社員が50人を超えると直面する「組織作り」の壁
入江:後からだんだん人数が増えてきます。みなさんが入ってくるタイミングも違います。そうすると急に組織作りが難しくなっていきますよね。
三浦:そうですね。特にやはり50人ぐらいを超えてくると、最初の何十人とは違うんですよ。最初の何十人は立ち上げモードの人たちが来るんです。けれども50人ぐらいを超えてくると、言葉は悪いんですけど、だんだんと雇われモードの人たちが来るんです。
そういう人たちに対して、「最近、雇われモードの社員が多くなったんだ」と嘆くのではなく、(現状が)もうそういう構造なので、そういう人たちも含めてどう戦略を実行できる組織を作るのかが大事になってきます。そんなことをよく見ていたのも、この本を書いた1つのきっかけですね。
入江:それだけそういう課題や悩みを抱えている方がいらっしゃるということですね?
三浦:いっぱいいますね。
入江:この本の編集担当は弊社の代表ですが、代表自身もたぶん共感している感じですね。
三浦:そうですね。この企画を提出した時に「これは僕が読みたいので書いてください」と言われましたね(笑)。
入江:(笑)。日々いろいろ悩みながら経営されている姿を見ているので、いくらでもヒントや力が欲しいですもんね。
実際よく聞くのは、「組織が大きくなると組織を作ったり磨いたりしていく力が必要」ということなんです。そこは、「自分の得意分野は戦略で、組織(作り)は苦手だからできない。誰かに一任してしまおう」みたいな方が一定数いらっしゃるようなイメージがあるんですよ。
稲盛和夫氏に学ぶ「経営者は時間の8割を従業員のために」
三浦:そうですね。確かにそういう方はいらっしゃいます。けれどもさっきも言ったように、物事って集中してやればできるんです。結局、(戦略と組織作りが)両方できる人はどれぐらいいるかというと、少ないわけですよ。少ないということは、稀有なわけです。つまり逆に言うと、価値がめちゃくちゃ高いということなんですよ。
入江:確かにそうだ。それが本当の真のリーダーであり、経営者という存在になれるということですよね。
三浦:そうですね。有り体に言えば、パッとそれが目に浮かんでくるのはやはり稲盛和夫さんです。戦略も作れますし、組織も作れます。稲盛さんの言葉で「経営者は仕事の時間の80パーセント、従業員のことを考えなさい」という言葉があるんですよね。
入江:じゃあ、8割は組織のことを考えている。
三浦:こういうのも、すごく印象的な言葉ですよね。
入江:逆に戦略を考えたりするのは2割ですね。「そこで本当に濃密に、自分で向き合って考えよう」みたいなことですね。
三浦:戦略って、作ってしまえば後は実行に移していくだけでしょう。だから、作っていく時間はたぶん2割でいいんじゃないかなという話ですよね。
入江:そういうことかぁ。もちろんどんどん変わっていくんでしょうけど、「戦略さえできてしまえば(今度は)組織が大事になってくるよ」ということを伝えているんですね。
三浦:そうですね。そこにちゃんと(組織の考えを)浸透させたり、そこに向けて(社員の)みなさんのベクトルや足並みがちゃんと揃うようにしたり、一人ひとりのモチベーションが上がるような構造の組織をちゃんと作っていったりするということですよね。
入江:私は野球が好きなんですけど、大谷翔平選手は「二刀流」と言われているじゃないですか。経営者でも、この2つができる人は二刀流と言えるんですかね。また違うんですか?
三浦:それはいい質問で、僕は二刀流と両利きは違うと思っています。大谷翔平選手はピッチャーをやっていない時にホームラン王になりましたよね。それでMVPを取りましたよね。
だから二刀流というのは、別に二刀流をしていなければいけないということではないんですよ。「バッターとしてだけ優れている」「ピッチャーとしてだけ優れている」でいい。(それで)メジャーリーガーとしても十分成り立つんです。けれども両利きというのは、両方ができることがやはり必要とされてくる。
本の中にも書いた話があります。僕はドラムをやるんですが、利き手が右手だったとしても右手だけで叩いていませんよね。ポンポンポンとリズムを打つのも、(右手と左手が交互に)なりますよね。そうすると、右手だけよく動いても、左手が動かなかったら早いリズムを叩けますかという話なんです。
入江:無理ですね。
三浦:だから、ドラムがどれぐらいできるかどうかの技術は、利き手と反対の手のレベルによるんですよね。
ギターを弾いていても、右利きだったら右手でピッキングしますよね。左手は通常、利き腕じゃないですよね。「利き腕じゃないから弦を押さえることができない」と言っていたら、ギターが弾けますかという話なんですよ。
入江:上達しないですし……。
三浦:しないですよね。ピアノでも同じことですよね。
入江:そうですね。
三浦:つまり両利きというのは、両方がちゃんとできて初めて一流レベルになれるということです。「仕事のスペシャリストでいいんだ」「アントレプレナーとして企業を立ち上げて成功すればいいんだ」というのは、(真の)リーダーではないんですよね。
入江:起業家?
三浦:経営者でもないんです。
入江:結果を出すのだけが得意という方もいらっしゃいますもんね。
組織を中長期的に安定・向上させるのが「真のリーダー」
三浦:だからリーダーや経営者は、中長期にわたって組織を安定させながら向上させていくという役目があるわけですね。稲森さんは「従業員の物心両面を満たすことが経営者やリーダーの仕事だ」と言っています。(物心両面とは)「物」と「心」、つまり「お金」と「心」のことですよね。働いていて楽しいとかやりがいがあるとかです。
そのためにはやはりちゃんとした戦略を立てられなきゃいけなくて、ちゃんとした組織を作れなきゃいけないわけですよね。
入江:確かに。
三浦:だから、ただ単にスーパービジネスマンでいいんだという話であれば、別にこの両方がなくてもぜんぜんいいんだけど(笑)。
入江:そこはけっこう違いがありますね。単にスーパービジネスマンになりたいんだったら自分の得意分野だけをひたすらやっていればいいけれども、本当に真のリーダーや経営者になりたい人は両方磨こうよという話ですね。
三浦:そういうことでございます。
入江:でも、現実にはまだ片方の力しかあまりない方や、むしろどちらももっと高めていきたい方もいると思うんです。そういう方は具体的にどんなことをしていけばいいんでしょうか? 本の中にたくさん書いてあるんですけど、その中の一部をちょっとお話しいただきたいなと思っております。
三浦:まず戦略についてですが、この本の中にはフレームワークの使い方とかは書いていないんですよ。そこは専門家の人に任せているんですけど、やはり戦略を作るためには「戦略脳」を鍛えていくことが大事だと考えています。
入江:戦略脳を鍛えるためにはどうしたらいいですか(笑)?
三浦:(笑)。戦略的に考えるということですよね。仕事をやる時にどれぐらい戦略的に考えていますか?
入江:(仕事を)なんとなくやってしまうことも時にはありますが、戦略みたいなのを考えるのはけっこう好きです。
三浦:いいですね。(戦略とは)シンプルなものなんですよ。フレームワークを使えなきゃいけないとか、そういうことじゃありません。すごくシンプルに言えば、結局、ビジネスの構造を考えることなんですよね。
まずは「どうなりたいか」です。「会社をどうしていきたいか」「チームをどうしていきたいか」、あと個人単位で「自分はキャリアの中でどうなりたいか」という、その「どうなりたいか」を明確に持つことですよね。あとは「現状をちゃんと把握できること」です。
その2つがわかると「ここに具体的にどれぐらいのギャップがあるか」がわかります。シンプルに言えば、そのギャップを埋めるためにどうしたらいいかを考えていくのが戦略なんです。こういう構造でいつも物事を考えているかどうかなんですよね。