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ヒットを生むプロデュース(全5記事)

“問題点の把握”がアイデアの質を変える--つんく♂らヒットメーカーがひらめきを生むプロセスを語る

2016年12月7日に開催された「IVS 2016 Fall Kyoto」のなかで、ヒットを生み出す秘訣や思考について語るセッション「ヒットを生むプロデュース力」が行われました。登壇したのは、モーニング娘。の生みの親であるつんく♂氏と、数々のサービスのプロデュースに関わってきたドワンゴ横澤氏。モデレーターを務めたのはSHOWROOM前田氏。本パートでは、ヒット作に必要不可欠な「アイデア」を生み出すための構成要素について語りました。

ヒットとナイスは分けられない

前田裕二氏(以下、前田):せっかくなので、あと2問くらいいけたらいいなと思います。もしあれば、ご質問をお願いします。

(会場挙手)

質問者2:すいません。私は台湾の人ですから、日本語はちょっとダメです。だから、英語ですいません。

前田:ぜんぜん大丈夫です。

質問者2:はい、すいません。(以下、英語で質問)

前田:なるほど。ええとですね、ちょっとつんく♂さん含めておうかがいしたいんですが、端的に言うと、コンテンツを作るときに、どれだけ受け手側に寄りそうか、あるいは迎合するか、みたいな話なんですけど。先ほどの、左脳と右脳の話に近しい部分があると思うんですけど。このコンテンツを作ったら、いい感じに受け取られるだろうなとか。

彼(質問者)は「nice contentsとhit contentsの違い」みたいな話をしていたので、そういうことだと思うんですけど。ユーザーニーズやユーザー感覚みたいなところに、どれだけ寄りそってコンテンツを作られてるか、お考えはありますか?

横澤大輔氏(以下、横澤):これ、すごく難しい質問だな。

前田:難しい質問ですよね。

つんく♂氏(以下、つんく♂):いいものはたくさんあるのよ、世の中にも、俺の作品の中にも。でも、売れてないものもたくさんあるわけ。

前田:なるほど。

つんく♂:悔しいけど。

横澤:ヒットとナイスって、分けられないと思っているんですよ。

前田:作り手からすると分けられないですよね、とくに。

横澤:分けられないですね。というのは、ヒットすると思って作るし、ナイスだと思って作るわけじゃないですか。

つんく♂:タイミングが大きいように思うな。

横澤:だから……、同時に考えないといけないですよね。なんか、答えになってないんですけど。

前田:まあ、タイミングは大事ですよね。供給側は、当然ヒットさせたいと思って作っているわけなんですけれど。タイミングによって、いいものがヒットとして受け入れられるときもあるし。……つんく♂さん、書かれてますね。

つんく♂:でも、心の中には最終的にどっかで、「売れなくってもいいから、ええものを残したろう」って気持ちのほうが強いのかも。時代的にも。

前田:なるほど。こういう部分がやはり「アーティスティックだな」って感じますよね。

横澤:そうですよね。

問題点を理解してないと、アイデアは出ない

前田:ビジネスマン思考の強い人は、良さの定義を「ヒットしたりとか、世の中に認められないと意味がない」と考えるのは、わりと商売気質の人の発想だと思うんですけれど。つんく♂さんは、どちらかというと、いいか悪いかというところに軸足があって。

横澤:ものを作るときに、いいか悪いかを、まず考えなくないですか? 

僕は考えないんですけど。まず僕、マーケットをセットするんです。どのマーケットを狙うかということで企画の良し悪しも全部変わるし、相対的なものになってしまう。ヒットするとかっていうことも。ということは、まずは絶対的なマーケットっていうものの嗜好ニーズを得ないと、情報としていいコンテンツにはならないという発想がそもそもあるので。

前田:なるほど。

つんく♂:それは大きいね。その中で楽しみを得れるんやろうね、大輔は。

横澤:アイデアの生まれる構成要素は2つだと思っていて。1つは、情報と知識の量。これは人それぞれ違うので、アイデアの良し悪しが情報と知識の量によって、相対的にみなさん違うことと、あとは問題点の把握だと思っているんですよ。

この問題点は広い意味でもあるんですけど。まず「こう変えたい」や、ニーズにもつながっちゃうんですけど、問題点をいくつその人が把握してるかということが、今度はアイデアの質を変えるんですよね。

前田:なるほど。

横澤:実は、問題点を理解してないと、アイデアは出ないんです。この問題点の把握と、情報・知識の量が相まってないと、アイデアは出ないんですね。だから、ブレストのときなど、積み上げでよくやられることが多いんですけど。僕、積み上げでは絶対やらないんです。

まず問題点を把握することから、これをどういうふうに整理するかということで、今度はいるメンバーの知識と情報の量で、今度は出していくやり方をするんですよね。

だから、ヒットとか……、なんて言うんだろう、nice contentsというのは、あまり考えないですね。

前田:なるほど。そもそも考えない。

横澤:そもそも。それは肉付けの部分なので、逆に本質的な部分ではないから、というふうに思いますね。

前田:なるほどですね。とのことです。(質問者へ英語で回答する)

つんく♂:すばらしい。

質問者2:謝謝。

前田:Yeah, 謝謝。「すばらしい」と、つんく♂さんもおっしゃってますね。

再現性を見つけてヒットを生んでいく

はい、では5分前ということで、これを最後の質問にしたいんですけれど。……特にになさそうですかね? では、お2人に一言ずついただいて終わりましょう。

横澤:はい。今日はちょっと短い時間だったんですけれども、ご清聴ありがとうございました。今回はこのお話を受けるときにですね、ヒットコンテンツを作るプロデュース力みたいなことで、そうそうたるメンバーのなかでこんなセッションをするのは、かなりプレッシャーもあったんですけれど。

今、僕らが考えているものを少しでもシェアをして、新しいネットのカルチャーであるとか、ネットから生まれてるコンテンツというものが、より多く輩出されたり、世の中をパラダイムシフトを起こしたりしてほしいです。今、そういった現象が起こりやすい、踊り場のような時代に来ていると思ってます。

先ほども話をしたんですけど、ひらめきというのは、僕は存在するとは思うんです。でも、ひらめきまでのプロセスも存在すると僕は思ってます。ひらめいたときには、なぜそれをひらめいたかというロジックを整理して、シェアをしていく。で、ひらめかないときは、「なぜひらめかないか」というロジックを整理する。この2点で、僕はいつも解決をしています。

前田:ものすごいあれですね、分析的っていうか。

横澤:そういうことをみなさんと、この仕組みや、そのものが構成されている要素というものを、しっかりこう、IVSみたいなところでシェアをしていきながら、よりその業界の仕組みやこれからのITのビジネスのスキームみたいなものを、みなさんとご一緒に考える機会を……。今日は、そのきっかけを頂戴したのかなと考えています。

今後とも、みなさま、よろしくお願いしますということで、一言に代えさせていただきます。ありがとうございました。

(会場拍手)

前田:ありがとうございました。つんく♂さんのほうでありますか? ちょっと特殊なかたちでご参加いただいたんですけれど。所感というか。

つんく♂:楽しめましたよ。

前田:良かったです。エンタメの本質ですよね。横澤さんも左脳的だなとか、分析的だなって思うんですけど。結局、「再現性を見つけてヒットを生んでいく」という過程自体を、ご自身がものすごく楽しまれているという印象を僕は持っています。

横澤:そうですね。だから、そこはまだ残っているかもしれないです、右脳が。

前田:そうですよね。

横澤:なにかこう、「おもしろい!」というときは、右脳で突破するところはあるので。すごく、まあ、ハイブリッドに生きてるかな、というふうに思います。

前田:なるほどですね。

つんく♂:そして、毎回、大輔からはいろいろ勉強することだらけです。

横澤:(笑)。

前田:すごい、もう(笑)。

横澤:ありがとうございます。

前田:つんく♂さんをしてこれを言わせしめるのは、すごい、さすがだなと思います。

現象の裏側を深掘り、ヒットの成功率を上げる

まあ、ちょっといろんなメッセージが出てきたかと思うんですけれど、稀代のプロデューサーであるお2人からヒットの裏側にあるものについて話が聞ける、本当に貴重な機会でした。僕自身も、この場にこうやってモデレーターとして参加させていただいているのはすごい光栄だな、と思っています。

僕にとっては、お2人とも、非常に時代の変化、ヒットの裏側にある背景、また、そのリアルな現象と、その裏側にある本質、背景の真意をとらえたうえで、非常に再現性のあるかたちでプロデュースにあたってるんだな、っていうのが極めて印象的でした。

きっといらっしゃってる方々も、ご自身で企画を考えたり、なにか今後、ご自身でプロデュースしていくことがあるかもしれないです。その際には、その現象の裏側をこう深掘っていって、どういうエッセンスがそのなかにあるのか、っていうことを考える癖をつけるだけでも、かなりヒットの成功確率っていうのは変わってくると思いました。

ということですね。なにか、もしなければ。

横澤:はい、大丈夫です。ありがとうございました。

前田:いえいえ。

横澤:つんく♂さんもありがとうございました。

前田:ありがとうございました。ご清聴ありがとうございました。

(会場拍手)

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