2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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干場弓子氏(以下、干場):ディスカヴァー・トゥエンティワンの干場です。今日はようこそいらっしゃいました。
関谷さんの講演にいらしたということで、このなかで、「英語を勉強なさっている。あるいは、もうある程度話せる、使っている」というような方は、どのくらいいらっしゃいますか?
関谷英里子氏(以下、関谷):はい、みなさん、堂々と手を挙げてくださいね。そこ、ほら(笑)。
干場:「実は、英語はぜんぜんだめ。片言とか旅行のときぐらいはいいけど」「勉強しようかなって時々思って始めるんだけど」という方は、どれくらいいらっしゃいます?
ほとんどいない! やっぱりそう。お金を払っていらっしゃるんだもんね。
関谷:そうですね。関谷英里子『カリスマ同時通訳者が教える ビジネスパーソンの英単語帳』を読んでくださっているということで、みなさん、志も高いとか。
干場:私、アウェイなんですけれども。私、ぜんぜん英語、だめで。
関谷:(笑)。でも、ビジネスを海外でされているじゃないですか(笑)。
干場:そう。ぜんぜん得意じゃないのに、この間、英語教育者のカンファレンスで、パネルディスカッションに参加させられて。
関谷:はい。させられて?(笑)。
干場:登壇者は、全員、英語を教えている人ばっかり。周りも全部英語。
関谷:はい。でも、パネルは日本語ですよね?
干場:もちろん。
関谷:どうでした?
干場:自分の立場を利用して、そういう方たちには話せないことを話しました。これ、後からお話しますね。
まずは、関谷さんに伺ってもいいですか? 勉強されたスタンフォードビジネススクールについて教えてください。なんのプログラムに行かれたんですか。
関谷:スタンフォードビジネススクールの修士のクラスは、MBAとMSxの2つがあります。私はMSxのクラスで修士号を取りました。
干場:そのMSxって、すごく難しいんですって?
関谷:いや……。
干場:日本人はいるんですか?
関谷:いますよ! あまり知られていないだけだと思うので、もしビジネススクールに行かれたい方は、選択肢のなかにぜひ入れてみてください。違いを説明してもいいですか?
干場:はい。
関谷:MBAは2年制のコースです。だいたい、大学を卒業されて3年ぐらい経った方……20代の方が多い感じですね。
MSxのほうは、社会人経験8年以上という設定です。なので、30代以上の方が多いんですね。過去は、大企業のマネジメントレベルに進む人のためのコースみたいなかたちを今は一般に開放しているイメージです。
人数は、MBAコースは、だいたい1クラス1学年400人くらい。400人はけっこう多いかなと思うんですけど、ハーバードビジネススクールが1学年900から1,000人くらいと聞きました。
日本人の方も1学年10から15人くらいいらっしゃるそうです。なので、2学年だと20から30人くらいはいるイメージだそうです。
スタンフォードは、その約半分の1学年400人です。2015年卒、2016年卒の学年それぞれ400人のなかで日本人はそれぞれ2名でした。MBAは2学年なので4人いることになります。4人とも女性です。日本人の方(2016年5月現在)。
で、MSxはそれに比べて、私のときは80何人。今は90人ぐらいなので、MBAに比べてすごくクラスが小さく感じます。
またMBAは2年のところ、MSxは1年のフルタイムですね。
MBAは2年といっても夏休みが3ヵ月くらいあるので、1年3クォーターの授業。なので、2年間で6クォーター。MSxは休みが間になくて、夏開始なので、4クォーター。それで、だいたい同じ内容を履修するというような内容です。
干場:出身はどういう国の人々?
関谷:はい。アメリカ出身と、それ以外をインターナショナルとくくっています。
干場:アメリカ人もいるの?
関谷:います。インターナショナルが6割くらい。で、アメリカ人が4割くらい。MBAはこの割合が逆です。アメリカ人が6割、7割で、インターナショナルが3割くらい。
干場:勉強の進め方は、ケーススタディやったりとか、ケーススタディとグループ討議とか、そういったことが中心なんですか?
関谷:そうですね。授業にもよるんですけど、ケースを読んで、それについて質問をされる。それに加えて、課題はグループワークで行う、という形式は多いです。さっきの写真にもあったように、4人とか5人とか。6人とか7人とか3人とか。それぐらいの人数で、クラスごとに課題をやっていきます。
干場:先日よばれた英語教育のカンファレンスで出てきた話題なんですが、日本で英語のプレゼンテーションというか、討議みたいなので勝ち抜いた日本人の2、3人が、国際的なそういう場所に出かけていったそうなんです。そうしたら、2日間くらいあった会期中、ほとんどひと言もしゃべらずに帰ってきた人がいたと。実際問題、英語が話せても、意見を主張したりすることが、なかなか苦手じゃないかという話があったんですけど。
関谷さんはそういうのはないと思うんですけど、実際、ビジネスとかの場ではどうでしょう?
関谷:大変です。つらかったです。1年間。おっしゃるように、授業とかも、だいたい「これについて意見がある人?」みたいな感じで進むので、積極的に手を挙げて発言しないといけない感じなんですよ。でも日本では「はい!」みたいな、私を当てて、みたいなことってしてこないじゃないですか。大学でも。
でも、みなさんはそういうのに慣れているので、ほかの国の方は。とりあえず手を挙げて、とりあえずなにかしゃべるみたいなのに慣れている人が多いんですね。そのなかで、やっぱり切れ者はすごいなということをしゃべるんですけど、切れ者じゃなくても、話したもの勝ちみたいなところってどうしてもあるんですよ。
さっきの人と同じこと言っているよね、みたいなのでも、手を挙げて「自分がオリジナルで考えた」みたいなふうに言うんですね。それってどうしても、日本人的感覚というか、私の感覚では、前の人が言ったのと同じ意見を言うのはよくじゃないんじゃないかとか、しっかり考えた内容を言わないと恥ずかしいとか思ってしまって。結局意見、言えなくなってしまうんですよ。
これは、授業のときもそうですし、会議でもそうだと思うんですけど、なにか発言することには意味があるので。待たずに切り込んでいかなきゃいけないというシビアさはあります。
干場:ああ。そういう点でも、じゃあ、勉強になりますね。
関谷:なりますね。
干場:良い悪いは別として、どっちにしろグローバルにこれからビジネスしていく上では、それもできなといけない?
関谷:そうですね、どんな場面でもとにかく発言する、考えを周りに言葉で伝えるクセはつけておくといいと思います。海外に行って改めて感じたのですが、日本ってだいたい想定範囲内で物事が起こっていくように思うんです。それが日本のすっごくよいところでもあるんですけど。
みんなちゃんとしているし、駅のホームでもちゃんと列ができてみんなそこに並ぶし、メール書いたら返事が来るし、請求書出したらお金は入金するとか。だいたい想定通りに進んでいきます。話をしているなかでも、この話をしているんだから、そのテーマAに沿って話をするじゃないですか。
なんですけど、海外、アメリカなのかな? 想定の範囲が広いんだなって感じました。だから、すっごく切れる人とか、あっ、そういうことも考えるのか、みたいな人もいるんですよ。そこまで調べてくるんだ、みたいな人もすごくいるんですけど。
一方で、それ今話していることと関係ないよねってこととか、テーマAについて話しているのに、テーマPくらいのものを話してくる人もけっこういるんですよね。それもすごく堂々と話す、あたかもとても重要なことのように。
そういう想定外の人もいるので、振れ幅が広いんですよ。想定していなかった方向に会議も行くことがあるのでそういうのにどう対処するかとかちょっとサバイバル的なスキルも必要かなと思います。
干場:Aを話していて想定外にPぐらいのがくると、言葉を聞き取れなかったりするじゃない。それが日本語でも(笑)。
関谷:突然話が飛んだり、みたいな(笑)。
干場:大丈夫なんですか?
関谷:わからないときもありますよね。でも、そういうときには、Aに沿って話が進んでいることがわかっている人たちは、うーんっていう雰囲気にはなるんですよ。でも、雰囲気では、Pの人にはわからないんですよ、うーんって言う発言をしているなっていうのが。日本人だと空気的に「あっ、なんか私、場違いなこと言っちゃったかも」みたいなのが伝わる気がするんですけど。
干場:いや、日本人でもわからない人はわからない。
関谷:わからない人はわからないか(笑)。
(会場笑)
干場:あの、はじめに言いかけたパネルディスカッションの話なんですけど、英語で自分の意見を言うにはどうしたらいいかというのがテーマで。発信力を高める。それで、自分は英語ができないという強みを活かして。
関谷:強みですね(笑)。
干場:「だいたい日本語でも意見を言えないくせに、なんで英語で意見を言えるの」と。英語以前の問題というのが重要なんじゃないですかって。
関谷:そうですね。
干場:会議でも自分の意見を言わない。あるいは、意見は言わずに自分が後で解説したりまとめたりするとか。SNSでも、RTばかりするみたいな(笑)。
関谷:(笑)。RT……。そうですね、ありますね。
干場:という話をしたんです。それ以前はできるのは当然ですよね。その先ですよね。
関谷:そうですね。
干場:英語を使うって、そういうことですよね。
関谷:そうだと思います。日本語なのか英語なのかという話よりも、本当に伝えたいことがあるのかとか、どういう気持ちで仕事に向かっているのかとか、そういうことになってくるんじゃないですかね。
干場:そうすると、英語だから、英語を学ぶのではなくて、英語を道具として使っていくときに、日本のビジネスマンとか、今英語を学んでいる人にとって、なにが一番重要だと思いますか? 1つじゃなくてもいいんですけど。
関谷:はい。うーん。1つは……。
干場:importantは?
関谷:(笑)。important pointとしましては、自信を持つことですかね。あのね、日本のビジネスマンって、イケてるんですよ。めちゃくちゃイケてると私は思うんですけど。それが国際会議とか、海外の人がいるミーティングの場になると、空気を読みすぎて発言がなかなかできずに存在感が薄れがち。
自信を持って堂々と切り込んでいくみたいな、積極性みたいなのがもっとあってもいいかなとは思います。
干場:ほかにはあります?
関谷:あとは、英語の勉強を続けていくことだと思うんですね。日本語もそうだと思うんですけど、その時々に新しく出てくる言葉とか、周りの人が突然使い始める言葉とかが出てくるんですよね。
例えば、Facebookとかが出てきたときに、「social graph」という表現が出てくるんですけど、ソーシャル・ネットワーク以前はそういう言い回しは一般的ではなかったわけで。インターネット上のリアルな人間関係を理解してそれを分析してビジネスに生かすことが、今はできる。ビジネスが進化するのについていくと同時に新しい用語を日本語と英語と両方で押さえておくのも重要ですね。
それに関連して、例えば「social」という言葉。英和辞典で「social」を引くと、「社会の、社会性の」とかの日本語が出てくるじゃないですか。でも「social media」は、日本語でもそのまま「ソーシャルメディア」と使うみたいな。だんだん言葉って変遷していくので、常に自分の知識も語彙力もアップデートしていくことが大切かなと思うんですね。
干場:今ので思い出したんですが、先ほどの、Facebookの彼とか、Instagramの彼らとか、スティグリッツとか。例えば、スティグリッツのようなノーベル経済学者、みたいな人が日本人でいたとしても、話されている内容を理解して、それをほかの人に伝えるのって大変だなと思うんですけど。だって、用語が違うでしょう? すごく勉強というか、準備されて通訳なさるんですか?
関谷:そうですね。準備します。なので、通訳という仕事にご興味ある方、もしかしたらいらっしゃるかもしれないんですけど、通訳は常に勉強の連続です。ただやっていく内に自分の領域を決めていくこともできます。私はどちらかと言うと、ITとかテクノロジー系の通訳が多くなってきています。法律系とか医療系とかそれぞれ専門領域の通訳をされる方もいます。
干場:じゃあ、同時通訳をする人と普通に英語できる人はどこが違うんでしょう? まあ『同時通訳者の頭の中』っていう本に書いてあるかもしれないですけど。
関谷:まさか読んでいないですか? 干場社長!(笑)。
(会場笑)
干場:すみません。
関谷:いえ、読まれていないかもですよね、他社さんの本なんで。みなさんは、もしよかったら読んでください。
干場:普通に英語できる人というと、実は我が社にも、例えば、TOEIC満点に近い人とか、あるいは、1年程度留学してきて英語はみたいな、800何十点っていう人はいるんですけど。ぜんぜん通訳できないの。
それで、通訳させようと思ってもぜんぜんできないものだから、私自分でブロークンでしゃべっちゃうわけ。聞き取りはできないんだけど。
関谷:(笑)。はい。
干場:今まで同時通訳が完璧にできた人って、一瞬いた、すごい帰国子女と。
関谷:一瞬いた帰国子女……。なんの会かだんだんわかってきた。ディスカヴァー・トゥエンティワン人事の話。
干場:あとは、関連会社にいる、彼女は帰国子女でもなんでもないんだけど、完璧な同時通訳をしてくれたんですね。その2人以外、英語は普通にできても、ぜんぜんできないです、同時通訳が。同時通訳というか、同時じゃなくても、普通にクライアントがいて、こうしゃべるときにまったくスムーズに話が進まない。これ、違うんですか?
関谷:ねえ! ここにいらっしゃるみなさんのなかでも、部下の方に通訳してもらうみたいなことがあると思うんですね。あるいは、ここにいる英語がけっこうできる方だと、上司の方に、「ちょっと今日、外人来るから、いて」みたいな感じで言われると思うんですけど。けっこうつらいんですよね(笑)。
つらいのも、自分が当事者として会議に出る場合って、英語で理解してればいいんですよね。相手の言ったことを英語で理解して、それに対して自分で対応するという理解の仕方。それはスムーズに会議自体進んでいきます。
ただ、通訳ってなると、内容を理解して別の言語でアウトプットする。それも瞬間的にやらないといけない。トレーニングがある程度必要なことなんです。
干場:そうか、英語ができる人は英語で考えているから。
関谷:そう。英語がわかる方というのは、英語を聞いてそのまま英語で理解して、会議が進んでいきます。通訳するとなると、英語を理解してからそれを周りが理解できるちゃんとした日本語でアウトプットして。それを聞いた日本人が発言した日本語をまた英語にアウトプットして両側を意思疎通させないといけない。やっぱりそういう点でトレーニングはある程度必要かと思います。干場:それは練習ですか?
関谷:練習ですね。はい。
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