【3行要約】 ・臨床心理士・公認心理師の青木氏は、相手のことを対立構造で見る「ジャッカル」モードから、願いを聴く「キリン」モードへと視点を変えるテクニックを紹介します。
・青木氏は認識のズレは不可避だと認め、相手の言動を「攻撃」ではなく「満たされないニーズの表れ」と捉え直すよう提案します。
・泥沼化した人間関係を「自分から」変えていくために、感情に振り回されず一歩高い視点から対話を再構築するためのマインドセットを提示します。
前回の記事はこちら 「認識のズレは必ず起きる」という前提
和田誠司氏(以下、和田):ここからは、要因としては終わらせていただいて、青木さんにバトンを渡したいと思います。
青木美帆氏(以下、青木):ありがとうございます。忘れないよう先に答えたいなと思ったのが最後の質問なんですけど。ちょっとした認識の違いに早い段階で気づくためには、まず「認識の違いは、めちゃくちゃ高頻度で起こるんだ」という前提に立つことかなと思うんですね。
そうすることで、ずっとうっすらアンテナを立てながらコミュニケーションを取ったり、相手の反応が見られるようになりますので、認識の違いは自分が思っている何倍も起きちゃうんだぞっていうのは覚えておいていただきたいなと思います。
余談になっちゃうんですが、私には娘がいるんですけど、私がめちゃくちゃ丁寧に優しく関わったと思ったその瞬間に「ママ、怒っているの?」って言われることがたまにあるんですよ(笑)。
「いや、そんなわけなかろう。こんなに笑顔で優しく丁寧に話を聞いていたのに」って思うんですけど、やはり相手がどう思うかってわからなかったり、いろんな側面があると思うんですね。
こちらが真面目に考えて一言発した瞬間、なんだか怖いとか怒られたってなることが多々あるので。これ、子どもだから起こりやすいとは思うんですが、大人同士でもものすごく起こる。それを前提に置いていくのは大事かなと思いました。
わかろうとする姿勢が関係を救う
北村祐三氏(以下、北村):話せばわかるって言われたりするんですけど、実は100パーセントわかり合うのは無理なんだっていう前提なのかと僕も思っています。
でも、わかり合えないんだったら仕方ないとするのか、そうではなくて、わかり合えないからこそ、わかろうとする姿勢をお互いに感じ取るのがすごく大事なのかなと思うんです。そうすると、認識のずれにも早く気づけるかもしれないですよね。
和田:そうです。言語で表れているのは人間の10パーセントしか出ていないという認識で、そこをどう深掘りしていくか、より知ろうとするかっていうのは大事だと思います。
北村:いったんこのあたりで和田さんのパートは閉じて、青木さんのパートに移っていきたいと思います。青木さん、お願いします。
青木:よろしくお願いします。まず、前提をそろえておきたいなと思うんですけど、私のパートでお話しさせていただきたいのは「まだ自分でなんとかしたい」「自分にできることが少しでもあるのであればなんとかしたい」と思えている段階に関してです。
逆に言うと、心身だったり業務に支障が出ている場合には、もう1人で悩む段階は過ぎていますので、人事部や会社の相談窓口があると思います。外部の相談窓口もありますので、ぜひ相談していただきたいなと思っています。
今回は、さっきの和田さんの話にもあったみたいに、認識の違いによるパワハラだったり、日々の積み重ねによる逆パワハラについて扱っていきますね。これだけは押さえておいてください。
(スライドを示して)先ほど、このスライドがありました。和田さんもおっしゃっていました(逆パワハラの)唯一無二の原因、出来事は特定しにくく、日々のいろんな積み重ねで逆パワハラという事象につながっているのではないかというお話があったと思います。

サイクル図にもありましたよね。些細な認識の違いから始まっていそうだぞということです。まさにそうだと思います。先ほどのページにもあるんですけど、この文章ですね。「認識の違い、ミスコミュニケーションが起きている時に使われる言葉がたくさんある」ということがわかるわけです。
「あからさまに」「意図的に」というフィルター
青木:「あからさまに不機嫌な態度を取る」とか、「意図的に報連相をしない」とか、「目線を合わせない」「無視をする」もそうですね。「これ見よがしに大きなため息をつく」。めちゃくちゃつらい状況ですよね。
ただ、この文章を見た時に、この状況についての記述、文頭の言葉のところですね。まさに認識とかコミュニケーションエラーが起きている時に出てきやすい言葉。「あからさまに」「意図的に」「これ見よがしに」っていう、主観の言葉がたくさん挙がっています。
主観の評価が悪いとか間違っているとか、そういう話ではありません。ただ、パワハラしかり逆パワハラしかりなんですけど、残念ながら相手をこういうふうに捉えた瞬間に、すでに改善が難しくなってしまっているということを念頭に置いていただきたいなと思います。
もう一度言うんですけど、心身の不調だったり、業務に支障が出てきてしまっている場合は、もうこれは物の見方の問題という話ではないので、相談にいっていただきたいです。
ただ「まだその段階ではなさそうだぞ、もうちょっと自分でもできることをやって改善していきたいな」という気持ちが持てる場合には、ぜひ自分から認識や捉え方に少し変化を起こしてみていただきたいんですね。そうすることで、状況とか関係の悪さを打開させられる可能性が格段に高まりますという話をさせていただきたいなと思います。
今回は逆パワハラっていうことで出させていただいているんですけど、実はパワハラにも逆パワハラにも共通して言えることなんですね。相手を加害者とか敵、間違っていると捉えた時は、当然そういうふうに思いたくなります。
ただ、どんなに相手のひどい態度だったり言動、ストーリーがあっても、どうしてもこの、対立構造の捉え方が強くなってしまうという、悲しい現実があります。
相手の「願い」を想像する第一歩
青木:私もこんなことを言いながらぜんぜんできた人間ではないですし、恥ずかしながら、けんかっ早いところもぜんぜんあります(笑)。職場でもプライベートでもぶしつけな態度を取られたり、「今、この人は自分のことをばかにしたな」って感じてしまうと、「何、この人? はぁ……」ってイライラしてしまうわけです。
逆に怒ることすらできずに落ち込むこともあるんですが、ただ一方で(臨床心理士・公認)心理師なので、「今、この人の中でどういうことが起きているのかな?」っていうことも考えるわけです。そして、いつも関係改善の糸口が見えるのは必ず「相手の中で今、何が起きているのかな?」っていう視点を持ち始められた時です。
これは私だけじゃありません。カウンセリングなどをしている中で、クライアントさんが自分自身の状況を自分で改善し始めていく瞬間があるんです。それがどういう時かっていうと、クライアントさんがこの視点を持つことができた時なんですね。
ひどい態度を取っているように見える相手、いますよね。そう見える、思える瞬間ってあると思います。でも、本人の中に、相手の中に、必ず何か願いが隠されているわけです。それは「認められたい」かもしれない。「いたわっていただきたい」かもしれないですし、「何かわからないことがあって理解したい」かもしれない。何かしら願いがあるわけですね。
ただ、その願いは本人にも認知できていない場合がけっこうあるわけです。それをこちらが理解する。理解するのが難しくても、それをわかろうとするところから、自分自身を取り巻く関係性の捉え方が変わっていきます。相手の捉え方が変わっていくわけです。
そうすると、こちらから相手に投げかける言葉だったり、質問が変わってきますよね。その結果、また関係性が変わって相手の反応が変わる可能性が高まることがわかっています。
法律だったり対処法を学ぶのはとても大切です。もちろんそれは今すぐにネット検索だったり、AIに聞くことである程度の正解もわかりますので、ぜひ確認していただきたいなと思います。