2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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伊藤羊一氏(以下、伊藤):それでは次の登壇者をご紹介いたします。今、Talentioという会社の社長なんですけれども、同時に製造業で取締役をやられていたり、あとキメラという会社を家入さんと一緒に興されていて、もうなにをやってる人なのかちょっとよくわからないっていう。
佐野一機氏(以下、佐野):大体僕の説明をされるときはそういう説明になりますよね。
伊藤:実はグロービス経営大学院で一緒だった仲間なんですけど、佐野さんです。
(会場拍手)
佐野:改めまして佐野です。よろしくお願いします。
みなさん、飲み物のほうはいかがですか? 飲まれてますか? リラックスして聞いていただければな、と思います。
まず、先ほどご紹介いただいたとおり、僕は家入一真という、ご存知かもしれないですけれど、連続起業家としていろいろなITサービスを作ったり、カフェを経営したり、都知事選に出たりしている、とてもおもしろい友人がいるんですけれども、キメラは彼と2015年に共同創業した会社です。
キメラという会社、なにをしてる会社かよくわからないと思うので簡単に説明すると、1つは、スタートアップの再生工房です。家入と僕はそれなりに会社経営の経験があるので、それを活かして立ち行かなくなったスタートアップを再生することは、経済的にも頑張った起業家のフォローという意味でも意義があるよねと。
もう1つが、自分たちが必要だと思ったサービスをつくる、独自の工房みたいなものを合わせてやっていきたいねと。
その2つの役割を担う工房、自分たちではスタートアップファクトリーと言ったりしますが、キメラはそういった主旨で立ち上げています。
そもそも僕は、HR Techをすごくやりたかったんです。なので、キメラでもHR Techはやろうということがそもそもありました。まず最初に、Talentioの開発の背景みたいなものを少しお話しますね。
そもそもキメラでHR Techをやろうと企画したときに、実は、最初にカンファレンスをやりました。それも(HR Tech Kaigiと)同じようなテーマで、「今後人事はどうあるべきか」というカンファレンスをやってるんですね。
なぜこういうカンファレンスを僕がやったかというと、サービスの前に、まずは「人事の課題感」を明示したり、共有化することで、共通認識を持ちたかったのですね。
僕はいろいろな会社を経営してきましたが、管理部管掌として人事の責任者をやっていた時期もあります。
人事の責任者になったとき、まずは人事が今なにをやっているのかって当然把握しますよね。そこでどういったことに多くの時間を使っていたかというと、大体エージェントとのやり取りであったり、面接の評価を聞いたりとか。で、面接の評価をなかなか社長が出してくれないとか、先に進まないとか。その評価をまたエージェントさんにフィードバックしたりしなきゃいけないとか。
求人媒体も併用していると、そこでも応募があり、そこの候補者の人たちとのやりとりもすごく時間がかかる。一方で、小さな会社では採用だけではなくて労務も担当してるということもあります。、急成長してる会社だと、採用人数が多いので労務にもかなり時間を使うことになります。
つまり、オペレーション中心の業務内容で、戦略的な思考やアクションがほとんどできていない状況だったんですね。なので、僕がまずなにをやったかというと、人事に向けてマーケティングの勉強会をやったりしながら、マーケティングのエッセンスをどんどん入れていきました。
前半のセッションで、石黒さん、庄田さんがおっしゃってましたけど、採用ってすごくマーケティングですよね。この中で、AIDMAとかAISASって聞いたことある方いらっしゃいますか?
(会場挙手)
お、さすがけっこう手が上がりますね。ここで手が上がらないと僕的にはやりやすかったんですけど(笑)。
マーケティング的な考え方をするというのは、つまり、応募がどれくらいあって、説明会にどれくらい来て、内定がどれくらいあったかというのをきちんと把握するわけです。そして、各プロセスがどれくらいの歩留まりなのか、いわゆるプロセスの可視化を行います。
そうすると、次にどこをどう変えればいいのかみたいなことが見えてきて、戦略的に動けるわけです。しかし、次の罠があって。これも前半のセッションにあったんですけど、集計するだけでマンパワーがかなりかかってしまうという問題があるんですね。
すると、採用プロセスが可視化された資料がアップされて、人事といよいよ議論しようと思っても、考えてくる余裕がないんですよ。「これはいかんな」と。エージェントさんとか、媒体さんとかとのやりとりをもっと簡単にするべきです。分析、集計、これも人がやることではないというか、人よりテクノロジーを活用したほうがもっとうまくできるんじゃないかって、そういう課題感があるんですね。
じゃないと、羊一さんの最初のプレゼンテーションでもあるとおり、これからの時代、雇用力が企業の今後の競争力の源泉、一番強いものになるっていう時代ですよね。そのなかで人事がもっとクリエイティブにもっと活発に動けるような状況にならないと、企業が成長しないっていう課題感をすごく持ちました。
なので、それをテクノロジーで解決できるんじゃないかと思ったのが、僕がHR Techをやろうと思ったきっかけで、とくに採用に関しては、もっともっとできることがあるんじゃないかという思いは強くありました。
そういった背景からキメラを立ち上げたあと、採用管理サービスを開発していたのですが、ちょうど縁があって、ハッチというTalentioを開発している会社から、「立ち行かなくなってしまったので協力してほしい」という相談があったんです。彼らはすでに先行してサービスを開発していましたから、一緒に何かできると思い、キメラの再生案件一号としてM&Aをして、その後PMIを行い、一通り成果が出てきたねというタイミングで、主導していた僕が代表になって、というのがこれまでの経緯ですね。
伊藤:前半のセッションをおうかがいしてますと、採用中心にお話を聞いてたんですけど、むちゃくちゃ泥臭いというか、ものすごいコミュニケーション重視だし、1人1人声かけてっていうことを、地道にやっている。エウレカさんや、メルカリさんがいるなかで、Talentioっていうのはどんなきっかけで、どんなことやられているのか簡単にうかがってもいいですか?
佐野:Talentioは採用管理のサービスなんですけど、候補者の管理や面接のプロセスが一元管理することができます。
大きな特徴としては、今の採用、今の戦略人事がほしいものってなんなんだろうっていうのはすごく考えています。
例えばTalentioには「タレントプール」という機能があります。最近だと、リファラル採用っていうキーワードが前半でも出ましたけれども、リファラル採用に関するツールというのはこれからの戦略人事に必要だと思います。
もちろん、ATSとリファラル採用は別にしてもいいのですが、SFAでも見込客管理と既存顧客は一緒にやっていますよね。リファラル採用とは「見込客」に近い概念なので、ATSと一緒にしたほうが便利だろうと。
この機能は「今の戦略人事には必要」だと判断したので、超高速で開発しました。こういった戦略的機能というのは積極的に実装していきます。
また、クライアントからいただく個別のお問い合わせをいかに抽象化して、みなさんの使いやすいものにして、リリースするかっていうのはすごく意識してやっています。個別対応してしまうと他の顧客には使いにくいものになる。抽象化することで全体が使いやすいものになる。Talentioは追加される機能がイメージ通りのものだと褒めいただくことがありますが、これはそういった姿勢が影響していると思います。
Talentioは、宮田さんのところでも使っていただいているので。ユーザーとしてどんな感じなのか、ちょっとお話いただいたらいいと思います。
宮田昇始氏(以下、宮田):なるほど。Talentioは、便利ポイントがたぶん3つくらいあってですね。
佐野:(スムーズな入りに)すげぇ!
宮田:あの~、何社かにオススメして売ってます(笑)。
佐野:まじですか! ありがとうございます。
宮田:めっちゃ便利なんですよ。便利ポイントというか、困ったことが3つくらいあるんですよね。採用って。
1つ目は、レジュメどこいったかわからない問題。Slackでもらったっけ、メールでもらったっけ、みたいな。面談の直前になって見つからなくて焦るみたいなことが1個と。
2つ目は、なかなか意思決定してくれない問題。面接官の人に、実際、「どうでしたか?」って聞いても、「こういうところがよくて、こういうところが悪かったよ」「なるほど。じゃあイエス、ノーどっち?」「うーん、ちょっと考えさせて」みたいな。
3つ目は、今、どの職種の採用がどのくらい進んでるんだっけという進捗が、なかなか共有できない。
うちの会社でいうと、この3つくらい、困っていたところがあったんですけど、Talentioだとログインすれば、自分が担当になってる求職者の情報が見れるので、ここに行けば職務経歴書などすべての情報があるという状態ができます。それで面接の直前に焦らなくなります。
あと2個目なんだったっけ。なんでしたっけ?
佐野:え、ここで俺に聞きます? まじっすか。
宮田:ちょっと待ってください(笑)。なんだっけ?
佐野:意思決定の話でしょ?
宮田:あ~、はいはい! イエス・ノーを迫れるというので言うと、選考結果のフォームが面接官に意思決定を迫るようになってるんですよね。なので、僕が面接官したときにも、悩まずに、この人はイエス、この人はノーみたいにポンポン入れられるので、面接官さんが悩む時間を短縮できていいなと思っています。
3つ目としては、ファネルのような感じで見れるんですよね。どのフェーズに入る人がどこにいる、職種ごとはどうだ、みたいな。なので、この職種の採用って今、うまくいってるんだっけみたいなのが、みんなで共有して見れるのがいいところですかね。
すごい、ちゃんと紹介できた(笑)。
佐野:なに、その、褒めてほしいみたいな(笑)。いやいや、すごいですよ。ありがとうございます。
伊藤:採用の仕組みということですよね。なので、宮田さんのところが労務ですよね。入社とか、あと、年末調整とかも紙で書くと、なんか書きづらいけど、スマホでやると入れやすいとかいう労務の部分を中心にやっていますと。それから、佐野さんのところは、採用のところをやられていますというかたちで。
お話を聞いていますと、すごく便利だし、実際、以前は私も年末調整って紙で書いてて、ぜんぜんわけわかんない感じだったのが最近になって機械化されてきて、便利だなと思っていますが。
マーケティングとか広告の世界なんかと比べると、ちょっとHRの領域って、HR Tech化というのが遅れてるんじゃないかという印象があります。それぞれの領域で、今、HR Tech的なチャレンジというのが、海外、日本で、どんなことがされているかというのを、例えば、採用とか労務で、市場がどうなっているか、教えていただけますでしょうか?
佐野:採用に関しては、海外の採用のテクノロジーというのは、かなり先行しているなと思っています。いろいろなサービスをつないでいくっていう発想が柔軟だなというのもあるので、便利なものはどんどん使ってどんどんつなげていこうみたいなのも、日本よりかは進んでいるポイントなのかなと思います。
加えて、利用する人の母集団が日本と比較しても数倍ありますし、且つ人材の流動性も高いので、ATS(アプリカントトラッキングシステム)に対するニーズが圧倒的に高いと思います。こういった環境もサービスを進化させる要素になっているかなと。
それに比べて、じゃあ日本のHR Techというのはどうなのかというと、遅れているという言い方よりかは、今がまさに黎明期だと思います。今後、どういうふうに活用していくかということを、我々作る側もそうですけど、使う側も一緒にやっていく時期なんだろうと。なので、がんがん使って、がんがんフィードバックして、どういうものがいいのかというのを、一緒に考えるのが大事だと思っていて、今回、HR Tech Kaigiを開催したのも、ぜひみなさんとそういうお話をしたいなというのが大きな動機の1つになっています。
伊藤:Talentioを営業されていて、ほかの仕組みから乗り換えるということが多いのか、それとも、入れていないのを改めて新しく入れるということが多いのか、どんな感触ですか?
佐野:新しく入れるほうが、僕の感触だと多い。
伊藤:ですよね。でもほかの業界で、入っていなくて新しく入れるって、例えば、オフィス用品通販とかも、なにか使っているのを乗り換えるとか、ほかの仕組みなんかも、だいたい世の中に入っていて、新しく入れるということはないと思うんですよね。でもやっぱり新しく入れるということが、採用なんかでも多い?
佐野:そうですね。最近やっぱりATSっていう採用管理みたいなものが、わりとメディアにも出るようにはなってきているので、そこで興味を持って、というのはあるんですけど。
だいたい、人事を含めた管理部門って、コストセンターみたいに言われるわけですよ。そうなると、なかなか人は増やせない。でも、急成長していくと、人事や労務の仕事がもう爆発的に増えるわけです。そうすると、なかなか戦略的な動きもできないし、やらなきゃいけない実務が増えるし、疲弊していくと。
それが、ひと波越えて、大きな企業にいくと、何十人という人事のチームになるので、やっとそこで戦略人事という役割というか機能が手に入るわけですね。
これからは、もっとテクノロジーがどんどん人事の課題を解消していって、もっともっと小さな会社でも、例えば従業員が5人でも10人でも、戦略的に動けるような感じにしていかなきゃいけないんじゃないかと思います。
伊藤:そういう意味だと、今までは、ひたすら作業レベルのことをやって、あんまり金も掛けられないから、あんまり機械化もできずに。
佐野:マンパワーでなんとかするという時代だったんだと思うんですよ。
伊藤:そういうのが、今は変わりつつある?
佐野:変わりつつあるんじゃないかなと思います。
伊藤:一方で、労務とかって機械化すればいいじゃないかという領域なんですけど、なかなかそういうのは、まだ他社さんもできてないんですか?
宮田:えっと、ちょっと、伊藤さんのさっきの質問に戻るんですけど、なんで浸透してないのかみたいなところで。最初、一瞬アメリカの話をして、「じゃあ日本どやねん」みたいなのをちょっと話すとですね。
これは、今出してるグラフなんですけど、アメリカのHR Techへの投資がめっちゃ進んでますというグラフです。HR Tech系のサービスを展開する会社に最近お金が集まっています。これ、2011年から2015年までの伸びです。
どういったところに、そのお金が集まっているかというと、その調達した会社のトップ10のグラフなんですけど。これ、半分くらいは、労務系のいわゆる「業務効率化」のサービスに集まっています。
HR Techというと、メディアでは、やれAIだ、やれビッグデータだみたいな感じで取り上げられることが多いんですけど、すでにそれをサービス化できていて、お金を集めているみたいなところは、まだまだ出てきていなくて。今現在は、まだまだこの労務とか、採用とか、ペイロールの分野の業務効率化というようなスタートアップがアメリカでも多いような状態です。
では、日本ではどうなのかというとですね。米国と比較してまだまだHR Tech系の会社って、すごく少ない状態です。例えば、最近、日経ビジネスさんやフォーブスさんが、HR Tech特集みたいなのをやってくださってるんですけど、だいたい似たような会社が毎回載ってるような状態になっていて、まだまだHR Tech系のプレーヤーが出てきていないです。
日本において、なんでHR Tech系のサービス、例えば、私たちのような労務系、やや守りの人事みたいな分野のサービスが少ないのかというと、2つあると思っていて。
1つが、先ほどおっしゃっていたように、やっぱりコストセンターとみられがちで、会社側がなかなかそこに投資をしてくれない。投資する環境がないので、その分野のサービスが育たないというのが1つ。
もう1つは、やっぱり「従業員さんの個人情報をクラウドに載せるというのはどうなの?」みたいな意識がまだまだ強い。ただ、最近、ちょっと薄れてきてるなというのは感じるので、今まさに、黎明期のような状態だと思っています。
例えば、GitHubが出てきた頃って、「ソースコードをクラウドにあげるなんてなに考えとんねん」みたいな感じがあったと思うんですが、今、誰もそんな話ってしないと思うんですよね。当たり前どころか必須のサービスになっている。
3年前くらいに、freeeさんとかマネーフォワードさんが出てきて、その時もやはり「会計データをクラウドにあげるなんて」という話もありましたが、もう今、当たり前になってきていて。
次は、「従業員の個人情報をクラウドにあげるなんて」というのが、「当たり前だよね」というか、「むしろローカルで管理しているよりもセキュリティ的にも安全だね」というふうに意識が変わってきているなというのを、最近、お客さんと話していて、すごく肌で感じるところです。
伊藤:やっぱり肌感触的にも、日本ではHR Techって遅いよなっていう感触があったんですけど、実際にちょっと遅れていて、1つはコストセンターと見られてきて、あんまり金をかけられなかったということと。
もう1つは、やっぱり個人情報を預けることに関する抵抗感みたいな。これはアメリカなんて、給与計算なんか随分早い時期からやってたと思うんですけど、そこが、日本ではやっぱり、えも言われぬ抵抗感みたいなのがあって、なかなか進んで行かなかったというのが現状と。
宮田:そうですね。
伊藤:そうすると、今、そこらへんに対する抵抗感というのは、採用に関しても、労務に関しても、なくなってきている?
佐野:だいぶハードルは低くなってきてますよね。情報漏洩で言うと、ローカルに落としていたほうが漏洩しやすいという見方もあるので、それであれば、強固なセキュリティのクラウドにあったほうが、かえってリスクはないんじゃないか、みたいなコンセンサスはとれてきてるんじゃないかなというのは思いますね。
宮田:一方ですね、うちのSmartHRというサービス、8割くらいが、やっぱりIT、スタートアップ、ベンチャーみたいなお客さんでして、それ以外の業界はまだまだ、ちょっと抵抗があるなという。
伊藤:大企業とかですか?
宮田:大企業とかですね。あとは、ぜんぜん関係ないようなジャンルの業種の方。
ただ、そんなこと言ってられないくらい困っているような業界の方、例えば、うちのジャンルだと、飲食とかアパレルとかの方たちからお声がよく掛かって、入退社が多かったり、産休・育休に入られる方がが多い業界さん。そういうところは、けっこう積極的に使ってくださるんですが。
そこまでまだ困っていない会社さん、使ってみたいけど、今日、明日にでも必要という状態ではないような会社さんの場合だと、ちょっと二の足を踏んでしまうというのは感じます。
伊藤:日本においては、今はHR Techの黎明期で、お客様のほうも抵抗感がなくなってきて、今はいいタイミングということですね。
今のところ、SmartHRは効率化という切り口だし、Talentioも効率化ということを?
佐野:効率化は言ってますよ。
伊藤:ということ。効率化を追求するのが現状なんですね?
宮田:そうですね。
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