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竹村富士徳氏・講演(全3記事)

「目標は3つ以内にしぼりなさい」企業のトップが陥りがちな間違いを竹村富士徳氏が語る

2015年6月13日、ProFutureが主催する「経営プロサミット2015」にフランクリン・コヴィー・ジャパン株式会社の竹村富士徳氏が登壇。世界40ヵ国語以上の言語に翻訳され、3000万部の売り上げを誇る同社のベストセラー『7つの習慣』をもとに、ビジネスの世界で組織やリーダーが実行力を高めるための4つの規律について語りました。

ビジネスの現場で起きている問題点

私たちは今このソリューションを全世界約2000社に導入させていただいているんですけど、それ以外のさまざまな会社にもテストさせていただいた上で、(実際の)現場はこんなふうになっているのかなと感じています。

一般的な組織はそのほとんどの時間を「竜巻」―緊急に押し寄せてくるもの(との闘いに費やしている)。それ以外の時間はずっと目標の心配をしていると。

竜巻が迫りきっている中、「実行しなくてはいけない」「戦略事項も大切だ」「方向性もわかっている」「でもできないんだ!」っていうのが実際の現場の声で。それはなぜかというと、竜巻があるからですよね。

竜巻も大切なんです。でも、竜巻の相手を続けている間は、目標のことだけはわかっているんですけど、その目標と実際の竜巻とがなかなかかみ合わなくて、そして激流の中でその方向に向かって進むと。そんな現場観というものを感じております。

そうではなくて、実行文化が非常に高い組織というのは、同じ竜巻の中にいながら最重要目標に向けて最もインパクトのある活動を行い続けることができているというふうに、(私は)認識しています。そこには原則やプロセスがあるんです。

彼らが実行文化を築くことができるのであれば、私たちも同じ竜巻の中で実行力を高めていくことができるのではないか。そんなことを考えつつ、私たちは先ほどのこれらの答えとしてこんな原則、規律というものを設定しています。

実行するための4つの規律

まず第1の規律ですが、まず最重要目標にフォーカスしていきます。第2の規律は、その先行指標に基づいて行動していきます。そして、第3の規律は最重要目標と先行指標の進捗を確認するための行動をうながすスコアボードというものを作っていきます。

そして、この最重要目標と先行指標を含むスコアボードを中心にしながら、一人ひとりがアカウンタビリティのリズムを生み出す。これは定例のミーティングでということになりますけど、こうした試みを「実行のための4つの規律(4Dx)」とまとめてご案内させていただいております。(それでは)それぞれの4つの規律についてざっとご紹介いたします。

第1の規律.最重要目標にフォーカスする

まず(第1の規律にある)「最重要目標にフォーカスする」です。

米国にある大手オイル・カンパニーに、当社がお邪魔させていただいた時のケースをひとつ皆さんにご案内させていただきたいんですけども。

こちらは何かというとポスト・イットです。社長には傍観していただいた上で、トーク・セッションをやったんですが、トップ・エグゼクティブ10名の方にポスト・イットを5枚ずつ渡して「この会社の最重要目標と最重要課題のトップ5をポスト・イットに1個ずつ書いてください」と。

それを集めて皆さんの前にグループ化して、「何グループあるんでしょうか?」と答えてもらいました。皆さん、これ、何グループくらいだと思いますか? 

(50あるポストイットの)半分ぐらいだと思う方。

(会場挙手)

あっ、こんなに少ない……。10以下という方、どれぐらいいらっしゃいますか? 

(会場挙手)

こっちのほうが多いんですね。ありがとうございます。

ちょっとこの回答を出す前に、皆さんにやっていただきたいことがあります。ちょっと全員天井指差してもらっていいですか? 天井を指差したまま、目をつぶってもらっていいですか? 目をつぶったまま、北を指してください。お願いします。

……大体いいですか? (指を)差したまま、目を開けて、周りをご覧ください、どうぞ。

結構バラバラですね。ではコンパスを置いてみます。(右のほうを指して)北はあっちですね。ありがとうございます。じゃ、(先ほどのテーマに)戻ります。(実際は)どれぐらいだったかといいますと、こんな結果になりました。

47グループ。

(会場どよめく)

ちょっと笑ってしまいますよね。笑ってしまうんですが、社長は「北はこっちだ!」と指を指しているつもりなんですけども、簡単な一時間くらいの演習をやったら、側近のトップ・エグゼクティブたちが北とは全然違う方角を指差していたというのが(ここで)明らかになってしまったんですね。

皆さん、結構「47ってないでしょ?」って言ったりするんですが、ホントですか? 会社に戻られて、(自分の抱える)チームにポスト・イット3枚でいいから渡して「このチームの最重要目標と最重要課題なに?」って同じ演習やったら、皆さんどれぐらいになると思いますか? 特に管理職の方、いかほどの自信がありますでしょうか? 

そうすると、もしかしてこの「47」って笑えないかもしれないなって方いらっしゃるかも知れないですけども、最重要目標にフォーカスするって当たり前のことで、しかも2個か3個に(最重要目標と最重要課題が)絞られると、先ほどのデータにみられたように、そのパーセンテージは一気に下がるんですよね。

いろんな重要目標があるんですけども、英語で“Wildly Inportant Goats”、略称で“WIGs”と呼ばれるもの、「これを達成することができなければより重要度の低い目標を達成しても意味がないと思うほどの、最も優先度の高い」目標とは一体何なのかを導き出すことを、私たちは手がけているわけです。

特に、実際の現場でMBOとかやっているような会社だと、だいたいの目標が8個とか10個とかいうのがざらにあります。でも、その中で絞る、ないしはまとめるということをやって最大でも3個の目標にしましょうという事柄を示しているんです。

「だいたいこっちに進んでいくな」という(漠然とした)ものではなくて、本当にピンポイントでこちらの方向に向かって進んでいけるよう、目標を絞っていきます。

目標の数と優れた成果は比例しない

なぜ絞る必要があるのかというと、こんなデータがあります。「目標の数」、それから「優れた成果を出した目標の数」ってこんな関係があります。

(「目標の数」が)2個から3個の時には(「優れた成果を出した目標の数」も)2個から3個出せるんですが、4個から10個の時には1個から2個、(さらに)11個から20個になると0個になってしまうという。

これを「収穫逓減の法則」なんて呼んでいますけど、「目標の数」と「優れた成果を出す目標の数」というのは残念ながら原則レベルでは反比例してしまうということでございます。『ビジョナリー・カンパニー』を書かれたジム・コリンズは(続編の)『ビジョナリーカンパニー2』の中で「“偉大さの敵”は“良い”」と発言しています。

私たちは良いことばかり選んでいて、結局本当に偉大な事柄を見失ってしまうことに警鐘を鳴らしているのです。

そうではなくて、この第1の規律の中では「下位組織の目標は上位組織の目標をサポートする」「目標の数は3つ以内とする」「現時点からあるべき到達点が示されている」(From X to Y by When)、こんなフォーマットで目標というものを設定しています。

第2の規律.先行指標に基づいて行動する

最終的には組織の目標をそれぞれの部門でリアルに分解していき、そして全体を整えていくという流れを第1の規律のところでは扱っております。そして、最終目標が明確になりましたら、今度は第2の規律にある「先行指標に基づいて行動する」に入ります。

「先行指標」って、皆さん聞き慣れない言葉だと思うかも知れないんですが、ひとつスライドをお見せします。

これ、皆さんご覧になられたことございますでしょうか? ヨーロッパのほうの「ハーバード・ビジネス・レビュー」に何年か前に掲載されておりました。ブルック教授とゴーサル教授の2人がヨーロッパの10大企業の特定の管理職の方々を10年間追った上で論文にまとめたものです。

その結論は、大変残念なことに「マネージャーの●割はあたふたと動き回ることを建設的行動と混同することで、典型的に組織の中心目標から逸脱または乖離している」というものでした。

(●の部分は)穴埋めになっていますが、皆さんこれ何割ぐらいだと思われますか? 5割ぐらいだと思われる方? 

(会場挙手)

だんだん皆様、(質問の)流れに慣れてきたのか、結構高めで。

8割ぐらい(だと思う人)? 

(会場挙手)

多いですね。(実は)こういう結果になります。

9割! 9割ですよ。すごいですよね。(マネージャー層って)もうやる気満々なんですよ。ただ、やる気はあるんですけど、全然違う方向に向かってものすごい速度で進んでいるという(残念な)状態でございます。

目標は持っていて、やる気はあって、でも結局やっていることと向かっている事柄が結び合わない。

それに対して、最大限インパクトがある結び合わせる活動が何なのか。私たちはこれをもとに先行指標というものを導き出しております。

パレートの法則に基づいた時間の使い方

先行指標の対語は遅行指標と呼んでいます。その説明の前に一般的な原則をひとつ。「パレートの法則」はご存じですよね。

いわゆる20%のお金持ちの人たちが80%の全世界の富を得ているというところがこの法則の出発点でございますが、(今日では)トップ20%の営業たちが8割の売上を上げているとか、トップ20%の商品群が8割の売上を占めているとか、そういうものですよね。

そして、このパレートの法則に基づいた原則を第2の規律では活用していきたいなと思っております。では、時間の使い方。

同じ竜巻の中でより多くの成果を出していくためには、絶対的な時間の使い方(が決め手となります)。赤の部分が指し示す時間の使い方をする人もいれば、青の部分が指し示す時間の使い方をする人もいる。

目標に対して最もインパクトのある上位20%と被っている人がいる一方、竜巻に押しまくられてたくさんの事柄をやるが重要なものにはなかなか触れることができない(人もいるわけです)。これって結果がだいぶ変わってきますよね。

(スクリーンの)青の方であればこんなふうになるかもしれない。でも、(スクリーンの)赤の方はたくさんの事柄をこなしたとしても、実はなかなか生産性というものは上がらないかも知れません。

じゃあ、この青の部分は一体何なのかっていうことを考えていくのが先行指標であり、対となっている遅行指標との違いはこうなっています。

遅行指標というのは「最終目標そのもの」の指標であり、目標を計測するものです。(対して)「先行指標」は目標につながる事柄を計測し、私たちが影響を及ぼすことができるものと定義しています。

皆さんダイエットとかおやりになられている方いらっしゃると思いますが、最重要目標が「体重を減らす」(From X to Y by when)、今何キロでいつまでに何キロ減らすなんていうのはよくありそうな話ですよね。

最重要目標は「何キロ減らす」なので、「今の体重が何キロなのか」「月末、来月、夏までに何キロ減らすのか」というのが遅行指標にあたります。

日々のカロリー量であったりとか、あとは運動量であったりとかを、私たちは(先行指標として)計測して、それをきちんと行っていくことができるのであり、(結果的に)私たちは体重をよりコントロールしやすくなっていきます。

ビジネスでいうと、「工場で事故を減らす」というミッションに関しては、月間の事故は報告書で上がってきます。これは遅行指標で出てきますが、そのためにある会社様では8つの安全基準というものを設定し、遵守率はどれぐらいなのかという点にフォーカスすることができたなら、結果を(自ずと)導き出すことができる。

「(店舗の)売上を伸ばす」という(ミッションでは)、最終的に売上は遅行指標で出てきます。それに対して、様々なものがありますけども、私たちがお邪魔させていただいたある会社では在庫切れの数をちゃんとコントロールすることで、「目標に対して売上を増やすことができる」(としています)。

先行指標とは何か

こうした先行指標って一体何なのか。「予測可能」で「影響可能」なものって一体何なんでしょう? これを導き出してまいります。私は実際このワークセッションをリーダーの方々とオリエンさせていただくんですけども、ここに一番時間を使います。

「先行指標が一体何なのか」ということを導き出すことは結構難しいです。最重要目標を絞っていくということはそれほど困難な作業ではございませんが、最重要目標に対して先ほどの「パレートの法則」に従い、「最もインパクトがあり、自分たちが影響でき、それを計測したら目標を予測することができるものは一体何なのか」(を知ることは困難を極めます)。これを導き出すのにだいたい(いつも)セッションの半分くらいの時間を使っていきます。

では、「予測的」で「影響可能」で、かつ「指標化」できるものをルールにして、第2の規律を実際に探っていきます。

少しわかりやすそうな例で皆さんにご案内させていただきますと、営業系は当然売上を100%、ないしは200%にするということ(が目標です)。

であるならば「それに伴う先行指標は一体何なのか」ということを、結局ハイパフォーマー達がやっていることを分析していくと、「訪問件数はどうやらこれぐらいなければならない」「ソリューションの提案数はその時にだいたいこれぐらいやる」、あとは「セミナー回数とそれの評価をだいたいアベレージの指数で80点以上取らなければならない」とか(を知るのです)。

私たちがよくお邪魔しているのはカスタマー・サービス関係ですが、その先行指標は、さまざまなものに対するリターン率、問い合わせコール、クレーム件数の削減がどれぐらいあったのかなどになります。

あとは実際に(先方から)受けるだけではなくてアウトバウンド件数もどれぐらいか見ていくことによってカスタマー・サービスという事業の指標を高めていくことができたりします。こうしたものを、実際のワークセッションでは先行指標としてアウトプットしていきます。

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