2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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鳥居佑輝氏(以下、鳥居):では、トークセッション「新しいWeb雑誌のあり方とは」を始めさせていただきます。 Webコンテンツの歴史に触れられてきたなかで、今までの潮流をふくめて聞かせてください。
永田寛哲氏(以下、永田):かなり深いテーマなので……僕もどれだけのことが言えるだろうか、というところなんですけど、あくまで経験したことをベースに話していければと思います。僕が初めてインターネットというものに関わったのは、たぶん95〜96年の頃です。
その頃は当然ながら回線が異常に遅くて、画像を1枚表示させるだけでも1分かかるとか、そういう時代だったので、必然的に初期のコンテンツは、テキストがベースとなって、画像はほぼなしというかたちでした。
だから、どうしてもコンテンツをどこかから持ってこようとした場合には、やっぱり出版社がWebコンテンツを作る役割をしていたんですね。
さらに正確に言いますと、出版社自体よりも、編集プロダクションであったり、ライターであったり、そういう人たちが今まで書籍や雑誌に対して提供していたコンテンツを、Webのほうに提供していったという流れです。
私自身ももともとは出版業界でコンテンツを提供する側の人間だったんですね。やっているうちに自分の仕事が増えてきて、仕事を任せてもらえるようになったんですが、やっぱり出版業界というか書籍の業界は非常に古くからあるので、基本的には偉い人たちがいっぱいいるし、お年寄りの人たちがお金を持っていて、決定権限を握っていて、大きなことを長くやっていくという部分があります。
それに対してWebは、まさに今起こってきたメディアであって、かつ今よりもアレルギーを持っている人が非常に多かったので、「インターネットは僕らにはぜんぜんわからないので、もう好きにやってくださいよ」みたいな感じでした。
そうしたなかで、私事にはなるんですけど、なにか仕事を受注して言われたことをやるよりも、本当にゼロからメディアを立ち上げたいと考えて、それがpixivにつながっていきました。
pixivができあがったころというのは、YouTubeがようやく見られるようになってきたり、ニコニコ動画が始まったりした時期です。
ただ、その頃はガラケーの時代でしたから、イラストというものに対して非常に相性がよくなくて、携帯の小さな画面で表示させることができなかったので、pixivのアクセスもガラケーはそんなに多くなかったです。
でもそれは今考えるとラッキーだったと思っていて、実はガラケーの勝者たち、いわゆるiモードなどはすごく儲かっていたので、そこに固執してしまって、スマホへの乗り換えがうまくいっていないところがすごく多かったんですよ。僕らにとってはスマホに賭けて行かざるをえない状況だったので、今考えると逆によかったなと。
森泰輝氏(以下、森):コンテンツの歴史に紐づいて話していくと、例えば今、1990年代以降に生まれた人たちは、「デジタルネイティブ世代」とよく言われます。
それに対して今、生まれた時からスマホを持っている世代を「スマホネイティブ世代」と呼びます。
そこのスマホネイティブ世代に対するマーケディングができないと悩んでいるお客さんが多いので、そこに対する企画を立てるんですけど、特徴がぜんぜん違うので、やはりそこは「生まれた時からスマホを持っている」というのが重要だと思います。
僕は26歳なんですけど、生まれた時からインターネットはあったけど、生まれた時からスマホはなかった。そこでやっぱり文化が異なるなというのはありますね。
小澤一郎氏(以下、小澤):うちの場合、化粧品のほうは2年前に立ち上げたので、基本的に全部スマホをベースにしていて、その前の2011年から始めていた「パベルック」という写真サービスは、まさにみんながスマホを持ち始めたくらいのころで、写真を切り抜けたりコラージュできるアプリがそもそもなかったというなかで、海外の有料サービスの中から切り抜けるサービスを見つけてきて「これはイメージしていたやつに近しいな」と思って、UIなどを真似て作ってみました。
その時は19歳の学生だったんですけど、経験値もそんなにない学生3人だけで作ったんですけど、(ガラケーからスマホへの)転換期にすごく乗れたかなと。
あとはもともと写真のSNS、インスタグラムみたいな感じで作っていたんですけど、最初の1年はあまりフィットしなくて、写真の編集機能だけ使われていたので、そこからSNSではなくて写真編集に特化してしまって、ネットに接続する部分を一切取っちゃったんですけど。
そうしたらなかなかシンプルになって、ガラケーからスマホへの転換期に乗っかって、毎月100万ダウンロード。(特別なことは)何もしなくてもバーっといったのかなと思います。
シンプルにしたのは、海外比率が50パーセントで、日本だけではなくアメリカとタイなどのティーンに使ってもらっていたんですけど、日本で流行る前にタイで流行るような、よくわからないこともあって、そこから一気にきたんですけど、シンプルにしてよかったと思います
永田:pixivというサービスは(ユーザーの)半分以上が10代で、残りもほぼ20代後半ぐらいまでという感じなんですけど。始めた頃はむしろ20代が多くて、30代もけっこういたんですよね。
やっぱりそうやって、PCがメインのサービスだったところから、スマホからのアクセスが多くなってきたというところの流れというのはあるのかなと。
森:やっぱり1つ大きいのが、スマホネイティブ世代のなかの有名人、例えばYouTuberっているじゃないですか。
チャンネル登録数を見ると100万人とかいるけど、僕らは知らない。それはなぜかというと、スマホネイティブ世代が見ている主要メディアってTwitterとYouTubeなんですよね。
僕らは基本的にFacebookとかで近況報告をやりとりしますよね。(スマホネイティブ世代は)FacebookじゃなくてTwitterに住んでいるので、そこでバズっていることを起点に生きているので。
なのでテレビの代わりはYouTube。Facebookの代わりはTwitterなので、どうしてもTwitterとYouTubeを中心に生きている世界の人たちというので、「流行っているのはこれだよね」と。本当に「昨日(TVで)ダウンタウン観た」っていうノリで「昨日誰々の動画を観た」というふうになっていると。
小澤:10代だとTwitterで簡単にリツイートしてくれるじゃないですか。うちは20代後半がメインのお客さんなので、そもそも化粧品のことをソーシャルで発信することをしないんですけど、たまに若い子向けの商品をやったりするとものすごいツイートされたりとか。たぶん森さんの会社とかは、リツイートされるフォロワーが多いのかなと。
森:そうですよね。すごい鋭い質問で、リツイートされる数が多いことには、単純にその人の影響力があるだけじゃなくて、フォロワーの中にいかにたくさんリツイートするタイプの人たちいるのかがけっこう大きいです。今の若者って、感情がちょっと揺れ動くとすぐリツイートを押すんですよ。
僕らだと考えちゃうんですよね。「これをシェアした時にどう思われるのかな?」って。意識しちゃうからシェアのハードルが高いんですね。
若者のインフルエンサーというのは、若者がリツイートしやすいという環境があるからこそ、ある日一夜にして、フォロワー3万人になりましたみたいな人間が生まれやすい世の中になってきているというのは、若者がそういう性質だからということがあります。
小澤:商品開発の人たちがSNSを軽視しているケースがけっこう多くて、やっぱりどうしても「今やるんならインスタだよね」みたいな感じで引っ張られちゃうんですけど、若い子向けの商品とかブランドさんに対しては、「インスタよりもTwitterですよ」みたいなお話をしています。かつTwitterとYouTubeを合わせるといいですよ、ということがあります。
森:すごい話が変わるんですけど、永田さんは出版社に勤められていたじゃないですか。ざっくりとした質問なんですけど、出版社で働いていたときと、ITで働いているとき、仕事的にどっちがおもしろいと思いますか?
永田:出版社で働いていたわけではなくて、フリーランスで働いていたので、組織という意味では違ってくるのかもしれないけど、僕の実感としては……やっぱり自由度が高いという意味で、自分の力で実現できる範囲が大きいという意味ではITのほうがおもしろいんだけど。
ただやっぱり、出版というものも、自分が思いついたコンテンツを形にするという意味ではけっこう似通っているなと思っています。
それ自体のおもしろさはあまり変わらなくて、アウトプットが紙であるかサイトであるかという違いだけで、そういう意味ではITのほうが大きな事ができる可能性がある。そこのおもしろさがプラスであるかなと思います。
森:ありがとうございます。小澤さんに質問なんですけど、ツールを作っている時とコンテンツを作っている時のどっちが楽しいか、やりがいなども含めてその辺は?
小澤:今は会社としてコンテンツを重視していますが、そもそも化粧品のコンテンツなんて僕はわからないんですよね。もともとアプリの設計をするのが好きなので、うちのライターとか編集部にいい記事を作ってもらって、そのコンテンツをいかにユーザーに届けるか。
それはUIであったり、アプリの設計の問題だと思うので、そこら辺は自分が担当していて一番おもしろいなと思います。
もともとパベルックの時も、男3人だけで狭い部屋で作っていたんですけど、それこそモデルさんがブログに載せてくれたりとか、ブラジルで女の子が使ってたりとかしてたので、(自分たちと)まったく正反対の人間が使ってくれるのはすごいおもしろいと思います。
それはうちがコンテンツを作ったからではなくて、たぶん使いやすいツールを作ったから目に止まったのかなと思っています。
森:ぜんぜん関係ない話ですけど、小澤さんがオフィスを移転されて、久々に遊びに行ったんですけど、3年ぶりくらいの再会だったんですよ。3年くらい前の男臭いオフィスに行ったことがあるので、すごく女性っぽくなったなと(笑)。
小澤:そうですね(笑)。ガラッとイメージが変わっていて、タイアップ記事を作るときに、ブランドさんとかが来るんですよ。
やっぱり前のオフィスだと「こんな狭いところでやっているの?」とか「ちょっと臭い」みたいのがまずいので移転しました。けっこうお客さんにラグジュアリー系のブランドさんが多いので、そういうブランドさんのオフィスに行くと、基本全部大理石なんですよ。
そういう人たちがベンチャー気質のオフィスに来るのって「ちょっとまずいな」と思ってきれいにしたんですけど、ブランドさんから好評をいただいているので安心かなと。いかにベンチャーっぽさをなくすかということを考えています。
森:オフィスの内装が会社で作るコンテンツに影響するのかという話を聞きたいんですけど、永田さんの仕事ってすごいクリエイティブじゃないですか。オフィスにはこだわっていると思うんですけど、そういうのって中で作っている人のコンテンツ力に左右されると思います?
永田:明らかに左右されると思います。僕の持論でもありますけど、人間はかなり環境に左右される動物だなと。なので、そういう外的な環境、どういうオフィスかということもそうですし、さらに言えばそこに集まってくる人たちに影響されて、成長もすれば悪影響を及ぼされる可能性もあるので、そこでいかにいい環境を整えてあげるかは重要だと思います。
森:すごくカオスなオフィスにして、逆にデメリットだと思うところはありますか?
永田:デメリットは、普通の会社っぽい会社としての機能がなくなってということはないけど、「これセキュリティ大丈夫なのか?」という(笑)。ぶっちゃけ「ちょっと危ないかな?」みたいな。
(会場笑)
永田:もちろんユーザー情報などは大事に扱っているんですけど、自由な雰囲気の場所にはなっているし、お客さんが入ってくるスペースと普通のスペースの境目も非常に曖昧なオフィスであるので、そういう意味で、まあ危険ということはないと思いますけど、けっこう固い会社の人が見ると驚かれるのかなと。
小澤:うちもお客さんが来るところと、編集部があるところをガラスで仕切っているんですけど、そこを仕切らないでライターさんが出入りしやすい環境が重要かなと思っていて、立地とかは重視して選んでいましたね。
森:オフィスが変わることで、初期メンバーのコンテンツに対する考え方は変わったりしましたか?
小澤:もともとやりたかったことはあまり変わっていなくて、男連中だけだったときも、自分たちはバズを生み出したりコンテンツを生み出すのが下手だとわかっていたし、デザインが下手なのもわかっていたので。
女性にヒットしたいのであれば、美大生を連れてきてデザインしてもらったりとか。基本的には自分たちのアプリでそこをどう伸ばすかということを考えていたので、モチベーションが下がることはとくにないかなと思います。
森:なるほど。オフィスの話になっちゃいましたね(笑)。
永田:最近の会社はみんなお洒落でいいですよね。うちは変わってるけど、実はけっこう安いんですよ。別に初期に壁紙を赤や黄色にしただけで、値段はあまり変わらないんですよ。むしろ作り込む方がお金がかかる。
森:そんなふうには見えなかったですね(笑)。
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