2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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武者慶佑氏(以下、武者):2つ目のテーマ、「企業が狙うべき劇場版アニメは?」です。最近の映画は「コミュニケーションの仕方の設計がちょっと違うんじゃないの?」と。
平澤直氏(以下、平澤):いや、まったくそのとおりですね。
武者:劇場版アニメの宣伝手法といったところで、もう少し深掘りしたい。宣伝手法、具体的な手法みたいなことですね。あとは企業タイアップの変化の可能性というか。劇場版アニメと企業タイアップする事例ってどんなのがあるんでしたっけ、というのをちょっとうかがいたい。まず宣伝手法についてはどうですか?
平澤:そうですね。ゴールとしてはまさに、この週末に2時間使って、合計すると4時間ぐらいを使っておでかけして、いくら払おうとまで決断をさせる、してもらうというところまでが宣伝手法なわけです。
そのために今必要なのは、「作品とお客さん」とか「クリエイターとお客さん」という考えと同じぐらい、「お客さんとお客さん」が重要です。ほかのお客さんをどう連れていけるか、ほかのお客さんにどう紹介できるか・巻き込めるかという部分がより重要になってると思います。
武者:最近テレビの劇場版のCMとかだと、2人ぐらいの女性が映ってて「すごい感動しました!」みたいなシーンがあって、一緒に行ってる感とか出しているものもありますね。
平澤:まさに。たぶんそうなんですよね。一貫してるのは、今、劇場に来るのは1人ではないと。そうですね、僕が大学生ぐらい頃には、いわゆるミニシアター系と呼ばれる、フランスとかイタリアとかから輸入した映画を。
武者:ああ、単館上映みたいなやつですか。
平澤:単館上映の。都市部の山手線の内側ぐらいの映画館に行ってみると、1人で来てるお嬢さんとかがいっぱいいらっしゃって……というのがあったんですが。
武者:まあ、今はシネコンですかね。
平澤:そうですね。あの時は「作品と自分」という関係で映画を捉えられてたかもしれないけど、今はやっぱり観終わったあと「よかったね」って言えるかどうか。自分自身が誰かを映画に誘うときにも、そういうのってすごくあるじゃないですか。
武者:わかります。僕、最初『君の名は。』を男と観に行ったんですよ。2人で。
平澤:なるほど(笑)。
武者:終わったあとに「お前誰だっけ?」「お前の名前なんだっけ?」みたいな。もうどうでもいいやってなっちゃって(笑)。
平澤:そうですね。
武者:そのあともう、改めて「女性と観に行かなくちゃいけないな」って思いましたもんね。
平澤:思いますよね。
武者:うん。
平澤:ということで、まずはお友達。映画の宣伝等を見たときに「一緒に行く友達の顔が浮かぶ」というのを大事にする必要があります。あとは、その方がふだん接触しているのがSNSなのか、それともテレビなのか。
そして、劇場版の前にテレビシリーズがある場合はもう一段進んで。深夜アニメの場合は普段からSNSをやられている方が多いので、少しメジャー感を出すために路面広告を打ったりとか。
武者:ありますね。
平澤:あえて、路面広告でメジャー感出すとかいうことはあります。ふだん使われている、接触されている媒体との相性がいいというか、相乗効果の強い、掛け算になるような広告をどう打つのか、というのが腕の見せどころになってくるなと。
武者:深夜帯アニメの路面広告って、喜ぶのは深夜ファンですよね。
平澤:そうです。なので、やっぱりファンが自信を持ってお友達を誘いに行けるための側面支援なのかな、と見てますね。
武者:ありがとうございます。実は昨日(注:イベント開催日は7月20日)、アニものづくりアワードに行きまして、「どうやったか」という手法を聞きに行ったものですから、ついつい引っ張られちゃうんですけど。
平澤:お、きましたね。
武者:やっぱり大きなお金が動いたものには引っ張られてしまう傾向がありますよね。今回は、サントリー天然水と『君の名は。』のタイアップがアワードを獲りました。金賞を獲ったわけですね。
これは、劇場版アニメを作る上で理想的なタイアップなんじゃないかと思っています。描き下ろしでプロダクトプレイスメントな感じでテレビCMを打って、というやり方ですね。これは非常に理想的なのではないかと思うんですけれども。そのあたり、やはりマス向け・ファン向け、どちらもやりたいところでしょうか?
平澤:そうですね。このタイトルの場合はとくにメジャー感を出されたいというお気持ちが強かったんだと思います。そのときに、テレビでキャラクターたちが映るのはとても重要なポイントだったんだろうなと。
あとは、お客さんも、サントリーさんとアニメ映画がタイアップするのを見るのは、これが初めてではないですよね。たしか『バケモノの子』もやられていたんじゃなかったかな。「GREEN DA・KA・RA」。
武者:ああ、『バケモノの子』もやってましたね。
平澤:たぶんそれ以前も、サントリーさんの宣伝の方々は、もともとアニメとのコラボレーションというのをかなり強く進められる方々なので、別の言い方をすると、過去にとても評価の高かった作品とサントリーさんのタイアップってされてきたよね、って覚えてる方もいらっしゃるぐらいなんじゃないかなと思います。
武者:宮﨑駿さんがいらっしゃって、細田守さんがいらっしゃって、そして新海さんが……みたいな感じに流れが来ていたところも若干あるのかなと。細田さんが間をつないでくれたみたいなところも。
平澤:おそらくあると思います。なので、たぶんこのタイアップには、まさに単純な、いわゆる接触機会の増大と同じように「サントリーがタイアップをする作品なので」という、ユーザーに対する「わかるよな?」と。
武者:(笑)。
平澤:「わかるよな?」という、ある種のブランド付けみたいなものもきっとあったんだろうなと思います。
その意味で、ゼロから垂直立ち上げするタイプの作品、いわゆる深夜アニメで放送してなかったタイプの、事前にテレビ放送などがないタイプの作品としては、非常に有効だったんだろうなと思います。
武者:一般の方たちはあの時、新海さんという名前を知ってたんですかね?
平澤:これはどうでしょうね。これまたログミーさんにこのまま全文掲載されるので、これ言い方非常に気をつけようと思うんですけど。
武者:気をつけて言ってください(笑)。
平澤:やはり「新海さんの作品なら、なにがあっても観に行く」という人がたぶん10万人ぐらいはいました。
武者:ちなみに、新海誠さんを知っていたという方は、この会場の方全員知っていると思うんですけど、逆に知らなかったという方、手を挙げていただけますか?
平澤:『君の名は。』まで知りませんでした?
(会場挙手)
武者:あっ、お2人いらっっしゃる。なるほど。
平澤:なるほど。
武者:ということは、ここは特別な空間ではあると思いますが、やっぱりいるっちゃいるでしょうし。もちろん絶対に。ということは、新海さんをご存じない方でも観る流れを作らなくちゃいけない、というのが1つありますよね。マスを狙っていく上では。
平澤:おっしゃるとおり。
武者:ちなみに、このテレビCMを知っている方はいらっしゃいますか?
(会場挙手)
武者:半分くらいか、3分の1ぐらいかですかね。リアルタイムで見ていらっしゃったってことですかね? そうですよね。
平澤:ですね。
武者:テレビだけで知ったという方もそれぐらいじゃないですか。ということは、テレビで知った人たちとかは、仮に、仮にですよ、半分くらい。新海さんで知った人たちとかがまあ数パーセントとか数十パーセントぐらい。そして残りの部分みたいのもあるわけですよね。
平澤:そうですね。さらにここで出てきたのはいったいなんなのか、という話ですよね。
武者:そうそう。用意してますよ。
平澤:でしょ。
武者:そう。もちろんそこの話したいからですからね。僕は、どっちかというと、大好きなのはソーシャルとかネットですから。
平澤:はい。
武者:Webで知った人、SNSで知った人って相当いるんじゃないのかなというのがあって。これですね、『君の名は。』のTwitter公式アカウントがよく会話していたアカウントTop10。つまりリツイートしたりとかふぁぼったりしてるような、そういう仲の良いアカウントです。
「映画ナタリー」だったりとか、「アニメイトタイムズ」「シネマトゥデイ」「ORICON STYLE」「映画.com」「ねとらぼ」とか、いろいろあるんですけど、このへんのWebメディアとめちゃめちゃ絡んでいたのがポイントだと思っていまして。
ほかの作品で同様のことが起きていないか調べてみると、監督やキャストさんと絡んでるというのは多いんですが、Webメディアと絡んでいるのは実はあんまりないんです。
平澤:そうなんですよね。
武者:これが意外と新しかったというか、狙ってやってたかどうかは別として、特徴的だったと思います。
武者:ちなみにこれは、僕が調べたタイミングでの直近です。『君の名は。』のアカウントが投稿するときにどんなキーワードが一緒に入っているかという話で。まあメインは新海さんですけど。なのでそこはいいとして、とりあえず僕が気になっていたのはこのWebとの絡み方。テレビだけじゃなくて、Webで広めていくという方法も宣伝方法にあるのかなと。
平澤:おっしゃるとおりですね。やっぱり歴史の長いタイプの広告媒体って、ある種の権威付けというかメジャー感の創出に使える部分があって。
一方で、「これは私のために作られた作品かどうか」というような、ある種の中毒性というか、自分事にする、引き換えていく部分というのはやっぱりWebメディアが中心ですよね。
やはり感じるのは、接触時間が長いものがテレビからだんだんWeb、スマホにシフトしているという部分。
じゃあスマホを見てるときにいったいなにをご覧になられているのか。そこをどうやったら押さえられるか。さらに言うと、そのあとほかの方にどうやって勧めてもらうのか。その連鎖のなかに作品があるということがすごく大事なんだと思います。
武者:確かに。プロデューサーさんからすると、先ほどから何回もおっしゃっていますが、ほかの人にどう勧めるかってめちゃくちゃ重要なんですね。
平澤:そうなんです。これはさまざまな統計で明らかになっていますが、実際に行動を起こすかどうか、例えばお金を払うとか、休日をお休みをこの映画に使うとか決める上で、やっぱりお友達のおすすめってすごく重要なんですよね。
「テレビで流れていたから」とか「好きな監督だから」と同じぐらい大きな割合を「友達に勧められたから」というポイントが占めています。これは自分としてもすごく、1ユーザーとしても感じるところですよね。
平澤:どこか大きな媒体で、例えばテレビだったり……今だと4マス(注:テレビ、ラジオ、新聞、雑誌の4つの媒体のこと)ってまだ言うのかな。
武者:今も言います、言います。
平澤:マスメディアにお金を払って宣伝をすると「へえ、メジャーなんだ」とか「お金かかってるんだ」というのはなんとなく伝わるけれども、「私が好きになるかどうか」って、お友達に勧められる部分、いわゆるWebとSNSに依存する部分が非常に大きいです。とくに作品によっては、そちらのほうが大きいものも最近はあるかなと思っています。
武者:僕らの世代はまだリアルなお友達というか、先に学校で出会って、学校で「昨日のアニメどうだった?」みたいな話もあると思うんですけど。
若い人たちはたぶんそれがリアルタイムで、グループチャットだったりLINEのグループだったり、ソーシャルの不特定多数の趣味コミュニティみたいなところですぐ共有できる状況にあるのかなと。誘うというのも遠隔で誘うということもぜんぜんできる状態にあると思います。
平澤:そのあたりも含めてですよね。だから、たぶんタイトルを立ち上げるときには、こういう要素のファンの方、こういうものを好きな方、というのがそれぞれいらっしゃって、1つの作品の中で、その異なる「クラスター」ってよく言いますけど、クラスターをどう交流していくかとか。
あと両方のクラスターに乗っかっている人間は、当然「これは自分のための作品だ」と思って伝えてくれるようになるでしょうし。そのある種のクラスター、お友達のつながり、そういったつながりとつながりとどうドッキングしていくか、という部分が重要になると思います。
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