【3行要約】
・三流上司は部下の不注意を叱責しますが、一流上司はミスが起こらない仕組み自体を作り上げます。
・研修トレーナーの伊庭正康氏は「マネジメントとは、人を責めずに仕組みを直すこと」と指摘します。
・部下のミスをチームの強化へと変える、上司のマネジメントレベルを高めるためのステップを解説します。
三流上司は部下を叱責し、一流上司は仕組みを作る
伊庭正康氏:研修トレーナーの伊庭です。「当たり前」ができない困った部下がいれば、それはチャンスかもしれません。あなたのマネジメントレベルを試してみませんか?
今日は「当たり前」ができない部下の正体と、あなたが部下に接しているレベルを診断していきましょう。レベルを上げれば困った部下も大丈夫になりますので、楽しみにしてください。
同じミスを繰り返す部下はいないですか? 時間にルーズ、段取りが悪い、報連相がいつも遅い……そんな部下がいれば、それはマネジメントレベルを上げるだけで、実は何の問題もなくなるんです。

そして、彼らはどんなことを思っていると思います? ふざけているんでしょうかね、やる気がないんでしょうかね。違うんですよ。
これを押さえておいてください。彼らはサボっているわけでも、やる気がないわけでもないんです。こういうふうに、あえて思ってみてください。彼らも自分自身が「何でできないのかな?」と困っている可能性があります。
例えば私の実例をお話ししますと、鍵を落としたことがあります。しかも立て続けに。その時に、もしこう言われたらやる気をなくすでしょうね。「なんで伊庭さんは鍵を2回も落とすの? 2回はありえない。不注意だよ」。そう言われたら自信をなくしますよね。
でも私は「なんで落としたのかな?」と、その時はわかりませんでした。ですから、もしそんなことを言われたら自信をなくす。でも、あることをされたら自信はなくならない。これが実は大事なんですよ。
じゃあ管理職はどうすればいいかというと、こういうことです。三流上司は「また伊庭さん、鍵落とした!」と言うんだけれども、一流上司はその人、伊庭さんが「もう鍵を落とさない状態を作る」ってことなんですよ。
そして伊庭さんにやる気を出してもらう、ということになります。さあ、困った部下をチャンスに変えていく方法を紹介していきます。
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理由がわからないまま叱られると部下はどうなるか
困った部下への対処法。例えば私が鍵を2回落としました。そういった部下に対してどうすればいいんでしょう。レベル1、これは管理職としては三流。「いちいち○○をする」。レベル2、「○○な指示をする」。これが合格レベルになります。
レベル3、「それでもあえて○○させる」。ここまでいくと「なかなかやるね」という上司になります。そしてレベル4が「○○を変え、チームを強くする」まで考える。ここまでいくと一流上司です。
2回も鍵を落とす出来の悪い私のような人でも、レベル4までやっていただけると、そりゃもう「この組織にいてよかったな」と思います。
さあ、出来の悪い部下に対してどうしていくのか。まずレベル1からレベル4まで順番に紹介しますので、今のあなたはどのレベルか確認してください。ではいきましょう、ドン!

レベル1。これは不合格、三流とも言えるレベルとしてお持ちしました。「いちいち注意をする」。「伊庭さん、鍵を落としたの? 前にも言ったよね。なんでまた落としたの? もっと注意しなさいよ。意識を強く持ちなさいよ」と言われたとしましょう。こういった指導ってありますよね。
でも部下の状態、私の状態は、理由がわからないまま叱られています。なんで落としたのか自分でもわかっていない。すると2回もそのようにダメ出しをされると、自己肯定感(が下がり)、「自分はダメなやつだ」と思ってしまう可能性がある。
「いちいち注意する」ことの副作用
そしてさらに鍵を3回目に落としたら「もうこれは怖くて言えない」なんてことになりかねませんし、「もう私、鍵を持っていくのは嫌です」というふうに萎縮してしまいますよね。さあ、この上司の課題はいったい何だと思いますか?
それはこちらです、ドン! 「自分の視点でしかものを見ていない」ってことなんですね。「2回も落としたのか!」、その上司は落としていないんでしょうね。それはマネジメントできている状態にはなりません。
なぜかと言うと、出来の悪い伊庭さんという鍵を2回落とす部下、もう鍵を持つのは嫌です。あと報告もしないんですよね。結果、良くならない。マネジメントはできていませんよね。

そしてそもそもこの部下、鍵を2回も落とす出来の悪い伊庭さんが何を考えているのか、どんなことに悩んでいるのか、関心がないわけですよね。そこに関心がないと、当然ですがマネジメントはできない、となります。
ですから、いちいち注意する人は副作用に気づくべきですね。自己肯定感を下げ、やる気を落とし、主体性を削っている。なのでいちいち注意してはダメなんですよ。そして愚痴を言うのは最もダメです。それって回り回って本人の耳に入ると思ってください。
合格レベルの上司は解像度を上げて指示する
さあ、では次は合格レベルにいきますよ。レベル2、ドン! 「具体的な指示に変えていく」です。曖昧な言葉を廃止します。「伊庭さん、今度鍵を失わないようにするためには、鞄のポケットのここに必ず格納するようにしようぜ」。解像度を上げて指示します。
そして鍵を取り出した時、一度「手に鍵を持っている」。そして戻す時は指差し確認で「鍵を入れた」ということをしていきなさい、と解像度を上げて指示をしていきます。
そしてワンアクションの原則です。複数の指示はしないことです。鍵の場合であれば、今やりましたよね。鍵を取り出した時に「はい、鍵があるぞ」と確認をする。そして戻す時は指差し確認をする。
「これだけまず伊庭さん、徹底しよう」。「そしてプラス……」って言わないんです。それを徹底しよう。簡単にするわけですよね。複数のことを言わない、これは大きなポイントです。
例えば仕事であれば「今日17時までに、このフォーマットの入力欄をAからCまで埋めて提出してね」。これはわかりやすいですよね。これの逆は「伊庭さん、このシートまたお願いね。今日17時までに」。これですよね。そういうふうに曖昧さを極力廃していくと、その人たちのミスは激減します。
しかしながら、それを毎回言わないといけないんですよ。上司だけじゃなく周囲も毎回言わないといけないとなったら、チームの指示コストは高くつくんですよね。ですからこれは最低限予防策としてはやるんだけれども、ゴールではないってことなんですよ。