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The Expert (Short Comedy Sketch)(全1記事)

クライアント「赤い線を、緑と透明のインクで描いてほしい」→「は?」 商談あるある動画が本当にありすぎて困ると話題に

とある商談シーンを再現したコメディ動画が、世界中の働く人の共感を呼んで話題に。クライアントの理不尽な要求に、味方であるはずの上司やプロジェクトマネージャーまでが「専門家だからできるだろ!」と言い出し、困惑するアンダーソン。そんな彼のとった行動は……? YouTubeに投稿されてから僅か半月で約400万回再生を記録した、世界的ヒット動画を書き起こしました。

顧客A:弊社は新しい戦略イニシアティブによってマーケットペネトレーションを高め、ロイヤリティを最大化し、イメージを強化したいと思っています。この目的のため新しいプロジェクトを発足させました。ここで7本の赤い線が必要なのです。この問題について御社が解決してくれると信じています。

上司(画像右):もちろんですとも! 弊社のプロジェクトマネージャー(PM)のウォルターです。ウォルター、できるよな?

PM(ウォルター/画像右):はい、もちろんです。アンダーソンは弊社の専門家で、赤い線を引くことにかけては誰にも負けません。彼の専門的な意見を共有するために本日、彼を連れてきました。

顧客A:はじめまして! 皆さんはわたしのことはご存知でしょうが、こちらはジャスティン、弊社のデザインスペシャリストです。

顧客B(ジャスティン/画像右):どうも。

顧客A:必要なのは7本の赤い線で、全ては厳密に直角でなければなりません。いくつかは緑のインクと透明のインクを使います。できますか?

アンダーソン(画像左):いや、残念ですが……。

PM:そんなに急いで結論に飛びつく必要はないよ、アンダーソン! タスクは設定されたから今日の終わりまでに決まればいい。君が専門家なんだから。

アンダーソン:「赤い線」という言葉は、線は赤いという意味です。赤い線を緑のインクで引くのは……その、絶対に不可能ではありませんが、極めて不可能に近いですね。

PM:なんと「不可能」とは!(おどけて)

 (一同笑)

アンダーソン:つまり、ある種の人々、たとえば色盲の人とか線の色の違いがわからない人であれば可能です。ですが、このプロジェクトのターゲットはそういう人々には限定されないと思うのですが。

顧客A:つまり原理的には可能だと。

アンダーソン:話を単純化します。線というのはどんなインクでも描けますが、赤い線を引きたければ赤いインクを使わないといけません。

上司:青いインクだとどうなるんだ?

アンダーソン:それもダメです。青いインクを使ったら青い線になります。

(一同沈黙)

アンダーソン:それと、先程のは厳密にはどういう意味なんでしょう? 透明のインクとは?

顧客A:うーん、どう説明したものか……。あなたは「透明」という意味はもちろん、おわかりですよね?

アンダーソン:はい、わかります。

顧客A:そして、「赤い線」の意味についても説明する必要はないと思いますが?

(一同笑)

顧客A:つまり……透明のインクで赤い線を引いてほしいということです。

アンダーソン:最終的にどういう見た目になるか、イメージを説明していただけますか?

PM:おいおいアンダーソン! オレたちがどこにいると思ってるんだ。幼稚園か?

上司:非生産的な言い争いで時間をムダにするのはやめにしないか。タスクは決まったんだ。タスクはシンプルかつ明確だ。だがもし、何か具体的な質問があるなら言ってくれ!

PM:そう、君が専門家なのだから。

アンダーソン:……わかりました。とりあえず色の問題はひとまずさておきましょう。でも、ここには直角に関係することがありますよね?

顧客A:7本の線を厳密に直角に。

アンダーソン:何と?

顧客A:えー、つまり、「全ての線」を「お互い」に「直角に交差」させてほしいと。直角な線が何かはわかっていると思いますが。

PM:もちろんですとも。彼は専門家ですよ!

アンダーソン:2本の先は直角にできます。7本の線すべて同時にお互いに直角というのはできません。お見せしましょう。これが線ですね?

顧客A:はい。

アンダーソン:ここに別な線を引きます。最初の線と直角ですね?

顧客A:えーと……。

アンダーソン:そう、これが直角なんです。

顧客A:まさしく!

アンダーソン:いやいや、これからです。ここに3本目の線を引きます。これは最初の線と直角でしょうか? ……そのとおり! でも2本目の線とは交わりません。並行なんです。直角にはできません。

顧客A:そうかもしれません。

アンダーソン:この通りです。2本の線は直角になれますが……。

顧客A:ペンを貸してください。

(ホワイトボードに図を描く)

顧客A:これならどうですか?

アンダーソン:これは三角形です。直角の線ではありませんよ。それにこれは3本で、7本じゃありません。

上司:なんでこの線は青いんだ?

PM:まったくです。私もそれを聞こうと思っていた。

アンダーソン:ここには青いペンしかありませんから。それにこれはただのデモで……。

上司:それが問題なんだ。君の線は青いじゃないか。赤いインクを使ってくれ!

アンダーソン:それでも問題は変わりません。

PM:やる前からどうしてわかるんだ? 赤いインクで線を引いてみてどうなるか見てみようじゃないか。

アンダーソン:ここに赤いペンはありませんし、但し確実に言えるのは、赤い線でも結果は同じだということです。

PM:赤い線を引けるのは赤いインクだけだ、とさっき君は言わなかったか? 実はそう、わたしはここに書き留めていたんだ。なのに君は今青いインクで線を引こうとしている。君はこれを赤い線だと言おうというのか? (笑)

顧客B:私にはわかる気がします。今は色については考えていないんですよね? あなたは今、その、なんと言うんでしたっけ、その、ちょ、ちょ……。

アンダーソン:直角性、そのとおり!

上司:もういい。君は混乱させすぎだ。これを遂行できない本当の原因はなんなんだ?

アンダーソン:幾何学です。

顧客A:そんなものは無視しましょう!

上司:我々のタスクを考えろ。7本の赤い線だ。20本というんじゃない、たった7本じゃないか。アンダーソン、君が専門家だというのはわかる。だがごく狭い分野だ。全体的な視点というものが欠けている。だけど、7本の線を引くのなんて難しい仕事じゃないじゃないか!

PM:まったくです。ソリューションを提案してくれ! どんな馬鹿でも批判はできる。いや君のことじゃない、君は専門家なんだ。君が一番詳しいはずだ。

アンダーソン:わかりました。2本の直角の赤い線を完璧に直角に引きましょう。残りは透明のインクで描きます。そっちは目に見えませんが、でも引くことはできます。

顧客A:それで目的に合いますか?

顧客B:(頷く)

顧客A:はい、それで良いと思います。

顧客B:はい、でも少なくとも数本は緑のインクで……。あ、あともう1つできれば質問をしたいのですが、線のうちのひとつを子猫のかたちに出来ますか?

アンダーソン:なんですって?

顧客B:子猫のかたちです。マーケットリサーチの結果から、我々のユーザーは可愛い動物が好きだということがわかったんです。もしできれば……。

アンダーソン:いやいやいや。

顧客B:なぜ?

アンダーソン:いいですか、猫を描くことはできます。私はアーティストではありませんが、やってみることはできます。でもそれは線じゃありません。線と猫というものは全然別のものなんですよ。

顧客A:子猫です。猫じゃなくて、子猫。小さくて可愛くてふわふわとした。猫というのは……。

アンダーソン:そういうことじゃありません。

PM:アンダーソン、話を最後まで聞くんだ。彼女はまだ話を終えてないのに、君はもう「ノー!」と言っている。

アンダーソン:仰りたいことはわかりました。でも線を猫……子猫のかたちに描くことは不可能です。

顧客B:鳥なら?

(一同沈黙)

上司:さて、どこまでいったんだっけ? 何を話していたんだったか?

PM:7本の赤い線、2本は赤いインクで、2本は緑のインクで、残りは透明。この理解で正しいですか?

顧客A:はい。

上司:すばらしい! それならこれで全部かな?

顧客B:ああっと、忘れるところでした。赤いバルーンもあります。膨らませることができるかわかりますか?

アンダーソン:……バルーンで何をしないといけないんですか?

顧客B:赤いんです。

上司:アンダーソン、できるのか、できないのか? 簡単な質問じゃないか。

アンダーソン:それならもちろん出来ると思いますが……。

上司:素晴らしい。出張を計画して費用を調べ、彼らのロケに行ってバルーンを膨らませよう。いや、非常に生産的だった。皆ありがとう!

(一同解散、アンダーソンだけ立ち尽くす)

(顧客Bが戻ってくる)

顧客B:もう一つだけ質問よろしいですか? バルーンを膨らませるとき、それを子猫のかたちに出来ますか?

アンダーソン:もちろんできますよ! なんでもできます! 本当になんでも。私は専門家ですからね!

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