
2025.02.12
職員一人あたり52時間の残業削減に成功 kintone導入がもたらした富士吉田市の自治体DX“変革”ハウツー
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佐藤博樹氏(以下、佐藤):では続きまして、サイボウズ株式会社の青野さんですけれども。サイボウズは平成25年度の100選受賞企業ということでお話しいただければと思います。
青野慶久氏(以下、青野):サイボウズの青野と申します。よろしくお願いいたします。10分ぐらい私たちの会社を紹介させてください。
まず私の紹介なんですけれども、今43歳でこのサイボウズの社長をしています。もともとパナソニックに勤めていまして、3年働いたあとサイボウズを創りました。3人子どもがいまして、今3度目の育児休暇中ということになります。3度目の育児休暇は短時間勤務になっておりまして、基本的に毎日4時で帰るということをしています。
今1カ月半ぐらいの、3人目の娘がおります。こう書くとすごく家事育児に参加している、すごいいい社長と思われるかもしれませんけど、それは大きな勘違いでして、私の頭の中は超昭和です。職場で死ぬことが私の本望です。
子どもができるまでは布団の中にタブレット端末を持ち込んで、瞼が落ちるまで働くと。それが私にとっての快感だし、それは今も変わらないんだと思うんですけど、これではいけないと。
あるきっかけがありました。私は文京区に住んでいるんですけれども、文京区は成澤区長さんが今の区長さんでいらっしゃって、彼は全国の区長として初めて育児休暇をとられたというんです。彼が「青野さん、育児休暇を取りなよ」と言ったもんですから、嫌々取ったんですけれども。
そうしたらやっぱり気が付くことがいっぱいあって、「この大変な業務を女性1人に押し付けるってどうよ?」みたいな。「そりゃ少子化になるわね」みたいなことを思って、ちょっと自分の中でマインドチェンジしようと思って頑張っているところです。
これは会社の概要ですけれども、今500人ぐらいの会社になっていまして、一応一部上場企業で、今はグローバル化が進んでいるような会社です。
私たちがやっているのは、「グループウェア」というソフトを作っていまして、これがあると仕事の情報が共有できると。ちょっと言いかえると、これがクラウドにあれば、どこからでも働けると。
「ちょっと子どもが急に熱を出しちゃった、もう昼には帰らないといけない」という時、家に帰ってもその続きをあとでやることもできますし、場合によっては誰かに引き継ぐのも簡単という、こういうツールを作っています。
ただ、このサイボウズ自身は非常にブラックな会社でして、私がこういう性格ですから、「土日働いて当たり前だろ!」みたいな。「ITベンチャーなんだから来るだろう!」みたいな。朝会社に行くと、誰かが会議室で寝ているとかは普通の会社です。
ITベンチャーはそういうものだと思っていたんですけれども、この2005年に離職率が28パーセントを記録しまして(笑)。さすがにこれは非効率だと。人がこれだけ辞めると、採用しないといけない。採用にコストがかかります。採用した後も、教育しないといけない。教育もコストがかかります。
「これ、効率悪いね」と。「ちょっと辞めない方向にできないものか?」ということを考え始めたのが実はきっかけです。つまり、私が社員想いだからやったとか、そういう話ではなくて、単純に経済合理性から考えて、方針を変えたほうが効率的だと思ったからなんです。ここはぜひ強調しておきたいポイントなんです。実際にやってみて、それが如実に表れております。
人がいっぱい辞めるもんですから、まず何を考えたかというと、「なんで辞めるんだろう?」ということを聞いて回りました。そうすると、「みんな思っていることが違うんだな」という、当たり前の事実に気付きました。私自身は夜遅くまで働くのが大好きだし、土日にも出てきて楽しいけれども、みんながそういうわけではなくて、それぞれモチベーションの源泉が違うと。
それを1個1個、1人1人のものを確認しながら解決していかないと、離職率は下げられない。もうモノカルチャーな時代ではなくなってしまったと。それで、人事制度を変えることにしました。
ポリシーは1つ目に書いてある言葉ですが、「もし100人社員がいるんであれば、100通りの人事制度があっていいんじゃないか」と。つまり、社員1人1人を同じものとして扱わないということです。1人1人絶対違うはずだから、それぞれに応じた働き方を提供しようと。そうすれば、辞めるはずがないと。こういう考え方になります。
最初にやりましたのが、3番目の「働き方の選択」というものです。やっぱり残業がキツいねと。子どもができたし早く家に帰りたい。じゃあ、早く帰りたいのであれば、帰る時間を自分で言ってもらえればその時間までしか仕事を与えてはいけないという制度にしましょうと。
5時に帰りたければ5時以降の仕事は絶対与えてはいけないと。そういうルールを決めました。これは結構ママさんに評判が良かったです。
あとは、例えば5番目ですけれども、なかなか会社に出てくるのが大変ということがありますよね。そのときに、働く場所、及び働く時間も選べる。つまり朝5時から昼まで働いて終わりにしたかったらそれでいいと。家で働いてもらってそれでいいと。そんな「ウルトラワーク」という名前を付けましたけれども、こういう制度を作りました。これも結構評判がいい制度です。
それから、6番目は育児休暇の年数ですね。多分法律では1年もしくは1年半ぐらいだと思いますけれども、双子の赤ちゃんができた女性がいまして、「ちょっと1年で復帰するのは自信がない」と。じゃあ、「何年ぐらい取れたらいい?」と聞いたら、小学校上がるぐらいまでかなと言ったので、6年にしたという、そういう。
非常に安直なんですけれども。でもたいていの人は1年か2年ぐらいで帰ってきますけれども。1番最長で、4年8か月で戻ってきた方もいらっしゃいます。あといろんなことをやっています。
最近話題になっているのは15番の副業ですね。これは私の中でもそうとう抵抗がありましたね。私が松下にいたときは、副業は基本的に禁止なんですよね、原則禁止。副業するなんてね、なんかこう後ろめたいですよね。「お前はこの会社でやる気があるのか?」みたいな。
そういう感じがあったんですけど、もう今やヤフーオークションで物を売ったってお金になりますし。Amazonのアフェリエイトリンク貼った瞬間で月300円ぐらい貰えたりするし。それも全部含めて副業禁止かと。じゃあ、1回ちょっとオープンにしてみようということをやりまして、逆に言うと原則オッケーと。
何かサイボウズの財産を棄損するようなことがないのであれば、原則的には何をやってもいいですよということをやりましたら、結構副業する人が増えてきまして。週4日サイボウズ、週1日別の会社とかね。週3日サイボウズ、週2日別とかね。土日を使って別の会社で働くとか。いろんな人が出てきました。
これすごくいいなと思ってですね。何がいいかというと、社外の情報が入りやすくなりますね。当たり前ですけれども別の会社で働くので、そこの会社のリアルな情報がその人を通じて入ってくると。これはなかなか、普通の働き方で得られない。
またいいのが、もしサイボウズに何かあって倒産しても、副業ができていればみんなすぐ次の雇用先が見つかるとね。経営者的にはこんなに楽なことはないぞ! みたいな、そんなことを思ったりしています。
いろいろやりましたけれども、私の中の働き方を変えるポイントは3つあります。
まずはツールです。このIT社会に便利なものを使わない手はないので、まずこれをちゃんと入れましょう、ここは投資しましょうと。できればサイボウズ製品へ投資してください。2つ目は制度ですね。こういう制度を整えないと、なかなか働き方を変えにくいので、制度は見直してください。
ただ、1番大事なのはこの右下の風土です。制度を作っても使われなかったら全く意味がないわけなんですね。男性育児休暇取得なんていうのは、多分どの会社でも入っていることです。でも取らないわけです。制度を作ったってだめなんですよね。風土を作らないと。
風土というのは価値観です。男性が育児休暇をとるのが偉いのか? それともとった奴がアホなのか? とった奴は偉いのか? これを入れ替えていかないといけないですよね。
この間、某島耕作を書かれた漫画家の方が、ネットですごい叩かれていましたけれども、子どもの誕生日に会社を帰るやつなんて信じられないみたいなこと言って炎上していましたけれども。
この古い価値観を持っている人を入れ替えていかないといけないですね。ここの作業を経営者が率先垂範して、どんどん発信していかない限りは、どれだけ制度を入れたってだめですよというのが私の結論です。
結果的にはサイボウズの離職率は4パーセントぐらいまで下がってきていまして、女性が辞めなくなりましたので、女性比率が今4割まできました。サイボウズなんてITのエンジニアが半分以上の会社ですから、女性比率4割というのは多分、結構業界的には異常な数値まできていると思います。
女性役員も増えてきまして、今10人中2人が女性の役員になっています。そのうち1人は、中根という女性なんですけれども、2人の子どもを今育てながら短時間勤務をするワーママです。彼女が今、サイボウズの役員になっています。
これはちょっと自慢ですけれども、働きがいのある会社なんかでも選ばれるようになってきました。
あと最近、サイボウズはワーママ動画というのを作りまして、ご覧になりましたか? 西田尚美さんを使って『大丈夫』という動画を、都会で働くワーママがいかに大変かというリアルな動画を作ってみたら、1カ月に50万回以上再生されました。早く続編を作れと怒られているんですけれども。結構お金がかかるので、どうしようかと思っていますけれども。
まあそんなことをやっている会社です。私が1番お伝えしたかったのはこの3つ。ツールと制度と風土と。3つやらないと変えられませんよというのが私の思っているところです。以上です。
佐藤:高い離職率に直面して、これでは経営がもたないということで、改革を始められたということで。究極のダイバーシティと言いますか、人生100通りあっていいんじゃないか? という。
ちょっと1つだけ伺いたいんですけれども、日本の人事というのは基本的に、みんな同じように扱うのが公平だとやってきたんだと思うんですね。ところが、やはりそこを変えて「それぞれ違うんだから、その違いにおいて、違うように扱っていいんだ」ということだと思うんですけれども。
結構これは他の社員から見ても、極端にいうと「えこひいき」みたいなこともあるかもわかりませんけれども。やっぱり違うものを扱うのは新しい公平公正なんだというふうに感じきる。そのときの軋轢とかなかったんでしょうか? あるいはそれはうまくいったのか、ちょっと教えていただきたいです。
青野:ありました。やはり女性から要望が上がってそれに対応していったので、「なんか女性ばっかり、働くママさんばっかり優遇してなんか不公平だよね」みたいなことを男野郎が言っていたので、「じゃあお前、何が欲しいんだ。言ってみろ」と。大事なのは一律でみんな喜ぶんだったらそうすると。
社宅を用意して、みんなが喜ぶんだったら社宅を用意するけれども、社宅に入りたくないやつもいるだろうと。だから分けるんだと。1人1人が自分の欲しい物を主張しなさい。それを主張してくれたら必ず検討しますと。
それを文化として根付かせていくと、今度は愚痴を言うと卑怯者にされますから、言わなくなってきましたね。逆に言うと、みんながどんどん新しいアイディアを出してくれるようになりました。
佐藤:はい。すごく大事な点かなと。やはり日本の人事が変えていかなきゃいけない大きなハードル。これを超えないと、本当にダイバーシティ経営はできないのかなというふうに思っておりました。どうもありがとうございました。
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