【3行要約】・評価面談で「決めつけられた」「わかってもらえない」と部下に不満を抱かれてしまう組織は少なくありません。
・講師は「上司の見立てと部下の自己評価がずれると不公平感を生む」と語り、指導の手応えを欠く要因を指摘します。
・事実と解釈を明確に分離し、部下の言動の背景にある事情や理由まで掘り下げて探るための実践的観点が学べます。
前回の記事はこちら なぜ人によって部下の「見立て」はズレてしまうのか
高桑由樹氏:実際に今回のセミナーでは、評価における部下を見立てることをワークショップとして実際に参加者さんにやってもらいました。この記事を見ていただいている方々も、ぜひやってみてもらえたらと思っています。
今回のセミナーでは、見立てトレーニングっていうことで、上司と部下の対話のケースを作って「このケースを読んで、この部下はどんな性格を持っていますか?」とか「どういうことを克服させる必要がありますか?」みたいな、そういった見立てをしてもらいました。みなさんもこれを読んでみてもらえたらと思います。

内容としては、指示待ちな部下っていうありがちで、上司側としてはいちいちイラッとするような設定にしています。
このケースを読んで、次のようなことを見立ててもらいました。1つ目は「この部下の人柄・特徴について、どういう人でしょうか?」っていう見立て。2つ目は「この部下に気づいてほしいなって思うことはどんなことがありますか?」っていうことです。3つ目は「気づいてもらうために、上司としてどのように関わりますか?」みたいなことを、参加者の方々には書いてもらいました。
続いて、このワークショップを、お一人ではなくて何人かで同じものをやってみてもらえたらと思うんですね。そこで気づくことは、人によって捉え方が違う、着目するところも違う、みたいなことが見えてきます。
見立ては人によって変わるっていうことに直面すると思うんですけど、なぜ見立てっていうのが人によって変わるのか? 逆に言うと、見立てが変わってしまうっていうことは、人事評価も半期に1回やるわけですけど、同じ人を見ているのに評価が違ってくることが起こるわけですね。だから、評価や指導っていうのが難しいわけですけど、じゃあ、なぜ人によって変わるのかを見ていきます。

あらためて、見立ては事実を見て解釈をするっていうことなんですけど、この2つの要素しかないはずなんですが、まず人によって変わるっていう原因は大きく3つあります。
1つ目は、事実と解釈を混同してしまうということ。例を書きましたけど、事実として「報連相が遅い」っていう事実があって、それを「報連相が遅い人は責任感が低い」みたいに解釈するとか「反論が多い人は協調性がない」とか「発言が少ない人は主体性がない」みたいな。
これ、事実としては、必ずしも報連相が遅い人が責任感が低いのかっていったら、そうではないですよね。なのにこういうふうに思い込んでしまうと、事実を曲げてしまう、事実と解釈を混同してしまうと、人によって見立てが変わってくるのが左側の1番です。
続いて真ん中の2番目。事実の捉え方が違うってことですね。これは例えば「今時の若者」って言った時に、人によって何歳を指しているのか違ったりしますね。
例えば30代の方が「今時の若者が」って言ったら、20代を指すかもしれませんけど、60歳ぐらいのベテランさんが「今時の若者は」って言い出したら、もしかしたら40歳以下に捉えるかもしれません。下手したら50代も若者って言うかもしれませんね。
「見えているのに着目していない」事実と解釈の不一致
「自己主張が強いよね」って言った時に、主張が強いって言いますけど、絶対的な基準ってないですよね。
あとは『ウォーリーをさがせ!』のウォーリーなんですけど「ウォーリーのボーダー数は?」って書きました。『ウォーリーをさがせ!』って、みなさんやったことがあると思います。
赤白のボーダーのシャツを着たウォーリーを探しにいくわけですね。「いたいた」みたいな感じで見つけるわけですけど「ウォーリーが来ているシャツの赤い線、横縞の赤いラインが何本入っているのか?」って、これを聞くと、知っている人はとっても少ないと思います。実は全部同じ本数になっています。
ウォーリー自体は見ているはずなのに、そんなボーダーの本数までは着目していない。「何本かな?」って、見えているけど着目していない。事実の捉え方、見ていないっていうことですね。
人によって見るポイントが違ってくると捉え方が変わってくるっていうのが、2番目になってきます。
右側の3番目。解釈の仕方が違うってことです。例えば、ある人を「優秀だ」って、解釈した時に「何をもって?」とか「基準は?」みたいな話とか。「寡黙な人である」っていう状態があった時に、これを「消極的だな」って捉えるか、「思慮深いね」みたいに捉えるか。これも解釈ですね。「美しい」みたいな話も人によって観点が異なってくる。だから解釈も変わることがあります。
私たちは事実を見て、解釈っていう、この2つの要因でやっているわけなんですけど、これだけバラバラな捉え方になってくるので、見立てっていうのは人によって変わってきます。
上司と部下のギャップを解消する「見立て」の再点検
厄介なのは、私たちは日常、自分なりの事実を見て、自分なりの解釈をしている。言ったら決めつけや思い込みをしているんですけど、これ自体に自分自身が気づいていないっていうことが、この見立てがぶれてしまう、人によってずれるっていうことを、解決を難しくしている原因だったりしています。
先ほどワークショップで、上司と部下の面談しているケースを見てもらいました。設問を3つ、見立ててもらいましたけど、どういう事実を見て、どういう解釈をしたのかみたいなことも聞いてみました。
それをすると、人によって、参加者さんによって捉えている事実、解釈、ぜんぜん見ているポイントが違う、解釈も違うみたいなことが表面化していました。みなさまも同僚さんとぜひやってみてもらえたらと思います。
ちなみに右下に描きましたけど、ウォーリーの赤いボーダーの線は必ず5本です。こんなところまで見ている人はいないと思いますけど、何が言いたいかっていうと、見ているはずだけど着目していないと見ていないことになる。見ているものが人によって違うっていうことを言いたくて出してみました。
今、ここまで、見立てるってどういうことかを見てきました。評価面談をしていてなんで手応えがないのかっていう1つの大きい理由、すれ違う理由としては、上司が見立てていることと部下の自己評価、自分の見立てがずれると、上司が「あなたはこうだろう」って言ったことが、部下からしたら「決めつけられた」とか「わかってもらえない」とか、「不公平だ」みたいに捉えてしまうってことですね。
これって、上司は当然部下を見立てるわけですけど、部下は部下で自分のことを見立てています。「自分はできている」とか「できていない」とか。この見立てのズレがすれ違いを引き起こしています。
やはり評価や指導において手応えを高めるためには、見立てが非常に重要であるってことなんですね。
ここまでは、1つ目の章として見立てがどういったものか、見立てがどうして重要なのかについて見てきました。
要因1:行動だけで決めつける「自動思考」の危険性
2つ目の章立てです。見立てを狂わせる3つの要因をより深掘りしていきたいと思います。
さっそくですが、私たちは決めつけとか思い込みをよく引き起こしてしまうんですけど、決めつけ・思い込みの発生要因は、大きく3つあります。専門用語になりますが、(スライドを示して)1つは「自動思考」ってもの。2つ目は「ステレオタイプ」。そして3つ目は「バイアス」ってものです。
「ステレオタイプ」や「バイアス」っていうのは比較的なじみのある言葉かなと思います。1つずつどんなものか見ていきたいと思います。
まず「自動思考」ですね。これは何かっていうと、相手の行動を見て思い込む・決めつけるってことです。これは先ほどから出ていますけど「○○なことをする人は××な性格だ」ってものです。

職場での例で言うと、上司が事実と解釈をするわけですけど、先ほどのように「返事が短い人は反発している。反抗的だな」とか、「報告が遅い。やる気がない」とか、「目を見ないっていうのは反省していない」とかですね。という行動を見て、言動を見て解釈をするってことです。
この3つ、今例を言いましたけど「返事が短くて反発しているな」って上司が見立てても、部下の内心は、緊張していて、萎縮して返事が短くなっているということがあったり、報告が遅いっていうのも、何と言えばいいのか言葉を探しているから、たどたどしくなってしまっているとかありますよね。
やはり行動を見るだけでは部下の内心、部下の言動の背景みたいなものは勘違いしてしまうことが多々あるってことですね。
回避するポイントとしては、相手の行動はパッと見でなぜそうなっているのかは、なかなかわからなくて、置かれている状況に影響を受けているってことを、上司側としてはやはり理解する必要があります。
部下がうまくできていないことは、部下に問題があるってよりも「何か原因とか事情があるんじゃないかな?」ってふうに、相手の背景を探りにいく、そういった視点が重要になってきます。これが「自動思考」ってものです。
要因2:属性や特徴で捉える「ステレオタイプ」の罠
では続いて2つ目の「ステレオタイプ」ですね。これは何かっていうと、相手の属性とか特徴を見て、決めつける・思い込むっていうことです。「○○な人は××だ」みたいな。

例えば、職場での例で言うと、上司の見立てとして「若手は打たれ弱い」とか「ベテランは変わりにくい」とか「営業は外交的であるべき」とか。
「本当にそう?」って感じですけど、極端な例かもしれませんが、こういう捉え方ってあんまり珍しくもないと思います。こういう相手の属性でくくって決めつける、これが「ステレオタイプ」っていうものですね。
これを回避するには「本当にそれって根拠があるのか? 若手って本当に打たれ弱いのか?」とか。例えば「ベテランは変わりにくい」とかは「これはある人だけを、一部の人を取って、それを全体に当てはめちゃっていないか?」みたいな視点を持って、自分の考えをもう1回精査し直すみたいなことが重要だったりします。
要因3:色眼鏡で部下を見る「バイアス」をいかに外すか
3つ目ですね。「バイアス」っていうことですけど、これは一度持った思い込みでその後の見る目を、色眼鏡をかけてしまう。見たいものだけを見てしまうってものですね。

例えば、第一印象が悪かった人は、その後の行動も全部悪く見えてしまうとか「あの人は雑だな」って思ったら、雑な部分ばっかり目につくっていう。本当は丁寧な側面もあるかもしれないですけど、雑なところばっかり見ちゃうとか。
いつも勉強をがんばっている人が、点数が悪かったら「体調が悪かったのかな?」みたいなことを考えてしまう。それに対して、いつも成績の悪い子が逆に点数が良かったら「あいつ、カンニングしたのかな?」とか「山勘が当たったのかな?」みたいに捉えてしまう。
これって完全に最初の思い込みで、その背景も全部良いふうにとか悪いふうに、決めつけてしまうことです。これが「バイアス」。私たちの中でもよく起こり得る話ですね。
これらを回避するポイントとしては、その人に対して「自分ってどういうイメージを持っているな」っていうのを俯瞰すること。その人を見て「何か見落としていないかな?」っていうのを見つめ直すことが大事になってきます。
ということで、今3つ見てきました。これらって本当に誰でも起こり得る話なんですけど、前提として、これは別に悪いことばっかりではなくて、私たちの脳の思考の特性なわけですけど「なんでこんなものがあるの?」っていうと、一つひとつのことに全部じっくり考えていると疲れてしまいますよね。
一部分を見てパッと思考を省略化するために、こういった決めつけ・思い込みをするようにしている脳の機能ですね。これは本来は、人間が生きていく上では重要なことなんですけど、自然にこれが働いてしまうので、やはり決めつけとか思い込みが起こってしまう。
これに流され過ぎないように「俯瞰して」とか「もう1回、物事を見直してみる」みたいな、そういった視点が必要であるっていうことです。
見立てトレーニングってことで、先ほどのケースに戻って、セミナーではこの2つの問いを追加でみなさんに考えてもらいました。
例えば「先ほどやってもらったご自身の解釈において、決めつけとか思い込みはなかったですか?」とか「もし決めつけ・思い込みがあった場合、どうしてそういうふうに捉えました?」みたいなことを問いかけてみました。ぜひみなさんも、先ほど答えてもらった内容を客観視してもらえたらと思います。