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LINE×メルカリがほしい”新しい広報像”とは(全6記事)

受け身な人は“ちょっときつい”--LINEとメルカリが求める、広報の情報デザイン力

グローバル展開を進めているLINEとメルカリが、自社の急成長を支える企業広報、広報戦略について話すミートアップイベント「LINE×メルカリがほしい”新しい広報像”とは」を開催。本パートでは、LINE・矢嶋聡氏にメルカリ・小泉文明氏によるトークセッションが行われました。情報過多になりがちな今だからこそ、両社が求める広報のスキルとは?

PR代理店は「つなぐこと」が目的化している

小泉文明氏(以下、小泉):今の話を聞いていて1つ。うちって、PRエージェンシーをぜんぜん使ってないんですよ。

原隆氏(以下、原):そこ聞きたいんですよね。

小泉:社長が広報をよくわかってない会社って、PRエージェンシーに頼もうみたいな話があるじゃないですか。PRエージェンシーって、僕はぶっちゃけどう使っていいかわからないんですよ。どう使えばいいですか?(笑)。

(一同笑)

:いわゆるPRの代理店を使うってことですか?

小泉:そうそう。「どう使ったらいいんだろう?」と。

:立場的にちょっと困るのが、「すいません。こういう人が来日します」「こういうインタビューどうですか?」みたいなケースのときに、「そういう機会あるんだったらぜひぜひ」と言ったら、当然「質問事項を送ってくれ」とくるんですね。

なんの説明もなくて、「そういう機会あるんだったら」な感じなのに、「じゃあ質問事項を送ってください」と。自分から個人的に申し込んだわけじゃないし、そんなにいきなり質問事項なんか出てこないわけですよ。

やはり代理店は、つなぐことが目的化しちゃっている部分もある。だから、そういうケースもある。

代理店によっては「この日に社長のアポを取りましたから」と言うので、実際にいってみたらその担当者がいなくて。「あれ、ここでいいのかな?」と思って電話したら、「すいません、先週で契約が切れたので、今日は1人でいいですか?」という、ノーガードで取材しなきゃいけないこともありました。

(一同笑)

ただ、優秀な人はやはりすごくいて。例えばですけど、言葉を選ばずに言うと、マスメディアに近くなればなるほど、PR代理店への対応はひどいわけですよ。隣で聞いてて「怖っ」と思うわけですよ。

某媒体なんて「『仕事の邪魔すんな』、ガンッ!(電話切る)」みたいな。メディア対応はかなり心折れるだろうという感じするんです。

やはり優秀なPR代理店の方は、そのあとインハウスに移って……というケースも出てくるので、個人的には、そのつながりを大事にしたいところはあるんですよね。

矢嶋聡氏(以下、矢嶋):うちでは、お願いする目的を明確に分けていますね。例えば、記者発表会のメディアの当日の進行管理や受付、ロジ周りとか。

あるいは、我々が得意ではないテーマに関してなにか発表会をするときに、そこに対してのメディアのリーチがないので、そのサポートをお願いするなどですね。

結局、広報は会社の思いやビジョンを伝えるものなので、全体の戦略やメッセージは我々のほうで考えます。でも実際には、単純にリソースが足りなかったり、ネットワークがなかったりするので、部分的にお願いしています。僕は、そこはけっこう割り切ってやらせていただいていますね。

LINE・メルカリの広報メンバー採用基準

:お2人にうかがいたいんですけど、広報の採用切実度は何パーセントくらいなんですか?

小泉:今は1人で、このままだとブラック企業になっちゃうので、リアルにやばいと思っていますね(笑)。

:LINEはどう?

矢嶋:うちも150パーセントくらい。

:いやなんかこう、「受けにいくと落とされました」という話をよく聞くんですけど。「本当に採る気あるのかな?」みたいな(笑)。

(一同笑)

小泉:メルカリで唯一、広報にハードルを設けているのは、「エージェント経由は採らない」ですね。「会社のサービスが好きで」「このサービスを伝えたい」という気持ちがある人に任せたい思いがあるので。まず、エージェント経由は一切止めています。メルカリを伝えたい気持ちのある人にお任せしたいですね。

それから、僕たちの会社は宿題を与えています。一次面接を通ったケースですが、その後に、「半年〜1年くらいのスパンで、広報やプロモーションのプランニングを、A4の1枚のパワーポイントなど、どんな形式でもいいので書いてきてくれ」と。

やはりアウトプットを見ないと、その人の言っていることやアイデアはわかりません。アウトプットをきちんと見たうえで、判断していますね。

:中澤さんは、ちなみにどういう絵を描いてきたんですか?

小泉:中澤は…あのころはまだなかったですね(笑)。中澤の場合は、ミクシィ時代の部下というか、彼女が新卒のころから知っていたのもあって。

:そうなんですねぇ。LINEもあまりエージェンシーからは採らない?

矢嶋:今はまだエージェンシーが多いですね。会社の知名度が上がってくると、「とりあえず知っているから」、あるいは「ふだん使っているから、とりあえず受けてみました」みたいな方が多いので、エージェントからのエントリは多いです。

ただ、広報の一番根幹として大事なのは、「想いを持っているかどうか」。そういうことで直接応募してくれる方、あるいは、こういうイベントで興味を持って来ていただいている方のほうが、一緒に仕事をしたいと思います。そこは、いわゆるエージェント経由だとなかなか難しいところもあると正直思っていますね。

あとは、うちも課題を出しています。アウトプットとして出さないとわからないと思うので。例えば、「LINE TAXIやLINE LIVEでプロモーションプランを作ってみてください」みたいなかたちで課題を出して、実際にそのアウトプットを見て判断することはやっていますね。

うちの会社だと、いきなり「PRプラン作って」みたいな、こう、まるっとオーダーがきたりすることもあります。そういった漠然としたなかで、自分の頭でどこまでプランニングできるかという部分はけっこう重要だったりします。

小泉:よくありがちなのは、それをそのまま渡してみるみたいな(笑)。

矢嶋:そうですね。そこに対して、「じゃあどういうターゲットに対して」「どういうキーメッセージで」「どのメディアに」「どのタイミングでやるか」を組み立てられるかどうかは、かたちにするとわかります。

口ではうまく話せる方はいらっしゃるんですけど、アウトプットにすると実際どれくらいできるのかがわかる部分はやはりあります。

「受け身な人」は、ちょっときつい

:逆に、どういうタイプは、速攻で落とすんですか?

矢嶋:うちの会社のカルチャーかもしれないんですけど、スピードが速くて、競合やユーザーに合わせて、臨機応変に動かなきゃいけないところがあるので、受け身な人だとちょっときついと思いますね。

なんでもかんでも指示があるわけじゃないので。例えば、新サービスや新機能の大きなブリーフ(大まかな方向性や概要)に対して、「これはこういう戦略で、こういうターゲットで、こういうメディアにいくべきですよ」というのを自分で提案して動いていける人じゃないと、社内の動きが速すぎて、波に飲まれちゃう。

そこの適性や、カルチャーのマッチングはありますね。とくにPRエージェンシーの方は、そういう方が……。

小泉:同じことを言おうとしてたんですけど(笑)。エージェンシーには受け身の方が多いように、面接していて思いますね。

:言われたら……みたいな感じで?

小泉:はい。「インハウスでやりたい」という思いはあるんですけど、なんか受け身ですよね。たぶん、そういう仕事しかやってきてなかったからだと思うんですが。

矢嶋:PRエージェンシーの場合、明確なブリーフがあるじゃないですか。クライアントから「こういうターゲット」「こういう時期で」「予算これくらいで」というなかで、「じゃあ組み立ててください」となると思うんですけど。事業会社のなかは、必ずしもそこのブリーフが明確じゃないときもあります。なので、ある程度は自分たちで……。

:考えなきゃいけない。

矢嶋:考えて、フレームを作っていくところから動かないといけません。フレームがないと動けない人は、けっこうきついところがあります。そこは慣れの部分もあると思うんですけど。「もうずっとエージェンシーでやってきました」みたいな受け身体質が染み付いちゃっている方は、なかなか抜け出すのが厳しいと思っちゃいますね。

:それはある意味、「ずっと受託し続けると、自分たちでサービスを出せなくなる」みたいな、それに近いですかね。

小泉:このイベントのテーマの「新しい広報像」でいうと、広報は自分でデザインできるじゃないですか。どういう情報を、どのタイミングで出して、どういう相手に……って、けっこうデザインできるんですよ。

そういったフリーハンドでできる仕事なんですけど、実はそこを放棄している人たちが多い。それをやらなくて生きてきた方、もしくはやらないでもこれまでどうにかなっている部分があると思っていて。

でも、これからはそこの設計をどうできるかによって、プロダクトや採用に対するポジティブなフィードバックが大きいと思うので、情報のデザイン力みたいなところはすごく問われると思っています。

矢嶋:本当にそうですね。

:そんな人、なかなかいなくないですか?

小泉:なので、大変なんですね(笑)。

:そうか。

小泉:でも、記者さんも、そういう広報じゃないと、たぶん真剣に話を聞いてくれないと思っています。記者さんも今、明らかに情報過多じゃないですか。

:そうですね。

小泉:そういうときに、変なタイミングに変な情報を出されても、たぶん受け入れないだろうし、書かないでしょうし。それを昔みたいに「付き合いで書いてよ」も限界があるじゃないですか。

そういう意味だと、広報の力がすごく問われる時代に変わってきたと思っています。昔みたいな「人脈で書かれる」時代が、かなり終わりに近づいてきている気がします。

:そうですね。デザイン力は確かに新しいね。

メディアを介さないコミュニケーションがある

矢嶋:逆に僕が「あれ?」と思うのは、「広報、命です!」みたいな人は、ちょっと嫌だなと思っていて。

冒頭の話でもお伝えしたとおり、広報でできることは当然限られているし、あるいは、昔だったらメディアに取り上げられるための手段としてマスメディアに取り上げられることは大事だったんですけど。相対的に今、ソーシャルメディアが出てきて、必ずしもメディアを介さなくてもコミュニケーションができる手段もあります。

その限界もわかったうえで、「広報として、どういう役割を持たせるべきか」「どういうメッセージにするべきか」「ここはマーケティングでいいよね」など、もうちょっと上流からちゃんと考えられる人みたいなところは。

:確かにね。

矢嶋:理想をいえば。

:ときどき、広報者向けの書籍が出たりするじゃないですか。PRのところを読んでると、「こうやれば記者は騙せる」とか。

(会場笑)

なんかそういうのが……。「ここでこういうことを言うと……」「こうやって転がそうとしているのか」みたいなものがあって、けっこうへこむわけですよ。それもあるけど、それは小手先のことで。そんなことじゃないわけですよね。

もっと言えば、求めている人材像はそうじゃない。どうやったらメディアに載るかではなく、どうこの会社を成長させていくのかをPRの立場から設計していくというところなわけですね。

矢嶋:そうですね。

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