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AI時代の人事に必要なスキルについて考える 〜経営陣の視点から求める人材とは 〜(全4記事)

日本は働き手のスキルを“無駄遣い”している 誤った評価軸が、個人と組織にもたらす損失

【3行要約】
・男女の賃金格差は女性のやる気や能力不足が原因とされがちですが、実は労働時間と組織の構造にこそ本当の原因が存在しています。
・D&I専門家の石倉秀明氏は「格差は能力ではなく、不規則で長い拘束時間を前提とする働き方や社会構造によって起きている」と指摘します。
・従来の経験や勘に頼る人事戦略から脱却し、多様な人材が真の能力を発揮できる組織づくりを実現するための変革のアプローチを探ります。

前回の記事はこちら

性別の違いによる、日本の平均賃金格差

石倉秀明氏(以下、石倉):一応今、ダイバーシティとかD&Iを専門でやっていますので、集まった能力を日本はどれぐらい発揮させられているのかということを簡単にご紹介させてください。

「76.6」という数字があるんですけど、何だと思いますか? あまりに唐突過ぎて「何だろうか?」になると思うんですけど。もしわかる方がいたら、何でもいいです。誰でも。なんか勘で、1名ぐらい。

(会場挙手)

参加者3:男女の賃金格差。

石倉:めちゃくちゃすごいですね、正解です。これは男性を100とした時、女性の平均賃金がこのぐらいという感じですね。日本は同じ職種、仕事をしている人で、だいたい25ポイントぐらい差がついていますよという感じです。

これはマルクスの言葉なんですけど、「人間の労働力も商品であり、その格差や搾取はすべて賃金というかたちで表れる」。

すべての差別、格差、構造的な不利さは、最終的に全部給与で跳ね返ってくるんですよ。だから給与が下がるということは絶対、プロセスに何か問題があるよとよく言われるということですね。マルクス、意外といいことを言っています。

じゃあ、男女の賃金格差がなぜ生まれるかというと、労働時間の長さ、「Greedy Work」かどうかと言われるんですけど、Greedy Workは後で説明します。

属人性が高い仕事ほど高賃金

石倉:あとはスキルユース。スキルがちゃんと使えているかどうかで生まれている。というのが、もうこれは経済学的にはエビデンスが明らかになっていますし、もうずっと積み上げてきているものです。

よくXとかで「なんで女性のほうが賃金が低いのか?」と匿名のアカウントたちがいっぱい持論を言っていますけれども、経済学的にとかエビデンス的にはもう決着がついている話なので。

能力ではないし、女性がやる気がないからでもなんでもなくて。基本的には労働時間と、それを優遇しやすい社会構造とか組織の構造によって起きているということがもう明らかにされているという感じです。

Greedy Workは、ノーベル経済学賞を取った(クラウディア・)ゴールディンさんという方が作った言葉で、簡単に言うと、けっこう不規則に長く働かなきゃいけない職種はあるよねと。

例えばお医者さんで、「なんか呼ばれました」みたいな話とか。例えば管理職とかでもあるじゃないですか。「何かあった時に駆けつけねばならんから、女性じゃなくて男性のほうがいい」みたいな会社とか。そもそもしょっちゅう駆けつけなきゃいけない会社はどうなんだという問題はあるんですけど、そんなことを言うわけですよ。

つまり予測不可能な勤務時間があるとか、長い時間拘束されるとか、対面重視みたいなこととか。代替不可能性、つまり属人性が高い仕事ほど、実は高賃金だと言われていて、そういう仕事は女性が退場しやすい。なので、まずそういう仕事に男性が就いているのがかなりあるということが1つ。

かつ、会社の中でもこういう仕事は男性が独占しやすいと言われています。なので管理職の男性と女性の比率で言うと男性が高くなっているのは、男性がそうだと思っているだけなんですけど、ということですね。

適切な人をアサインしないのは、個人にも組織にも損失

石倉:もう1つ。じゃあ、僕らはスキルを使えているのか? 例えば男性と女性がいた時に、同じような能力があったとしたらどうだろうか? と考えると、実は「JPN」と書いてあるところが我が国ジャパンで、やはり断トツで長いじゃないですか。先進国中、男女の賃金格差が断トツであるというのはそうなんですけど。

なんですけれども、賃金格差のうち25パーセントが、実は女性が本来持っているスキルとか能力よりも、それを必要としない仕事にアサインされていることによって起きていると説明されているわけですね。

つまり現時点でも日本は、女性が持っている能力を最大限発揮できるような仕事にアサインしないことによって、25パーセントも損をさせています。本人にも組織にも損をさせている。つまり、ぜんぜん活用できていない。さっき言ったとおり、能力の優秀な人たちを集めているかもしれないけど、労働時間の長さとかによって、「長く働けないんだったらこのポジションは無理だよ」と言って弾いてしまう。

じゃあ、働いている人に対してはどうかといったら、今度は女性というだけで、なんかわからないけど、持っているスキルよりもそれを必要としない仕事にアサインをしていく。それによって、能力を発揮させない割合が25パーセントという感じなので、めちゃくちゃ無駄遣いの国、我らがジャパンみたいな感じになっているというところですね。

女性は育休から復帰しても「選抜」にかけられる

石倉:かつ、育休から復帰した後に、女性はさらに選抜にかけられると言われています。長時間働けるかどうかという選抜にかけられていて、長時間働けない人は、いてもいいけどずっと時短の仕事やアシスタント的な仕事になったり、昇進しにくいところにアサインされたりというのがある。

スキルが上位25パーセントに属している人以外はペナルティを受けると言われていて、これが、もしかしたら聞いたことがある人もいるかもしれない、俗に言う「チャイルドペナルティ」というやつですね。

お子さんが生まれて働く時間が変わったり、環境が変わったことによって、キャリアとして本来得られるはずの賃金とかチャンスが得られなくなる。ということを、とある経済学者がチャイルドペナルティと言ったことで生まれた言葉なんですけれども。悲しい言葉ですが、そういうものがあります。

一方で、これをちょっと違うふうに解釈すると、スキルを持っていると不利にならないということでもある。なので、女性個人で見てみると、スキルを身につけること自体は、個人の生存戦略としては非常に有効であるとも言えるっちゃ言えるという感じになっている。ただ、さっき言ったとおり「全体としてうまく活用できていますか?」と言われたら、そうでもないよねという感じです。

採用基準や評価、アサインメント、給与、管理職登用などが一変

石倉:ちょっと話がそれちゃったのでもう1回戻して、「じゃあ、今後の人事の仕事って何なの?」みたいな話でいくと。

例えば人事の人だったら採用基準をどうするか、評価とかアサインメントはどうすべきなのか、これからの時代、給与のテーブルはどういうテーブルにするのか、等級はどう決めるのか。管理職の要件はどんな人なのか、どういうダイバーシティを組織の中に生み出していくのかとか。さっき言ったとおり、新しい優秀の定義と、新しい必要な能力・スキルを前提として、これらを全部変えなきゃいけないということです。

今までは中途採用する時に、「経理経験が5年ぐらいある人がいいよね」みたいなことを言っていたのが、経理のことはAIをうまく使ってできて、本質的に初めてのことでも能力をキャッチアップできたり課題を見つけられたりする人がいいよねとなってきた瞬間に、ぜんぜん「経験がどう」とかじゃなくなってくるわけじゃないですか。

もしかしたら「やったことはないけど、AIとかをうまく使いこなしながらできます」みたいな人のほうがいいよねということがあり得るというか、むしろそうなるはずなので。

採用の基準とか評価、アサインメント、給与、管理職、ダイバーシティがすべて変わるはずで、これをガラッと変えなきゃいけないし、ゴリッとやらなきゃいけないという意味では、人事は本当にチェンジメーカーなんだろうと思っています。非常にハードなところではありますけれども重要だと思いますね。
当たり前なんですけど、人事にもこれ(新しい優秀さ)が必要なんですよ。なんでかというと、大きな会社で変革しなきゃいけないので。そうなった時に、やはり「問題って何なの?」とちゃんと発見できるとか、「クリエイティブな解決策を考えられますよ」とか、判断したり意思決定したりチェックしたり、仮説を構築したり、人を動かすようなこと。特に人を動かすってめちゃくちゃ重要ですよね。

人事をやっていると、各部署の執行役員や本部長が「俺が考える最強の組織戦略」みたいなことを言うじゃないですか。人事とかはみんな口出ししやすいんですよね。そういう人をちゃんと説得して動かさないといけない。プラス、やはりデータのリテラシーは非常に重要だと思っています。

データリテラシーがないと、声の大きい役員の仮説が通る

石倉:僕は研究してみてわかったんですが、よく「データがないんだよね」ということがあるんですけど、あれはけっこう半分嘘で半分本当だなと思っていて。データがないんじゃなくて、あるんだけど使い方がわかっていないということと、使う権限を会社が与えてくれていないというだけだなとは思っています。

普通の会社の人事のデータはだいたい、給与もあれば社員の属性もあれば異動歴、評価、上司が誰なのか、どんな仕事をしているかとか、一応全部だいたいわかっているわけですよ。あるだけでも相当いろんなことがわかるはず。

会社の問題点とか何が起きているかは、実は相当解像度高くわかるんだけど、そんなアプローチをそこまでしたことないよねというのもあるし、活用の仕方をなかなか学ぶこともないし、そのデータが自分たちで見られるところにないこともあるんですけど。

普通はだいたい、実は相当なことができるものがみなさんの会社にはあります。というのは、普通に会社をやっていると残るものがそうなっているはずなので。

よく「データでわからないところも重要じゃん」みたいなこともあるんですよ。もちろんデータでわからないところは重要です。なんですけど、だからといってデータが重要じゃないわけじゃない。逆に言うと、これは研究をやるほど思うんですけど、日本の人事と教育領域、この2つはデータを世界的に見て使ってなさ過ぎるし、研究も本当にしづらい。

だから、日本からそういうクリエイティブな研究が出てこないんです。なんでかと言うと、やはりデータを使っていないということがすごくあって、かなり経験と主観によって……まぁ、同じような話をしていますけど、経験並びに経験から来る主観によって判断されていることが非常に多いかなと思っています。

データリテラシーがないとどういうことが起きるかというと、当たり前ですけど正しい現状把握ができないし、そうすると仮説を立てても検証ができないですよね。検証できないとどうなるかというと、声のでかい役員の人が言っている仮説が採用されます。あるあるです。

そういう話とか、「問題点が何だろう?」というのもはっきりしてなかったりする。あと、もちろんやった施策の効果が測定できないので説得できなかったり、予算が取れなかったりする。あるあるが起こりますという、これは避けたいですよねと。

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