【3行要約】・AIに代替されて成長が止まる人と、時代を超えて成果を出し続ける人。その違いは自ら立てる「問い」の有無にあります。
・三浦将氏は、仕事の目的を常に問い、「顧客価値にどう関わっているか」を考えることが戦略脳になると指摘します。
・過去の成功体験を手放し、メンバーの心と組織を動かす「両利きのリーダー」になるための思考法と実践ノウハウがわかります。
前回の記事はこちら 戦略脳を鍛える第一歩は「問い」を立てること
入江美寿々(以下、入江):目的がぼんやりしてしまっている人もきっと多いでしょうし、「そこの間をどれだけ埋められるか」まで突き詰めていない人ももちろんいると思います。自分もそういう時がたくさんあるなと思います。
三浦将(以下、三浦):問いをちゃんと立てることなんですよ。例えば、今みなさんがやっている仕事も「これは何のためにやっているのか?」「今日1日の仕事は何のためにやっているか?」という問いに対する答えを、ちゃんと持てているかどうか。
入江:刺さりますね(笑)。
三浦:(笑)。「それを何のためにやっているか?」「どう影響しているか?」という問いを常に立てながら、最終的には「顧客価値にどう関わっているか?」と、顧客価値を一番高めるやり方を常に求めて回路を回していく。これはやはり1つの戦略脳になる。
そうすると、「このやり方でずっとやっていたけど、このやり方じゃいけないよ」となったりする場合もありますよね。それもやはり戦略を回していなきゃできないですよね。「これはマニュアルに従ってこうやればいいんだ」「こうやって(マニュアルを遵守することで)生産性が上がればいいんだ」みたいなことをやっていたらどうですか?
入江:一向に良くならないですし、(成長が)止まりますよね。
三浦:それをやっていたらまさに、今の時代ならAIに敗北してしまうわけですよ(笑)。
入江:主体性がないというか。
三浦:「だって、あなたがやるよりもAIがやったほうが早いでしょ」となっちゃいますから。
入江:悲しいですけど、そうなりかねないですね。
三浦:昔からそうなんですけど、より戦略的な思考を鍛えていくことはリーダーだけじゃなくて、ビジネスマンとしてもすごく大事だということですよね。
入江:仕事だけにとどまらないですよね。すべてにおいてそう考えたほうがより早く目的を達成できたり、生きやすくなったりしそうですね。
三浦:そうですね。多くの人は上司に報告する時に、「こういうことがありました。何々さんにこういうことがありまして、こういうこともありました。こういうことに困っていまして、それからこういうこともありました。こういうこともありまして……」と、話にまとまりがありません。
入江:「何が言いたいんだろう?」と(笑)。
三浦:上司からしたら「何が言いたいの? それで俺は何をすればいいの?」となります。
入江:困りますね。
三浦:困りますよね。戦略脳を働かせていくと「上司は何が聞きたいんだろう?」「どういう意思決定をしなきゃいけないんだろう?」と考えます。すると、「今からお話しさせていただきたいんですけど、まず結論としてはこれなんですよ」と、「意思決定してもらいたい」とか「こういうことを認めてほしい」という結論を先に伝えるべきだと気づきます。

報告というか、その対話の目的をちゃんと決めておくということですよね。この本にも書いたんですけど、結論の先出しをしてから「なぜなら……」と、その結論の理由を述べます。
「なぜなら、今は市場がこういうふうに動いていて、競合がこういうやり方に変えてきていて、お客さんからこういう話を聞いたからです。このように理由は3つあります」とやるんです。(すると、)「だから結論はこうですよ」みたいな構造でちゃんと語れます。
それは戦略脳を持って考えているとできるようになるし、そのほうがちょっと格好良くないですか(笑)?
意思決定を促す「結論の先出し」
入江:スマートですね(笑)。上司やリーダー、経営者の方はみなさん忙しいので、そもそも「結局どういうこと?」となるのも申し訳ないですしね。
三浦:「So what?」となっちゃうとよろしくないので。
入江:確かに。結論は先出しなんですね。
三浦:そうですね。結論は先出しする。これも習慣ですよね。そういうことをやっていく(と戦略脳が鍛えられます)。
入江:これはさっき話していたように、自分自身の中で結論の先出しができていないと、そういうふうに報告したり何かをまとめたりする時も、結局、何が言いたいのかよくわからないものになっちゃいますもんね。
三浦:そうですね。結論を先出しして、その理由やエビデンスを組み立てていき、そこで「ちょっと待てよ、この結論はちょっとずれていないか?」と思ったら修正すればいいわけですよ。そこをちゃんとできると、その結論自体の説得力も高まります。(戦略脳を持っている人は)常にそういうサイクルを回しているということですよね。
入江:自分の中でそれができたら最強ですよね。誰かと話しながらブラッシュアップしていくケースは多いと思うんですけど、ミーティングで話すにしても、上司に相談するにしても、そこがある程度結論に近い状態になっていたほうがいいですよね。
三浦:いいですね。そういった意味で今、そういうことに僕はAIを使うべきだと思っています。「自分の主張はこれで、結論はこれで、それに対する理由はこれで、エビデンスはこれです」というのをAIに入れる。
(そして、)「これを上司として聞いたらどう思いますか? どこに突っ込みますか?」とAIに聞いたら、けっこういい答えを返してきてくれるんです(笑)。予行演習にもなるし、「ここはちょっとこういう言い方に変えよう」と(事前に修正できるので)、めちゃくちゃ便利ですよね。
入江:確かに、上司ボットみたいな状態(笑)。
三浦:「上司はこういう性格で、こういうことが気になる人で、こういう観点で考えてください」と入力すると、AIがそれを全部(加味して)考えてくれます。
入江:確かにそこまでしておけば、穴がないというか。
三浦:だからAIに頼ってもいいと思うんです。けれども、その前にそういうことをちゃんと構築してから頼れば、めちゃくちゃいいと思います。
AIを「上司ボット」にして「仮説思考」を磨く
入江:他に「戦略脳を鍛えるためにこういうことができるよ」というのはありますか?
三浦:大事なことはいろいろあるんだけど、やはりよく言われる仮説思考、つまり仮説を作る習慣ですね。常に「これはこうじゃないか?」と考えることです。

例えば私は昔、広告代理店にいて、若い頃に上司へ「何かやったほうがいいことを教えてください」と言ったら「電車に乗っている時はぼーっとせずに車内広告を見て、『なんでこの会社はこういうコピーを書いているのか?』『これは何が売りたいんだ?』ということを考えなさい」と言われました(笑)。
これも仮説思考ですね。「これはこういうことじゃないか?」「この会社はこれが売りなんじゃないか?」「こういうことを言いたいんじゃないか?」「こういうターゲットなんじゃないかな?」といったことについて(考えを)巡らせておく。そして、後で調べて答え合わせをした時に、だんだんと仮説の作り方の脳が鍛えられていくんですね。
入江:ぼけーっとしていてはダメですね(笑)。
三浦:そう(笑)。仮説を1個だけじゃなくて常に複数持っておくのがすごく大事なんです。今やっている仕事の中で「たぶん売れる商品ってもっとこうすればいいんじゃないかな?」「ここを改良するともっとお客さんが喜んでくれるんじゃないかな?」という仮説を持っていたとします。
その仮説を頭に入れながら現場に行ったり、お客さんの話を聞いたりして一次情報を得る時に、検証ができるわけですね。そういうサイクルを回していきます。
お客さんの話を聞いて「あぁ、やはりそうだった」(と仮説の裏付けが取れることがあります)。また、仮説ではこう考えていたんだけど、お客さんがふと言った言葉で「この仮説はもうちょっと、こう変えてみなきゃいけないんだろうな」(と仮説を修正することもあります)。こうしてだんだんと正解に近づいてくるわけですよね。
ある意味、戦略だって仮説なんですよ。その戦略が正解かどうかなんて誰にもわからない。けれども、仮説を回していく癖があったら、特に新しいことをやろうとした時に筋のいい仮説が立てられるようになるんですね。それは取りも直さず、筋のいい戦略を作ることにつながっていくんですよね。