2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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前田裕二氏(以下、前田):さて、ここまでは、お2人がプロデュースする際に注意していることや、プロデュース論についてうかがってきましたが、ここで一転、「現代のヒット」に目線を移します。
先ほど冒頭でも「今年はヒットが豊作でした」という話がありました。最近の大きなトピックだと、みなさんも直近ニュースで見られているように、『君の名は。』が中国で、3日間で興行50億円弱いっていて、もう本当に、過去最大級に売上を伸ばしているわけです。
このような現象をなにか1つピックアップしていただくか、あるいは今の世の中に起きているヒットの裏側にある共通点をあぶり出し、それについてなにかあれば、ぜひこの場でお教えいただきたいんですけれども。
横澤大輔氏(以下、横澤):この3つの共通点について考えたんですけれど、そもそも映画自体をなぜ知ったのかというと「これ、観た?」と聞かれたんですよ。『君の名は。』『シン・ゴジラ』『PPAP』も、「ねえ、これ知ってる?」と言われたんです。
「知らないなあ」と思ったとき、その相手はそれをしゃべりたがるんですよ。「こんなすごいものがあるんだよ」と、すごくしゃべるんですよ。それはなんなのかを分析したとき「その人が今好きだと思っている価値観を入れてるんだ」と思ったんですよね。
前田:なるほど。
横澤:ということは、たぶん、みんなコミュニケーションツールを探している、と僕は思ったんです。リアルな会話もそうだし、あとはSNSで自分がどういうふうに見られたいのか、ということのつぶやきだったり。さらに言うと、現代に追いついてる感みたいなものを、常にコンテンツを使って探しているような気がしているんです。
例えば、『君の名は。』をしゃべりながら恋愛観を話したり、『シン・ゴジラ』は、そのなかの知識だったり、日本の鬱憤とした政治をしゃべるときに使ったりしています。『PPAP』とかは、なんでしょう、2つのものを合わせて1つのものにする、っていうことじゃないですか。
前田:ネタとしてはそうですね、確かに(笑)。
横澤:ネタとしては。これが、自分が分かれているものを1つにしていくおもしろさなど、いろいろ言われたんですよね。それこそわからないですが、AppleとpayやったらApple pay……と、なんかそういうの、あったじゃないですか。二次創作とは、そういうふうに生まれた気がしていて。
なので、「価値観の入れ物になるようなものが、今年はヒットしたなあ」という印象が、僕にはすごくありますね。
前田:なるほど。なんとなくコンテンツは一方通行で「こういう価値観だ」ということを視聴者に対して押しつけるようなイメージがあったんですけど。そうじゃなくて、ちょっとプラットフォーム的なコンテンツってことなんですかね。
横澤:そうですね。だから、そこにはすごく余白があるんだと思うんですよ、そのコンテンツに。
前田:確かにそうですよね。最近のヒットを見てみると、二次創作しやすい、というのはすごいキーワードかもしれないですよね。
つんく♂氏(以下、つんく♂):だから、分散するだけ分散したから、もうみんな共有したくって仕方ないんよね。
横澤:先ほどの3つはすべてそうなっているな、という。例えば、『君の名は。』もすごく絵がきれいじゃないですか。
あの絵を原風景というか、憧れの景色、似たような写真を作るなど、そういうこともちょっと見ました。二次創作がしやすいというのは、1つの共通点としてあったんじゃないかな。
前田:そういう意味では、ヒット作という媒介を通じて、自分の価値観を誰かに伝える。ヒット作は、そういったコミュニケーションツールになっていく。だから、ヒットとして拡散性が増すイメージですかね。
横澤:そうですね。
前田:確かにそうだなと思うのは、「『君の名は。』観た?」と言って、「観たよ」と言う人に対して、「自分はこういう部分がおもしろかったんだ」を伝える。
例えば、自分は「あのシーンで、こういうコメントを女の子がするっていうタイミングで、僕は泣いたんだよね」みたいな話をすることで、自分のちょっとしたロマンティシズムを伝えたい……みたいなこととか。
横澤:あと、ちょっとした弱さを伝えるとか(笑)。
前田:「自分はまだ、こういうコンテンツを観て泣ける男なんだ」を伝えたいとか。そういう価値観の伝達は、確かにあると思いますね。
つんく♂:でも、こんなすごいものだったってことは、それなりによかったってことでしょ?
前田:先ほどの価値観を伝えるコミュニケーションツールもそうですけど、もともとコンテンツとしてすごく優れていることは、大前提で確かにあると思いますね。
先ほどの価値観の共有の話だと、本当はいろんなニーズが存在していて、それがだんだんと受け入れられるような世の中に、このインターネット時代においてなってきている。自分はこういうコンテンツ……というか、価値観を持っているんだよということを、他の人に伝えたくなっている。そしてどんどん広がりを持つ、と。
つんく♂:のん(能年玲奈)が声優した映画は観たの?
前田:あの、広島を舞台にした映画ですよね。
つんく♂:これもネットで煽るから、「そろそろ観ないとな」って思うよね。
前田:(笑)。確かにそうですよね。ここ1〜2週間、たくさんソーシャルで目にしますよね。観られました?
つんく♂:そのうち、テレビも煽り始めるよね。
前田:『この世界の片隅に』でしたっけ。
横澤:僕は、まだ観てないです。名前は聞きましたけど。こうやって、今日、知るわけじゃないですか(笑)。
前田:そうですね(笑)。
つんく♂:(笑)。
横澤:そして今日、このあと調べるんでしょうね。さらに、なにかつぶやくんでしょうね(笑)。術中にはまっていくんでしょうね、そういう。
前田:こうやって生まれるんですよね。
横澤:うん、こうやって、たぶん生まれるんだと思うんですよね。そして「本当に大丈夫なのかな?」と思ったときに、テレビでやるんだと思うんですよ。そこで信用度が増すんですよね、さらにね。いい具合のときに。そういう意味では、ヒットをテレビで見てから知ることは、すごい少なくなってきてる感じがしますよね。
つんく♂:のんを起用した人の勝ちやね。
前田:「のんを起用した人の勝ちやね」という斜め上のコメントが来たんですけれど(笑)。
横澤:大変コメントしづらいことを、わざとつんく♂さんは送ってくるんですけど(笑)。
(会場笑)
前田:さすがですね、コメントしづらい(笑)。
つんく♂:その一番うまくいってるのが、『アメトーーク!』でしょ!?
前田:ちょっと深く聞いてもいいですか? それは(笑)。一番うまくいってるのは『アメトーーク!』なんですか?
つんく♂:『アメトーーク!』でいじったネタは知った気になるし、知らなかった人は買いに行ったりするでしょ。
前田:『アメトーーク!』、(横澤さんは)見られます?
横澤:見ますね、『アメトーーク!』は。やっぱり、本当に知った気になるというか、自分が知らない世界のディープなことを知ると、「あ、すごいな」と思いますよね。
前田:なるほど。そういう意味で、先ほどのニッチなところ、狭く深くというところに到達しますよね。
横澤:超会議は、けっこうそこを意識しているんですよ。ニコニコって、いろんなカテゴリがあって、それぞれディープな文化が存在するんです。でも、ネットでは自分で掘り下げていかないと、ディープな部分はなかなか見えないんです。超会議のようなイベントになると、ディープな部分を出さないといけないわけですよね。
そうすると、「あ、あのカテゴリってこんなディープなんだ」っていう可視化がされるところに、「あのカテゴリすげえ!」になるんですよね。そうすると、リスペクトになるという構図が実はある。
前田:なるほど。
横澤:なので、超会議については、歩いている=ネットサーフィンをするということを僕は考えるんですよ。
前田:リアルで?
横澤:はい、リアルで。立ち止まったときがクリックで、中に入るとダブルクリック……みたいな。
前田:はー、なるほど。
横澤:「そこすらも表現をしたいな」と思いながら作っているんです。
前田:しかもリアルのほうが、なんですかね、コンバージョンレートが高そうというか。ダブルクリックする前から、わりとプレビューできているから。
横澤:はい。超会議自体が壮大なMADなんですよね、もう。相撲の隣に『アイマス』がある、みたいな(笑)。そういうことだったりとか。
前田:いや、カオスですよね、いい感じに。
つんく♂:やっぱその時に本物だったら、一気に世の中に浮上してくるよね。
横澤:相撲の張り手と同時に、こっちからヲタ芸の声が飛ぶみたいなところに、僕は美学を感じているんですけど(笑)。
前田:なるほど(笑)。でも確かに、相撲にしか興味なくても、『アイマス』のヲタ芸を見たら、「なんなんだろうな?」とクリックしちゃいたくなるし、逆もまたしかりですね。
そうやってニッチコンテンツ同士の回遊性も生まれているような気がする。それはやはりリアルだからこそ成り立っている部分もあると思うんで、すごい頭のいい人がうまく設計したんだな、って思ってたんですけど(笑)。
横澤:いえいえ。人が熱狂してるところを見て、否定するのはなかなか難しいんですよね。だから、それは大いに見せていったほうが、それぞれのマーケットが親和していくというのがありますよね。
前田:なるほどですね。つんく♂さんも、先ほどの『アメトーーク!』の話ですけど、「番組で紹介されたものを知らなかった人は、それを買いに行ったりするでしょ」「で、その時にそれが本物だったら、一気に世の中に浮上してくるよね」といただいていますよね。
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