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「WEBとコンテンツの関係」バズる作品とは?(全3記事)

「紙媒体の模倣は意味がない」“見せ方”にこだわった、新しいWeb雑誌の可能性

2017年1月27日、IT業界の第一線で活躍するキーマンたちによるトークセッション「Webとコンテンツの関係。バズる作品とは?」が開催されました。本イベントに登壇した、株式会社VAZ代表・森泰輝氏、ピクシブ株式会社会長・永田寛哲氏、株式会社パペルック代表・小澤一郎氏の3名は、今後の「新しいWeb雑誌のあり方」について意見を交わしました。

Webコンテンツの新しい可能性

鳥居佑輝氏(以下、鳥居):次のテーマは、「WebコンテンツのPVのフックについて〜SEOからSNSへ」。

森泰輝氏(以下、森):これだけ見られると誤解されて、炎上しちゃうかもしれない発言なんですけど、もちろんSEOはすごく重要なやり方で、これからも普遍的にSEOが重要になってくるという流れは変わらないと思うんですね。

ただ小澤さんがおっしゃっていたように、いろいろ言われているなかで、いわゆる雑誌的な作り込んだコンテンツだったり、SEOのベースも考えたうえで運営されているキュレーションメディアが成り立っているということもあるじゃないですか。

今考えているのは、うちのインフルエンサーが出演するとなったら「出演したよ」というツイートをしたり、積極的に宣伝するという前提として、全員うちに所属しているタレントが出ている。

例えば、服紹介でもメイク紹介でも、全部被写体が彼らだとなったら、もしかするとSEOをまったく無視したWeb雑誌を作れるんじゃないかと思っているんですね。

鳥居:Google検索とかではなく?

:そうです。あえて検索ではなくて、出演してる人たちのリリース力でどこまで引きあがるのかなという。それをベースにしているからこそ、SEOベースを無視してしまって、Webである意味やおもしろさ……単純にホームページがあっただけではおもしろくないですよね。それなら紙であってもいい話じゃないですか。

SEO対策の重要性

永田寛哲氏(以下、永田):そういう意味では、pixivもさっき言ったように、サービスの中からテキストを極力排除するので、最大のデメリットはSEOだったということがあります。

最初の5年くらいはSEOを何も考えてなくて、その後で専門家を呼んでSEO対策もしていくようになったんですけど、最初は「これだけの規模のサイトで、こんな初歩的な対策をしてないのはpixivさんくらいですよね」って(笑)。

(会場笑)

永田:やっぱり世の中に対して全方位的によし、みたいなかたちはなくて、もしそれがあるならみんなやってるわけです。何かのメリットは何かのデメリットを生むし、うまくバランスを見てやって、どこを強みにするかだと思います。

小澤一郎氏(以下、小澤):SEO対策がされてなかったとおっしゃってたんですけど、画像からの流入はけっこうあったんですか?

永田:そうですね。最近出てきてますし、画像から流入されやすいような、画像のSEO対策ももちろんやっています。

:画像のSEO対策ってどんなことができるんですか?

永田:僕は技術的なことは何もわからないんで(笑)、概念的になっちゃうんですけど、画像に対してキーワード的な物とか、タグ的な物を拾われやすいように入れていくとか。あるいは画像が格納されているページ自体が引っかかりやすいとか。そういう感じみたいですね。

:小澤さん的にうまくいった(SEOの)事例はありますか?

小澤:画像からきているのか、文章からきているのか統計を取れていないので、そんなにわかっていないんですけど、Googleさんはなぜかユーザーがいいと思ったものを理解できるんですよね。

やっぱり画像を綺麗に撮れば撮るほど役に立つと思われる。例えばウチだと、グロスの色の比較をやっているんですけど、すごくわかりやすかったりすると、急速に出てきたりするわけですね。

ハック的なSEOはうちのエンジニアがやっていますけど、見やすさであったり、役に立つ画像が検索の上位に出てきているということはありますね。

例えば、企業のランディングページって、いかに作り込むかを競ってたりするじゃないですか。すごく有名なデザイン会社さんに発注して、1ページ作るだけで何百万もかかるとか。

それもインパクトがあっていいとは思うんですけど、マイナー用のコンテンツとしては見辛いなと思ったりして、キュレーションサイトとか、ああいう見せ方のほうが、スマホで通勤時間に見るのには快適かなと思ったりするんですけど、そこらへんはどうですか?

コンテンツを見るユーザー心理

:そうですね。日常的に役立つコンテンツという感じではないですね。うちのインフルエンサーもエンタメ系の要素が強くて、「クオリティが高い」「おもしろい」というところで、例えば、『週刊少年マガジン』って毎週発売日が楽しみじゃないですか。

それと同じような気持ちにさせるものが強いですね。キュレーションマガジンって別に「次号はなんだろう?」って思わないじゃないですか。それはそれでよくって、日常的に染み込んでいるのはすごいんですよね。

ただ、僕らはその逆をいこうと思って、むしろ月に1回しか来ないからすごく楽しみだと思わせてトラフィックを生むという感じですね。

小澤:僕はもともと、電子雑誌だと月一はあまりよくないという考えがあったので、(逆に)月一で作り込んだコンテンツを出すとかいう考えで、最初から毎日というのは捨てる考えです。

:ちなみに毎日系でいうと、毎日カレンダーというのがWeb雑誌の1記事として入ってるんですけど、ユーザーの写真が毎日更新されていくんですね。

開くたびに自分の好きな人の写真が新しく増えているという。ファンビジネス的なところの影響力に乗っかっているというのもあります。

小澤:ちょっと見てみたいと思います。

:お願いします(笑)。

紙媒体の模倣をしても意味がない

鳥居:「新しいWeb雑誌のあり方」というところの回答をひと言いただきたいと思うんですけど、永田さんからよろしいでしょうか?

永田:これまでの話より本格的なものになってしまうんですけど、WebにはWebにフィットした使い方というか、コンテンツの内容自体もそうだと思いますし、切り取り方。先ほど小澤さんがおっしゃっていたような、スマホで見やすい見せ方を追求すべきだと思います。

先ほど例でおっしゃっていた、「マンガは縦スクロールでひたすら縦読みがいい」という。実はあれ、最初にpixivが始めたんですよ。

:すごい!

永田:当時の電子書籍系って、ほとんどみんな紙のめくり方を模倣していて、むしろ変なエフェクトがついていたりとか。「紙をめくる感覚が重要なんだ」と言っている人がいっぱいいたと思うんですけど、僕はもともとその業界にいておきながら、この行為には何の意味もないと思っていて(笑)。

小澤:Appleの純正をソースでめくるみたいな。

永田:そうそう。ああいうのは、ただひたすら読む時にノイズにしかならないと思っていて、紙の良さはもちろんあるけど、紙の良さを模倣して表現しても、紙には絶対勝てない。

そうだとすると、電子であることのメリットはやっぱりいろいろあるので、そこに特化していくと。強みを伸ばしていく見せ方でないといけないと思うんですよね。

弱みをフォローしていくというか、模倣していくというやり方だと、紙のほうが読みやすいと思うので、例えばマンガであれば縦スクロールであるかもしれないし、ファッション系の情報であれば、また別にあったりとか。

本当に(見せ方は)いろいろあると思うんだけど、そこはまだ紙の出版のフォーマットに引きずられていて、Webとしての正解を見い出せているメディアは少ないんじゃないかなと。

それはもちろん我々も含めて、もっと追求していけるはずだし、正解となる答えは模索していかなければいけないんじゃないかなと思っています。

あとはコンテンツの作り方というか、WELQ問題じゃないですけど、Webだから許されるという考え方はある程度捨てるというか、自分たちの中で律するものをちゃんと持っていなければ第二、第三の問題が起こりうるなと思います。

そこはプライドなのか自制心なのかよくわからないですけど、法的なものではないなにかの部分で作っていくべきだし、そういったものが評価されていく土壌が重要なんじゃないかと考えています。

今後重要になるのは、コンテンツの表現力

小澤:Web雑誌というか、Webコンテンツ全体だと思うんですけど、それぞれ2011年くらいから、それぞれの時代に合ったコンテンツの見せ方を模索して、失敗したものもありましたし、今やっているものもあります。

今だったら動画メディアもけっこう出ていますけど、記事であるか動画であるかというのは見せ方だけの問題なので、そこはそんなに問題じゃないかなと思っています。

どちらかというとコンテンツの企画力であるとか、コンテンツをどのように表現するかを考えるクリエイティブ能力が重要だと思っています。

それがあれば、ネットの時代は2年ほどでどんどん変わっていくので、どの時代になっても企画を作れる。

そういった意味では、森さんの会社もすごい企画を作られてるので、すごいと思っていて、うちもそこを非常に重視しています。

個人個人の能力を最大化させるのが会社という場所だと思っていて、FAVORであれば、その子たちが化粧品が大好きで、情報もあるので、その人たちが最大限表現できるように、記事や動画の場所を提供してあげて、そこで表現してもらうということをやっています。

たぶんpixivさんでも、イラストレーターさんが最大化に表現できるようにプラットフォームを作られていると思いますし、個々のクリエイティブ能力を最大化してあげることを重視すべきだと思います。

:けっこう昔に「コンテンツは最強だよ」という、いわゆるコンテンツスキームって言われるんですけど、コンテンツって何かって言われると、例えば、このサイトに毎月2000万人訪れるから見るんですっていうのはコンテンツじゃないんですよね。

結局、どのプラットフォームに流したとしてもおもしろいと思われるのがコンテンツの強さで、もっと極論を言うと、さっきのFAVORさんみたいに、自社じゃないキュレーションメディアに出されてもウケるのがコンテンツです。

僕が目指しているところなんですけど、最近流行っている東カレ(東京カレンダー)の記事ってあるじゃないですか。「男と女がなんとか」みたいな、すごいエグい記事を書いてるんですけど、あれっていろんなところに転載されているんですけど東カレの記事だってわかるんですね。それはすごい重要だと思っています。

IT業界が出版業界から学ぶべきもの

小澤:そうですね。うちもさっきAPIの話をしたんですけど、その前からRSSでいろんなメディアさんに使ってもらっていまして、他のメディアさんでも、うちじゃない化粧品メディアの記事を出したりするんですけど、明らかに作り込みであったりとか、写真の綺麗さがぜんぜん違うんですよね。

FAVORというロゴだけはプロフィールに書いてあるんですけど、うちの宣伝はそこくらいで、あとはコンテンツ力というところで、見やすく商品選びに役立つような情報を書いてたりするので。

:それがある意味最強のコンテンツですよね。どのプラットフォームでもおもしろいって思われて、どのプラットフォームに転載されようが、FAVORのコンテンツである、pixivのコンテンツである、うちのYouTuberのコンテンツであるというように、転載されてもいけるというのが真のコンテンツなのかなと思いました。

小澤:動画メディアが去年とかその前の年から出てきてて、BazzFeedさんとかも分散型メディアみたいに言われてると思うんですけど、分散型メディアってけっこう昔からあるような気がしていて、コンテンツをいろんなところに提供しているのというのがあるので。

それが動画の時代になってバズワードとして生まれたと思うんですけど、やっていることはけっこうレガシーなことですし、コンテンツを重視しているところでいうとそもそも出版社さんはその塊みたいなものじゃないですか。

それがコンテンツを作るのが好きな人たち、クリエイティブな人たちが、それぞれの時代の流れで、紙なのかWebなのか動画なのかということで流れていると思っていて、そういう意味でクリエイティブを重視するという話をしていたのはそこなんですよね。

:雑誌が読まれなくなっても、Web企業にすれば、その力を貸してくれって言われているのがすごいですよね。コンテンツ力という意味で。

永田:やっぱり僕は昔そっちにいたというのもあるし、pixivとしても非常に多くの出版社さんとやり取りがあるからわかるんですけど、彼らのコンテンツに対する愛情や情熱のかけ方というのは、すごくリスペクトできるものがあると常に思ってます。

あくまで一般論なんですけど、IT業界の人というのはスキームありきというか、コンテンツは乗っけるものであると言って、「わりと簡単に作れるでしょ」みたいな傾向がありますけど、お二人がおっしゃるとおり、そこに乗っけるものは今後重要になると思っていて、旧メディアのそういう姿勢は学ばなければならないと思います。

鳥居:永田さん、森さん、小澤さん、お忙しい中お時間を取っていただきまして、本当にありがとうございました。みなさん今一度大きな拍手をお願いします。

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