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恐怖体験のプロデュース (全8記事)

恐怖を演出する魅力とは? お化け屋敷プロデューサー「反応がダイレクト」「同じやり方が通用しない」

各業界の第一線で活躍するプロデューサーを招いて行われるセミナー講座「PRODUCERS CAMP TOKYO」で1月28日、お化け屋敷プロデューサーの五味弘文氏が登壇しました。主催はリクルートホールディングスの「Media Technology Lab.」。「赤ん坊地獄」などの着想はどこで得ているのか? 恐怖を演出する魅力をどう感じているのか? 本パートでは五味氏への質疑応答が行われた様子をお届けします。

五味氏「お化け屋敷のための情報収集はほとんどしていない」

古川央士氏(以下、古川):このままの流れで質問に入っていければ。事前に(質問を)うかがって集めているので、出していけるかと思います。スライドになってない部分で、プロデューサーについてのお話をうかがいたいんですが。「プロデューサーとして大切な能力ってなんですか?」という。

ご質問いただいた方としては「情報収集力、分析力、コミュニケーション力、あとスタンスとしてリーダーシップが大事だと思っているんですけど、どう思いますか?」という話はどうでしょうか?

五味弘文氏(以下、五味):これ、ほとんどないですね(笑)。

古川:考えてない?(笑)

五味:情報収集能力については……情報はそんなに収集してないですね。僕はいろんな話をしましたけども、ほぼ現場で考えてます。そういった意味では、分析はしてますよ。

古川:例えば「赤ん坊を抱いて進む」「素足で歩く」という発想は、どういうところから生まれてくるんですか? なにか参考とかきっかけになるものがあるのか、もしくは自分の中で発想しているか。

五味:基本的に、僕はあまりホラー映画をたくさん観たりしてないです。

古川:そうなんですね。

五味:普通です。普通に一般的なホラー映画は知っている程度です。

古川:怖いものについてはめちゃめちゃくわしいと勝手に思ってましたよ(笑)。

五味:普通はそう思いますよね。そうでもないですよ。そんなにホラー映画を観ないですからね(笑)。そこ笑ってていいかどうかわからないですけどね(笑)。

古川:特別に情報収集しているわけでもない?

五味:「勉強しろよ」って言われちゃうと、確かにそうだなと思うんですけど。ホラー映画からなにかの着想を得ることは、ほとんどないですね。

「勉強しろよ」はさておき、情報収集って意味でホラー映画を見ることはしないし、必要ないと思ってます。時間が潤沢にあれば、もちろん見ることはありますけど、それより先に見るべきものはたくさんあると思うので。もっと他のものを見ていたほうが全然いいな、と思いますね。

……どこから得るんですかね。他の映画とか小説とか好きだし、展示とか見に行きます。そういったホラー以外のものから、なにか積み重なって回ってくるんじゃないですかね。

お化け屋敷は「消え去っていくもの」

古川:他の能力というか、プロデューサーにとって大切なことは、どういったことがありますかね。

五味:一番思うのは、スタッフが多いので。考えてることをできるだけ具体的にわかりやすく伝えて、スタッフがそれを、自分が想像している以上に素晴らしいものとしてこっちに提案し直してくれる。そのやり取りかなって思いますね。

古川:イメージを伝える力?

五味:そうです。あるいはコミュニケーションですね。どちらかというと演出のほうに相当強く入ってきてることなので、演出家の能力みたいな話になるかもしれないです。

古川:ありがとうございます。次のページにもいくつかあるので、上から順にうかがいます。

「もともと演劇をなさっていたのが、今ビジネスとして見識を広げるプロデューサーという立場で、『同じだな』と感じる点と『ぜんぜん違うな』というところはありますか?」。どうですか? 演劇とお化け屋敷のプロデュースでは。

五味:「まったく同じだな」と思うのは「生(なま)である」ということですね。「消え去っていくものである」ということはすごく大事なことで。「複製されるもの」「消え去るもの」は決定的に違いますから、その点は演劇とお化け屋敷では同じかなと思います。

それから、「キャストがいるストーリー」という部分は同じだと思うんですけど。ぜんぜん違うと思うのは、1つの演出で「ある程度完成した」という完成地点に、お化け屋敷の場合はなかなか到達できないという部分ですね。

先ほど話したみたいに、お客さんはそれぞれ違いますから、違うお客さんに対して、まったく同じ演出はできません。その部分が決定的に違うし、たぶんそれが一番おもしろい部分です。演劇より反応がダイレクトである、というのが魅力なんです。ダイレクトということは、よりパーソナルであるということですね。

古川:極端な話、背の高さの違いで脅かし方を変える感じですかね。

五味:そうですね。一緒に入ってる相手との関係性でもぜんぜん違うんです。

古川:演劇では、多少その回によって違いはあれど、そこまで個別に変えていくことはなさそうでですね。

五味:それはないです。そんなことはできないですからね。

古川:「ふだん取り入れている情報源」は、先ほどの話ですかね。映画とか本とかですかね。

五味:映画、本、あと美術関係ですかね。

古川:美術館や展覧会に行かれたり?

五味:そうですね。展覧会は行きますね。

古川:そうなんですね。「近年、ミッション型のお化け屋敷が登場して話題になってますが、その点に関してどう考えてますか?」(笑)。ミッション型のお化け屋敷とは、まさに「赤ん坊を抱いて」とか、そういうことですよね?

五味:ここで言っている「ミッション型お化け屋敷」というのは、僕が作っているお化け屋敷とはちょっと違うもののことなんじゃないでしょうか。“新しいスタイル”と書いてありますから。いろんなところで展開していて、おもしろいなと思いますよね。

古川:ご自身が体験しに行かれたりとか。

五味:します。僕は怖がりですからね、人一倍怖がってます(笑)。

次にやりたいのは海外展開?

古川:「人生で一番やってみたいことはなんでしょうか? 仕事面で」という質問です。

五味:おもしろいですね。それはできるできないで言うと、できないこと言ってもしょうがないですよね。例えば僕が「レストランを作りたいです」とか言ってもしょうがないですよね。

古川:作りたいんですか?(笑)。

五味:そういうことじゃないです(笑)。例えば「バンドやりたいです」とか。

古川:それはちょっと現実的じゃないですか(笑)。仕事面で。先ほど「海外展開」と言ってましたよね。

五味:小説をまた書きたいかな。

古川:えっ、そうなんですか? 本は今3〜4冊出されてますよね。

五味:小説は1冊。

古川:それはお化け屋敷とか関係なく、小説として?

五味:でもやはりホラー小説になるでしょうね。

古川:それはお化け屋敷という形では伝えられないものがあるからですかね。

五味:そうですね。やっぱり物語を作るのが、僕のお化け屋敷の1つのスタイルなので、それを発展させて、お化け屋敷でない形で楽しませることはできないかなと思ったりします。

お化け屋敷で使用した人形や衣装は保管している

古川:ありがとうございます。次の質問、「資材の保管場所に関して」。先ほど「壊す」と言ってましたよね、大部分は。

五味:そうです。ただ人形とか衣装とかはとってますけど、それは「秘密の倉庫」ということで(笑)。

古川:「秘密」のままで大丈夫ですか? それ絶対に入りたくないです。めちゃめちゃ怖そうです(笑)。

続いて「総製作費」に関する質問。これはちょっと言えないかな。

五味:そうです。秘密の制作費です(笑)。

(会場笑)

古川:そうですよね。規模にもよると思いますしね。「期間限定のお化け屋敷ではお客様の反応に合わせてどのように工夫しているかを教えてください」。先ほど出ていたお話ですね。異なる種類がありますか? 

「浅草花やしきの『桜の怨霊』を常設、またドームシティではどういった工夫をされているのか教えてください」。この実際の反応に合わせて調整していくのを、常設型ではどうのように工夫しているか、ということですか。

五味:常設型は、そんなに調整はできないですね。そういう宿命だと思いますね。

古川:その中でも、普通の常設型と違う工夫はするんですか? やっぱり常設型だとどうしてもそうなってしまう感じですか?

五味:どうしてもそうなりますね。気になるところがあると直したりしていきますけども。でも、それは本当に修正程度ですから。こまめに調整するような、まさに「ライブ感」というレベルとは違うものになってきます。常設型はどうしてもそうなると思いますね。

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