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スマートミステイクのすすめ(全7記事)

直近で最大の失敗はニコキャス--夏野剛氏、失敗力カンファレンスで「本当すみません」

失敗のリスクに果敢に挑戦し業界の第一線で活躍してきた3名―楽天・三木谷浩史氏、慶應義塾大学大学院教授・夏野剛氏、サイバーアイ・エンタテインメント・久夛良木健氏―が一堂に会し、「スマートミステイクのすすめ」をテーマに意見を交わしたセッション。本パートでは、会場から寄せられた質問に一流の経営者らが答えました。

8割の起業家が金目当て

米倉誠一郎氏(以下、米倉):会場の皆さんの中からですね、この3人に聞いてみたいことがあれば質問をどうぞ。

質問者:失敗力に関して最終的には個人っていうのもあると思うんで、個人の失敗に関してちょっとお伺いしたいんですけども。

自分の弱みと思っていらっしゃるところですとか、あと経営者となると特に何もしないことが最大の失敗っていうふうに思ってるんですが、そういった心が折れそうな時ですとかに、自分をセルフコントロールする秘訣をお教えいただければ幸いです。

米倉:抑制力。自分が折れそうなときにどうしてるか。

三木谷浩史氏(以下、三木谷):折れそうなとき。僕思うんですけど、大体特にITのベンチャーとかってほぼみんな躁状態だと思うんですよね。だから、あんまり鬱にならない。本当に新しい刺激が多すぎて。

なんでほとんど折れるってことがないし、逆にいろんなインシデントがあったり、難しい局面になるとようやくやっと俺の出番が来たか、みたいに燃え上がっちゃう。だから本当に心が折れるっていうのはこの18年間経験したことがないですね。

米倉:抑制力はないと。

三木谷:抑制力はない。

米倉:他の2人はどうですか?

夏野剛氏(以下、夏野):うーん。

米倉:しょうもない質問だったらパスしてもいいですけど。

夏野:しょうもないね。しょうもないけど、最初の質問はこの弱点。自分の最大の弱点はね、僕はビジネスの為のお金にすごい執着があるんですよ。絶対に黒字化してやるとか絶対に儲けてやるとか。自分の条件を出すのがへたくそなの。

米倉:なるほど。

夏野:だから結構起業家って難しくて、みんな綺麗ごと言ってるけど結構8割くらいの起業家は自分さえ金持ちになればいいっていうのもいるんだよ。で、だいたいそういう会社は上場したときの価格がマックスでその後、時価総額下がってても絶対社長をどかない。

だからベンチャーっていっても8割がエセなんですよ、正直。でもそういうのはやっぱり個人にいっちゃってる人なんですよね。で、多少その辺のバランスを考えないとだめだなとか49歳にして思いました。

米倉:何の参考にもならない話でしたね(笑)。はい、久夛良木さん。抑制力の話でもいいですし弱点でもいいですけど。

久夛良木健氏(以下、久夛良木):多分ね、いろんなケースになったとしても、自分だったらこうしたいとか、こうするんだけどなっていうふうに過剰に思うんだよね。

だからニコニコ笑いながらね、こう当たり障りなく流すみたいなことがなかなかできなくて。そういうのを流してしまえばいいって思ってるんだけど、さっき言ったように自分でハンドルとかアクセルとか踏みたくなるとこういうふうに思うんだよね。

で、さっき落ち込むことがあるかっていうとやっぱりごくわずかはあるのね。一瞬ブルーになってしまって。だけどその時は寝るね。そうすると翌日はすごくさわやかな朝になる。

米倉:はい。何の参考にもならない意見でした。寝てください。

失敗を失敗と思わない力が重要

米倉:他にどうですか。

質問者:失敗力という事で、組織的な失敗力を恐れているというお話をされたと思うんですが、個人の失敗力ですと個人でこうすれば良かったというのがあると思うんですけども、組織での失敗の時、物事を判断されるときにどれくらいの方の意見を聞かれたりだとか、どれくらいのご自身の意見を通されるのかなと、その判断を教えていただければなと思います。宜しくお願いします。すみません。

米倉:どうぞ。

三木谷:今日個人の失敗っていうのがあったじゃない、もうひとつそのアントレプレナーに共通してるのは、失敗を失敗と思わない力っていうのもあると思うんですよね。すごいいっぱい失敗してるんですけども、忘れちゃうっていうですね。ちゃんと失敗を学習しろっていうのもあるんですけども。

米倉:それは得意だな、僕。アントレプレナーじゃないけど。

三木谷:だからね、難しいところで、あんまりこだわっちゃうとすごい足がでなくなっちゃうし、考えすぎてもできないんで、僕の場合はあんまり失敗を恐れない力っていうのはあると思いますし、それからいっぱい失敗してもそこから修正能力も高いと思うんですけども、そういうすさまじい失敗をしたなっていうのはTBS案件。

これはもう数字に出てるんでもう認めざるを得ないということだと思うんですけど、失敗を失敗と思わない力っていうのも重要なんじゃないかなと思います。

米倉:言わなかったら思い出さないもんね。うん、TBSさんの件。

三木谷:やっぱりこう肯定しちゃうんですよね。

米倉:なるほど。

三木谷:あれは正しかったんだって、悪いところで。

米倉:いいじゃないですか。でも、彼のわけの分からない質問だとどれくらい意見を聞くのかとかも聞いてましたけど。

三木谷:そうですね。それは聞きますね。

米倉:聞く?

三木谷:失敗とはあまり関係ないですよね。

米倉:何か言いたいことがありますか?

久夛良木:失敗っていうけど、失敗って経験でしょ。失敗の積み重ねじゃないですか。だから1番自分で反省してるよね。やっぱり失敗するっていうのは次へ向かうやっぱり突破口みたいなところがあるわけ。

米倉:そうなんですか。久夛良木さん一応失敗したな、まずいなって思うんだ。

久夛良木:うーん、しょっちゅう思ってるね。なかなかそれがみんな理解してもらえないけどね。だいたい自分の中でぐるぐる回してるんですよ。

米倉:自分の中で評価しちゃうから表面上全然見えないですね。

久夛良木:本当は弱いのにねってことはないけどね。

直近で最大の失敗はニコキャス

米倉:はい、じゃそこの人。

質問者:先程最後に動画が流れました。過去1年半で1番大きな失敗を聞かしてくれるっていうのがありましたけど、お三方がもし私が会社の社長だったとして過去1年半にされた大きな失敗を教えてください。

米倉:おもしろいね、それ。じゃあ夏野さんからいこうか。過去1年半の最大の失敗。

夏野:この1年半の最大の失敗はね、一部のネットユーザーにはめちゃめちゃうけるんですけど、先週から今週にかけて、すみません、新製品投入してすぐひっこめました。ニコキャスっていうのがあるんですけど。いや、本当すみません。

ユーザーの皆さんに大変ご迷惑をおかけして。まぁただね、これを引っこめるっていうのもすごい潔い判断なんで、引っこめて次はすごいのを出します。

米倉:で、新しいのをだして、それ失敗だったの? バグだらけとか。

夏野:いえ、評判が悪かったな。すごいウケてるんだけど。

米倉:それが過去1年半最大。じゃミッキーは?

三木谷:そうですね、これは表に出ない話ですよね。いっぱい色んな出資の話が来るんですけど、もう世界最大級のやつを何回も何回も逃してますよね。

米倉:逃してるほうなんだ。

三木谷:だから失敗かどうかってわからないんですけど。

米倉:それは自分の逡巡? やりたいなと思ったけどちょっと案件が大きすぎるなとか。

三木谷:いや、役員会通らないだろうって思っちゃったんですよね。

米倉:あ、先にね。そこ自己抑制したわけだ。

三木谷:自己抑制しちゃった。

米倉:なるほど。それできたら悔しいだろうね。

三木谷:そうですね。

米倉:結構そういうのがあるんだ。

日本の常識で判断すると船に乗り遅れる

三木谷:もう、やっぱり今かなりシリコンバレーでも注目されてるんで出資の話はいっぱい来るんですけど、高いんですよね、値段がすごく。日本の目線から言うと。でもその時にやっぱりこの日本の常識で判断しちゃうとそういう船に乗り遅れるというか、というとこはありますね。

米倉:なるほどね。なんか言える会社ってあります? これ逃してでかかったなっていう。

三木谷:いや、ちょっと言えないです。

米倉:言えない。

三木谷:社長クビになるかもしれない。

米倉:久夛良木さんはどうですか、この1年半。

久夛良木:いやね、この1年半っていうかこの数年ずっと同じような状態が続いていてあんまり自分としては嬉しくないんですが、やっぱりソニーのことを聞かれてね、もうなんかこう考えちゃうわけ。

やっぱりこうこうしたら合うかなっていう考える時間に自分が本来やらなくちゃいけないことが遅れるわけですよ。これでどんだけ僕は時間とかいろんな気持ちを無駄にしてるかと思う、これが失敗だね。

米倉:意外にいい話でしたね、考えてるんだ。俺だったらなとかね。新しいこともそうだけど、俺だったらなとか、そのために時間を使って本来自分がやることを削がれちゃうっていうことはやっぱり考えてるんじゃないですか。愛があるね。

三木谷:僕ね、思うんですけどね、久夛良木さんをソニーに戻すんだったらね、やっぱ銀行が動かないとだめですね。銀行が。

米倉:銀行団がね。

三木谷:銀行がそういう決断をできるかどうかですよね。

米倉:僕はやらしたいな。

失敗は忘れるのが1番いい

米倉:はい、じゃあ次。まだ時間あるの? マイナス? じゃないよね。

三木谷:マイナスっていうか、もうオーバーしてます。

米倉:オーバーしてる。失礼しました。じゃあ、最後。しょうもない質問だったら本当怒るからな。

質問者:ありがとうございます。20代の頃にした1番の後悔を教えていただきたいです。宜しくお願いします。

三木谷:大分昔の話だからね。20年前、30年近いですね。

夏野:じゃあ、俺からいこうかな。僕20代で結婚したんですよね。今の奥さんに対する態度を前の奥さんにとってたら離婚はなかったな。すいません、前の奥さん。

米倉:何の役にも立たないですね。はい、続いて。

久夛良木:いや、もうそんな昔の話っていうのは全部忘れたね、多分。あの結構ね、忘れっぽいんですよ。忘れるのが、やっぱり1番精神衛生上いいと思う。

今新しい失敗はどんどんどんどん血となり肉となりとかあるけど、古い失敗はなめてもしょうがないよね、多分。そんなとこでぐるぐる回ってないで新鮮な失敗をしようよ。

みんなで失敗しましょう

米倉:ミッキーはあるの? 

三木谷:今必死に何かあるかなと思い出そうと思ったんですけど、夛良木さんの話を聞いてね。ひとつすごく心に残るっていったらおかしいけど、去年うちの父親が癌で死んだんですけどね、その中ですごく新しい治療法を世界中飛び回って探したんですよ。

で、色々やったんだけど、あれやったから逆にマイナスになっちゃったかなとかってそれがすごい自分の心の中にあったんですけども、そのアメリカのおじさんが言ったのは「過去を振り返るな」と、やったことは仕方ないと。前を見て新しいことを考えようと言ってたんで、そういうメッセージだけです。

質問者:ありがとうございます。

米倉:20歳の頃の失敗なんかなんだそれと。忘れてるって言うのがいい答えですよね。

だから失敗力っていうことも大事だけど、実はそれからなんとかする力も大事だし、それから修正能力もものすごく大事だということ。でも同時に忘れていくと、前に進んでいくと。で、何しろこの人のせいにしないでみんなで失敗しましょうと。

三木谷:失敗を恐れるなと。

米倉:恐れずにやると。そしたら必ず明日はあるということですか。

夏野:でも失敗は嫌だけどね。

三木谷:〆なんだから(笑)。

米倉:〆なんだから。失敗は嫌だけど失敗はしろということで今日はお三方、ありがとうございました。

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