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グラスタアカデミーvol,2「ベテラン女性広報が語る、若手の頃の勢いだけでは終わらせない広報術」(全5記事)

アウトプットの質は社内人脈に比例する--ベテラン女性広報に学ぶ社内コミュニケーション術

株式会社グラニが主催するグラスタアカデミー。第2回は「ベテラン女性広報が語る、若手の頃の勢いだけでは終わらせない広報術」をテーマに、株式会社サイバーエージェント・上村嗣美氏、リノべる株式会社・田尻有賀里氏が登壇。10年以上の広報経験があるベテラン広報の2人が、広報業務のカギを握る社員や役員とのコミュニケーション方法について語りました。

戦略の軌道修正にはどう対応する?

石根友理恵氏(以下、石根):2人とも半年で目標設定を期間を定めていらっしゃるのですが、半年という期間はかなり長い期間ですよね。途中で経営の戦略が変わり、戦略やKPIを軌道修正をしないといけなくなることが発生しうると思います。そういった場合、どのような工夫をされていらっしゃるのでしょうか?

上村嗣美氏(以下、上村):そういった経営の注力領域や考え方、戦略の変化やみたいなものは、週に1回、役員会のフィードバック、四半期に1回の役員合宿のフィードバックとして担当役員からもらっているので、そこで情報をきちんとキャッチをして、広報として業務や考え方に反映すべきことを広報メンバーに共有するようにしています。

あとは、半年間で目標を立てるのですが、基本的にそれぞれの広報担当者と、だいたい1ヶ月から2ヶ月に1回は個別面談をしているんですね。なので、定量目標を立てたものの、今は指標を変えたほうがいいのかもしれないとか、目標数値を変えたほうがいいのかもしれないとか、当初の目標よりかなり上振れしそうだから、さらに目標を上げてみようとか、そんなことも個別面談で行っています。

あとは今はここを手厚くやるべきだよねということが出てきたら、そこで定量目標自体をまったくガラッと変えてしまうということもありえます。

石根:ありがとうございます。田尻さんはいかがでしょうか?

田尻有賀里氏(以下、田尻):私も週1回、役員やアドバイザリーボードとのボードミーティングのドキュメントを見る権限をもらっているので、それを見ながら会社の動きのキャッチアップはしています。

チームメンバーとのコミュニケーションというのは、先ほど上村さんがおっしゃったように、面談を週1回1 on 1というかたちでとっていて、1週間ごとにタスクの棚卸しをやっています。どこまで進捗しているか、「半期の目標に対して逆算したら、この週にはここまで行っていないといけないよね」みたいな話をして、あとはヘルプの欲しいところとかを聞いて、そこで修正が必要であれば目標設定もけっこう柔軟に変えています。

石根:わかりました、ありがとうございます。では次の質問に入らさせていただきます。

質問2のテーマは「社内コミュニケーションはどうしている?」です。広報は会社の中のネタを拾っていくことが重要で、そのために社内コミュニケーションがすごく大事です。一方で広報の仕事は見えにくい部分もあり、社内コミュニケーションがうまくとれないという広報担当者も多いのではないでしょうか? これについてお2人におうかがいしたいです。

役員とのコミュニケーションのとり方

まず上村さんに、「役員とのコミュニケーションのとり方」をおうかがいできればと思います。会社の規模が大きくなればなるほど、特に経営陣役員陣とコミュニケーションをとる時間はどんどん減り、それによって広報の方向性が定まりにくくなるという課題がおそらく出てくるのではないでしょうか。

こちらに関して上村さんが実践していらっしゃることは、まず「リアルタイムの経営方針と役員陣の思考をフィードバックしていただく」「コミュニケーションロスを最小限にする思考理解と共有イメージ」「事業ボード会議への出席や、議事録の確認」です。

これについて詳しくおうかがいできればと思います。

上村:私は、例えば広報の担当役員や社長と、広報に関する定期的なミーティングというのは基本的には行っていないですね。先ほどもお伝えしたのですが、その代わりに、週1回行われている役員会の議題や、決議内容ということに加えて、役員会でどういったことが話題になっていたのかとか。そういった雑談ベースのことまで週1回担当役員から30分フィードバックをもらっています。

そういったことをしてもらうことで、「どういうことが決まりました」とか、「こういう新規事業が始まります」ということだけではなくて、経営陣が今どこが気になっているのかとか、どういう思考や議論の元、決まったのか、といったことをきちんと理解できることが大きいです。

そして、そのフィードバックを受けて、広報担当者にも必要なことを共有するのですが。そういったことを受けてじゃあ広報でなにをしなければいけないのか、ということを考えるんですね。

例えば「こういった新規事業が始まる」であれば、早めに新規事業に関する広報戦略を考えて、広報のスケジュールをひくっていうのもありますし。新たな注力分野ができるのであれば、それにあわせた広報体制を先手を打って変更するというのもあります。

一方で、定期的に役員と広報のミーティングは行っていないですけれども、例えばこういう広報の打ち出しを強化したほうがいいかなとか、私たちはこういうことをしたいと思っているんだけれどもずれていないか、みたいなことはきちんと確認するようにしています。

そういったことは役員との取材の前後とか、たまに出待ちをして声を掛けたりとか。事前に秘書の方にミーティング終わり時間を聞いて、役員室の前で、出待ちをしているんですけれども。

ただそういった時に、普通に「これどうしましょう?」みたいな聞き方をしちゃうと、そういう頭のモードでないときに聞かれてもはっきりした答えを得られなかったりするので、例えば「こうしたいと思っていますけど、どう思いますか?」とか、「私たちはこういった事業を打ち出すのにこういった2つの方向性があると思うんですけれども、どっちがイメージしやすいですか?」というような聞き方をして、できるだけ具体的な共通イメージを持てるように心がけています。

そうなると「それはあり、なしだね」とか「いや、こういう意図ではないんだよね」といった思考を理解できるので、当たり前のことですがコミュニケーションの工夫で短い時間であっても、ロスを最小限にすることを心掛けています。

あとは、会社の事業領域やサービスもとても多いので、もちろん事業責任者や、子会社社長たちとミーティングをする場合もあるんですけれども、全部はカバーしきれないものもあるので、会議に出席させてもらったり、議事録なんかを共有してもらって、気になるものがあったらヒアリングにいくといった方法をとっています。

石根:いかに役員陣に手間をかけさせないかというところがポイントということですね。

上村:そうです。多くを説明しないといけないというのは、面倒くさい存在になっちゃう。でも、経営とずれたままで活動していると、本当に田尻さんがおっしゃっていたように「広報なにやってるの」みたいになってしまうと思うんですよね。それは役員だけでなく、事業サイドともそうなんですよね。

経営や事業部といかに時間を使わず、きちんと共通イメージを作るか。広報を信頼してもらえることが大事かなと思っています。

石根:わかりました、ありがとうございます。「思考理解」や、「共通イメージ」というキーワードで言うと、上村さんは社員や役員のSNSを、「社員を知る」という意味でよくチェックしていらっしゃるというお話をうかがいしました。

上村:そうですね。当社は役員も社員も、会社柄だと思うんですけど、SNSをよくやっているので、まずそれをきちんとチェックしています。あとは特に役員と交流の深い人とかのSNSもチェックしていますね。

ほかには、業界他社や合弁先企業のプレスリリースや、業界キーマンの人のSNS、役員が読んでいる本やメディアを見たりとか。人って接したものや、目にした情報からアウトプットが生まれてくると思うんですね。なので、経営や事業トップ思考をできるだけ理解するために、そういった人たちが触れている情報源をきちんと見ておくことで共通イメージをつくれるようにしています。

社員からの信頼を得るコミュニケーション方法

石根:わかりました。ありがとうございます。それでは続いて田尻さんに「社員とのコミュニケーション」についておうかがいしたいと思います。

田尻さんのご回答は、「社員からの信頼を得るコミュニケーション方法をしっかりする」「社内広報が7割」です。

田尻:私はこれまで転職をしているのですが、転職してまず初めに一番苦労することは、社内とのコミュニケーションだったり、社内での人脈づくりなんですね。

広報としてやることって事業内容が変わっても会社が変わっても、そんなに方法自体は変わらないんですね。ただ、会社によってカルチャーとか人はまったく違ってくるので、やっぱりそこに一番時間を割いて、努力している点ではあります。

もしこのなかで、まだ転職をしたことがないけれども、この先広報で転職をしたいなって考えている方がいらっしゃったら、まずは新しい場所での社内の人脈づくりやコミュニケーションが重要になってくるというアドバイスはできるかなと思っています。

なぜそうなのかというと、やっぱり外へのアウトプットの質というのは、いかに社内人脈ができているかとか、社内のことをよく知っているかというのにすごく比例するんですね。

もう少し詳しくお話しすると、広報の仕事では、迅速な返答、つまり瞬発力を求められることが多々あります。例えば、広報ではよくある話だと思うのですが、社長から「来週これプレスリリース出して」って計画に無かったことが飛んでくることもあれば、メディアさんから「明日放送するニュースにこういうネタで取材したいんですけど、今から取材できますか?」みたいなことがけっこうあります。それに対して、広報担当者はいかに必要な情報を即座に提供して、露出につなげられるかということが要求されます。

そういった時に社内のことをよく知っていると、じゃあこれは社内のどの事業のどの人に聞いたらいいんだろうというのがすぐにわかる。また、社員に取材お願いしたい時に、社内人脈がしっかりできていて社内からの信頼も得ていると、その取材をお願いしたい社員の上司に話が通しやすくなる。

ただ前提として、他の事業部の人は取材を受けることが本業ではないので、取材をお願いするときは必ずその取材を受ける意義や意味、会社にとってのメリットをきちんと説明して納得していただいた上で、取材を受けていただきます。

営業マンだったらその取材に協力している1時間で1件でも契約をとったほうが、会社の経営的にはプラスになるという考えが普通です。その貴重な1時間を広報の取材に協力してもらうわけなので、誰もが納得して気持ち良く仕事ができるロジカルな依頼の仕方を心がけています。

一番よくないのは、これに掲載されたら広報の評価が上がるとか掲載数の目標を達成しないといけないからとか、そういった広報だけの利害で意思決定してしまうこと。それって本質的ではないですよね。

なんでその取材を受けることが会社にとってメリットがあるかということをきちっと理解してもらって、気持ちよく協力してもらう、という関係作りは、広報の活動をスムーズに進めていくためには欠かせないものだなと思っていて、広報の意義を理解してもらうということを念頭において、日々広報活動しています。

そのためにやっていることとしては、ここに書かせていただいた、「社内報の立ち上げ」。どんな社員がいて、普段どんなことをしているのか、オフはどんなふうに過ごしているんだろうといった“人”や“会社”の情報を社内に伝えるための手段として、社内報を運営しています。けっこうベンチャーだと後回しにされがちで、これまで入社してきた会社も例にもれず全て社内報がなかったのですが、入社してから作るということをやりました。

もう1つは社内報でも、Slackとかチャットワークとか社内のコミュニケーションチャットでも方法はなんでもいいんですけれども、広報に協力してもらった人が出た成果物を、ちゃんと社内にフィードバックをする。「ありがとうございました」ってお礼を本人に伝えると同時に、社内全員が見られるところでも、「今回こういう事業部の人がこういう協力をしてくれて、こういう記事になりました。ありがとうございました」と伝える。

そうすると、社員全員が記事を見てその人の活躍を知ることができたり、称賛したりする。やっぱり自分の仕事の活躍をメディアに取り上げてもらって注目されて嫌な人っていないんですね。そういうことをきちんと社内にフィードバックする。

石根:なるほど、社員とのコミュニケーションによって引き出しを作っておくってことですよね。

田尻:そうですね。やっぱり急に取材依頼が来た時に、キラーパスを出すには、社内のことをよく知って引き出しをたくさん持っていないと。持っている引き出しが少ないと、限られた切り口でしか露出できないので。そのためにも、普段から情報を持っているキーパーソンとたくさんつながっておく。引き出しをたくさん持つっていうのは広報の武器になります。

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