2024.10.10
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木暮太一氏(以下、木暮):今日はコミュニケーションを専門に考えている人間でもありますので、人に伝えるためにはどうすればいいかという話を少しさせていただきます。
時間としてそんなに長くはないのでかいつまんでの話になりますけれども、どうやっていけばいいのかというコツですね。小難しい考え方とかではなく、コツをいくつかお伝えしたいと思います。
最初にみなさんに見ていただきたいものがこの数字です。
81.4パーセントってこれなんの数字だかわかります?
と言ってわかったらすごいんですけど、これは「日本で働くビジネスパーソンの1,000人に聞きました。あなたは人に説明するのは得意ですか苦手ですか?」という質問に対して、「苦手です」と答えた人の割合です。8割以上の人が伝えるということに対して苦手意識を感じているんですよね(出典:「マイナビニュース会員調査」、調査期間:2013年3月14日~3月18日)。
なぜかというと、習ってないからなんですよ。僕は今年39歳ですけれども、僕がいた時の小学校教育は少なくとも発信に関する授業はほとんどなかったです。受信ばっかりですね。
「これを読んで答えましょう」とか、「この主人公の気持ちを答えましょう」とか、「知るか」と思うんですけど。
(会場笑)
「この時のメロスの気持ちは?」「いや、苦しいんじゃないの?」みたいな。
(会場笑)
僕は本を47冊書いているんですけど、そのなかで受験の問題に使っていただいているものもあるんですね。
あれはあれですごく光栄ではあるんですよ。なんとか高校とかなんとか中学の入試の問題に僕の文章が使われるんですけど、入試という性格上、事後連絡なんです。「あなたの文章をなんとか高校の国語の何問目に使いました。いいですか?」って言われるんですけど、いや「ダメって言えるの?」みたいな感じで。
すごく光栄な話ではあるんですが、ある学校の問題を見た時、びっくりしたんですよね。
問1はどんな接続詞を入れたらいいかという話なんですけど、問6か問7くらいに「この時の作者の気持ちを答えろ」と書いてある。(自分は)覚えてない。
(会場笑)
僕が覚えてないものをどうやって問題に出しているんだろうっていうのと、答え教えてっていうのとですね。僕が覚えてないし、そもそも正解っていうのはないはずなのに、それを一生懸命受信しなければいけない、考えて正しいものを察しなきゃいけないというふうになっているのが今の日本社会です。それが少し残念だなっていう感じがしています。
もっと日本人は、受信するだけ、察するだけじゃなくて、自分から発信していく力を身に着けなければいけないと思っています。
それは自己主張しなさいということではなくて、コミュニケーションは双方向なので、聞いているばかりじゃコミュニケーションは取れません。だから発信しなければいけません。その発信の仕方を学ばないと、これからちょっと難しくなってくるのかなと思っています。
「じゃあどうすればわかりやすく伝えることができますか?」という話です。みなさん興味を持っていらっしゃる分野かなと思います。わかりやすく伝えられたらいいことはたくさんあるんですけど、どうすればいいかわからないという方も多いと思うんですよね。
それを今日この時間で話をしようと思うんですが、自己紹介とかは時間がもったいないので割愛します。「こんな本を書いてます」という話です。
今回のテーマに一番近いのはこれですかね。「自分の言葉で人を動かす」という本があります。
今日、僕の話のなかで「いくつかヒントになることがあったな」というふうに感じていただけた方は、この本を読んでいただけると、より勉強になるかなと思います。ここでの話がちょっとつまんなかったなと感じた方は、本を読んでいただければ面白いと思います。
(会場笑)
僕は「とくダネ!」に出演しています。それから取材とか色んな雑誌に連載をしたり、取材を受けて色んな話をしたりという仕事もしています。
話を戻しますが、わかりやすく伝えることができたらどんな場面に役立ちますかねっていう話なんですけど。僕はこのわかりやすく伝えるということを中学校2年生の時からずっと考えているんですよ。
中学校2年生の時に学校で出た数学の授業がわかりづらくて、というかあえて難しく言っているように聞こえてしまって、「そんな難しい言い方しなくてもいいじゃないか」っていうふうに感じちゃった時があって。
そこからじゃあどうすればわかりやすくなるかということを考え始めて、かれこれ25年ずっと考えているんですよ。気持ち悪いでしょう?
(会場笑)
そういう気持ち悪いことをずっと考えながら、仕事で使いながらやっています。25年間考えてきた結論として、伝えるという力は、センスじゃなくて科学だと思います。僕が25年間考え続けてきた結論はもう科学なんですよ。やり方があるっていうことなんですね。
わかりづらい説明には、わかりづらくなっちゃう理由がある。それにはわかりやすくするやり方があって、それは誰でも見つけられますよという話なんですよ。
じゃあどうすればいいか。人に伝える力というのは、凝縮すると2つしかないんです。この2つの力を磨くことで、人に具体的に響くような話ができたりすると。
1つ目、わかりやすい流れで伝えなければいけないです。それは一般的に考えると、どちらかというと男性よりも女性のほうが苦手意識を感じていらっしゃる方が多いです。ビジネスは男性的な話し方が好まれたりしますので、そこで女性的な話し方をすると「お前が言ってることは意味がわからん」っていう話になっちゃうんですよね。
これはどっちがいいという話じゃないんです。ビジネスは男性的な話し方が好まれるだけであって、それは女性的な話し方がいけないということではないんですが、でも両方使えたほうがいいよねということは事実だと思いますので、それに関して少しお話をしていきます。
そしてもう1つ。流れがわかりやすくなっても、それが誰かから借りてきた言葉しか言っていなければ、「なんかあいつ頭よさそうだけど言ってること中身ないよね」という感じになりますよね。自分の言葉で話をしなければ心に響きません。なので、自分の言葉で伝えるためにはどうすればいいかという話です。この2つです。
わかりやすく伝えられる人には色んな人がいますけれども、世の中的に誤解があるかなと感じています。どんな誤解があるかというと、(わかりやすく伝えられる人は)頭がいい人・知識がある人だと思われている節があります。これは違うんですよね。
わかりやすく伝えられる人って、例えば池上彰さんはわかりやすい代表格、日本代表みたいな方ですよね。オリンピックがあったら日本代表で行くんじゃないかなという感じがありますけれども。
(会場笑)
池上さんがわかりやすく説明ができるのは、池上さんが頭がよくて知識があるからだと感じている方もいらっしゃるんじゃないかと思うんですけど、それは違います。
もちろん、池上さんは頭がよくて知識があります。ですけど、それがあるからわかりやすく全部伝えられるわけじゃないんですよね。
これがある人が全部わかりやすく伝えられるんだったら、大学教授は全員わかりやすくないとおかしいんですよ。でも、僕がいた某慶応大学というところはですね、わかりやすく授業ができる人はほぼいなかったですね。
はあちゅうとかどう思うかわからないけど、僕からするとほぼいなかった。なんか黒板に向かってしゃべっている人もいたりします。なんかね、友達いないのかなって思いましたけど。
(会場笑)
まあそういうことじゃないんですよ。そうじゃなくて別のスキルなんです。なので仮に「いや私、頭よくないし」「私その知識ないし」と感じても、それは関係ないので気にしないでください。
そしてもう1つ。わかりやすく伝えるスキルというのは、話し方とかプレゼンのスキルだと思われている節もありますけど、これも違うんですよね。
僕は25年間ずっとわかりやすく伝える方法を考えてきたので、本屋さんに行って「わかりやすい伝え方」とかいう本を見ると、秒速で買ってしまうんですよ。タイトル見た瞬間に買ってるんですよね。
(会場笑)
食い気味で買うんですよ。食い気味で買っているのはほぼすべて読んでいるんですが、けっこう専門家の間でも「なんじゃそれ」っていう人がいます。
この前読んだ本のなかで「わかりやすく伝えるリズム」みたいな、そういう本だったんです。「スキル55」と書いてあったので、「55はちょっと多すぎないかな」と思いながらも、買って読んだんですよ。
そしたら、わかりやすく伝えるためのスキル3とか5とかそのぐらい最初のほうに、「三角に歩け」って書いてあったんですよ。三角に歩け。
三角に歩けってみなさんどういうことかわかります? 僕はそれを見た時に「アホの坂田さん」しか思い浮かばなかった。
(会場笑)
もちろん違うんです。坂田師匠みたいに歩いてくださいっていうことではないんです。どういうことかなと思って読んでたら、こう書いてあったんです。
今、僕はここに立ってしゃべってるじゃないですか?
そうすると、みなさんからすると絵面が一定になって飽きる。「ちょっと木暮、タレ目だし眠くなるし飽きるから、ちょっとかなわん」「木暮移動してくれ」と。
(移動しながら)木暮移動します。こっちに移動します。
(元の場所に)戻ると三角にならない。今度こっち行って。
で、(元の場所に)こう戻る。
ここまでで三角らしいんですよ。
(会場笑)
それってプレゼンテーションでは確かにそういうことをやるかもしれないし、ジョブズもそうやって歩き回ったかもしれないです。ちょっと僕は覚えてませんが。
でも、わかりやすく伝えるって会議中どうするの?
(三角に歩きながら)「私は今回A案がいいと思います」。
(会場笑)
やるのこれ? それ違いますよね。
(客席から赤ちゃんの声)
ほらね、賛同の声があるんで。
(会場笑)
わかりやすく伝えるってそういうプレゼンスキルとかじゃないんです。ジェスチャーとかもいらないですよね。逆にうるさいじゃないですか。そういうことじゃないですよと。
「人前に立つのが苦手です」とか、「なんか堂々とできないんです」とか、「人と目合わせるのもちょっと苦手なんです」っていう人もとくに気にしないでください。
先ほどお伝えしたわかりやすい流れで話を組み立てて、その後自分の言葉で話をすれば、人間同士なんですから伝わります。自分の本音で話すということが大事なので、そこに注力したほうがよっぽど人に伝わる、人の心に響く話し方ができるんじゃないかなと思います。
1つ目のわかりやすい流れで説明するということに関して、テクニック的なものを少しお伝えしていきます。
25年間研究した結論として、複雑なことをわかりやすい流れで説明するためには、このフォーマットに従うのが一番いいと思ってます。それはテンプレップの法則というものです。
テンプレップの法則ってなにかというと……次の画面、写真撮ってください。
(会場笑)
テンプレップの法則というのは、この順番に話を組み立てましょうということです。最初にテーマを語り、その後に、次に言いたいことの数を言って、結論を伝えた後に、理由と具体例を並べて、最後結論で締める。
この英語の頭文字を取って強引に日本語読みすると「テンプレップ」になるからテンプレップの法則というふうに呼んでいます。これがビジネス社会で非常に使いやすいフォーマットです。
昨日、1日かけて、ある企業さんでこの研修をしてきました。今、月に3~4回、このテーマの企業研修が入っています。その時にこの話をするんですよ。来ている方は現場20年・25年のベテランの社員さんもいらっしゃいます。そういう方に対してこのフォーマットで話をすればわかりやすくなりますよという話をさせていただいてます。
これは非常に男性的な話し方なので、今日は女性の方が多くてちょっと馴染みがないというか、やりづらいかもしれません。ですのでこのなかで一番大事なことだけお伝えします。
なにか? テーマですよね。
話す前に「なんの話をするか」というのを言いましょうという、それだけのことです。いろいろな説明を見てきて、いろんな人とやり取りをしていくなかで、「この人の説明わかりづらいな」と思った時の8割以上の原因が、「テーマを言っていない」ということなんですよ。
今から私がしゃべることはこれですということを言わないでいきなり本題から入るんですよね。だから伝わらないですよ。
テーマを言わないで話を始めてしまうというのは、一般的に考えると、女性の方がそういう傾向があります。なので女性のみなさんがもし「伝わらないんだよね」という課題を感じているとしたら、まず「今からこの話をするぜ」っていうテーマを言ってください。「今からこの話なんだけどさ」って一言言うだけでいいです。
例えば「これから話をするのはなんとかについてです」とか。あと、「人志松本のすべらない話」って知ってます? ビリヤード台を囲んでサイコロ振って出た目の人がすべらない話をしなきゃいけないという番組です。あの番組見てください。必ず話し始める前にこう言います。
「うちのかあちゃんの話なんですけど」。
うちのかあちゃんの話かどうかは置いといて、必ずテーマを言うんですよ。このテーマが画面の四隅のどこかに出てるんです。「うちのかあちゃんの話」というのが。
それを見ながら視聴者は話を聞いています。だから言っていることがわかるんです。あれがなかったらものすごくわかりづらい。
これは、お笑いにも通じる。別にみなさんにお笑いを極めていただきたいわけではないですが、あらゆる場面で共通するんですよ。
この「テーマを言いましょう」というのはすごくシンプルなことなんですけど、ものすごく大事なことです。これだけでもやれば全然変わります。
ですが、せっかくなのでこの後もちょっと解説をしますけど、テーマを語った後に数を言いましょう。「言いたいことは何個あります」という。最近の就活生が面接で使うようなことですね。
「私の長所は3つあります」って言って、実は2つしかなかったとかありますけれども。
(会場笑)
数を伝えた後に結論を言って、結論から先に言っちゃうっということですね。結論を先に言っちゃった後にその理由と具体例を並べましょうという話。
そして最後に結論を締めると「そういうことなんだね」ともう1回確認ができるので、話が相手の頭のなかで整理されやすいですね。
この順番で話をまとめましょうというのが、テンプレップの法則として呼ばれているものです。基本的には先ほども言いましたように、テーマを伝えればそれでかなりわかりやすくなりますので、まずそこからやってみましょう、というのが今日のお話です。
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