2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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古川央士氏(以下、古川):最後のトッピクスなんですけど、そういったお化け屋敷から考える、プロデュースそのもののお話を聞ければと思います。まず1個目のポイント、「要素が少ない分だけ本質が掴みやすい」というのはどういうことなんですか?
五味弘文氏(以下、五味):先ほどニッチだっていう話をしたじゃないですか。ニッチとは、1つのところをずっと掘り下げていくようなエンターテイメントなんですよね。お化け屋敷の場合は「恐怖」という部分に特化していて、そこをずっと掘っていくんです。
僕が、最初に「プロデューサーではないですから」って話をした中で、「普遍的なものがそこに見えてくるかもしれない」という話をしましたよね。どういうことかというと「『恐怖』をずっと掘って下げていったら、恐怖のことしか現れないと思いきや、意外にもエンターテイメント全般のことが見えてくる」という側面があるということなんです。
1つのことをずっと、「怖いってどういうことか」「怖いって楽しいのか」「お化け屋敷ってなんでお客さん来るの」というようなことをずっと考えていくと、お化け屋敷の構造が見えてきます。その構造は、そのままエンターテイメントの構造に、全然別の形にですけど、置き換えることができる。
「負荷を与えると、人は『楽しい』と感じることもある」「身体性は強い負荷になる」とか。いろいろなことがそのまま、それぞれの人の頭の中で、「自分がやっていることだったらこう考えられる」「応用できる」って、どこかでハレーションを起こす側面があると思うんですよ。
古川:次のところも近いですね。
五味:そうですね。ニッチで1つのことを掘っていくと、どうしてもオタク化しがちな傾向が生まれる。でも、オタク化という罠に嵌まりこむことなく、「それが一般の人たちにとってどういう楽しみになるのか」に常に視点をおいて考えていくことが重要なポイントです。これをやっていくと、先ほどの話ですけども、本質的なところに近づいていくことができるんじゃないかなと思いますね。
古川:お化け屋敷だからと言って、単に「怖い」だけ、ニッチなところだけを追求していくのではない。「緊張の緩和」など、いろんなことを紹介していただきましたけども、そこから「楽しい」に変えていくとか、他のエンターテイメントのプロデュースにも通じるような要素を大事にするっていうことですよね。
五味:まさにそうですね。
古川:あとは「お客さんは客観的に判断しようとする」というのは、先ほど出ていた話ですね。
五味:先ほど話をしていて、「常に自分は客観的立場になりたい」と常に考えてる、ということですよね。
今、これだけエンターテイメントが溢れてる世の中において、お客さんは1つのエンターテイメントを楽しもうとするときに、まず客観的で冷静な視点に立って、「これはどういうものなんだ」ということを、一種批評家的な視点で観察する。
それから見に行く、行かないを決める。あるいは見に行ったとしても、まずそういう客観的な立場から入っていって、それから楽しもうとする。
昔、エンターテイメントが今ほど盛んではなかった時代は、もっと素朴に純粋に「お金を払ったら楽しもう」と、前向きな立場で臨んでいたと思うんです。けれど、今の世の中、これだけ物が溢れてくると、それが自分にとって楽しいものか、評価していいものかをまず用心、警戒して、自分で判断してから向かい合う。そんなふうに、お客様は昔とだいぶ違う立場を取るようになってきました。
「お化け屋敷っていうのはそもそも特殊である」「客観性を持とうとするという意味で特殊です」という話をしましたけども。このように考えると、その特殊さは、実はそんなに特殊なことではないように思えます。
古川:エンターテイメントですね。
五味:いろんなエンターテイメントに置き換えた時に、そういうことが起こってるんだろうなって思いますよね。
古川:逆にプロデュースする立場から考えると「なにか楽しいものを用意してから提供して、楽しいと思ってもらえる人に来てもらう」ではなくて、「冷静に見極めますよ」という人がたくさん来るっていうことですよね? それが増えて来ているという感じですよね?
五味:そういう人がほとんどだと思って臨んだほうがいいくらいですね。
古川:そういう人を興奮に変えていくところが大事だ、ということですよね?
五味:そうですね。「冷静をどう興奮に変えるか」ですね。みんな、そうは言いながらも「エンターテイメントを楽しみたい」と思っているわけですから、そういう嗜好性は当然持っているわけです。
その前に、なんらかの形に足かせがあるわけですよね。自分に「目の前にあるエンターテイメントは評価に値するものなのかどうか」という評価基準を設定している。それを解決してやる必要があるんです。
それが次のトピックで「興奮に飛び込む理由を作る」。つまりエンターテイメントに飛び込むだけの理由付けをしてあげる必要性が、戦略的にあると思っていて。
批評的に対象に向かい合っているんですから、その人に対して「あなたが興奮してもいいものを、私はちゃんと提供しますよ」と、きっちり示してあげないといけないんですよね。そういう理由付けをしてあげると、お客様は満足して「わかりました。だったらあなたに身を委ねましょう」となってくれる。お化け屋敷の場合は、それをより強くやらなければいけない。
お化け屋敷の話に戻してしまいますけど、予想した通りのことが起こっていくと、お客様は「予想通りだな」と思って、冷静な立場を崩さないんですよね。でも、そこで予想よりも違うことをやる。
「こんなところから出るのか」「このくらいかと思っていたら、こんなにデカイのが出るのか」「こんなに勢いよく出るのか」「こんなに怖い顔してるのか」。どんどん予想を乗り越えたり、覆したりをしていった時に、「これは一筋縄ではいかないぞ」と、意識が変わってくるんです。
「自分がこれくらいのお化け屋敷で悲鳴をあげるわけないじゃん」「悲鳴をあげるものか」という気構えを持って進んでいたのに、自分が思っていたようなものではなくて、予想を裏切るようなすごい仕掛けがいろいろ施されてくると、そんなお化け屋敷ならば、「こんなに頑なな自分がそれに悲鳴をあげてもいい」という理由付けができるようになるんですよ。
最初のうちはお客様が主導権を持っているわけですよ。その主導権を、どこかの段階で渡します、譲りますと思わせないといけない。主導権をどこかで譲り受けないと、お客様を楽しませることはできない。
そのために必要なことは、信頼です。「あなたに自分の主導権を渡しても構わないです」という信頼が必要になってきます。この主導権の譲渡によって、お客様は初めて冷静から興奮状態に踏み込んでくれる。お化け屋敷の場合はそうです。
それは程度の差こそあれ、あらゆるエンターテイメントの現場で行われていると思うので。ある程度汎用性を持つ話ではないかなと思います。
古川:エンターテイメントに限らず、ご飯食べるときもそんな話してましたね。「ちょっとやそっとじゃ美味しいって言わないよ」みたいなスタンスで行ってたんだけど、実際食べると美味しくて。しかも「素材にをこういうストーリーで、すごいこだわってる」って聞いちゃうと、「そこまでやってるんだったら認めようかな」となる……みたいなことですよね。汎用的な話ですよね。
五味:そう。主導権がどんどん強くなってくるんですよね、消費者のほうが。だからそういう気持ちになっちゃうんですよね。段々、王様的な立場になってきて。
古川:いろんな物を選べますから。消費者の側からすると「どのように自分が消費するか」「お金を使うか」がたくさん溢れてる中ですからね。
五味:だから、そういうものだと思いながら、エンターテイメントも食事も提供していかなければいけない。そんな時代だと思います。
古川:ありがとうございます。長くお話しいただきましたけども、最後に今後のビジョンをお伺いして、質疑応答にいきたいと思います。今後どういったことに取り組まれていくのかをうかがってもいいですか? これまで25年間やられてきたので、基本的には変わらないのか、これからもどんどん仕掛けていきたいのか、少し気になったので。
五味:僕はそんなにビジョンを持たない人なので(笑)。
古川:流れで起業した人ですからね(笑)。
五味:そうそう(笑)。流れるままに来ているので、「こうなりたい」っていうビジョンを人生の中であまり持ったことがないですね。
それなりにいろいろやらせていただいているので、もうちょっと今やっていることを拡大していきたい気持ちはあって。その1つは、日本だけじゃなくて海外での展開。これはジャカルタでやったお化け屋敷です。ジャカルタで一昨年、やらせてもらいました。こんなことをやっていきたいな、と思うのが1つ。これが海外への展開ですね。
その反対で、もっと日本的なところでずっと入りこんでいきたいとも思っています。やっぱり日本には日本の恐怖があって、そういったところをもっと掘り下げていきたい。
海外に目を向けてるから、同時に日本にも目が向いているんだと思います。それをずっと考えていくと、日本人の物語に対する考え方だとか宗教観だとか、そういったものがだんだんと見えてくるんじゃないかと思うんです。そこをもうちょっと掘り下げていきたい、という気持ちはあります。
古川:内と外の両方をもっと深堀りしていきたい、という感じですね。
今、海外のお話があったので。いただいた質問の中に「海外展開されるときに、なにかパッケージ化して持っていってるのですか?」というものがありました。個別にプロデュースしてる感じですか? 海外に限らず、日本各地で展開していく時に、一度プロデュースしたものをそのままパッケージにして展開していくのか、あるいは個別にやっていくのか。
五味:「パッケージ」という言葉だと、「そのまま梱包して持っていって同じように建てる」という認識だと思うのですけども、そういう感じのパッケージ化はできないものなんです。残せるものってわずかしかなくて、人形とか衣装とか、そういう限られたものしか残せなくて。あとは壊してしまうしかないんです。
だから、パッケージというよりも、それをもう1回再現するイメージの方が近いと思います。各開催場所に応じて変えているかというと、変えているときもあれば、変えてないときがある、という感じですね。
古川:なにかの違いで判断してるんですか?
五味:会場の違いだったり、予算の違いだったりします。
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