2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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仲山進也氏(以下、仲山):質問、いいですか?
石川善樹氏(以下、石川):はい。
仲山:(ホワイトボードに記入しながら)これ、僕はこう表現してもいいかなと思ったんですよ。本には書いてないんですけど。この人の本、僕が読んだのは2冊目なんですけど、これが1冊目です。オリ・ブラフマンさんという人で。
石川:『ヒトデはクモよりなぜ強い 21世紀はリ-ダ-なき組織が勝つ』という?
仲山:そうです。要は、ヒトデは切ってもまた再生してくる組織体で、クモは頭をつぶしたら死んじゃうという意味です。ヒエラルキー組織はリーダーを潰したら機能しなくなるけど……。
石川:ネットワーク型?
仲山:そうそう。ネットワーク型の組織とヒエラルキー型の組織について書いてあって。この人、アメリカの軍隊と関わる仕事をしていて。
ゲリラ戦では、従来のヒエラルキー型の組織が、ネットワーク型の組織に苦戦をするのだとか。こちら側もそれではいけないから、ネットワーク型を志していかなければいけない、みたいなことが書かれているんです。そういった2つを対比させながら、「どうすればヒトデ型になれるのか?」が最初です。その新刊がこれです、『ひらめきはカオスから生まれる』。
石川:スクリーンの本が、ホワイトボードの内容にあたるわけですね。
仲山:この本には、これ(ホワイトボードの内容)が書いてある。「3つの要素はこれです」みたいな。
石川:質問というのは?
仲山:この3要素は、言葉として出てくるだけなんですよ。僕、こういう式にして考えたいと思ったんですね。たぶん、どれかがゼロになると、なんか成り立たないような気もします。
石川:そうですね。そういう意味でいうと、人間にとっての一番の余白は、寝ている時ですね。
結局、みなさんの中で寝る間を惜しんで働いている方がどれだけいるのか。起きている時よりも寝ている時のほうが、人間は賢いんですよね。寝ている時のほうが脳がよく動いていて(笑)。だから、起きている時よりも寝ている時のほうが、脳は活性化しているんですよ。
仲山:どういうことですか?
石川:日中起きている時に集めた情報を、寝ている時に再構築してくれているんですね。だから、理屈ではつながらないような異分子の情報も、ガーッとちゃんと体系づけてくれるというか。ちゃんと寝て……。
仲山:(ホワイトボードの「余白」の字を指して)「ちゃんと寝て」ですね(笑)。
石川:変な人と会って。
仲山:(ホワイトボードの「異分子」の字を指して)「変な人と会って」。
石川:嫌なことをすると……。
仲山:(ホワイトボードの「計画された偶然」の字を指して)「嫌なことをする」。
石川:穏やかなカオスが、イノベーションを生み出すということですね(笑)。逆にいうと、変な人に会ったり、嫌なことした日は……。
仲山:早く寝る。
石川:そうそう(笑)。振り返りをして、早く寝る。
仲山:石川さん、「就寝前に、寝ている間に働いてくれる脳に対して『よろしくお願いします』と言ってから寝る」と言ってませんでしたっけ?
石川:そうそう。僕は寝る前の儀式として、起きている時よりも寝ている自分のほうが偉いんで、ちゃんと敬意をはらって「じゃあ、今日もよろしくお願いします」と言ってから寝るんですよ(笑)。
仲山:(笑)。「明日、もっと賢くなりますように!」と。
石川:「明日は生まれ変わらせてください!」と言って(笑)。「よろしくお願いします!」と言って寝ますね。
仲山:それで、9時間くらい寝る。
石川:9時間くらい寝ます(笑)。
仲山:(笑)。あの話を聞いてから、僕も長く寝ることにまったくストレスを感じないようになりました。
石川:そうなんですよね、最初の話にあった、「印象に残ったことはなんだろうか?」とか、日常の中に埋め込んだほうがいいルーティンはけっこうある気がしますよね。最近気づいた、日常に埋め込まれたルーティンで、「そういうことだったのか!」が1つあります。今日のテーマとぜんぜん関係ないんですけど、お箸なんですね。
仲山:お箸?
石川:日本人はお箸を横に置くじゃないですか。韓国だと縦に置くんですよ。箸の先を相手に向けるんですね。日本人が発明したんですよね、箸を横に置くというのは。「これはなんでなのか?」とはずっと疑問に思っていて、最近それがわかったんですよ。
仲山:なぜですか?
石川:「ああ、そうか」と思うのは、箸というものは結界なんですよ。人間界と自然界をわける結界なんですね。この結界を解いて……。解くという作業が箸を持ち上げることなんですよ。そして、命をいただきます、となるんですね。
仲山:なるほど。
石川:食を食べることは、自然界に人間界のものが入っていく儀式なんですね、あれはルーティン。だから、世界中を旅しても「いただきます」と言う国は……。
仲山:ああ、ないですよね。
石川:たぶん、僕が知っているかぎりでも、日本しかないんですね。それは箸を横に置くところに埋め込まれていたりしまして。こういう話こそ、僕は親から聞きたかったなと思って。
子供の時にずっと母親に文句を言っていたんですよ。「なんで『いただきます』と言うんですか?」「なんで箸は横なんだ?」と。
仲山:「なんで箸は横なんだ?」と言ってたんですか、子供の時に?
石川:言ってました。僕、もう「なんで、なんで?」坊やだったから。もう母親が「うるさーい!」「昔からそうなってんのー!」と言って(笑)。
仲山:(笑)。「昔というのは、いつ?」と、また聞いたりして。
石川:そうそう。「『いただきます』とは、いったいなんなんだ?」。だから、あそこでうかつに答えを聞かなかったから、逆によかったですね。その時の疑問がずーっと持っていたんです。
そういう日常の疑問がめちゃくちゃいっぱいあるんですよ。それをある時ふと、計画された偶然で答えを見つける。その話も、どこから聞いたかというと、料理研究家の人なんですね。土井善晴さんという人から教えてもらって。僕はふだん、そんなに料理する人じゃないんで。
仲山:この前、糸井(重里)さんと対談してる記事、読みました。
石川:そうそう。
仲山:石川さんも糸井さんと「ほぼ日刊イトイ新聞」で対談されたことがありますよね。
石川:そうなんですよね。そういう意味でいうと、ああいう対談をするような人は、異分子に会いやすいですね。
仲山:そうですよね。
石川:僕も研究者なのに、比較的いろんな人に会いやすくて。
仲山:すごく多いですよね。僕、石川さんに会って「今日どうしましょう?」とひと言目に言って、「最近、なんかあります?」と聞いた時に最初に出てきたのが、「日本人の三大義務があるじゃないですか。これはなんなんだろう?」みたいな話があって。なんかECと関係なさそうすぎると思って、だから、まだ深堀りしてないんですけど。残り2分では語れない感じですね。
石川:みなさん、たぶん1年の抱負を立てられると思うんですね。立てるじゃないですか、だいたいお正月とかに。研究者にとっての抱負は、その1年間かけてなにか考えたいこと。それも、本業の研究とは別になにか考えたいことを考えるんですけど、僕の去年の抱負は「考えるとはなにか?」だったんです。
仲山:考えるということを考える。この間、3時間の会の……。
石川:3時間、その話をしましたけど。今年考えようと思っているのが、憲法で日本人の義務は3つあると書いてあるんですね。納税と教育と勤労。「これはいったいどういう意味なんだろうか?」を深く考えたことがないと、日本人として反省して。
仲山:義務なんでね。
石川:義務なので。僕、今、子供が1才ちょっとでいるんですけど。「パパー、三大義務ってなにー?」と聞いてきそうな気がするんですよ、僕の子供なんで(笑)。
仲山:それで答えたら、「なんでそれが義務なのー?」と。
石川:「納税というのはなにー?」「なんでー?」と絶対に聞いてくるんですよ(笑)。もちろん権利というものがありますけど、やっぱり義務を果たしてこその権利なんで。まず「子供になにを残せるかな?」と思った時に、納税、教育、それから勤労。これがなんなのかをしっかり叩き込めたら、親としての責任を果たしたかなと(笑)。
仲山:じゃあ、それを今年は考えていく。
石川:それを今年1年間かけて考えていく。「納税とはなにか?」を、たぶん考えていくんですけど。ECとはぜんぜん関係ないですよね(笑)。
仲山:チーム作りを考えるにあたっては、義務とは組織のルールということですよね。
石川:本当は、実際は関係するんですよ。残り少ないですけど、「なぜ関係するか?」を、お話していいですか?
仲山:はい。
石川:去年、「そもそもインプットとはなにか?」「考えるとはなにか?」を考えていました。シンプルに考えると、物事にはインプットがあって、そこからなにか考えたり作業したりするプロセスがある。これはアウトプットじゃないですか。たぶんこれ、ビジネスでも国というレベルでも一緒だろうと思うんですけれども。
「なにをアウトプットすべきなんだ?」は、別の言葉で言うと「組織において、貢献すべきアウトプットとはなにか?」。それを考えた時に、僕は3つあると思ったんですね。その1つは、まさにきちんと利益を上げていくという直接の貢献ですね。直接の貢献がこうあって、これは国でいうと納税をすることだと思ったんですよ。
たぶん、現場レベルの人はいけなくて。マネージャーになると、人材育成はすべきことなんですね。もっと上になってくると、価値への取り組みというんですかね?
仲山:価値への取り組み?
石川:つまり、お金を生むということ以上に、やっぱりそのビジネスが価値を生まなきゃいけないので。
ミッションに近いかもしれないですけど。直接の貢献、ビジネス上の貢献と人材育成と、価値への取り組みという、この3つが、基本的に組織で働いている人間には、バランスは人によって違えど、求められるんだろうなと思っています。経営陣になればなるほど、価値への取り組みが求められる。現場に行けば行くほど、直接の貢献が求められる。これは、国でいうと納税・教育・勤労だなと思ったんですね。
仲山:そこ(価値への取り組み)が勤労?
石川:勤労になるのかと思うんですね。だって、納税と勤労がわけられているのが、そもそもおもしろいなと思っていて。では「直接の貢献をするためのプロセスはなんだろう?」「この時代における人材育成とはなんだろう?」。こんなことをふっと時間ができた時に、ノートに書き連ねて考えているのが、僕ら研究者なんですね。ひと言でいうと、めちゃくちゃ暇な人なんですよ。
仲山:(笑)。
石川:(笑)。研究者は暇な人と言うんですからね。こういう、なんかふわふわしたことを考えてるんです。
仲山:ただふわふわと考えているというよりは……。「考えるとはなにか?」で「研究者は考え始めて5秒なにも浮かばなければ、問いが悪いと考えて問いを変えるようにする」と言ってましたよね。あれがけっこう印象に残っていて。
石川:そうですね。とくに現代社会は研究者のみならず、いろんなところで考えることが仕事の手段になっていることが多いと思うんですね。考えるのが仕事になっているのに、そもそも「考えるとはなにか?」と考えたことがなかったら、仕事にならんと思ったんですよ。
部下に「おまえ、もっと考えてから持ってこい」と言うのを、僕、よく見るんですよ。でもそれ、レベル感でいうと、「地球を平和にしてこい」とほぼ一緒だと思うんですよ。
仲山:なにをしていいかわからない。
石川:そうそう。あるいは監督だったら「よし、勝ってこい!」とほぼ一緒で(笑)。なにも言っていないのと一緒。だから「考えてこい」という、そんな指示を出している時点で、「私は『考えるとはなにか?』を考えたことありません」と自分で言っちゃっているようなものなんです。
「人の振り見て……」と言いますけど、そういう人たちを見てて、自分は「ちゃんと『考えるというのはなにか?』を考えよう」となって。結果、やはり1年ぐらいかかりましたね。1年かかって、ようやく道半ばぐらいまできたかなという(笑)。
仲山:その話をすると、もう……?
石川:長くなるんで、もしみなさんいらっしゃったら、福岡で(笑)。その話をしてもいいし、大阪でやってもいいですし。
仲山:(笑)。というわけで、気づけばもう5分が過ぎてまして。
石川:本当だ!
仲山:「今日一番印象に残っていることはなんですか?」を振り返りながら。これは……実際に誰かとしゃべった方がいい? それとも、別に自分の中で内省をすれば?
石川:やはりノートに鉛筆やペンで書くのが一番いいみたいですね。脳に刻み込まれるみたいです。ダイエットもそうなんですけど、アプリでコーチがいてなんか……というより、体重を鉛筆で書くのが、今のところ最強のダイエット法なんですよ。これに勝るものはまだ生まれてないですね。
仲山:なるほど。
石川:だから、自分で書くということですね。物理的に書く。
仲山:(スクリーンを指して)これがダイエット本ですよね。
石川:そう、『最後のダイエット』という本を書いてまして。もし万が一、ダイエットしたい人がいたら、これで最後になりますよという(笑)。
仲山:もう2度とリバウンドしないようにということですね。
石川:リバウンドしないようにということですね。
仲山:これもめっちゃおもしろかったです。会社の経営とリンクさせながら読むと、セールして、反動で売れなくなるからまたセールして……というのと似ていて。
石川:ああ、そうですね。
仲山:むちゃくちゃ参考になりました。という、こんな感じでずっと話が終わらないコンビなので、終わりたいと思います(笑)。では、ノートに印象に残ったひと言を書き出しつつ、後はアンケートにも書いていただければうれしいですね。
石川:あっ! うれしいですね。
仲山:ということで1時間、長かったのか短かったのかわかりませんが、これで終わりたいと思います。石川さん、どうもありがとうございました。
石川:ありがとうございました。
(会場拍手)
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