【3行要約】
・機能する1on1と、現場任せで形骸化する1on1。その違いは面談の手法ではなく、組織マネジメントの設計にあります。
・教育研修プロデューサーの磯野茂氏は「個人が忙しいのは組織の設計不全の可能性がある」と述べ、部下の声を組織課題のサインと指摘します。
・メンバーが迷わず動ける環境を「整える」ために、1on1をどう組み込むか。部下の本音から組織の歪みを見抜く視点を解説します。
「伴走」をキーワードにひもとく1on1マネジメント設計
磯野茂氏:では、今日は「なぜ、1on1は現場任せにすると機能しなくなるのか? ― 人事が押さえるべき『1on1マネジメント設計』の考え方 ―」というテーマでお話をしてまいります。
私のプロフィールは事前告知の案内の中にも書いておりますが、特徴の1つは「伴走」という言葉です。あり方や信念、技術(を語る上でも)「伴走」をテーマに置いています。

実際に、マラソン大会では障がいのある方の伴走を主にやっていまして、先日の東京マラソンでも、知的障がいのある方に伴走しました。もちろん視覚に障がいがある、いわゆるブラインドランナーの方の伴走もやっています。
ここで思いますのは、今日のテーマの「1on1」と、スポーツの世界での伴走のあり方や技術って同じだなということなんですね。今日は途中でも「伴走」という言葉のお話もちょっとしたいと思います。
私の経験や、この25年間の組織での活動経験があり、独立してからはこういった研修講師業でいろんな企業や組織のお話をうかがってきました。その中で私がたどり着いた1on1に対する考え方をみなさんに示していきたいと思います。
それでは、本日の内容に進んでいきます。事前告知であったとおり、(スライドを示して)この4つの流れで進めてまいります。

さっそくですが、多くの企業で1on1が導入されています。しかし、人事の方からよく聞くのは「正直、機能しているのかわからない」という声ですね。1on1を実践している、いわゆる現場の上司や面談者の方からも聞くことが多くあります。
じゃあ、「どうして機能していないのか」「機能しているのかわからないのか」を少しひもといていきたいと思います。
1on1が「機能しない」と感じてしまう3つの構造要因
最初のテーマは、「なぜ1on1は『機能しない』と感じられてしまうのか」です。人事部のみなさんや現場の上司が抱える違和感があると思います。個人のばらつきがあったり、目的が曖昧だったり、成果が見えてこなかったり、評価面談と混同したりすることもあると思います。
ここの本質的な原因というのは、やはり現場任せになっていたり、上司の力量に依存していたり、内容にばらつきがあったりすることです。そして特に現場から「そもそもこの1on1って何のためにあるの?」という不信感が表れてきているということも多く聞きます。
(スライドを示して)1on1が機能しない3つの構造要因を挙げてみました。1つ目は、「目的の曖昧さ」ですね。「何のためにやっているんだっけ?」という場合です。

そして(2つ目は)、「他施策との位置づけが不明」ということです。会社というのはさまざまな施策を講じていますね。1on1だけじゃなくて、組織上やマネジメント上、経営上の何かしらの目的があって取り組んでいるものがいろいろあります。(1on1と)そういったものとの関連性やつながりが不明確になっている場合です。
そしてもう1つは、「組織判断につながらない」。これは「1on1の場(を設けること)、あるいは1on1の成果が何につながって、組織上のメリットや価値につながっているんだろうか? そして何をもってジャッジしている、しないのだろうか?」がよくわかっていない場合です。
一言で言うと、1on1を何のためにやっているのか(が明確になっていないと)、それがさまざまな(運用の)ばらつきになったり、個々人の力量に依存したりすることにつながっていくと思います。つまり、私がお話ししたいのは「1on1のやり方の問題ではなくて、これは組織マネジメント上の設計や位置づけの問題だよね」と考えていく必要があるということです。こういう立ち位置でお話を進めていきたいと思います。
現場の「あるある」会話に潜む、形式的な1on1の罠
ここからみなさんにも「あるある」と思っていただけるといいなと思うんですが、ありがちな1on1会話で話が終わってしまう事柄っていろいろあると思うんです。

例えば、(スライドの)一番上。部下が「最近ちょっと忙しくて。まぁ、大丈夫ですけど」。(それに対して上司は)「あ、そっか、大変だね。無理しないでね」。これで話が終わってしまう。「他にない?」「いや、そんなにないです」「じゃあ、もう忙しいから、ちょっと時間が早いけどこれで終わらせようか」みたいなことに陥ってしまっているわけですよね。
2つ目と3つ目も、これはよく聞く話ですね。(2つ目は)「これって何か意味があるんですか?」「いやいや、お願いしているから。これはもう仕方ないから。もうこれはやってもらうしかないんだよね」。(3つ目は)「○○さんばっかり評価されている気がするんですよ」「いや、そんなことはないよ」。こんな話があっても、これで終わってしまうことがよくあるんですね。
でも、これで話を終わらせないでほしいということなんですよ。部下のこれらの声はすべて組織マネジメントに活かせるので実は重要な情報で、これを扱うか扱わないかでけっこう1on1のあり方や価値が変わってくるんですね。
そこで、2つ目のテーマである「1on1を組織マネジメントに組み込む視点と考え方」に入っていきたいと思います。今日の本題ですね。1on1マネジメント設計は、組織マネジメントにいかに1on1を組み込んでいくか(が大事)という話になっていきます。