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パネルディスカッション(全4記事)

“思考停止”がダイバーシティを妨げる 日本企業に必要な「自立」という発想

2016年10月5日、株式会社チェンジウェーブ主催のセミナー「Why Diversity2」が開催されました。今回は、セミナーにて行われた講演やパネルディスカッションのうち、「企業事例 多様な変革リーダー人材を生み出す企業の施策とは」をお届けします。本パートでは、最後の質問として「組織を変革するリーダを生み出すために必要なこと」というテーマに答え、パネルディスカッションを締めくくりました。

ダイバーシティ推進での失敗談

佐々木裕子氏(以下、佐々木):ほかのみなさんもどうですか?

(会場挙手)

佐々木:はい、どうぞ。

質問者1:弊社の場合は、海外にも同じように拠点がありますので、最近意識的に、とくに日本がぜひやりたいということで推進しています。日本側から言ってやっているのは「ショート・ターム・アサインメント」と言いまして、ぜんぜん違う国に……。同じ業種なので異業種ではないんですけれど、海外に3ヶ月とか6ヶ月とか、場合によっては1年とかで募集をかけて、日本から送りこむ。

実際にサウスアフリカに行ってきて、とてもモチベーションが上がって戻ってくるだとか。逆に交換留学じゃないんですけれど、その人が帰ってきた時に南アフリカからも日本に来ていたり、韓国ともやっています。やっぱりどこかでミックスをかける、多様性を入れていくということが、ある意味組織の、活性化になるという実例じゃないかなと思います。

佐々木:確かにグローバルに……。けっこうサウスアフリカに行ったりすると、ぜんぜん違いますよね。

質問者1:やはりそこは経営層のコミットメントが必要だと思います。当然、社長レベルで「ぜひともやりたい」というモチベーションがあり、実際に小さな成功が見えると「じゃあ、次もやろうか」というかたちにはなりますね。そこの積み重ねなんじゃないかなと思います。

佐々木:ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか?

(会場挙手)

佐々木:はい、どうぞ。

質問者2:当社は事業分社化して人数が少ないなかで、ダイバーシティをやっていこうと働きをかけているんですけど、(自分たちが)思っていた内容、やろうとしていた内容と、(みなさんが)やっていることがリンクしているところがいっぱいあるなと感じました。成功例以外に失敗例、「これはやっていて気付いたんだよね」というところがあれば、ぜひ教えていただきたいと思います。

佐々木:ぜひぜひ。トライアンドエラーの軌跡を。

小嶋美代子氏(以下、小嶋):失敗談になるとマイクがだいたい回ってくるので……。

(会場笑)

小嶋:失敗だらけなんですけど(笑)。例えば女性だけではないとはいえ、やはりスタートとして女性の採用枠を広げるとか、それから外国人を(採用する)。しかも、IT業界の場合に中国人とかアジア系の方が多かったので、10年ぐらい、ヨーロッパだとかで(採用枠を)広くしていたんですね。でも本当すぐに離職するんです。

佐々木:離職ですか?

小嶋:はい。しかも、「投資終わったー」みたいなところで(笑)。「勉強させてもらってありがとうございました!」と言って去っていくという。そして、どこかの日本国内の別の企業で活躍してくれていることだと思うんですね(笑)。日立グループは心が広いというのか、「それでも社会に優秀な人材を排出しているから、いいじゃないか」というのもありました。

ずっとそうやってきていたんですけど、やっぱりその根源はなんなのかというのは、見ていかないといけなくて。組織風土がインクルージョンになってない限りは、ダイバーシティだけが先行してしまう。今はやはり、いろんな追い風とか強制力もあるので、ダイバーシティをしていくということは誰も止める力がない。けれども、インクルーシブにしていこうというところの追い風は今1つないので。

そこが今日お話を聞いていて、リクルートさんもソフトバンクさんも「やっぱりもともと会社の持っている土壌が、とってもインクルーシブなんだろうな」というのをうらやましく感じました。同時に、それを作るのが本当に一朝一夕ではないということを今、痛感しています。解がなくてすみません。

質問者2:ありがとうございます。

女性の管理職が孤独感を感じている

佐々木:今のはすごく本質的な問いだと思うんですよね、インクルーシブな文化というか。例えば、どういうことが起きなきゃいけないということなんですかね?

小嶋:「定着」が1つではないんですけど、目安値としては見ているんですよね。やっぱり「この会社で貢献したい」「自分の力が発揮できる・できた」というようなかたち。

佐々木:4つの因子の「つながり」のところですよね。自己実現とマイペースとあるんですけど、つながりと感謝みたいなところが。

小嶋:やっぱり感謝ができるかどうかというのは大きいかなと思います。

佐々木:なるほど。なにがむずかしいんですかね? すごい青くさい質問で恐縮なんですけれど、ダイバーシティが大事だということは、なんとなくアンケートを取っても8割ぐらいは「大事」だと、みなさん思うんですけど。

やはりさっきの前野先生のお話じゃないですけど、短期的に効率が悪いように見えるからなんでしょうか? 場合によってはダメアイデアも出てくるし、均質性なほうがなんとなく「前のほうがよかったじゃん」みたいに短期では思うから……?

伊藤綾氏(以下、伊藤):これは女性の話になりますが、女性の管理職を増やそうというような動きがありますよね。私たちが今、課題だと思っているのは、管理職が増えていった時に彼女たちが時に孤独を感じていることです。また、自分が期待されているほどの成果を出せていないという自責の念が、調査をすると見えるんです。

つまりダイバーシティな人材を属性だけに関わらずもっとたくさん構成した時に、その人たちがその強みとか個性を生かせるような術ややり方が、現実的にはっきりとはわからない。それで、効率的に画一的なところ、もしくは今までの文化にその多様性を持っていくと、いったんそこでアゲインストな雰囲気を受けたり。

もしくは、自信がなかった時にどうしたらいいのかがわからないというところが1つ、課題だと思っています。例えば、どうしたら自分の強みをちゃんと素直に活かしていけるのか。私たちのなかでは、その支援がまだ十分にはできていないなと思っています。

年齢も国籍も男女も関係ない

佐々木:なるほど、そうですね。すごくいろいろ聞きたいんですけれど、時間がきてしまいましたので、最後1問だけスケッチブックに書いていただいて終わりたいなと思います。結局のところ、多様な変革リーダー人材を生み出すために本質的に必要なことはなんだと思うかというのを、ぜひ一言いただいて終わりたいと思います。

会場のみなさんにも一言ずつ書いていただいて。では、(書いたものを)上げてください。

(それぞれ回答を書いたスケッチブックを上げる)

佐々木:ありがとうございます。綾さんは「Will」。そして、小嶋さんは「自立」。源田さん、書き直しました?(笑)。

源田:口頭で言っていいですか? 一言では(言い表せない)。

佐々木:一言では言えない! じゃあ、源田さんからいきましょう。

源田:すみません、トップバッターで。これ、たぶん会社の軸がどうかということに関わってくると思うんですよね。なので、もちろん正解はないと思っているんですけど、ソフトバンクで言うと、完全に実力主義というのを徹底してやっているんですよ。例えば誰を課長にしましょうという時に、年齢も国籍も男女もまったく関係ないんです。誰がその職務を1番まっとうできるかということだけでしか判断しないので。

成果主義と言うと変なんですけど、そもそもそれ自体がある程度ダイバーシティということになってるのかなと。それは、会社の意思として 1番ふさわしい人にそのポジションについてもらいたいということだけなんですよ。

もう1つは、若い人にまずチャレンジさせるという意味で「代行制度」というのがあります。課長代行になってうまくいったら課長になるという、そういうステップをふませているんですけれど、「若いんだけどもチャレンジさせてみよう」「実際できるかどうかを(試してみよう)」というのを制度としてやっています。実際に課長になる人の8割ぐらいは、課長代行職を経て課長になっているという状況なんですね。

多様な変革リーダーを生み出す企業の施策としては、ソフトバンクでは公正公明な評価制度をもって、どんどん優秀な人というかリーダーになれそうな人にはチャレンジしてもらうということをやる、そういうことかなと。ちょっと(長くて)書けませんでした。

佐々木:ありがとうございます(笑)。

思考停止せず、自らの足で立つこと

佐々木:じゃあ、(伊藤氏の)「Will」で。

伊藤:この「Will」は「Will」を持っていればいいということではなくて、「Will」を持っている、どこかに「Will」があるということを信じるというか受容するという意味で書きました。なので、「Will」が今なかったとしても、なにかから「Will」が見つかるかもしれない。それを大切にしていく、信じる。

そして、それが今の会社のリーダーとして育っていく時に、きっと彼女・彼らのエンジンになるということを、コミュニケーションしながら語り合っていくことを大事にしたいなと思って書きました。

佐々木:ありがとうございます。そして、小嶋さんは「自立」。

小嶋:私は「自ら立つ」という意味で自立なんですが、自分を律するとか、そんないろんな意味をこめずに(笑)。経済的にも精神的にも「Will」とつながると思っているんですが、自分の意思で立ったり座ったりするということができる会社でなければいけないし。ともすれば企業は、やっぱり所帯が大きくなっていくと「みんな、いっせいに立て」という時間があって、チャイムが鳴るとだんだん立たなければいけないと刷りこまれて。

よそでもチャイムが鳴ったら立ってしまうというような習慣が刷りこまれた時に、やっぱり思考停止を起こしてしまう。そして、思考停止した中でもそれなりの幸せを感じてしまうという、人間の生きていくうえでの本能みたいな部分もあると思うので、やっぱり1歩立ち止まって、自ら立ち上がるということを大切にできる会社がいいなと思いました。

佐々木:ありがとうございました。もちろん、この時間で語りつくせていない部分もあると思いますが、ダイバーシティとイノベーションがどういうものか、ここからいろいろなディスカッションにつながることがあればと思います。それでは、これでファーストパネルセッションを終わりたいと思います。3人のみなさんに拍手をお願いします。ありがとうございました。

(会場拍手)

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