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なぜ、1on1は現場任せにすると機能しなくなるのか? ― 人事が押さえるべき「1on1マネジメント設計」の考え方(全4記事)

1on1がうまい上司は部下の愚痴を“翻訳”できる 現場の不満から組織課題を改善する思考法 [1/2]

【3行要約】
・部下の「忙しい」や「意味がない」という言葉から組織の歪みを検知し、改善へとつなげる「翻訳スキル」の鍛え方を紹介します。
・教育研修プロデューサーの磯野茂氏は「1on1は個人を支えるだけでなく組織を進化させるための時間」と語り、言葉の背後にある構造を見る重要性を説きます。
・現状把握力や構造化力などスキルを鍛える3つの要素をベースに、自社の段階に合わせた機能する1on1の設計手順を提示します。

前回の記事はこちら

上司に求められる部下の言葉の「翻訳スキル」

磯野茂氏:さぁ、どうするか? (先ほどお話しした、ありがちな)1on1の中で、「忙しい」「意味があるんでしょうか?」「私は評価されていません」という部下の言葉が出てきました。そういった相手の言葉をその人の問題で終わらせないことなんですね。「ちょっと、彼はいつもやる気がないんだよな」ということではなくて、その言葉の背後にある構造まで見にいく思考が大切なんです。

つまり、1on1とは個人を支える時間でもありますけれども、それだけではなく組織を進化させるための時間であるということにフォーカスし、組織を進化させるための時間にしていくのが大切です。

では、「1on1を行う上司にどんな力が求められるでしょうか?」というお話ですね。今まで話を続けてきましたが、1on1を行う上司がちょっと大変だなという感じになってきますよね。でも、できるんですね。それはこういう考え方を持てばいいと思うんです。

それが(スライドを示して)この言葉なんですね。1on1で必要な力は、「翻訳スキル」です。この翻訳スキルについて、最後に説明をしてまいります。

(スライドを示して)この三角形は、今日のテーマである1on1マネジメントの構造の全体像を示しています。今日ご参加のみなさん方は三角形のてっぺんの経営・人事機能の「経営・組織・人事課題解決」に向き合っていらっしゃる方がほとんどだと思います。

じゃあ、それをどうやって具現化していくかというと、1on1の現場があるのなら、それを活かしていこうじゃないかということですね。(スライドの)下から上がっていきます。1on1現場では、組織マネジメントへの接続機能にしていくことです。

そして、それを運用していくにあたっては、上司のセンサー機能を醸成していきます。つまり、部下の声を引き出したり、そのために対話力やコーチング力を磨いたり、ちゃんと反応やキャッチができるようにしていく力量をつけていったりするということです。

そしてもう1つは翻訳機能です。ここが上司の思考力ですね。「忙しい」「意味がありますか?」「いや、特に何もないです」という言葉を、組織マネジメントの課題やテーマに翻訳していくということです。それを自分の職場や会社全体に反映させて改善や見直しにつなげていくといいです。

では、この三角形の中で翻訳スキルって何を指すかというと、(スライドを示して)ここなんですね。センサー機能と翻訳機能を合わせて翻訳スキルと呼んでいます。この翻訳スキルを(上司が)身につけること、あるいは(組織で)定義づけることで、経営・組織・人事課題解決にうまく循環していく設計ができるのではないかと思うわけでございます。

ここで初めて1on1現場というのが機能して意味のあるものになっていく、いわゆる設計が出来上がるということですね。こんなことを提案したいと思います。翻訳スキルという言葉が出てきました。今日覚えていただきたい言葉は、「センサー」と「翻訳」なんですね。この言葉をご提案したいと思います。

翻訳スキルはどうやって鍛えればいいかということですが、これは研修プログラムにおそらく反映していくと思います。

(翻訳スキルを鍛える要素は)3つあります。1つ目は、現状把握力です。個人の声を組織の問題として捉える力なんですね。その中に要素を3つ書きました。

(現状把握力の要素の1つ目は、)俯瞰的、多面的、多軸的な物事の見方です。よく言うのは鳥の目、魚の目……「うお」の目じゃなくて「さかな」の目ですね。(そして)虫の目。

つまり、俯瞰的に見るのが鳥の目。魚の目とは、帯で見るということ、(つまり)時間軸といった軸で見るということですね。虫の目とは、フォーカスして点で見ることですね。こういった俯瞰的、多面的、多軸的な物事の見方が必要である。

バイアスを脱し、背景を構造化する

(現状把握力の要素の)2つ目は、認知バイアスへの気づきです。先入観に支配されない思考が大切になってくるということですね。

最近、私はどんな研修でも認知バイアスの気づきについてのワークやゲームを取り入れて、いかに私たちが先入観に支配されているかを体験していただきます。思い込みや決めつけはけっこう(影響が)大きいんですね。そういった支配されない思考のもとで洞察力を発揮していきます。

(現状把握力の3つ目の要素である)洞察力とは、目に見えない物事の背景や原因を推測する力です。つまり仮説設定力ですね。仮説力と言ってもいいかもしれません。

(翻訳スキルを鍛える3要素の)2つ目は、構造化する力です。組織マネジメントのテーマに翻訳する力ですね。(構造化する力の要素の)1つ目は、論理的思考力ですね。論理立てをしていく、ロジックを作っていくという力。

そして、構造化スキルですね。これは簡単に言うと、パパパッと「こういうことだよね」と、その場で絵が描けるようなスキルですね。このようなスキルはとても大事ですね。物事を考えたり捉えたりするには頭の中に箱を作るのが大事なんですね。人間って頭の中に空き箱を作るから、そこに情報を集めようと脳が働くんですね。

問いを立てるとは、実はこの構造化スキルなんですね。問いを立てると、頭の中に空き箱ができます。空き箱は空っぽなので、そこに情報を収めようと脳が働くんですね。つまり箱ができないと情報って入ってこないし、脳が入れようとしてくれないんです。通り抜けていってしまうんですよね。そこがすごく大事だということです。

そして(構造化する力の要素の)3つ目は、アサーティブコミュニケーションです。コミュニケーションには、主張的、非主張的、攻撃的な言い方があります。アサーティブコミュニケーションとは主に主張的に物事を伝えることですね。言いにくいこと、あるいはわかりにくいこともしっかりと論理立てて整理して伝えていけるスキルです。これらが(翻訳スキルを鍛える3要素の)2番目の構造化する力(の要素)です。

そして(翻訳スキルを鍛える3要素の)3番目は、部下の声を引き出す力です。これは対話・コーチングということで、主に1on1研修といった時には、この3番目のところにほとんど9割方(の時間が)注がれることが多いと思います。(部下の声を引き出す力の要素は、)対話の作法や姿勢と態度、コーチングの技法、そして感情のコントロール法ですね。

アンガーマネジメントなんかも、こういう上司・部下の関係や面談でもけっこう取り入れられたりしますね。こういったことが大事です。私は主にこの3つが翻訳スキルを鍛える3要素であると捉えています。

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