【3行要約】 ・「もっとレベルを上げよう」といった上司の曖昧な指示を防ぐ手段として、組織の共通言語となるフレームワークを作ることが有効な打ち手になります。
・『しごおもTV』の豊間根青地氏は「我々は同じ言葉を使っているつもりで、実際はまったく違う」と語り、共通言語の必要性を説きます。
・「課題から作る」など4つのステップを基に、組織のコミュニケーションコストを劇的に下げる仕組みを紹介します。
前回の記事はこちら 共通言語がもたらす最大のメリット
豊間根青地氏:(前半の記事で)もともと説明していた「型」とは少しズレるんですけども、共通言語を作ると何がいいかというと、結局、組織のコミュニケーションコストが下がるわけです。よくありますよね。「いまいち説得力がないからやり直して」とか、「このスライド、もうちょっとレベルを上げようか」とか、「あらあら(粗々)できたら、一回見せてくれる?」みたいな。

「いやいや、説得力がないってどういうことよ?」とか、「レベルを上げるって、何のレベルをどう上げるの?」とか、「『あらあら』ってどのレベル?」みたいなね。そうするとまた「修正しないと」と手戻りが増えたり、コミュニケーションコストが高い。人によって前提の認識が違っているので進め方のパターンがないし、考え方とか進め方の手順が決まっていないので、ズレやすいということが起きちゃうわけですね。
一方で、例えば「これ、空雨傘の『雨』がないよね。この間話した『雨』がないじゃないか」とか。「QAR」は「Question・Answer・Reason」という我々が言っていることなんですけども、「QARで情報設計してる? これ、Aがなくない?」とか。「紙とペンが終わったら一度見せてくれる?」みたいに、共通言語化する言葉がある・言葉の定義が擦り合うと、コミュニケーションコストが低くなるんですね。

例えばさっきもちらっと話した「QAR」の例だと、こういうコミュニケーションをしますよね。「課長、ちょっとご相談してもいいですか? 田中さんはサンドイッチがいいんじゃないかなと言っていて、私は毎回30分以内に届いて1,000円以内に収まるという観点から考えると、幕の内(弁当)がいいかなと思っているんですけど。でも……」。
「いや、お前、何が言いたいねん。そもそも何の話で、何が言いたいのかぜんぜんわからない」みたいな人っていると思うんですよね。「これをQARで言ってみて。まず、お前が今向かっている問いは何だ? Questionは何ですか?」「明日の定例会議のお昼を何にするかという件です」。
「で、何が言いたいの?」「うねり屋の幕の内弁当にしようと思っています」「なんで?」「なぜなら、毎回30分以内に届くし、かつ、1,000円以内に収まるためです」というふうに、何の問いに答えようとしているのか、何が言いたいのか、その理由は何なのかということを整理してあげると伝わりやすくなる。
論理的に伝える「QAR」と問題解決の「あげよう」
あとは、「あげよう(あるべき姿・現状・要因・打ち手)」。これはもう古典的なAs-Is/To-Be分析(現在の状態と理想の状態を把握し、課題や打ち手を決めるフレームワーク)のことなんですけども。「あげよう」という順番で考えようぜということをちゃんと決めてあげると、例えば「あなたは営業です。今期の個人目標が未達になりそうなので、もっとがんばらないといけないです。どうしますか?」。
「とにかく訪問しまくる! アポを入れまくる!」「いやいや、それってお前、『あげよう』の『う』から入っているじゃねぇか。それってお前、いきなり腹をかっさばいで手術する医者やぞ。『効くかわからないけど、この薬を飲んでみてください』とか、『気持ちの問題かもしれないですね。旅行に行ったらどうですか?』『いや、お前、ちゃんと診察したんか?』みたいな。それと一緒やぞ」と。

「他にも『あげよう』を考えろよ。打ち手の決め打ちになってない? 短絡的な発想になってない? 独りよがりの分析になってない? ただのふわふわ解決策になってない? そういう『あげよう』をちゃんと押さえたんだっけ?」という会話が、チームでできるようになっていきます。

これは1個の例なんですけども。こういった感じで、「どういうシーンで、こういう問題を解決する際に、こういうふうに使う型だよ」ということが、チームの共通認識になってくると非常に会話しやすくなるので、ぜひやってみていただくといいかなと思っています。
実際、うねりの社内では、特に「あげよう」と「キメヘン」を使うシーンがすごく多いですね。お客さんとコミュニケーションをする際も、「今回の施策の『あげよう』はこれです」とか。あと、社内の会議でも、「この説明会の『キメヘン』はこれです」とか、「今日のこの会議の『キメヘン』はこれです」とか。
「お客さんの商談・会食に行くことになりました。その『キメヘン』はこれだ」みたいに「キメヘン」という言葉を使って、施策の目的や意図を決めることは日常的に行われています。そういう状態が作れると、やはりコミュニケーションがすごくしやすくなるのでおすすめです。
フレームワークを構築する4つのステップ
今までポイントの話と事例の話をしました。実際「作るぞ」という時、ざっくり4つのステップがあるかなと思っています。「課題から作る」「行動から作る」「語感から作る」「運用で仕上げる」の4ステップですね。これは大まかな進め方なんですけども。

まずやってほしいのは、「課題から作る」ということです。けっこうやっちゃいがちなのが、「よし、じゃあ型を作るぞ」とか「フレームワークを作るぞ」と思うと、フレームワークを作ることそのものが目的化しがちなんですね。で、誰も使わない、見た目だけそれっぽい英語の略語が生まれて、なんともならないみたいなことが起きがちです。
それこそ「あげよう」なんですけど、「そもそもこういう状態にありたいんだけど、今こうなっちゃっていて、その原因は、こういう人たちがこういうタイミングでこういう行動を取っていることが目的だから、それをこう変えるために、フレームワークを作りたいんだ」。
というふうに、何を目指して、現状どうなっているのかというギャップを明らかにした上で、そこに対して埋められる、まさに「あげよう」の「う」になるフレームワークを考えるところから始めるのが大事です。
課題を明確化し、行動から逆算する
2個目が「行動から作る」ですね。これはさっきも言ったんですけど、行動につながらないと意味がないんですよ。例えば、「SWOT分析」みたいなね。SWOT分析はまだつながりやすいんですけど、世の中にあるフレームワークは、「よし、整理できた!」「で?」となることがけっこう多いんですよ。
じゃなくて、すぐ行動に落とせる、それがすなわち行動になるとか、そのフレームワークを考えることが、まさに思考の整理という行動につながっているみたいなかたちで、何をするのかが明らかになっているフレームワークにすることが重要です。課題を設定したら、「どういう行動を取ってほしいのか」というところから逆算して、「その行動を取るためには、どういう枠組みが必要だっけ?」ということを考えるのがおすすめです。
3つ目は「語感」ですね。さっきも言ったとおり、語感はすごく大事なので、「頭文字を取って略そうかな」とか、あるいは「2つ『S』だから、もう1個を無理やり『S』にして『3S』にしちゃおうかな」とか。あと、逆に「カタカナ語にしちゃおうかな」とか。

けっこうビジネスシーンでカタカナ語は仰々しくて無駄だよねという話はあるんですけど、耳慣れなさを作るという意味では、カタカナ語にするのもけっこう大事だったりします。「コンプライアンス」とか「アライメント」とか、けっこう大事だったりするんですね。
独自の「語感」の追求と運用によるブラッシュアップ
最後は「運用で仕上げる」です。さっきの「キメヘン」とか「あげよう」みたいなフレームワークも、実は最初からあのフレームワークだったわけではないんですね。今、我々は何度も何度も使って、これにひも付くトレーニングとかアセスメントをいろいろ開発したりしているわけですけども、もともとは違う言葉だったりしました。
使っていく中で、「これ、『あげよう』でよくね? テンション『あげよう』でいいじゃないか」みたいな。あとは、「こういう定義にしたほうが、やはり実際に使っていくと馴染むよね」という改善は、使っていく中でいろいろ行っています。なので、型を作る時は、1回作って「はい、おしまい」ではなくて、それを実際に使ってみながら、定義とかかたちを改善していく考え方がすごくおすすめです。
ということで、今日は「型の作り方」というお話をしてきたわけですけども、最後にまた別軸から、この型というものがなぜ意味があるのかというお話をします。大前提として変な話をするんですけども、我々は「バベルの塔」の世界にいるんですね。
バベルの塔にいるからこそ、言葉が必要
どういうことかと言うと、「バベルの塔」という神話があるじゃないですか。世界中の人が集まって、大きい建物を作りました。その建物がどんどこどんどこ立ち上がっていって、すごくどんどん高くなって、天まで届きそうになったと。
それを見て神さまが、「おい、ちょっとお前ら待て」と言って、彼らが使っている言葉を分けちゃったわけですね。それでバラバラの言葉になっちゃったから、みんなはもともとはコミュニケーションを取って大きい建物を一緒に作れていたんだけども、「あぁ、もう無理だ」と言って、未完成のまま、そこで止まっちゃったという神話があるわけです。
我々は、同じ日本語を使ってコミュニケーションを取り合っていると思い込んでいるんですけど、実は取れていないんです。僕がリンゴだと思っているものが、ある人にとってはぜんぜんリンゴじゃないみたいなことは、ぜんぜんあるんですね。

まぁリンゴだったらそうそうないんですけど、「課題」とか「目的」みたいな言葉は、僕が言っている「課題」と、Aさん、Bさんが思っている「課題」がぜんぜん違ったりするんです。というふうに、我々は同じ日本語という言葉を使っているつもりでいるけども、実際にはまったく違う言葉を使っているんですね。
だからこそ、こういう型とか基準になるものを決めてあげて、構造を持った基準を作ってあげて、それを共通言語・拠り所としてコミュニケーションをしていかないと、基本的にズレるんですね。「我々人間は、同じ言葉を使っているつもりだけど、基本ズレるよね」という大前提を持った上で、話す時の拠り所として、この型というのがすごく大事なわけですね。
「ビジネスは定量で語れ」とか「数字で語れ」というのも、「リンゴがたくさんあります」は解釈が違うけど、「50個あります」は誰がどう見ても50個だよねというのと一緒で、少なくとも定義された拠り所を作ることによって、コミュニケーションしやすくなるよねというのが、型の考え方なわけですね。
ということで、最後にちょっと修辞的な話をしてしまいましたけれども、今日は型の作り方・定義の話をしてきました。