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Stanford Graduate School of Business Conducting Effective Negotiations(全4記事)

スタンフォードに学ぶ、効果的な交渉に必要な5つの要素

交渉事はビジネスや日常生活の中での基本的なスキルです。誰もが会話というかたちで日々交渉を行なっているわけですが、ビジネスの世界でのハードなネゴシエーションの場面で、効果的な交渉を行ないたいと考えたことがある人は多いのではないでしょうか。今回Stanford Graduate School of Businessで解説するのは、効果的な交渉の行ない方。このパートでは、まず基本的な「交渉とは何か?」という部分を解説します。

みなさんは交渉が好きですか?

ジョエル・ピーターソン氏(以下、ジョエル):一方的な講義というよりも、対話形式の授業にしましょう。私はマーケティングについて学んできました。当初この授業のタイトルは”How to negotiate, when you absolutely have to have the deal”でした。とても良いと思いますし、だからみなさんもここに来たんだと思います。

みなさんは契約を結ばなければいけないときに、どのように交渉すればよいかを知りたいんですよね。誰もが知りたいです。もしそれをどう教えるかを聞かれたら、「そんな役割には就くな」と言うでしょう。

(会場笑)

そうするとこのセッションは非常に短くなってしまうので、ちょっとタイトルを変えました。”Conducting effective negotiation”です。ちょっと平凡になり、エキサイティングさに欠けますが、みなさんの考える交渉術に対して、良い影響を与える授業になるでしょう。

では、この中で交渉が好きな人は? 手を挙げて下さい。大体20パーセントぐらいですね。では交渉が怖いという人は? さっきよりちょっと少ないですね。では残りの人たちはあまり関心がないといった感じですね。

でもみなさんはいずれにしても交渉はするんですよ。ブロッコリーを食べなきゃいけないときは食べるでしょう。たとえそうしたくなくてもね。交渉はビジネスライフにおける野菜のようなものです。みなさんはきっと経験します。

これはみなさんにとってとても良いことです。全然好きじゃなくても、やらざるを得ないんです。では交渉が好きな人は、なぜ好きなんでしょうか? どんなところが好きなんでしょうか? 今度は手が挙がりませんね。お、どうぞ。

聴講者:私の専門であるエンジニアリングと比べると、エンジニアリングではすべてが正解か不正解か、白か黒かですが、交渉の世界ではすべてがグレーで誰も「私が間違っている」とは言えないからです。

(会場笑)

ジョエル:じゃあそっちの方が好きなんですね。何も悪いことは起きないし……

聴講者:確証があるからです。優劣がつくわけではないので。

ジョエル:その通りですね。

聴講者:私が交渉をしたいのは、相手よりも優位に立ちたいからからです。

交渉は解決法の創造につながる

ジョエル:ではあなたが向上させたいのは…

聴講者:シチュエーションですね。

ジョエル:シチュエーション。分かりました。自分が関わるシチュエーションを向上するために交渉を行なうと。

聴講者:対立している状況では、交渉なしで契約を結ぶのは極めて難しいです。だからそれを解決する手段として、ゴールに到達する手段として交渉をします。逆に言えば、win-winの取引はとても面白いと思います。

ジョエル:なるほど。普段からブロッコリーを食べるけども、たまにデザートにもなるということですね。

(会場笑)

ジョエル:初代ジョージ・ブッシュがそれに関してコメントしたのを思い出しますね。どれだけブロッコリーを嫌っていたかと。私はブロッコリー好きですけど。

(会場笑)

聴講者:win-winの交渉は楽しくて、ピザみたいなものだと思います。Whyを重ねてどうやったらパズルを組み合わせられるか、上手くいくかということを考えるんです。win-winになって上手くいったら楽しくなると思います。

ジョエル:つまりwin-winになる合意は楽しくて、そうなるように交渉できると。win-winの取引になる確率が高くなるほど、交渉が好きになりますね。その他は?

聴講者:交渉はビジネスにおいて、クリエイティビティに繋がるユニークな機会だと思います。ビジネスのもっともクリエイティブな要素のひとつです。

ジョエル:交渉は解決法の創造に繋がりますね。あらゆる種類の事実や実際のシチュエーションに基づいた解決法です。だからよりクリエイティビティを発揮するようになりますね。他は?

交渉が嫌いな人は、なにが理由なのか?

聴講者:我々は他の人たちと同様に、関係を築きます。彼らが何をしたいのか、どこに向かいたいのかを理解したほうが良いと思います。

ジョエル:そうですね。交渉が嫌いだと言った人たちは、それを関係性を破壊するものだとか、関係性にストレスを与えるものだと認識しているんですね。だからこれは、いかにみなさんが他者との交渉を通じて関係性を築くかというところに依るものが大きいのです。他に交渉が嫌いな人は、何が好きではないんでしょうか?

聴講者:交渉する時は大抵情報が不足していて、終わってみるともっと上手く交渉できたと後悔してしまうことが多いんです。

ジョエル:なるほど。振り返ってみて、もっと上手くできた、失ってしまった、と。他に交渉が好きじゃない理由はありますか?

聴講者:大抵の場合、幸いなことに交渉相手は知的な個人かチームになります。しかし自分がアマチュアである場合、知識的にも感情的にも交渉に苦労すると思います。

ジョエル:交渉において虐げられると。常にパワーと情報の問題はありますね。パワーや影響力、情報の不均衡があり、そのアドバンテージを受ける人と交渉しなければいけないんです。そうすると虐げられたような気持ちになって部屋を出ることになります。まるでイジメです。

(会場笑)

ジョエル:実際私は20年ほど前、ドナルド・トランプにニューヨークの彼の事務所で会ったんです。彼が有名になる前ですが、昔から髪型は変わっていません。

(会場笑)

ジョエル:彼は私にワシントン・ジェネラルズの所有権を売ろうとしていました。ああ、ワシントン・ジェネラルズって知ってますか? USFLのフットボールチームで、ハーシェル・ウォーカーを引きぬいたところです。彼はそれを誇りに思っており、このチームを売ろうとしてきましたが、私は応じませんでした。授業で交渉を教える資格としてはこれで十分ですね?

(会場笑)

ジョエル:実際は何年にも渡って何十億ドルにもなる交渉をやってきていますからね。不動産ビジネスに20年関わってきました。10年ほどは大手不動産会社のチーフ・ファイナンシャル・オフィサーをやっていましたし。

大きな取引や株の取引、訴訟の解決にも当たりました。だから私の人生においては、交渉が習慣になっているわけです。それ以降は企業の買収を始め、習慣の異なる交渉となりました。

欲しいものを、合意した価格で手に入れること

ジョエル:だから様々な形態の交渉を見てきています。その日が楽しみになるような経験もしてきました。交渉をするときは、大きな不安を感じますがそれも好きなんです。なぜなら相手の人間が好きだからです。

問題を解決するのが好きだし、クリエイティブになることも好きですし、このようなすべての事柄が好きです。交渉の日を恐れているような時でさえ、その日が来るのを待ちきれませんでした。だから交渉が好きか嫌いかという理由は、決して生まれながらにして持っているものではないんです。

10〜12年ほど前にこのスタンフォードで不動産の授業を教えた時のことをいまだに覚えています。クラスのみんなに、さっきと同じような質問をしました。ただし、「新しい車を買うのが好きな人は?」というような聞き方でしたが。

これは交渉が好きか嫌いかという質問に非常に関連しているんです。中には車を買うというプロセスを非常に嫌っている人もいます。汚れたような気分になるからですね。

(会場笑)

ジョエル:公平な情報やパワーを持っているわけではないからです。悪い経験にもなり得ます。この中に交渉のエキスパートはいますか? 手を上げて下さい。

(誰も手を挙げない)

(会場笑)

ジョエル:本当は全員が手を挙げないといけないんですよ。人生においては誰もが優れた交渉人ですからね。そうでなければ交渉とは何でしょうか? 交渉とはみなさんが欲しいものを、みなさんが合意した価格で手に入れることです。

だからその価格を払うということは、みなさんがハッピーだということです。みなさんはエキスパートですが、ここで自由に討議して本物のエキスパートにしてみせましょう。

交渉も会話もギブ・アンド・テイク

ジョエル:みなさんが何者なのか、何を得意としているのかをじっくりと見てみます。その前に、交渉について考えるためのマップのようなものがあります。みなさんが人生で行なってきた会話は、広い意味で言えば、すべて交渉です。既婚者の方々は、常に交渉をしていることでしょう。配偶者やお子さんたちと。

仕事でも学校でも常に交渉ですね。要するに、会話とはギブ・アンド・テイクで、あげる・もらうという取引があるんです。通常は情報が多くなるほど、成功したと感じるものです。

友人や家族とするときは、通常より成功したと実感しやすいものです。企業の交渉は、様式化された領域の中にあります。交渉して合意を得る場所では、テーブルに座って誰かがノートを取り、それをまとめます。トレードオフのものごとがあり、最終的にはとてもフォーマルな交渉となります。

これらは仲裁や訴訟の際に典型的に行われるもので、証拠に基づくルールや、非常に構造的で狭いものごとがあり、あまり楽しくはありません。かく言う私は訴訟に長年携わってきましたがもう十分です。

ある弁護士が、私が彼の出会った中で最高の参考人だと言ってくれて、それから交渉と訴訟を好きになったんですが。彼は敵対する弁護士だったんですけどね。

交渉で合意するための5つのポイント

ジョエル:少しは交渉について良いイメージが持てましたか? では何が交渉成功の要因となるんでしょうか? 今までの話を総合して考えて下さい。

聴講者:期待値を正しく設定することだと思います。

ジョエル:OK。期待値ですね。それを正しく設定し、満たされると目的が達成されたことになる。それが交渉成功の秘訣だと。どうぞ。

聴講者:(聞き取れず)

ジョエル:分かりました。状況をいかに定義するかということですね。他はどうでしょう。いかにそれを知覚し、その中で実行できるんでしょうか。

聴講者:win-winです。得られるものが自分の観点に基いていると、自分はハッピーなので定義しやすいと思います。一方でその人が部屋を出た後に残る効果があり、時間が経つにつれ混乱が収まると、それをだめにしようとはしないし、結果がどうであれ交渉はするので、彼らも同様にハッピーだと思います。

ジョエル:そうですね。あなたは多くのビジネスパーソンよりも広く交渉について考えていますね。交渉に関する啓発的なコメントだと思います。ほとんどのビジネスパーソンは交渉をします。これがほとんどのビジネスにおける合意の秘訣です。これらの5つです。

これらは「ベストな価格」(Price)や、「最も魅力的な言葉」(Terms)を得ることに焦点が当てられています。実行に対する「時間枠」(Time frames)を確認して下さい。「容認可能かどうか、正当な理由があるかどうか」(Warranties)。もし間違っていれば、「修正」(Remedies)が必要です。法的な修正、経済的な修正、またはこれら2つの組み合わせになるかもしれません。

ほとんどのビジネスにおける様式化されたカテゴリの交渉は、その中間で、これらの5つの領域で自分が欲しいものに焦点が当てられています。 これらのことについて沢山交渉する人なら、これ以上広くは考えません。

この授業で教えられる前から知っていた人は? みなさんにとっては新しい情報のはずです。ちょっと驚きですよね。

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