2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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孫正義氏(以下、孫):やっぱり僕が本当に思うのは、「人間の脳の働きとはなんだろう?」「そもそも、人間の脳とはなんだろう?」ということですね。我々がなにかをやりたいとか、なにをする……。いったい脳は我々になにを命じていて、その脳はどうしてものごとを考えたり、意思決定したりしているのか。
結局、最終的に集約していくと、脳は快感を感じたい。人間の脳というのは、脳そのものが快感を感じるためにいろいろなものごとを決めたり、意思決定したり、行動している。結局、食事をして「おいしい」と思って快感を感じる。眠たい時に眠って「スッキリした」という快感を感じる。将棋に勝った、実験に成功した、なにかビジネスに成功した。なにか成功した、数学が解けた。その時にワッと脳が快感を感じる。
その快感の極地はやっぱり、興奮ということになるんだろうと思いますけど。脳が快を感じる、快感を得て、しかもそれで興奮して、周りからもバーッとほめられることによって、さらにその快感が究極のところまで上りつめる。それが忘れられなくて、もう1回それをやろうとする。それで結局、その道を極めていくんだろうと思うんですけどね。
だから、やっぱり僕は興奮するのはものすごい大事なことだと思う。その結果、快感を分かち合う人がいて、さらにそれがうれしくなって。だから、自分の人生を振り返って「いつ、一番自分は快感を覚えたのかな?」と。それが転換点になって人生が決まったという人、多いんじゃないかと思いますね。
もしそういう経験もなく、単に惰性で「親がやってるから」「たまたま行き当たったから」という形で、十分に悩まず、十分に快感も感じずに、ただなんとなくやっている人に惰性的な人生を過ごしてる人が多いと思うんです。やっぱりなにかを極めていくというのは、極端に悩み、極端に失敗し、そこから極端に今度は快感を感じて、それをどんどん極めていくことだと思うんです。
僕が思うに、「究極の快感とはなにか」というと、自分が単に満たされることじゃないと思うんですね。「ピアノを買いたい」「車を買いたい」「おいしいものを食べたい」……単に自分の個人的な快感を得ることは、喜びの度合いが小さい気がするんですよね。
それが、家族も快感や喜びを共有してくれた時はもっとうれしくなるし。家族だけじゃなくて職場の仲間だとか、友達だとかも一緒に快感を感じてくれた時はもっと興奮するし。
それで今度は、自分の職場の人や家族だけではなくて、見も知りもしない人たち、世界中の、自分が想像もしない、会ったこともないような人まで含めて、あるいは後々の世の人まで含めて、ものすごく多くの人々が一緒に喜んでくれた時に、自分の興奮はもっと高まると思うんですね。
だから、やっぱり僕は若い人に期待したい。ここには本当に若い優れた知能の、能力のある人たちが来てると思うんですけど。みなさんが、自分が最高に快感を覚えるのは、自分自身の身近なものというよりは、もっと多くの世界中の人々、100年後、200年後の人々にまで感謝される、喜んでもらうことだと。その時に、本当にもっと喜びを感じるんだということをぜひ覚えていただきたい。
今は、親とか周りかもしれないけど。そういうふうに役立つ人になった時に、結果として自分自身が一番幸せを感じるんじゃないかなと、僕は思いますね。
五神真氏(以下、五神):私も、まさにそのとおりだと思っていて。脳の働きの中で快感を覚えるタイミングで、やはり他者との共感というものが本質的に重要な役割を担う。1人だけでなにかができているということではなくて、やっぱり多くの人にその喜びが伝わるという共感力ですね。
そういうなかで、より高度な脳の働きが出てくる。それが人々の役に立つということになるかもしれないし、人類全体に対して、どう自分が働けるんだろうかと考えるきっかけになる。
例えば、物理の問題を解いていて、難しい問題が解けた時はうれしいわけですけど、でも、解けた時にそれを友達に披露して、一緒に感動してくれる人がいたらもっと楽しいわけですね。
それを論文に書いて、多くの人に読んでもらいたい。そういう共感を広げていく中で脳の働きのレベルが、どんどんどんどん上っていく。やっぱりそういうのが社会をよくするために、頭脳をどう使うかということにつながるんじゃないかなと思います。
孫:やっぱり羽生名人も同じように、名人が指すと……。江戸時代のそれが芸術的に残っているように、羽生名人が指した手が、何百年もこれからも残って、多くの後輩の人たちに見てもらえる。
羽生善治氏(以下、羽生):そうですね。ですから、それは今のルールになって400年なので、やっぱりその昔の人の棋譜とかを見て、これはすごく勉強になる。
例えば、升田(幸三)先生という人がいたんですけど、たぶん昭和30年代ぐらいに、30年ほど先をいっていた人なんですね。その先生はけっこう風貌が怖いというか、ひげ生やしていかつい感じの先生で。それで、そちらのキャラクターでも人気があった先生なんですけども。もう30年とか40年先みたいなことをやっていて、それは本当にすごいというか、感動したんです。
あと、どうしても将棋の世界の場合は1対1で、そこでほかの人が介してるという場面が直接的にはないんです。例えば、20年とか30年とか応援してくださるおじいさんとかがいて。私がすごい負け込むと、米とか味噌とか野菜とか、大量に送られてくるんですよね(笑)。
(会場笑)
本当になんか、ほかの人のためにこんなにしてもらって、申し訳ない。やっぱりそういうのがすごく自分自身の「これから前に進んでいこう」「くじけてしまったけど、またがんばろう」という、大きな励みになることもすごく多いです。
孫:羽生名人も毎日考え続けることを自分の仕事にして、極めていっているわけですからね。考えるという。単に覚えるだけじゃだめなんですもんね?
羽生:そうですね。
孫:考えて、人が打たない手を打たなきゃいけないわけでしょ?
羽生:ただ、将棋の棋士のいいところは、たぶん真剣に考えてもボヤッとしてても、あまり違いがよくわからないみたいなところがあるんで(笑)。
(会場笑)
考えてるようで、あまりなにも考えてなかったということはあるかもしれません。ただアイデアとか、発想とか、ひらめきみたいなものを得る時に、ものすごくずっとずっと考え続けて、そこから生み出されるものと、あるいは空白というか、なんか少し思考から離れたところの時間やタイミングを作って、パッと思いつくこともある。
そういう発想とかひらめきみたいなものは、どういうところから生まれたりするのかな、と。
孫:僕、NHKの特番で、ちょうどたまたまテレビをつけたら、羽生名人が頭に電極みたいなのつけていて。それで、一般的な将棋の人だと、脳につけた電極の左側がブワーッと熱くなってて。つまり、左脳で一生懸命考えている。
でも羽生名人だけは左脳はほとんどクールなままで、右脳が異常に熱く稼働しているというか。確かそんな番組ありましたよね?
羽生:ありました。ただ、被験者の立場でいうと、今、右側を使っているのか、左側を使っているのかはまったくわからないので(笑)。結果を言われたら、なんとなく「右を使っているのかな?」というぐらいの(笑)。
(会場笑)
その程度の認識なんですけど。「専門の方がそう言うのだから、そうなんだろうな」という(笑)。
孫:要するに、将棋でもそうだけど、みなさんも普通のものごと、問題を解こう思う時に、おそらく左脳で一生懸命、三段論法で「こうすれば、こうなって、ああなる」ということを考えていくんですけども。やっぱり名人とか、天才とか、ひらめきの世界は、右側の脳だと。
普通は論理脳が左で、右側が感情とか、芸術とか、ひらめきとかいわれるほうですけども。羽生名人だけは極端に違う。ほかのプロの将棋指しの人がほとんど左を使っている。羽生名人は極端に左がクールで、右脳で。つまり直感力というか、ひらめきというか、そっちで将棋を指している。その番組に、僕はやたら感動したんですね。
羽生:ありがとうございます! ますます右を使うようにします(笑)。
孫:(笑)。
(会場笑)
(山中氏に向かって)どうですか?
山中伸弥氏(以下、山中):最初に五神先生が言われたように、「本当に新しいことだったらなんでも、時間はかかっても必ず役に立つ」と、僕も本当に信じています。だから、そういう意味では新しいことをやれば、先ほどの話にあったように社会に還元できる。そういうありがたい仕事なんですけど、問題は「どうやって新しいことをやるか?」なんですよね。これは本当に難しくて。
とくに今、こんなに情報がいっぱいあると、なかなか新しいことが残ってないというか。それで、新しいことは4つの方法で出てくると僕は思っているんです。
1つは、たぶん羽生さんがそうだと思うんですけど右脳、ひらめき型というか天才型というか、本当になにもないところから思いついてやってみる。これ、アインシュタインさんなんか、たぶんそうだったのかなと思うんですけど。残念ながら、僕は1回もそんなことがないんですよ(笑)。
孫:いやいや、ノーベル賞とってるじゃないですか(笑)。
(会場笑)
山中:いやいや、本当にないんです。それが1つ目で。2つ目もそれに近くて、僕は融合型と呼んでるんですが、ぜんぜん違う2つのものを無理やり結びつけて、ほかの人が思いつかないことが出てこないかというやり方。ひらめきだけだったら、ひらめかないので。
これにはいっぱいチャンスがある。例えば「道を歩いていました」と。そうしたら、例えば「交通事故がありました」「交通事故は大変だな」と。その次に歩いていたら、例えば「神社があって池にいたら、亀がいました」と。それで、「亀と交通事故をなんとか結びつけられないかな?」という。
孫:(笑)。
山中:こういう発想で。発想というか努力で。残念ながら、僕は結びつかないんですけども(笑)。
(会場笑)
なかには結びつく場合もあって。だから、そういうぜんぜん違うものを結びつけて、絞り出すんです。これは時々、成功例あると思います。
3つ目、4つ目に関しては、僕にも経験があるんですが……。3つ目は必要型というか、絶対これは世の中のために必要で、みんな「これがあったらいい」と思ってるけれども、難しくてできない。それにチャレンジすること。iPS細胞がそうだったんですよ。みんな「iPS細胞ができたらいいな」と思ってるけどこれは難しいから、ほとんどの人が手を出してなかったのをヤケクソでやったらできたという。
孫:ヤケクソで(笑)。
(会場笑)
山中:いや、本当そうなんですけども。最後、4つ目。これはもうすでに僕、お話しましたが、神頼み型といいますか(笑)。
孫:(笑)。
山中:ともかく、まずやってみる。僕の最初の実験がそうなんですけども、まずやってみるんです。やることはぜんぜんありふれたことで、ほかの多くの人もやりそうなことなんだけども、やってみたら自然というか、まったく思いもしない、まったく反対の想像しなかった結果が返ってくる、と。これはもうチャンスで。そこでガッカリせずに、それに食らいつく。
その4つのどれか。今日みんな集まっている人たちは、その一番目のひらめき型ができる可能性が十分あると思いますから。本当に僕、死ぬまでに1回ぐらいやりたいとずっと思っているんですけど、残念ながらひらめく能力は年齢とともにどんどん下がっていって、逆に悪知恵だけはついていってる(笑)。
(会場笑)
ひらめきのなさは悪知恵でなんとかする。悪知恵というのは言い方が悪いですが、先ほどの「ぜんぜん違うものを結びつける」とか、そういうので補えないかなと思っています。「山の登り方」という点でも、どうせだったら他の人が登ってない山がいい。あるいは同じ山でも、違うやり方を本当にやれたら、すごく幸せだと思いますから。
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