【3行要約】・数値目標を設定しても現場が動かない問題の一因は、最も重要かつボトルネックとなっているプロセスが曖昧なことにあります。
・中尾隆一郎氏は、目指すゴールから「言葉」と「数字」を組み合わせた4つの要素をひもとき、最も不確実な改善点を見極める「KPIマネジメント4兄弟」の概念を提唱します。
・成果を最大化するために、自社が人・物・金を集中投下すべき「最も弱いプロセス」を特定するKPIツリーの設計手法を解説。
前回の記事はこちら 「事業成功のカギ」となるものは?
井上将司氏(以下、井上):実際にこの「事業成功とは何か」とか「カギって何か」みたいなところを少し掘っていきたいんですけど。ちょっと参加のクイズ形式でやっていきたいと思います。
「どれがKPIでしょう?」というところをイメージしやすいように、家を買うとか家を建てるというシーンを挙げています。Aが「5年後に家を買う」。Bが「頭金であと300万円増やす」。Cが「食費を抑えて貯金をする」。Dが「毎月貯金で5万円増やす」なんですけど。どれがKPIでしょうっていうのをちょっと考えていただいて。

チャット欄にA、B、C、Dの選択肢を入れますので、できればこのAとかBとかCとかDで「いいね!」ボタンを押していただくと、投票感が出ていいのかなぁと思っています。A、B、C、D、どれかの「いいね!」を押してください。はい。
Bが2名、Cが1名、お、Bが3名になりました。Dがやっぱり多いですね。大半がDの方で、BとCの方も少しいらっしゃると。Aは違うんじゃないかという感じですね。みなさん、投票いただけましたでしょうか。ありがとうございます。
KPIマネジメントにおける「4兄弟」とは
井上:じゃあ、どれがKPIか。KPIじゃないものについても、これから中尾さんと一緒に解説できればなと思うんですけれども。このうちの1つがKPIで、それがこのDの毎月貯金ですね。
中尾隆一郎氏(以下、中尾):でもこれ、BもKPIといったらKPIですね。5年後に家を建てるために頭金を集められるかどうかという話だとしたら、Bもそうだと言えますね。でも、井上さんはこの妥当解はDにしたいんですよね。
井上:(笑)……そうですね、はい。じゃあBの方もほぼ正解かもしれませんが、BかDかというところはあるものの、AとCは具体的には数字じゃないというところがありますので。
中尾:そうですね、AとCは言葉ですからね。
井上:(KPIのIは)Indicatorで指標だという話が出ていましたけれども。それだとB、Dに絞られて、このケースだとDが一番近いんじゃないかというようなところですね。
このA・B・C・Dの関係ですけれども、Aの「5年後に家を買う」がいわゆる目的に近いようなところですよね。それを数値化したものがBになるわけですけども。
この「5年後に家を買う」というところをプロセスで分解して、そのために何をしたら一番いいのかを落とし込んだものが、Cの家を買うための「食費を抑えて貯金する」というものです。これを数値化したものがDになるというところですね。

要は、その次のアクションプランとして打ちやすいところがDになるかなと思っています。Dを達成するとBが達成できるようなものになっていると、一番理想的かなと思います。
このA・B・C・Dが、実は中尾さんが掲げる「KPIマネジメントにおける4兄弟」を表すわけなんですけれども。4兄弟っていうワード自体に関心や興味を持っていただいた方もけっこう多いかなと思うので、中尾さんちょっと説明いただいてもよろしいですか。
見過ごされがちな「KPIの三男」
中尾:要はKPI、KPIという話は、この4兄弟の「四男であるKPIの話だけ」になることが多いんですよね。本当はKPIには長男と次男と三男と四男がいて、この4兄弟の関係性がすごく大事だという話なんです。

さっき井上さんが数字という話をされましたけれども、長男と次男がワンセットで、言葉と数字ですね。三男と四男が同じくワンセットで、言葉と数字になっているという話です。
要は、最終的にはこの長男と次男を得たいわけですね。これがゴールで、達成するために何をしますか。一番大事なポイントはどこかというのが、三男と四男だということですね。
井上:ありがとうございます。今日はおそらく三男の話と四男の話、四男がテーマですけれども、三男が非常に密接な関わりがありそうだというところで、お話を進めていきたいと思います。先ほどの図にそれぞれの4兄弟を表すとこんな感じになっています。
そこでちょっとポイントを付記させていただきますと、三男は、一番大事なプロセス、一番弱いプロセスというふうに書いてあります。四男は、ここまで改善するという目標数値があるんですけども、この三男の「一番大事な」「一番弱い」というところに少しポイントがありそうだなと思っています。

この長男、次男、三男、四男も一応順番があるわけですよね。三男が決まらないと四男が決まらないところもあるかなと思っています。この三男、四男を考える時に、けっこうみなさん、考え方がわからないことがあるんじゃないかなと思います。
中尾さんが「KPIツリーを作ってみましょう」とよくおっしゃっていますけれども、ちょっとこのあたり、解説いただいてもよろしいでしょうか。
目的を達成するために何をすべきか
中尾:了解しました。KPIツリーは、一番左に長男と次男のゴールとKGIが書いてあります。例えば「利益を上げますよ」というような話ですね。利益を上げるんだったら、「売上を上げます」とか「費用を下げます」とか。あるいは「原価を下げます」という話があると思うんですけれども。

そのビジネスによっては、だいたいこの原価は読めるんだとか、この固定費は読めるんだとということがあると思います。あるいは、もう固定費や変動費の比率はいじれないんだとするならば、「利益を上げる=売上を上げられるかどうか」という話になったりしますよね。
例えば売上を上げると言った時に、売上の上げ方は「行動量を増やすんだ」とか「受注率を上げるんだ」とか。あるいは「一顧客あたりの提案額を上げるんだ」というものがあると思います。
今、行動量を増やすとか受注率を高めるとか提案額を上げるというのが、CSF(重要成功要因)の候補というものですね。
じゃあ行動量を増やすためにはどうするんですかというと、具体的な活動っていうのは例えば「個人がとってもがんばる」という方法もあれば、「営業のマンパワーを増やす」というのもあれば、「代理店さんみたいに外注してお願いする」という話もありますよねと。
受注率を上げるという話も、例えば「いい商品を作って受注率を上げる」とか「営業力を上げる」みたいな話もあるかもしれません。「提案額を大きくする」なら、例えば「顧客のキーマンに会って深いニーズを聞く」というのもあるかもしれませんし、あるいは「ヒアリングをする時に上司と一緒に営業に行く」というのもあるかもしれません。
「伸びるかもしれないがやり方がわからない」ところに人・物・金を投じる
中尾:理屈で言うといろんな方法があるわけなんですよね。その中で一番伸びしろが大きいのはどこですかという話なんです。伸ばせる余地があって、しかもだいたいやり方がわかっているとするならば、それを粛々とやればいいわけですよね。
伸びしろがあるんだけれども、どうやったらいいかわからないという話だとするならば、そこに人・物・金を突っ込んで、「確からしさ」を高めにいけばいいわけです。
だから一番重要なのは、「伸びるかもしれないんだけれども、どうやったらいいかわからない」というところですね。そこがCSF(重要成功要因)の候補の中で一番弱いという話です。もともとは「大事だ」と言ってたんですけれども、そう言うと、そこに関係ない他の人たちが「じゃあ私たちのところは大事じゃないのか」とへそを曲げてしまいます。
だから、「大事」という言い方はやめて、「一番弱いんです」と。「弱いから、そこに人・物・金を突っ込まないといけないんですよね」という話をするようになっているというのがこの前のスライドの意味ですね。「一番弱い」のは不確かだからという話です。
井上:なるほど。ありがとうございます。CSF候補、KPI候補とありますけれども、結局これも候補だから、ここからも絞らなきゃいけないわけですよね。
中尾:そうです、そうです。これは候補なので、できる限り1個に絞りたいですね。