちょっと高かったりします。そこを今はどうにかしなきゃと思っています。
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