
2025.03.19
ドバイ不動産投資の最前線 専門家が語る、3つの投資モデルと市場の展望
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朝倉祐介氏(以下、朝倉):みなさん、こんにちは。朝倉祐介です。私はスタンフォード大学のUSアジアテクノロジーマネジメントセンターで、客員研究員を務めています。今日は、私の知見を共有する機会を設けていただきありがとうございます。
まず、今日はどういった方が聴きにきているのかお尋ねしますね。学生の方はどのくらいいらっしゃいますか? ……OKです。研究者の方はどのくらいですか? じゃあ投資家の方はいらっしゃいますか? なるほど。ではスタートアップに関わってらっしゃる方はどのくらいいらっしゃいますか? なるほど。ありがとうございます。
私は今、スタンフォードでオープンイノベーションについて研究しています。日々、起業家たちに会い、時にはシードステージのスタートアップに少額の投資をしたりもしています。以前は日本にある株式会社ミクシィでCEOを務めていました。
今日私がお話しする内容は、最近の日本における新興企業の傾向についてです。大きく分けて2つあります。
1点目は新規上場後の新興企業について。日本には新興企業の多くが経験する典型的な問題があります。ミクシィの事例を交えながらご説明します。2点目はより一般的な内容です。日本での最近のスタートアップの傾向について、今日本でどのようなことが起きているのか、いくつかチャートをお見せしながら説明していきます。
内容に入る前に、簡単ではありますが、自己紹介をさせてください。私は日本で生まれ15歳になるまで日本で過ごしました。そして15歳になってから、競馬の騎手候補生としてキャリアをスタートしました。私は中学校卒業後、騎手になることに決め、オーストラリアにある競馬騎手の養成学校に進みました。
騎手になるには、だいたい105ポンド(約47キロ)程度以下に体重を抑えなければなりません。だから私は減量し、体重の維持に努めました。そして1年後、私はどうやら騎手になるには大きく成長しすぎてしまったことに気付きました。
(会場笑)
その後日本へ帰国し、私は競走馬の調教助手として牧場で働き始めます。しかしここで働いていたさなかに、私は交通事故に遭ってしまいました。左足の大腿骨と下腿骨を粉砕骨折してしまった私は馬の仕事を離れ、東京大学に進学しました。
そして2006年、私は友人と会社を立ち上げます。モバイルとソーシャルネットワーキングサービスに関連する技術の会社です。この会社については後ほど説明しますね。大学卒業後、私はマッキンゼー・アンド・カンパニーに経営コンサルタントとして入社しました。
そこで私はいくつかのプロジェクトに携わります。3年後、UCバークレーのビジネススクールからオファーを受けました。そのままビジネススクールに行こうと思っていたのですが、まさにちょうどその時、学生時代に立ち上げた会社が資金調達をするタイミングだったこともあり、戻ってくるように言われました。
ビジネススクールで学びたかったのはアントレプレナーシップだったのですが、大学で学ぶよりも実際のビジネスで実践した方がよいと考え、前の会社へ戻ることを決めました。
そして2010年、もともと友人たちで作ったその会社に戻ります。「ネイキッドテクノロジー」という会社です。変な名前ですよね。
(会場笑)
復帰した頃には手がけている事業内容も変わっており、フィーチャーフォン向けのミドルウェアを開発していました。フィーチャーフォンはわかりますか? スマートフォン以前の携帯電話のことです。
多分ほとんどの皆さんがスマートフォン以前に使っていたと思います。当時、フィーチャーフォン向けにアプリケーションを開発しようとすると、キャリアやそれぞれのメーカーのデバイスによって挙動が異なり、デバイスごとに個別に対応しなくてはいけませんでした。従って、異なる携帯端末で機能するアプリケーションを開発するには、非常にコストがかかったのです。
そこでネイキッドテクノロジーは、1つのソースコードから異なるデバイス向けに同一のアプリケーションが開発できるミドルウェアを開発しました。この技術をライセンスしたり、活用してフィーチャーフォン用のTwitterアプリといった自社の内製アプリを開発していました。
ネイキッドテクノロジーに復帰した後、私はCEOに就任し、会社の経営にあたっていたのですが、1年ほどして会社を売却するという意思決定をしました。複数社と交渉を進め、複数の売却先候補が出る中、最終的にネイキッドテクノロジーを買収したのがミクシィでした。
ところで、スタートアップを経営していく過程では色々な出来事が起ります。それらの多くはイノベーションに関わることというよりは、むしろ人間模様に関するものです。今日は残念ながら時間が限られているので詳しくお話しできませんが、スタートアップを経営していく過程では、様々な人々の異なる利害関係に向き合っていかねばなりません。
時には、仕事と関係のないプライベートな事情にまで立ち入ることもあります。想像できると思いますが、かなり面倒です。
それでもなんとか皆を同じ方向に向け、ステークホルダーに利害を共有させねばなりません。私の経験から言える事は、スタートアップは全くもってクールなことではないということです。
なにはともあれ、我々の会社はミクシィに買収されました。ミクシィに入った後、我々を取り巻く環境は一変しました。ネイキッドテクノロジーは従業員10人程度の会社でしたが、ミクシィは500人以上のフルタイムの社員と100人以上の非正規社員からなる大きな組織でした。環境が全く違うんですね。
私はそこで執行役員になり、最終的にはCEOに就任しました。そしてCEOとして会社の再生を担うことになりました。私のことはだいたいこんな感じです。
ではここから本題に入りましょう。新規上場した後、会社の成長をどう維持していくかについて話していきます。
ここには日本でよくある共通した問題が潜んでいるんです。私たちは新規上場後、成長を維持できなかった会社を多く目にしてきました。中には上場後、株価や売上が急落する会社もあります。
1つの要因は、人が既存の事業やサービスにある種の愛着を持ち、そうした愛着が新たな事業展開を妨げる点にあります。だから会社の成長を持続することができない。そしてそれは時として、株価の急落を招くこともあります。そうした状況が生じることによって、一般の投資家も日本での新規上場や新興企業全体に対して懐疑的になってしまいます。
日本のスタートアップのエコシステムのためにも、これは私たちが考えるべき非常に重要な問題だと思います。
まずミクシィについて説明します。ミクシィは1999年に創業し、2004年にSNSの提供を開始しました。ちなみに同時期、ボストンではFacebookがサービスを開始しています。mixiの機能はSNSとして基本的なものでした。日記やコミュニティ、そして写真共有などです。
mixiは一躍人気を集め、2006年、ミクシィ社は東京証券取引場マザーズに上場しました。そしてmixiは日本でNo.1のSNSになります。多くの競合サービスは運営を終了したため、実質的に言うとmixiは日本でほぼ唯一のSNSになりました。
しかし会社の業績は期待されていたほどには伸びませんでした。これが新規上場後5年間の株価の動きです。
2006年の上場当時、時価総額はUSドルで20億ドル程度。翌年株価は急上昇するものの、その後は下降を辿ります。ネイキッドテクノロジーがミクシィに買収されたとき、時価総額はおよそ4億ドルでした。
そしてこれが2011年度以降のミクシィ社の売上推移です。2012年度以降、売上は四半期ごとに下落していきます。私は2013年にミクシィのCEOに就任していますが、CEOに就任した第1四半期には、会社は上場後初めての赤字に突入しました。非常に厳しい時期でした。
ミクシィに買収された当時、私はミクシィのCEOになるだなんて想像だにしていませんでしたが、キーマン条項の期間終了後もミクシィに残り、執行役員に就任し、最終的にCEOに就任しました。
私がやるべきことはただ1つ、ミクシィ社を再生すること。それまではスタートアップの経営を担っていたのですが、今度は上場企業の再生を手がけることになったわけです。
ではミクシィに何が起こっていたのかもう少し深くみていきますね。様々な問題が山積していましたが、3つの観点に整理してみましょう。
1点目が競合に関する問題。mixiは実質日本でほぼ唯一の主要なSNSでしたが、国外から新規サービスが参入しました。Twitterです。
2009年あたりから、Twitterは日本の一般のユーザー層にも広まるようになりました。続いて2010年にはFacebookが東京に支社を構え、精力的な事業展開を開始しました。
mixiのユーザーはTwitterやFacebookに流出していたんです。さらに、日本国内からも新規参入者が現れました。LINEです。LINEとは日本で普及しているWhatsAppやWeChatのようなメッセージアプリのことです。LINEは2011年にサービスを開始し、日本で広く使われるようになりました。
つまり、私たちのユーザーは新たに現れた代替サービスにコミュニケーションの場を求めたのです。
2点目は市場の問題です。当時、私たちは大きな変化の節目にいました。フィーチャーフォンからスマートフォンへの移行です。ミクシィはフィーチャーフォンでの成功体験が大きく、スマートフォンへの最適化には遅れをとっていました。ミクシィ社の売上の大半はフィーチャーフォンの広告収入だったため、こうしたデバイス環境の変化によって多くの売上を失ったのです。
フィーチャーフォンの広告市場は劇的に縮小し、モバイル広告の主戦場はスマートフォンに移行していきました。さらに悪いことに、スマートフォンで主に取り扱われている広告商品は、ミクシィが取り扱っていた広告商品とは異なったのです。
スマートフォン広告市場の大半を占めているのはリスティング広告やアドネットワークなどです。ミクシィが売っていたのは主にナショナルクライアントなどを対象とした純広告です。日本のスマートフォンにおける純広告の市場規模は、2012年当時で6000万ドル超とのことです。ミクシィの売上規模はだいたい1億1000万ドルから1億2000万ドルの水準です。
これが何を意味するのかというと、仮に当時のスマートフォンの純広告市場のシェアを100パーセント獲得できたとしても、広告売上では既存の売上水準を維持することはできなかったということです。業績的には競合の参入以上に、デバイス環境の変化の方がより深刻な影響を与えていました。
3点目は自社の観点であり、会社のカルチャーに関する問題です。根本的には、これこそが私たちが取り組まねばならない一番の問題だったと思っています。
2000年代を通してミクシィは非常に成功しました。ある意味、成功し過ぎたのです。その成功体験によって、私たちは非常に保守的な企業体質になってしまいました。
これは成功体験を経た多くの会社で起こることです。私たちはこれを「成功の復讐」と呼びます。私たちは過去の成功体験から復讐を受けるんですね。その過程で色々なことが起こります。
例えば現実に起っている問題から目を背けようとします。ご理解いただけると思いますが、自分たちの提供するサービスが時代遅れだと受け入れることはなかなかできません。
中の人間は、サービスの不振について実にクリエイティブな理由をつけて説明します。そこにはある種、自己正当化の口実が含まれるものです。
でも理由は単純なんです。サービスが時代遅れなものになり、ユーザーは代替サービスに移行した。サービスがユーザーの期待に応えられなくなってしまった。それが根本的な理由です。
しかしそれはタブーでした。なぜなら皆、サービスに強い愛着を持っているからです。現実から目をそらし、責任を押し付けあいます。
こうした葛藤や矛盾、体質はずっと存在していたんです。しかし会社が成功しているうちは、そういった不都合は顕在化しません。成功の陰に隠れているからです。そして会社が不振に陥って初めて、そうした問題が露呈します。これは全ての成功している会社に起こることだと思います。
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