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大前研一氏式辞(全2記事)

大前研一氏「日本人は大学を出たらそれっきり」BBT建学の精神と一生学び続ける価値を説く

2016年4月2日、ビジネス・ブレークスルー大学大学院の2016年春期入学式が行われました。同校の学長を務める大前研一氏は、BBT大学が提供するカリキュラムの内容と新入生に求める学びの姿勢について語りました。

ビジネス・ブレークスルー大学入学式--大前学長式辞

大前研一氏:みなさん、入学おめでとうございます。たぶん我が国で一番難しい大学大学院に入ってこられたということで、おめでとうと言ったらいいのか、なんと言ったらいいのか、複雑な気持ちではありますけれども。今日からみなさんの新しい生活がはじまります。

実は先週、大学大学院の卒業式がありました。いろいろな寄せ書きをもらいましたが、そのなかで一番目立ったのが、へき地にいる人、遠いところにいる人、いろいろな事情があって学校には通えなかった人、家庭の事情などで大学に行くチャンスに恵まれなかった人、そういう人たちから「この学校を作ってくれてありがとうございます」という言葉をたくさんもらった。

私は必要だと思っているから作っているわけだが、非常に感動した。卒業生からもらった記念品を机の上に置いているが、それを見るたびに「大学を作ってくれてありがとう」と(いう言葉を思い出す)。

文科省はこの大学なんていらないと思っている。サイバーでもって全部やるという、しかも千代田区の株式会社立の大学なんていうのはもうどうでもいいと、思ってるかどうか知りませんが、学校特区のときにスタートしましたので、ある意味既存の大学からもいろいろな目で見られると。

そういうものに対して(卒業した)この人たちはこれがあったから(大学に)行けたんだと(言う)。改めてこの大学に文科省が認可するディグリーをもらったということで喜んでいるわけですね。

そこまで言っていただいて、改めて私はこの大学を設置して良かったなと教職員の人々とも共有したい経験です。

世界初・遠隔双方向の受講システム

ただ、今日入られた方はこれから苦難の日々がはじまります。というのは、遠隔であるという、エアキャンパス、エアサーチの特徴は、みなさんがいつ何をやっているのかが全部わかるということです。

我々の教務課のシステムは、みなさんが2回くらいさぼったら、「この人脱落しはじめている」ということで警告を出します。

それでもまださぼっていると教務課から電話があります。最初はやさしく「どうしたんですか?」と。そのうちに「あんた、シェイプアップしないとまずいことになるよ」というようなことになります。みんなすごい心配そうな顔してますけど、多くの人はそれを乗り越えていくんですね。

やっぱり最初の3ヶ月が肝となります。大学は出席していれば終わりじゃないですか。ところが、BBT大学だと出席しているかどうか、みなさんがネット上でプルーフしないといけないんです。その瞬間に見ていなかったらこれはできないことなんですね。

代返なんていうのはありません。私は半分以上代返で卒業した人間で、なんでこんなシステムを作っているのかと思うんですけれども。あ、うそですよ。私は学力優秀、品行方正で通っています。

とにかくそういうシステムになってまして、ちゃんと見ていないと出欠を認めないと、これはBBTが世界初の日米特許をとっているものですね。

ですから、みなさんはこれに悩まされる。それからPCでもモバイルでもなんでもできる。こういうシステムです。ですから「忙しくて」とか、「旅行がち」でとか言うけれども、それでもできるというシステムです。

ですから、みなさんの頭にある学校とちょっと違う、常に参画しているときには我々のほうでトラッキングができるようになっています。「眠っちゃったらどうするか」という話ですが、1回ストップを押して再開すれば良いということです。

世界初の遠隔双方向の大学大学院ですので、そのへんのシステムはみんな特許になって、アメリカでも特許が通っているものです。ぜひそれをうまく使ってください。

講義がわかりにくかったときには、クラスメイトのノートを見るのではなく、もう1回視聴する。そのときにはスピードをあげて、1.2倍、1.4倍速で要点だけをなぞるとか、その部分だけを見るというシステムもありますので、わかりにくかったところだけを何回も見るということもできます。

こういった遠隔ならではのシステム開発が、この十数年の間に完全にでき上がっている。みなさんの先輩の声がすべて反映されている。みなさんちょっと緊張してますね。非常にこわい顔してますけれども、気楽にやっていただきたい。何回でも視聴できるというのは非常にいいことですから。

BBT建学の精神

ビジネス・ブレークスルー大学は、

知的創造を礎に、

国際的視野と開拓者精神を持ち、

先駆的指導者たらん人格を涵養し、

世界社会に貢献するを以って

建学の精神とする

これからは自分1人のためじゃないよと。まわりの人とか、社会のため、ひいては国や世界のためになる、そういうことを勉強しているんだという、これが建学の精神ですので、自分だけよければいいやという部分ももちろん、講義のなかにはそういうものに非常に役に立つものもあるが、やはり広く、国際的な視野を持って、先進国日本としての経験、自分たちの知っていることを途上国に提供するなど、そういうことを志す、広い志を持った人にぜひなってほしいと思う。

多様なバックグラウンドを持つ入学生

経営学部の入学生は160名、経営学研究科は経営学修士(MBA)がとれるわけですけれども、120名で、あわせて280名です。

BBT大学は労働集約型であまり人数が多いと指導が大変なのですが、たぶんパーフェクトなサイズなのではないかと思う。みなさんが順調に卒論までいった場合、このぐらいの人数が我々から見ると物理的限界かなと思うので、今日の入学者の人数は非常にバランスがいいと思っています。

経営学部160名の方の分布ですが、高等学校を出て10代で入られた方が15パーセント、20代が34パーセント、30代が29パーセント。どちらかというと20代と30代が中心となっています。

40代以上の人もいらっしゃって、30.8歳というのが平均年齢です。

現段階の学歴は、高等学校卒業が半分弱、大学を出たが経営の勉強をしたいという人が40名など、大学大学院をすでに出ている人もいらっしゃいます。

女性が44名。非常に比率が高く28パーセントとなっています。安倍政権と違って女性の枠があるわけではないが、最近の傾向として、働きながら、子育てしながらでも大学に行きたい、経営の勉強がしたいという方が増えているということだと思います。

しかし我々の大学はまさに30歳ということで、脂ののりきった人たちがクラスにいるということになる。もちろん高校卒業してすぐに入学する人もいるので、そういう人は逆にクラスメイトから学ぶことができる。

必ずしも先生、LAから学ぶというのではなく、クラスメイトから学ぶことも非常に多い。これを英語ではクロス・ファータリゼーションというが、お互いから学び、集団知が増していく、これがBBTの特徴です。

大学院の方は30代が半分、次に多いのは40代。学歴は、学士が一番多く、修士や博士の人もいる。経営の勉強をしたいという人が入学しているということです。

地域的には、大学だと関東が一番多く、関西、九州、沖縄、その他。文字通り全国どこかに誰かがいるという状況。

海外は中国、シンガポール、ベトナム、アメリカ、チリ、セネガル、チェコ、フィリピンに住んでいる人がいる。サイバーの大学で、ネットが通じていれば参加できるので、クラスメイトは文字通り地球上どこにでもいるという状況になっている。

これもBBT大学、大学院の特徴ですが、学生の職業の分野が非常に広いということがあります。かつてはこういうことをやると、ほとんどメーカー勤務の人が集まるとか、そういう現象が起こっていたが、今はコンピューター、サービス、飲食、レジャー、教育関連、建設不動産、自動車、商社など多岐にわたる。

クラスメイトから学ぶという観点から考えたときにはこの広がりはすばらしく、この人たちがみんなで知恵を出すと、ほとんどの先生はかなわないというくらいいろんな業界の方がいる。

大学院の方は関東が圧倒的に多くて、次が海外となっている。アメリカ、中国、ベルギー、タイ、インド、インドネシア等。分野も幅広く、コンピューター、製造業、サービス業、その他考えられるあらゆる分野の方が来ている。公務員の方もいる。

年代も、分野も幅広い仲間が今日できたということになります。これが同期の桜です。学ぶことが非常に多い仲間であるということをまずご理解いただきたい。

在校生・卒業生の学びのネットワーク

在校生・卒業生が今までに滞在した国別にみると、なんと99ヶ国にも広がっている。ネットが通じればそこで勉強もできるし、卒業したあと、自分はこういうところでこういう活躍をしたという報告をしてもらっている。

在校生の人もBBTの学生だというと、このリストにみなさんもアクセスできるようになりますので、そういう国に行ったときは、「BBTの先輩、ぜひこういうことを教えてください」といってローカルな事情についても聞いていただくことができるようになっています。

もちろんみなさんが首尾よく卒業したあかつきには後輩のみなさんにもそういうことをやっていただきたいと思います。

それから、学びをサポートしてくれる存在であるLA、TAが100人近くいますが、この人たちは全員が卒業生です。ですから卒業生が在校生が勉強するのを助けているということになります。

もちろん教授が教えるのですが、自分もかつて学生をやっていたという立場から、かゆいところに手が届くように教えてくれるという仕組みになっています。

BBTの場合には、こういうものをぜひ普及していきたいという思いの卒業生が非常に多いということです。

我々としても、みなさんが卒業したあかつきには、さらに後輩の指導にあたっていただきたいという思いを持って、今日大学の運営をやっております。

BBT大学は「教えない大学」

3年前、大学在籍中に3人の学生が世界中を旅行している。サイバーであることをいいことに、世界中を旅行しまくって、アフリカに行ったときには私は非常に心配しましたけれども、2年間幽閉されることもなく無事に卒業しました。

BBT大学について超主観的にまとめてみた本。

この3人が意気投合して、『BBT大学について超主観的にまとめてみた本。』という本を書いています。共著のなかで、先生方を勝手に格付けしておりますけれども。

これまたBBTの特徴で、要するにサイバーですから旅行していても一定の場所にとどまっていなくても学問についてはまったく遅れがないということです。

この3人とも、すべて4年で卒業しています。もちろん大学の場合は8年間、大学院は5年間で卒業すればいいわけで、自分のペースを見つけてやっていただければいいということですが、たまたまこの人たちは4年で卒業しています。

キャンパスライフのヒントがここにたくさんあると思います。

みなさんに期待することは、情報の少ない不確実な状況でも自分の頭で考えること。今はネットへのアクセスができますので、情報が少ないからとあきらめてしまわずに、何ができるか自分の頭で考える癖をつけてもらいたい。

BBT大学は「教えない大学」と言っているが、自ら「これを勉強したいんだ」という前向きな意志をもっていただきたい。

先生が正解を言ってくれると思ったら大間違いで、学生のみなさんが見つけてとってくるという姿勢が必要になる。クラスのディスカッションでどれが一番正しいのかを判断するというのが非常に重要です。自分と関係のない業界の話が出てきたとき、「これは関係ない」と思ったら人生負けです。

どんなことでも、もし自分がそういう立場だったらどういう判断をするのかと考える癖をつけるのが経営の基礎ですから、自分の業界ばっかり興味をもって一生懸命やるということになると、ただの業界人になってしまう。

知のネットワークは人間の能力を無限に伸ばす

BBTの価値というのは、その業界人が考えつかないようなことを気がつき、考え、そしてまた新しいアイデアを出して進んでいくということが大事です。

それから限界の突破に挑戦する。これくらいが自分の限界だ、自分の偏差値はこのくらいだから自分はこの程度だと思ったら負けです。

仕事が忙しいというのを言い訳にして、やらない理由を見つけるということは、みなさん授業料を払ってきているので、ないとは思いますが、しないでほしい。

重要なことは、仕事とBBTにおける勉強と家庭とのバランスを非常に重視していただきたい。勉強していると、自分に今までなかったようなものすごい進歩を感じることができる。

先週の卒業式もいろいろな人が「自分の人生で一番きつかった」「自分の人生でこんなに勉強したことはなかった」などと口々に言っていました。

「自分で取りにいく態度を大切にしてほしい」という視点からいくと、「見ていませんでした」という言い訳はエアキャンパスの場合は通用しません。

シラバスとかいろいろな案内が全部そこに出ていますので、見ていなかったということはありえない。

また、自分だけが勉強するのではなく、クラスの人の集団IQに貢献していただきたい。参考のために、「自分はこう考えている」ということを発言していただきたい。

今日からリーダーの一員になったということで振る舞っていただきたいと思っている。クラスのディスカッションで一番いけないのは、証拠もないのに自分が言いたいことだけいって、例えば「あなたの意見には反対だ」と、理由も述べずに言いっぱなしにすること。

日本にはこういう人が非常に多いが、これはやめていただきたい。こういった振る舞いをするようでは、クラスの尊敬を得ることはできず、ひいては会社、あるいはコミュニティの尊敬が得られない人間になってしまう。

もちろん、リーダーとしての倫理観、責任感も重視している。ということでBBT大学知のネットワーク上でつながったみなさん、知のネットワークは人間の能力を無限に伸ばすということで、BBT大学のロゴは地球にネットワークが重なって、インフィニティマークがスーパーインポーズされているというものになっています。

ゼロ金利時代の富の生み出し方

ビジネスというのは、基礎力、人間力、ビジネスエシックス、という3つが必要なのですが、基本的なところを勉強しただけではダメで、エシックス、倫理観が非常に重要です。

人間力、これは人をしてその気になってしまうという力、IQに対してEQという言い方もされますが、これも非常に重要なスキルでして、私はよく橋下徹を「IQはあるがEQがない」と言うので、彼はしゃかりきにTwitterで私を攻撃していますけれども、やっぱり彼の後の大阪市長は彼が滞らせていた法律を全部通しました。

つまり、相手である自民党が支配する大阪議会とうまくやれるということによって、思いが叶ったということです。この人間力、人を説得してその気になってもらって結果も一緒に出してもらうと、ここも一緒に学んでいただかないといけないと思います。

BBTはアオバジャパン・インターナショナルスクールというバイリンガルの学校を買収いたしまして、今東京に保育所、幼稚園を4つ持っています。

したがって、文字通り1.5歳から社長までの勉強を続ける限り生涯プラットフォームになっています。

BBTでは略語を使っていまして、ライフタイム・エンパワーメント(生涯活力の源泉)、LTEと言っています。親子3代にわたってBBTで学んでもらいたい。狙いはグローバルに通用する人をなんとか育てたい、なんとか育ってもらいたいという思いでやっている。

もう1つは、一生学び続けてほしい。日本は世界の文明国のなかで、大学を出た後学ぶ人が一番少ない。

ヨーロッパの大学は、だいたい半分くらいが社会人である。アメリカも3割くらいが大学に戻って新しいことを勉強する文化がある。大学もまたそれに耐えるカリキュラムを提供している。

しかし日本の場合は、大学を出たらそれっきりという感じで、会社の中でOJTで勉強するというメンタリティの人が多すぎる。私はそれは間違いだと思っている。

今のような時代は、常に勉強し続けることが大切で、我々としても常に勉強していただくようなコンテンツを発信し続けたいと思っている。

今言ったように、BBTでは資産形成講座というものもやっていますけど、今ほどこれが重要な時代はありません。金利ゼロですから。金利ゼロなのに資産運用をどうやってやるのかというときに、やはり頭で資産をキャッシュに変える、変えたキャッシュをさらに資産に変えてさらにキャッシュに変えると。

これは簡単に言うと、Airbnbのようなものを使うという手もありますし、まったく富を生んでいない資産を有効利用するということによって、金利ゼロの世界では、キャッシュを生む資産にさらにキャッシュを生ませるということが必要になります。

詳しくはみなさんのコースで学んでいただきたいと思いますが、日本人の1741兆円に及ぶ個人の金融資産が、金利リターンゼロのところに50パーセント以上が眠っているという、まったく理解できない、世界からみると理解できない国民なんですね。

小学校の頃に旅人算とか鶴亀算とかやった人がなんでゼロのところに置いとくの、と言っても、そのほうが安全だと。こういう感じである。金利がないとキャッシュが生めないと思っているんです。

そうでなくて、そこからキャッシュを生む方法をなんとか考えることが大切ですね。みなさんにはいろいろなアイデアを出しますが、実践していかないと意味がありません。そしてさらに前に進んでいただくとこういうことですね。

ですから、机上の学問ではなく、実践をしてなんぼというのが経営です。そういうことをぜひ理解していただきたいと思います。

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