2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
Stanford Graduate School of Business Power - The Secret Language We Speak All the Time(全4記事)
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リチャード・コックス氏:最後のお話に移ります。
これは、私の姪のダニエルです。とても気が強い娘で、私は姪が大好きです。この写真は、姪が初めてボディサーフィンをした時の物で、以来、彼女はボードを離しません。彼女は、大きくなるにつれ「威厳」の側の人物になりました。
姪は、私の2歳年上の姉の地位を引き継ぎました。私にはおなじみの、昔よく目撃した状況です。私は子供のころ、姉のことを「威張りんぼう」だと思っていましたが、もはやこの言葉は相応しくありません。今の姪にはリーダーシップのスキルがあります。彼女には才能があり、私はそれを支援し応援しています。
問題なのは、弟のブレイディの方です。
(会場笑)彼は、私と姉と同様、2歳離れた、ダニエルの弟です。この写真は、彼が一生懸命に指を伸ばして、姉の空間を侵犯し、必死になって「威厳」を保とうとしています。でも、彼の顔を見る限り、どうもそこには「威厳」はなさそうです。
彼は、これから起こることが何かをよくわかっていて、それは姉の方も同じです。彼女の表情を見て下さい。表情筋について説明はしませんが、彼女の表情は、これから弟の玩具を奪い取るつもりであることを示しています。私は、この写真を撮っていて、一部始終を目撃していました。
(会場笑)
彼はよく頑張ってはいますが、どちらかと言えば「近寄りやすい」タイプのようですね。伯父と一緒です。
(会場笑)
この仕事をしていて、よく「私はもっと『威厳』を持つべきなのでしょうか。もしくは『近寄りやすい』人になるべきでしょうか」と聞かれます。皆さんはもっと高い地位の力が欲しくて、そうであるべきだと考え、私たち講師もそう思っているのだろうと思っています。
しかしブレイディは、間違ってはいません。ブレイディはそのままの彼で充分であり、皆さんも「近寄りやすい」タイプであるとしたら、それで充分なのです。私だってそうです。正しいとか、間違っているなどということではないのです。
私たちは、出来うる限り広い幅を欲しています。皆さんはすでに、自分の居場所と安心できる領域を見つけていて、とても居心地の良い場所です。さらにもう少しだけ、その幅を広げ、どちらかへ動ける領域を広げれば、もう少しだけ人間関係がうまくいくようになるかもしれません。
でも、皆さんは今のままで良いのです。特にブレイディは。
(会場笑)
いいえ、決定的瞬間の写真はありません。でも今週末にでも充分に似たようなことは起こるので、撮りに行けますよ。
私が気に入っている点は、幼いうちにこれを学べることです。この姉弟も、すでにエキスパートです。私たちが既によく知っていることなのです。
先にも言いましたし、今では皆さんもよくおわかりかと思いますが、こういったことは、ありとあらゆる場で起こっています。
カクテル・パーティでも、すばらしい機会はありますし、皆さんの行く先々や、参加するイベントなどでもそうです。少しの間、一歩下がって、観察してみてください。人々は、手を伸ばして他人の領域を侵犯しますし、腕を相手の肩に回すなど、ありとあらゆることが起こっています。まず、それが1つに挙げられます。
もう1つは、どちらが正しいとか、間違っているなどはなく、スペクトルの両端とも、すばらしいことなのです。それが人間関係なのです。姉弟は、とても仲が良いのです。なぜなら、彼らはこのことをよくわかっているからなのです。ちゃんと理解しつつあり、ふたりとも立派に成長するでしょう。
これは、私たち皆が話す、秘密の言語なのです。ありがとうございました。
(会場拍手)
コックス:オーケイ、質疑応答の時間が、2分ほどあります。マイクがありますので、壇上に上がってお使いください。少し時間をオーバーしてお送りします。
質問者1:お話しされていたのは、ボディランゲージについて、ということなのでしょうか。そして、ボディランゲージの方が効果的だと考える人は、実際にいるのでしょうか。50、60、70パーセントだという記載もありますが、身体を使わないコミュニケーションの場合はどうなるのでしょうか。例えばメールなどでは、意味や感情が、ボディランゲージからは汲み取れませんよね。
コックス:そのとおりです。オンラインのメールやテキスティングなど、そういったコミュニケーションやチャットでは、ボディランゲージは用いられません。でも試みはなされていて、だからこそ顔文字というものがあるのだと思います。
そうです、だからこそ顔文字でボディランゲージを挿入しようと試みるのです。私たちは、ボディランゲージの情報を得るために必死です。だからこそ、私たちは、顔文字などでそれを試みるのでしょう。
それは確実にコミュニケーションに影響があります。ネットを少しでもやったことのある方ならご存知ですが、議論や地位の争いが始終発生していますね。私が思うに、実際に人が2人部屋にいて話す場合には、コミュニケーションがずっと滑らかなので、争いは起こらないと思います。人間関係は、面と向き合う方が、オンラインより、ずっと良好です。
質問者1:孫たちは、メールがなければ人生は終わりだと考えています。メールが一番で、電話なんて古臭くてもってのほかと言うのです。座って話をしましょうなどと言うな、と私に言うのです。大切なのは、メールなのです。何か大切な物が失われつつあるように思えてなりません。
コックス:そのとおりですね。大切な物が失われつつあります。
質問者1:ありがとうございました。
質問者2:65年度卒業生です。イヤア!
コックス:イヤア!
質問者2:生命種レベルで、この力についてお話ししていただけますか。人類は、どのように地上最強であるという概念を持ち、自分たちは充分にそれに値すると自負したのか、そして、何でも好きにして良いと考えるようになったのでしょうか。果たしてそれは問題なのでしょうか。人類は、これにどのように対処すべきなのでしょうか。
コックス:拍手に値する質問ですね。問題であることは論証できます。多くの困ったことが生じるからです。これは私たちが権力に反感を持つ理由の一部です。人類は種として、すべてを消費してしまうからです。リソースを取り、使い切ってしまうからなのです。
対処法については、私は特にはわかりません。このワークにより、よりよい人間関係の構築が、解決の鍵のひとつとなってくれることを願います。なぜなら、私たちは共働するべきだからです。資源が枯渇する時点への到達は、そう遠くはありません。ですから、私たちは共に取り組まなければなりません。これは解決への鍵の1つだと思います。
私は世界を周り、このことを講義して活動していますが、これもまた同じく、世界共通のことなのです。人の領域や、領域の侵犯の話しをしていますが、異なる文化においては、これもまた異なります。相手との間に、どれだけの空間があればよいかが違って来るのです。
しかし世界共通なのは、距離はどれほどであれ、一線を越えれば、越えた人間が上位になることです。つまり世界共通のことは多々あり、それが私たちのコミュニケーションを改善する助けになるのです。
それにしても、地球を救えるようなメッセージを、貴殿にお伝えできればよかったと思っております。
質問者3:こんにちは。「威厳」についてのお話で、間を開けないのと同時に、寡黙であれとおっしゃいましたね。そこで質問なのですが、「威厳」のある人間がしゃべって間を埋めると、明らかに緊張が起こりますね。この2つの働きについて、もう少しお話ししていただけますか。
コックス:間とは、身体でも会話でも効果があります。会話を支配し、部屋を出て行かない人のそれは、「上位」と「力」の行為なのです。
先日、ビル・マー氏のテレビ番組を見ていたのですが、女性がひとり、男性ふたりの間に座っていて、左の男性は大変な優位にあり、女性に始終割って入っていました。すると、女性は目覚ましい動きをしたのです。割って入られている最中に、流れを変える動きをしました。
男性が話し始めると、女性は手を伸ばし、男性の腕を押え、女性が話し終わるまでそうしました。すると、男性を黙らせることに成功したのです。非常にわずかな動きでしたが、上位の動きでした。まるで猫の手が乗っているようでした。
2つ目の動きは、女性が話し始めて、男性が割って入った時に、女性がこう言ったのです。「私がこれから何を言うつもりなのか、わかって言っているの?」
(会場笑)
女性は「この会話の、この間に話されるべきなのは、本来は私の考えのはずだけど、男性に敢えて話させてあげるわよ」と主張したわけですが、これは皆さんにもお勧めします。とても進歩的な行為で、状況に対するよい策だと感銘を受けました。似たことはしょっちゅう起こりますから。
質問者4:ジェンダーについてのお話を避けていらっしゃいましたが、女性がもたらすネガティブな結果を生む力について、何かお考えや、見識はお持ちでしょうか。
コックス:まず、私本人をご覧ください。要するに、私が言いたいのは、これです。自分のボディランゲージを見て、充分自覚しております。
では少し踏み込んだお話をしましょう。幸運なことに、私はスタンフォードでデイブ・ラムフェルド教授と共に教鞭を執る機会があり、彼女がジェンダーについて、驚嘆すべき研究をされています。彼女は著作を執筆中であり、もうじき出版の予定になっております。
1つは、女性には温厚さを競うギャップがあることです。男性の知覚と、男性についての、女性の知覚です。
女性が温厚であればあるほど、女性同士が激しく競います。女性同士が競えば競うほど、より温厚になります。
男性の知覚と、女性に対する女性の知覚は、どちらも、温厚であればあるほど、争いは減ります。争いが激しくなると、温厚さが薄れます。
私たちのデータの中でも特に画期的なものというわけではありませんが、決めつけられた物ではなく、観察に基づいた真実のデータです。
これはおそらく、この会場の女性の皆さんにとっては、初耳とは言えない情報でしょう。こういう経験はおありですか。そうでしょう、そうでしょう。
では、どのように対処すればよいのでしょうか。
社会が、このギャップを埋めるべく、変化するべきなのです。
しかし、一番良い対策とは「威厳」のある自分を幅広く持ち、その間を縦横無尽に動くことができて、好きに選択ができることなのです。これは男性にとっても同じです。一番効果的なのは、このように活動できることなのです。
80年代や90年代ころに生じた罠は、「絶対に選択するべきだ」と皆が思い込んでしまったことにありました。つまり、「女性がキャリアを進むには、肩肘を張って競争し、他人がどう思おうと気にせずにいるべきだ」とされたのです。
妥当な選択ではありますし、別にそうしてもよいのですが、それほど両極端である必要はないと思います。一部ではありますが、こういったデータが多くあります。
質問者5:流動的に、様々なスペクトルに動けるのは、とてもよいことだとは思うのですが、人が我が身を鑑みる時に、例えば、地位が低く、温厚さに欠け、弱く、自分がいやでいやで仕方がなくても、それはよしとされるのでしょうか。
コックス:全部よいのです。人間関係とはそういうもので、どのように人と対峙し、自分が言いたいことがその姿にマッチしているかどうか、ということが大切です。
どこで、どのように自分の姿を見せるべきかを、自覚できていないのだと思います。簡単に言えば、入って来て、うまくコミュニケートできず、あまり良い気分になれないと言ったことだと思います。そして落ち込み、「下位」の地位を痛感し、「寒々しく」感じます。
そこからは脱却できるのです。それができると知っていれば、ドアをノックした時に、この姿は、本当に私が見せたいと望んだものなのだろうか、と考えることができます。そして、いやな気分だから、入らないでおこう、と考えてもよいのです。ぜひそうしてください。
もしくは、ドアで立ち止まり、これは大切なミーティングだから、こういう人格になろう。こういう人格になることにより、それを感じ、行ってその瞬間を受け入れてもよいのです。要は、選択なのです。
この図は、一般論です。もっとたくさんの、ニュアンスのある会話があります。要点は、「威厳」と「近寄り易さ」とがあって、そのどちらにも「温かさ」と「冷たさ」があるということなのです。
ありがとうございます。最後の方です、どうぞ。
質問者6:ルーズベルト、チャーチル、レーガン、ビル・クリントンを、この図で分類してください。
(会場笑)
コックス:すばらしい質問です。実際に講義で学生に、この4分割の図に人物をあてはめてもらい、考察してもらうのですが、今の人々の名はよく挙げられます。てっぺんの部分に、オプラ(ウィンフリー)がよく入れられます。
では、だいたいの感覚であてはめていきましょう。私は、「組織における行動」についての講師であり、歴史学のそれではありませんので。これらの人々について、あまり深くは考察しません。パワフルなリーダーは、図の上の方に分類されることが多く、「温かい」「冷たい」については、さまざまです。私に言わせれば、ビル・クリントンは「温かい」の方に入れたいですね。
(会場笑)
そして、ウラディミル・プーチンは「冷たい」に入ります。
(会場笑)
幅があるのです。どちらもパワフルなリーダーで、どちらも業績を残しています。
ここで言えることは、繰り返しになりますが、どちらが正しい、ということではないのです。「威厳」があって「冷たい」リーダーもおり、もっと「温かい」リーダーもいる。どちらも有能です。
質問者6:「話し方」として、「王家の人物」や、「情熱的な演説者」などで、これらの大統領を、簡単にグループ分けしていただけますか。
コックス:一般論ですが、高い地位の人は、温かみはさまざまです。チャーチルは私より前の世代の人ですが、映像など、私の見た限りでは、冷たく感じますね。どちらかと言えば、王家の人物でしょうか。
ありがとうございました。
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