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『あがってうまく話せない人でも大丈夫 10秒で伝わる話し方』(日本実業出版社)刊行記念 荒木真理子さん 講演会(全2記事)

極度のあがり症を克服した元アナウンサーが語る、10秒ずつ話すことのメリット

『あがってうまく話せない人でも大丈夫 10秒で伝わる話し方』(日本実業出版社)の出版を記念して、著者の荒木真理子氏が講演を行いました。極度のあがり症だったアナウンサー時代、どうやって緊張感を克服していったのか。誰でも実践できる話し方のコツについて語りました。

スキルを突き詰めてあがり症の克服に成功

司会者:みなさま、本日は、お忙しいところお集まりいただき、ありがとうございます。ただいまから、『10秒で伝わる話し方』刊行記念、荒木真理子さんの講演会を始めたいと思います。

私は本書の制作に携わりました、日本実業出版社編集荒尾と申します。おかげさまでこの『10秒で伝わる話し方』、紀伊國屋新宿本店におきまして週間ランキング第3位になっております。お買い上げいただいたみなさま、誠にありがとうございました。

最初に荒木さんの簡単なプロフィールを紹介します。埼玉県生まれで、ご職業は気象キャスターです。慶應義塾大学商学部卒業後、300倍の難関を突破して、日本テレビ系列の宮城テレビにアナウンサーとして入社するも、極度のあがり症・早口で、放送中に恥をかき続ける毎日を過ごしたそうです。

話すことから逃れられない生活の中で、今回のこのタイトルになっております『10秒で伝わる話し方』を編み出し、スキルを突き詰めることであがり症を克服することに成功したそう。

その後、取得した気象予報士の資格を生かして、テレビ朝日報道局ウェザーセンターの気象予報士に転身。レギュラー出演していた『ANNスーパーJチャンネル』では、必要な情報を徹底的に分析して、限られた時間内でわかりやすく伝える姿勢が視聴者に支持され、番組創設17年の歴史の中で最高視聴率を打ち出されたということです。

さらに、『報道ステーション』では、防災・災害報道の気象解説委員として活躍されました。これまでの経験がまとめられた本書につきまして、これからご講演をしていただきます。

ご講演中では、本に書ききれなかったお話も出てくると思いますし、ビジネスの上で参考になる部分もあるかと思いますので、ぜひメモのご準備などなさって聞いていただければと思います。また携帯電話を持ちの方はマナーモードに設定してください。

それでは、拍手でお迎えください。荒木さんどうぞ。

(会場拍手)

荒木真理子氏(以下、荒木):みなさん、こんばんは。気象予報士の荒木真理子と申します。今日はみなさん、会社帰りでしょうか? お腹の空く時間にお集まりいただきまして、本当に、ありがとうございます。

『10秒で伝わる話し方』、こちらにいらっしゃる方はご購入された方だと思います。どうもありがとうございます。もうすでに、中を読まれた方は、どれくらいいらっしゃいますか?

(会場挙手)

けっこういらっしゃいますね。ありがとうございます。今日は、せっかくお集まりいただきましたので、すでに読まれた方、そしてこれから読むという方も、お得な気持ちで帰っていただければと思っております。30分ぐらいですかね。お話をさせていただければと思います。

あがってうまく話せない人でも大丈夫 10秒で伝わる話し方

アナウンサーとして就職、気象予報士試験に合格

私をテレビで見たことがあるという方は、いらっしゃいますか?

(会場挙手)

半分ぐらいいらっしゃいますね。私は1年半前に産休に入りまして、この本は、産休育休中を利用して執筆したものです。つまり、テレビの中から1年半ほど姿を消しておりました。

ですので、どういう仕事をしていたのか、ちょっとみなさんに思い出していただこうかなと思い、今日はスライドを使いながら、ご説明をさせていただきたいなと思っております。

まずは、気象解説委員を務めておりました『報道ステーション』からご覧いただこうかなと思います。

(動画が流れる)

古舘伊知郎さんの『報道ステーション』、懐かしいですね。今はバラエティで活躍してらっしゃいますけれども。続いてもう1つ、私がレギュラーで出演していた『スーパーJチャンネル』をご覧いただこうかなと思います。

(動画が流れる)

ということで、少し思い出していただけたでしょうか? 平日は、『報道ステーション』で気象解説委員を務めておりまして、土曜、日曜に関しては、『スーパーJチャンネル』にレギュラーで出演しておりました。

ちょっとここでプロフィールを紹介させてください。私は、埼玉の高校を出まして、大学を卒業したあと、日本テレビ系列の宮城テレビのアナウンサーとして就職をしました。そして、その1年目に気象予報士試験に合格しています。そのあと、4年後、テレビ朝日に気象予報士の資格を持って移ったということになります。

実は、この気象予報士試験、1年目に受けたのには理由がありまして、自分があがり症ということを認識したからなんです。アナウンサー試験のときは、自分があがり症だなんて思ったことがなかったんですよ。

ただ、入社1年目に1回大失敗をしてから、それから、「あ~、あのときの失敗も、このときの失敗も、やっぱりあがり症だったから、あがり症が原因なんだなぁ」っていうことで、負のスパイラルにどんどん陥ってしまって、自分にあがり症というレッテルを貼ってしまった。

それからアナウンサーでいることが怖くなってしまって、これはマズイぞ、なにか資格でも取っておこうということで、一念発起して、気象予報士試験を、入社1年目の8月に受けました。

あがってしまって頭が真っ白に

では、私がどんな失敗をしたのか、ちょっと振り返りたいと思います。主に3つですね。あがって、ど忘れ。慌てて、言い間違い。そして、時間を無視して、尻切れ。

本のプロローグをご覧いただいた方はわかると思いますが、あがってしまって、頭が真っ白になって、なにをしゃべっていいのかわからない。そんなことは、しょっちゅうありました。

それから、テレビの世界で、こういうサインってわかりますか。

(手をグルグル回す)

「巻いて、巻いて」。短縮して、ということなんですけど。番組の最後のほうの担当者ほど、この被害に遭うんです。番組の前の人は、自分の話をペラペラ、ペラペラたくさん話して、番組の最後の担当の人が時間調整をしなくてはいけなくなってくる。

忘れもしないですね。私が担当していた朝の番組がありまして、朝5時から8時までの番組だったんですけれども、7時55分に料理番組を担当していたんです。

『おはよう、もう一品』というコーナーなんですけど、2分の中で、料理の段取り説明をしまして、そして、決まり文句で「はい、できあがり。召し上がれ」と、スタジオのみなさんに返す段取りだったんです。

それを急に、1分半にしてくれというサインが出ました。もう慌てて。私、新人ですし、台本通り2分きっちりで練習してきたのに、「1分半!?」と聞かされてどうしよう、どうしよう、と焦ってしまいまして。

まくしたててしゃべった末に、「はい、できあがれ! 召し上がり!」と、もうできあがれという他力本願になってしまいました(笑)。そんな恥もありました。

それだけではなく、例えば、かっこよくキメたい、冒頭のシーンなんですけど。「あぁ、眩しい日差しが」と言いたいところが、「ひざしい、まぶしが」というふうに言ってしまったりとか、しょっちゅうそういうことがありましたね。

そんな失敗ばかりしているものですから、どうしたらうまくなるんだろうと、必死で考えました。もう辞めたいなと思う面もあったんですけれど、アナウンサーっていう仕事は、結局、毎日毎日発表する場が出てきてしまうんです。

人前で話すことが、どうしたら上手になるんだろうって、考えて考えて、たどり着いて15年後、こうなりました。

視聴率アップの社内表彰ということで、先ほど見ていただいた『スーパーJチャンネル』なんですけれども、『スーパーJチャンネル』の「J」がなんだか知っている方、いらっしゃいますか?

(会場挙手)

どうぞ!

参加者:石田純一の「J」。

荒木:そうなんですよね! 石田純一さんの「J」で、初代キャスターが石田純一さんでした。「石田純一さんってキャスターやってたの?」っていうくらい古い番組です。20年の歴史があります。そんな20年の歴史の中で、最高視聴率を打ち出すことができたわけです。

ただ、もちろんこれは、私だけの力ではありません。番組のスタッフと一丸となって出せた結果だと思うんです。

そんな中で、キャスターとして、私が心がけていたことはなにかということをお伝えしたいと思います。大きく分けて2つです。

話すときの2つのポイント

まず、今、相手に必要な情報がなにか、これを徹底的に考えていました。自分がなにを伝えたいかではありません。相手が必要な情報です。

相手というのは視聴者になるんですよね。視聴者に関して、私の場合、50代、60代の女性が多いということがわかっていましたので、彼女たちがどんなことを考えているのかを、あらゆるところでリサーチをすることにしました。

すると、先ほど見ていただいたタケノコのオンエアがあったと思うんですけれども、あの3日前です。スポーツジムでこんな会話を聞きました。「○○さん、ぜんぜん来てなかったじゃない。どうしたの? さみしかったわよ~」「いや、ほら、私、自転車でしょ? だから、来られなくって」「そうよねー、雨だから来られなかったわね。それにしても梅雨みたいよね。春なのに」という会話が聞こえてきたわけです。

そうか、そうか。みんな、けっこう雨が続いているという実感があるんだ。これはネタにできるな、と。

続いて、スーパーに行ったんです。スーパーに行ったとき、「なんか今年は春キャベツが高いわよね」「そうよね、350円とかありえないわよね」という会話が入ってくるわけです。

そうすると、これは週末に話題にできるんじゃないかなということで、放送のネタにする。こういうことを繰り返していました。電車に乗って、耳をそばだて、カフェに行っては会話を聞いて、ということをやっておりました。

そして、もう1つ気にかけていたことが、単純明快な言葉と表現を使うこと。とにかくわかりやすく言葉を使うことですね。

2分間という天気コーナーにおいて、視聴者がちょっとでも、「あ~どうしたんだろう」っていうふうに思ってしまうと、そこで思考がストップしてしまって、次のことを考えてもらえなくなってしまいます。なので、とにかくわかりやすい言葉を使うようにしていました。

それから、単純な言葉を使いますと、見ている方に覚えてもらえるんです。そうすると、その方が、ほかの人にしゃべってくれます。「昨日ね、テレビでタケノコが安いってやってたんだよねー」、あとは、「雨後の筍って本当らしいよ」ということを話してくれる。

そうすると、その方が、天気予報でそんなこともやってるんだと、また天気予報を見てくれるという好循環が生まれてきました。そんなこともあり得るんじゃないかなと思います。

話すときのポイントとしては、相手にメリットになるようなことを伝えてあげること。そして、わかりやすく覚えやすい言葉を使ってあげる。こういう結論にたどり着きました。

ここで大切なことは、相手の立場に立つ、思いやりなんじゃないかなと。これらは、放送だけじゃないですよね。みんな、日常に言えるんじゃないか。そう思いまして、1冊の本にまとめることにしました。

10秒ずつ話す練習をするメリット

続いて、10秒という、短く話すことのメリットについてお話したいなと思っています。こちらの画面をご覧いただきましょう。

(スライドを指して)天気予報の画面なんですけれども。

「全国的に晴れますが、青森、新潟では雪が降るでしょう。気温はだいたい今日と同じぐらいですが、東京では3度ほど低くなりそうです」。

これ、10秒なんですよね。天気予報の1画面って、だいたい10秒で作られています。たった10秒間で、全国の天気の情報も、気温の傾向もわかると。けっこう10秒の中に情報って詰められるんだなというふうに思いませんか?

さらに、私、新人時代、10秒に助けられました。自分のあがり症を克服するきっかけになったのが、10秒ずつ話そうということでした。

私がアナウンサーになって最初に担当した番組というのが、昼のニュースの中継リポーターだったんですけれど、1分間の中継なのに、必ずどこかでど忘れしてしまって、忘れて、つっかえてしまう。そんな繰り返しでした。

現場にある放送原稿ってだいたい10秒から12秒くらいなんですけれど、この原稿がパーって飛ばされてしまって。こういうふうに飛ばされちゃったんですけど。

これを拾い上げてる間に、10秒話す。10秒話す。10秒ずつだと、すべてできる。なのに、つながるとできない。「あれ?」、ということは、10秒ずつ練習したらいいんじゃないか、というふうに思い始めたんです。

英語を初めて覚えたとき、ちょっと思い出したんですけれど、先生に「Repeat after me」って言われて、「This is a pen」って言われたら、「This is a pen」ってすぐ繰り返すことができるんです。ただ、「この教科書、何ページから何ページ、丸暗記してきて。覚えてきて」って言われると、急にハードルが高くなる。

つまり、短いことであれば、簡単にできる。でも、長くなるとできない。逆に、長い状態でできないっていうことは、短い状態でしゃべれなければ、長くなってもできないと。そういうことがわかってきたので、じゃあまずは、短い状態で話せるようになろうと。そういう細切れで練習し始めたことが、最初のきっかけでした。

携帯番号って、090……ってなってると思うんですけど、10桁全部覚えるとけっこう大変なんです。けれども、ハイフンが入っていることで覚えやすくなるって言われています。あと、車のナンバーも、ハイフンが入ることで、覚えやすくなると言われています。区切ることが、大切だということに気づいたきっかけですね。

それから、10秒とあがりということについて、話させていただきます。

(参加者の1人を指しながら)「では、ちょっと前のほうで、一言お願いします。ごめんなさい」。

って言うと、びっくりしますよね! 急に振らないでよ~って思いますよね。すみません、失礼しました。

急に振られるとびっくりするんですけど、だいたい、そういう場って多いですよ。「一言ごあいさつをお願いします」とか。そういったシーン、あると思うんですけれども、それも10秒間分だけ、あらかじめ用意しておけば怖くないということも、気づきました。そういったことも、本の中にまとめさせていただいております。

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