2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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岩佐大輝氏(以下、岩佐):さて、間下さん。これからグローバルでどう戦っていくかと。おそらく、グローバルトップのシスコやMSが虎視眈々とアジアを狙っているんじゃないかという中で、どうしていこうと。
間下直晃氏(以下、間下):どうしていこう……まあ淡々とやるだけなんですけどね。日本でやっていることを海外でやっているだけなんです。もちろんやり方は違うんですけども。
さっき田村さんがおっしゃっていたように、どこのパートナーと組むかは非常に重要だと思います。アメリカ系の大手企業に比べては我々はフレキシビリティを提供できますから、そこの価値観を感じてくれるケースは結構多いんですね。
我々も日本国内で8年間シェアNo.1を走ってると。(市場規模が)大きいか小さいかは別にして、そういうことを言いながら、しっかりとパートナーをつくっていく。
ただ我々、最初はパートナーだけでやろうとしてスタートしたのが2009年なんですね。でも鳴かず飛ばずでしたよ。
何でかというと、大手とも組めるんですけど、まだまだ(テレビ会議は)新しい商品でマーケットがなくて、文化もない。この中でもまだほとんど使ったことないですよね? 日本ですら、パートナーさんってまだ売れないんです。
何でかというと、売りにくいし、説明しないと売れないから面倒くさい。しかも我々みたいに月額課金というのは、下手したら月々数千円~数万円しかもらわないわけですよ。
普通ITの販売会社ってコピー機とかパソコンとか、1台何十万円、何百万円の物を売っているので、営業マンの評価が合わないんですね。
要は「100万円のコピー機と月々5万円のブイキューブどっち売りますか?」っていうと、売り上げ評価をされた時点で、今月の売り上げだけ見たら、100万円対5万円なんですよ。
これは日本でも同じ問題が起きてます。ただ、この5万円っていうのは年間60万円、5年で180万円なんで、本来は価値が高いんですよね。
でも、明日のことや来年のことを考えている営業マンは全くいません。普通は来月のことすら考えてないですよ。今月の数字をどう押さえるかなんですよね。
そうすると、売るわけないんです。お客さんが「持ってこい」って言ったら持っていくと思うけど、自分で頑張って売るっていうのはなかなかいないんですよね。
間下:だから何をやったかというと、我々が強かったのは日本でも直販部隊をしっかり持ってたんです。
直販部隊でしっかりマーケットができてくると、代理店さんも売るようになります。我々は海外に行ったら直販なんか無理だろうと思ってました。
だけど、実際2012年から直販を始めたらガラッと変わりましたよね。普通にマレーシアでもどこでも、僕らテレアポしてます。日本と変わらないですよね。
すごいのは、マレーシア、テレアポのアポ率10%超えますから。テレアポしたことある人はわかると思いますけど、普通日本は1%切るんですよね。1%超えたら優秀なんですけど(マレーシアでは)10%くらい。
個人情報とかあまり気にしてないんで、「担当者の連絡先教えてくれ」って言ったら、ITのマネージャーの携帯まですぐ教えてくれますから。
(会場笑)
間下:突破は簡単です。その代わり買ってくれないですよ(笑)。会った後の成約率は低いと思います。そこのところを地道にやり始めて、効果が表れたということもありますし、代理店が「なんだ、売れるなら俺も売ろうか」という形で動き始めるんですよね。
「海外に行ったから、日本と違うんだ」という思い込みを結構持っていたんですけども、実はそうじゃないことがいっぱいあるなと。
さっき田村さんがおっしゃったように、パイプをどうつくるかが日本以上に大事なのは間違いないので、そこに行くためにもしっかりとした土台をつくることが大事だと思ってますし、それを引き続きやっていこうかなというところですね。
岩佐:今の間下さんのお話からすると、日本型の営業、お客様のリクエストに応えるということが、アジアでも十分通用するということなんですか?
間下:通用すると思いますね。日本的なtoo muchなサービスをやっても意味がないんですね。お客さんの期待値より高いのはいいことなんですけど、コストが高過ぎて合わないんですよ。ただ、各国のローカルマーケットの事情に合わせてやってあげる、これは非常に重要だと思います。
言語対応についても、おそらく我々唯一のタイ語版を持っているグローバルサービスだと思います。
岩佐:タイ語版。
間下:インドネシア語版もあるんですよ。フランス語版もありますけどね。タイとかインドネシアって、みなさん英語でビジネスできると思ってる人いるかもしれませんけど、全くできないです。
基本的にタイとかインドネシアで英語のサービスを提供するっていうのは、日本で英語のサービスを提供するよりも厳しいかもしれない。
なかなかこういうのをやってこない大手アメリカ企業って多いんです。市場が小さいから、まだまだ後回しになるので。そうなっているうちに、僕らは頑張らないといけないんですね。
岩佐:いつ入ってくるかわからないグローバルトップを……。
間下:入ってきてます。
岩佐:入ってきてる。彼らは全力で奪いに来ますからね。その前に、ある程度市場をかっさらっておこうと。
間下:そうですね。僕らのもう1個のアドバンテージは、僕らからすると、10億円、20億円っていう金額ってでかいですよね。海外で10億円売れば、5億以上利益出ますから。
(しかし)アメリカ大手からすると、10億円ってカスみたいなものなんですよね。頑張らないですよね。アメリカの市場がでかいので。
日本の市場は100億円しか市場規模ないですけど、アメリカは2,000億円くらいあるんですよ。そうすると、そんなにウェイトが変わらないんですよね。
岩佐:柴田さん、日本ではラッパのマーク、正露丸と言えば誰でも知っているわけですよね。これをアジアに持っていくときに、何を武器にして、どういうふうな売り方をするか、そのあたりのお話をお伺いしていいですか?
柴田高氏(以下、柴田):今私たちのブランチが、香港と深圳と上海と台北にあります。メインは香港なんですけど、香港はすべて現地人ですね。
日本人は誰一人海外のブランチにはいません。実際、日本で何年か教育して出してるんですけども。
あともう1つは、先ほど言いましたけども、パートナーですね。正露丸は丸薬が日本より中国のほうが良く売れてるんですよ。
それはやはり1950年代から香港で、まずはラジオコマーシャルやりますと。当然香港から華南地域とか杭州で流れて、テレビコマーシャルをするとまた流れて、最終的には並行輸入品がたくさん出るようになって、中国で海外の医薬品第一号が我々の正露丸なんですよ。
そういう意味では、先行的にできたということ、効率よくメディア媒体を使えた、人が集まるところに集中的に看板を出す、それを現地の代理店と社員に主導的にやってもらう。
我々は、毎週テレビ会議でブランチのミーティングを15分ずつくらいやるといういう感じでやってます。
岩佐:日本の医薬品、日本製だというアドバンテージはどうですか? ジャパン・ブランドに対して。
柴田:ジャパン・ブランドはものすごく評価が高いです。だから、中国のパッケージには「日本国大阪府吹田市」って書いてあります。特に品質とか製品に関しては、ものすごく評価が高いです。
政治の問題は、その時々で変わるだけですよ。だから基本的に中国国民はあまり意識してないです。
岩佐:消費者からすると関係ないんですよね。
柴田:全く気にしてないですね。
間下:日本製が圧倒的に有利だと思うんですよ。どこの国に行っても、今のところ有利にしか働いてないんです今のところね。
岩佐:さて、耕太郎さん。これから、ローカルで頑張ってきた企業がいよいよアジアに出て行かなければいけない。あるいはグローバルに出て行かなければいけない。
その第一歩をどうやって踏み出したらいいかというのが、意外と難しくて大きなテーマになっているんですけども。
まずアジアに出て行く、グローバルに出て行くときに、企業や人が取るべき第一歩は何ですかね?
田村:うーん……一般的な話ですよね? お二人の話はかなり例外的なわけですよ。全くうまくいっていない会社もいっぱいありますし、日本製がいいというのは確かにそうなんですけど、他の国の性能もすごい上がってるんで。日本人に会ったら目的があるわけだから、仲良くしなきゃいけないから、「日本製はいい」って言いますよ。
お二人の会社は特別なんですけど、僕がいろいろなケースを見てて思うのは、そうでもなくなってきている(日本製が必ずしも評価されなくなってきている)と思うんですね。
クールジャパンもそうですけど、モノづくりとか言ってるんですけど、一番できていないのは販路開拓ですよね。
モノづくりにこだわってるんですけど、売り方とか売れるネットワークをちゃんとつくってないんですよ。だから、はっきり言って何も売れていないんですよね。あんまりぶち壊して申し訳ないんですけど。
あとは日本で、「日本がすごい」って言っているテレビが目白押しじゃないですか。僕も帰ったときに見て違和感を覚えるんですけど。
逆に外国でフランスが「フランス人はすごい」みたいなのをやってたら、みなさんどう思いますか? アメリカが「アメリカ人はすごい」ってやってたらどう思いますか?
はっきり言って、日本にいる外国人は「ナチス型だ」って言ってますよ。人種の優劣差をもろに出して、良いところも悪いところもあるのがどの国もそうなんですよ。
たまたまその部分に関しては良さが出てるんですけど、別の部分では長所が短所になったりするんですよ。
自分で自分を慰めているのも憐れんでしまうし、勘違いしてしまうとしたら印象悪いですよね。フランスではそんなの絶対やりませんよ。なぜなら、フランスにはいろいろな人種がいて、フランス人っていう定義が難しくなっているから。
アメリカもアメリカ人の定義なんかできないです。ヒスパニックもいれば、白人もいる、黒人もいれば、白人の中でもいろいろな系列があります。アジア系も台頭している。その中で、1つの人種的に優秀さを訴えるなんてできないです。してたらおかしいですよ。
田村:もう1つの問題、僕はオールジャパンとか言っている発想がおかしいと思うんですよ。グローバルオールスターでやるべきなんですよ。アメリカの企業もそうですよ。シリコンバレーで勝ってる企業って、ほとんど外国人がやってますよ。その後アメリカ人になるケースもあるけど。
70億人のタレントを集めてきて競争させたら、半分以上がアメリカ人以外になるのは簡単じゃないですか。アメリカ人は3億2000万人しかいないんですからね。僕はオールジャパンにこだわっているところが日本の弱さだと思うんです。
やっぱり適材適所で、テクノロジーに向いている人、マーケティングに向いている人、財務に向いている人を選んできて、最終的にそれが全部日本人ならそれでいいと思うんですよ。
別に「日本人以外を選べ」と言っているわけじゃないですけど。多分そうなってないから、オールジャパンでやるしかないと思うんですね。
例えば、こちらで勝っている企業にも、まるっきりドメスティックみたいな企業もありますよ。早く来て、長くやって成功を掴んだ。ただ、その企業がやっているのは拠点長の3倍以上(の給料を)ミドルクラスに払って、オールスターでみんなマネージしてますよ。
はっきり言って、アジアのミドルクラスのほうが、日本のミドルクラスよりもはるかに高い給料をもらってますよ。中間管理職という意味でね。
トップは日本人だけど、3倍、4倍の給料をもらっている課長、部長みたいなのがシンガポール人だったり、インド人だったりするんですね。
1つ傾向があるとしたら、まず余裕があるときに出ていったほうがいいということですね。背水の陣でアジアに出てこられる人は、間違いなく撃沈しますね。なぜかっていうと余裕がない。アジアで成功するのは、どんないい商品でベストパートナー見つけても、時間がかかりますよ。その時間を待てる体力があるかどうか。
そして、変化が激しいですよ。政権や方針が全部変わって、法律も税政も変わるようなこと珍しくないですからね。そういう激変にも耐えられるか。
パイプをつくっていたとして、例えばインドネシアでパイプをつくってたんですよ。(前首相の)ユドヨノさんのころに。それがまた(現首相の)ジョコ・ウィドドさんになったら、全く違うパイプになりますから。そしたら、そのパイプの人たちは逮捕されたりするわけですよね。
そういうのに頼らないくらいの自力をしっかり持っているか。だから、1つは体力がある、余裕がある時点で来るかどうかっていうことですね。背水の陣はダメだと思います。そして、販路ですね。何度も言いますけど、パートナー。パートナーだけ選べばいいということではなくて、パートナーを本気にさせなきゃいけないということですね。そこまでたどり着く。
まず最初にアジアとひとまとめにしてますけど、正露丸さんははっきり言えば中国系ですよね、間下さんはどっちかというとASEANですよね。
広いから、まずどこからいくかということが大事ですよ。インドに行くのか中国に行くのか。戦線を拡げても、太平洋戦争と同じで全滅する可能性が高いですからね。
フォーカスしなきゃいけないんですけど、フィリピンにするのか、ベトナムにするのか、シンガポールに置くのか、マレーシアに置くのか、全部違いますから。さっき言ったように、英語が通じないところだってありますからね。だからまず準備が大事ですよ。体力があること、アジアをよく調べていること。
そして、僕は長い目で見て成功するなら、日本にいちゃいけないと思います。日本にいるとさっきみたいな番組があって、ずれるんですよ。
僕も政治家として世界中の偉い人が来たときに会ってましたけど、彼らも日本に来たら日本と仲良くして、できるだけ成果を持ち帰りたいから、いいことしか言いませんよ。相手の国でだったら、全く態度が違いますよね。いろいろな人と会ってるから。
ただ日本にいてアジアを考えちゃいけない、世界を考えちゃいけない。その場所に行って、外国人としていろいろな扱いを受ける中で、しっかり戦略を立てなきゃいけない。日本にいたらずれると思います。アジアを攻めるにはね。
岩佐:とにかく日本にいるなと。
(会場笑)
田村:違う違う、そういう意味じゃない。
岩佐:出て行きましょうと。
田村:力がない人はやめたほうがいいって言ってるんですよ。
岩佐:背水の陣の人は出て行かないほうがいいということですね。
間下:余力がないと、厳しいと思います。いろいろなことが起きますからね。さっき(田村さんが)おっしゃっていたように、政権が変わった瞬間いろいろなこと変わっちゃいますし。
我々もタイでやってた案件が全部ぶっ飛びましたからね。平気で起きるんですよ、億単位で利益が飛びましたから。そういうことが起きても何とかなるような体制がないと、本当に背水の陣では(無理)。
日本でうまくいかないものが、うまくいくわけないんですよ。ほとんどのケースで。日本でうまくいかせられない技量で行ったところで、うまくいかないと思いますね。
田村:本当に間下さんが言った通りですね。「日本でうまくいっていない。アメリカ行くのは怖い。だからアジアに行こう」みたいな上から目線のなめた考えの人が多いんですよ。アジアはそんなに甘くないです。そういう人は来ないほうがいいですね。
岩佐:じゃあ、耕太郎さん。ジャパンブランドというのを過信しないほうがいいということなんですか?
田村:もちろんあるのはありますよ。日本は好きだし。世界で一番アジアが日本を愛してくれています。外務省がとった統計で9割以上が何らかの形で日本人が好きって言っている地域は、世界中でここしかないですからね。
アメリカでも嫌われないですよ。でも好きなのは6割くらいです。ヨーロッパでも半分くらいの人が好きですよ。でも9割の人が日本が好きだって言っているのは、東南アジアだけですよね。
ブランドはいいんですけど、(多国産品の品質が)追いついてきているということですね。あとヨーロッパも来てるから。
例えば韓国企業の例を出しますと、日本のベーカリー、パンうまいとか言われているじゃないですか。実際うまいと思うんですけどね。
しかし、どこが席巻しているかというと、シンガポールでも東南アジアでも強いのは、韓国の会社ですよ。パリバゲットってやつですけど。
そこがどうやっているかというと、パートナーを現地のパートナーに限らず、パリバゲットはスイスの有名なチーズとミルクの会社を買って、そのブランドとその素材を使って、結構おいしいものつくってるんですよ。韓国系の人がつくってて、どこにもパリっていう感動はないんですけど大ヒットしてます。
日本のパンはおいしいとは言ってますけど、いろいろなやり方があって、韓国系が伸びたりしてるんですよね。だからそれに安住しちゃいけないし、現地に行って正しい感覚をつかむことですよ。
確かにお二人の製品は日本製だからということもあるでしょう。ただ、そうでもない物もたくさんあるんですよね。
岩佐:なるほど。柴田さんどうですか?
柴田:やっぱりアジアの中で、一番先進国が日本で、それをベンチマークに追いつけ追い越せで、それがあるべき競争環境になっていると思うんですよ。
しかしながら日本は、先ほどおっしゃったように甘んじていてはダメで、やっぱりリーダーシップを持って、文化的水準とか価値観とか、いろいろな触感にしても、どんどんどんどん極めていくことはできていると思うんですよ。そこでどういう価値を見出すか、そしてその価値をどういうふうにビジネスに変えていくか。
今言われたように、日本人をリスペクトしている東南アジアの方々を、どのように顧客として、持続的に信頼関係を構築しながら、Win-Winの関係を提案できるかっていうのが今やっていくコアな部分。あとは各論になると、いろいろな選択があるというイメージですよね。
岩佐:ありがとうございます。間もなく質疑の時間に入るんですけども、私の対アジアに対するお話をしておくと、宮城で農業生産をやっている。
昔、田村耕太郎さんが鳥取のスイカをUAEに持っていて3万円ぐらいで売ったという記事を見たんですね。
「日本の物はうまいだろう」ということで、インドに農場をつくって、インドの方々にイチゴを売っている。
今のところ我々がつくったイチゴというのは圧倒的にインドの中で強いわけですね。他の何よりもうまいという評価をもらっている。
私個人的に言うと、もちろんセクターにもよりますけども、ジャパンブランドやジャパンの製品が通用する領域っていうのは、通用するというか競争意義を持つ領域というのは山ほどあって、これはもう一度洗いなおす必要がある。特に食料に対してはそういった印象を受けているということです。
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