誰も悪くないのに深まる溝
和田:これは結局「何から始まるの?」っていうところに立ち戻ると、(スライドを示して)このオレンジのところをあらためて見ていただきたいです。

部下側が、ちょっと質問をしただけなのになかなか答えてくれないとか、ちょっと時間を取ってくれればいいのに対応を雑にするとか。ちょっと聞いただけなのに「この人は今までのマネジャーと比べると……」みたいなかたちの状況がきっかけとしてありそうなのが見て取れます。
これを1段階抽象化して、組織という視点に立った時にどうなのかっていうところをみなさんにお伝えさせていただきます。
やはり組織的な視点に立つと、どちらかが悪いというわけではありません。ですが、これがなかなかできない状況にあるというところが見受けられます。
マネジャーも不安ながら、自分の何かをよくしようとして行動しています。そこには自分のやることが正しいっていう認識がやはりあるんだろうなというところがあります。
部下側は、やはりこのマネジャーはダメだということで、自分が正しいという認識をしているのではないかと思います。
感情は、共通しているものがありまして、疑心暗鬼、不安の連鎖でお互いが不信感になるところがあります。部下側も上司に不信感を持っていますし、上司側も部下側になんとか歩み寄りたいと思っているけど、なかなかできないので、不信感につながってしまいます。この不安の連鎖が不信感を呼んでいます。
そうすると、行動としては攻撃する側と防御する側みたいなかたちで、ぱっくりと分かれてしまいます。
これが結果、分断の深まりや歩み寄りが難しい状況を生んでしまって、組織としてはなかなか(適切な)運営ができていなくなりますし、働きづらい環境を作ってしまっているということですね。
何度も言いますけど、これはマネジャー側のせいでもないですし、部下側のせいでもないです。お互いの認識のずれがこういった状況を生んでしまっているということをお伝えさせていただきます。
マネジャーの孤独は報酬だけで解決できるのか
和田:ここからは、みなさんのほうで聞いてみて、どうだったかっていう感想をチャットでいただきたいなと思っています。
私と北村さんでコメントを拾いながら、2人で対話を深めていきたいなと思います。
北村祐三氏(以下、北村):和田さん、ありがとうございます。途中でチャットをいただいていましたけど「逆パワハラがあってはならないことは大前提」。そうですよね。「ただ、管理職のストレスってゼロは不可能だよね」みたいな話で「だから、報酬で還元するしかないんじゃないか」という話がありました。
ストレスゼロって、管理職じゃなくてもなかなか難しいかな(笑)。管理職(ストレス)ゼロの世界が本当にいい世界なのかどうかもあれですけど。
和田:仕事をする上で、適切なストレスはある程度は必要なので、おっしゃるとおりゼロは難しいことなんじゃないかなと思います。ちゃんと数字で評価してあげることも大事です。給与で反映させるのもめちゃくちゃ大事なことです。
もう1つ大事なのは、ゼロは難しいかもしれないけど、適切にしていく行為はし続けたほうがいいだろうなというところです。
ちょっとした認識のずれから起きてしまっていますし、もしかしたら環境として、適切な人数にしてあげることによって、(逆パワハラの)可能性が減っていくかもしれないです。ストレスが軽減していく可能性もありますので、そういったところを作ってあげることは大事かなと思います。
若手の課長候補、部長候補の方が、次のステップにいきたいなって思っていただくことを作っていかないと、組織としては衰退していってしまうと思います。なので、そういったことをしてあげて、マネジャーが適切なストレスで働けている環境を作っていくのが、未来の組織には必要なんじゃないかなと思います。
北村:ありがとうございます。(チャットを読み上げる)「立場の違いがあり難しい問題と思いました」。お互いの立場を理解することが大事だと思いますっていうことですね。
和田:まさにそうです。
北村:お互いに、悪気はどこかであるのかもしれないですけど、組織をよくしようとか、よい結果を出そうと思っていることが、どこかでずれになっているみたいなところがあります。
自覚なき行為が上司を追い詰める
和田:北村さんがおっしゃったとおりで、一般職、部下側の逆パワハラを認識していないでやっている方のお話を聞きましたけど、やはり真面目というかいろいろ考えている方なんですよね。
故に、状況をよくしようと思ってもなかなかならない、そのストレスにより行為に及んでいる可能性もあるので、悪気がない可能性は大いにありますし、部下側の方は自分が逆パワハラをしているっていう認識がない方が多かったですね。
北村:それは行為そのものがそんなに大したことじゃないと思っているのか……。
和田:それもあります。逆パワハラという言葉自体があんまり出回っていないので、ハラスメントは上司がするものっていう、そういったご認識もありました。
北村:なかなか上司もそれに対して強く出ることがいいわけじゃないですけど、対応が難しいですね。
和田:そうです。
北村:この話もおもしろいです。(チャットを読み上げる)「リモート環境になることで、捉え方のずれがより広がっているようにも思うけど『ここまでやるの?』みたいなケアが必要。悩ましいですね」っていうコメントがあります。
和田:そうなんですよ。このあたりは青木さんがひもといてくれるかと思います。
北村:(チャットを読み上げる)「上司を飛び越えて、打ち合わせをすることはあるけど、これってパワハラになる可能性もあるんですか?」って。
和田:そうですね。一言言っておくとだいぶ違います。さっきの直接言うっていうのは、実はとある大手製鉄メーカーの方のお話だったんです。
その方は課長だったんですけど、課長としていろいろと判断するもの、上申するもの、しないものという取捨選択をいっぱいしなきゃいけないですし、していたらその部下にとっては「自分が望むものが上に上がっていない」と思って、直接部長に言っていました。そうしたら部長が「それは大事だね」って通してくれちゃったんですね。今のところ全員、悪気はないです。
北村:(笑)。
部下が先走りし、いつのまにか課長だけ蚊帳の外に…
和田:そうしたら、その部下にとっては成功体験になったみたいで、いつの間にか部下がTeamsのコミュニケーションを直接部長にするようになりました。途中までは課長も入っているグループだったんですけど、とある時から課長が抜けてやっていて「これ、どうなっているの?」って部長から(部下に)聞くようになったみたいな。
北村:部長は課長が抜かれていることに気づいていなかったのね。
和田:いるものだと思って話していて。
北村:そういうことね。「部長も何をやっているんだろう?」ってちょっと思っていたんだよね(笑)。
和田:そうですね。そうしたら、とある時に会議で「あれ? 何々課長、今日いないの?」みたいなので初めて知った、そんな感じでした。
北村:他にもいくつかもらっています。「逆パワハラされたことで上司がキレちゃって、本当のパワハラ……」。本当のパワハラっていうか「上司が部下へのパワハラをやっちゃうバッドサイクルもありますね」って。
和田:それもあります。
北村:それでマネジャー同士で、協力できる環境も大切とか、マネジャーがその上司から1on1を受けたり、あるいはできる機会も重要です。そういう状況にあることを分かち合えるとか、それに対する対策を一緒に知恵出しができる仲間が周りにいるとか、そういうものもすごく大事ですよね。
北村:あと「対応が難しいというのはそのとおり。該当者に指摘すれば、すぐに『パワハラ』という反応が返ってくるので八方塞がりになっている」と。
和田:そうなんですよ。昨日もとある会社の評価者研修で部長の方々のお話を聞いていたんですけど、正当な評価をしてあげたいっていうのがすごく見て取れました。日々の行動を観察してあげたいし、フィードバックしてあげて、ちょっとでもよい評価を取ってもらいたいっていう、そういった思いであるんですけど。
そういった面談をしている時に、その面談をハラスメントと捉える人も若干名いるらしくて、それで悩まれていましたね。
「話せばわかる」は幻想か
北村:そのように、すぐにハラスメントだと感じてしまう要因みたいなものもあるんだろうなと思っています。その方の願いや価値観が形成された背景に何があるのかも探っていかないと、なかなか変わっていかない。だけど探ろうとすると、どこまで探っていいのやらみたいな(笑)。
和田:確かに思ったんですけど、私たちにはそういった願いを届けてくれるんですけど、そのまま部下に言っているかなっていうのはちょっとわからないところですね。
北村:メンバーサイドの願いが大事ですね。その願いを踏まえると「いや、これハラスメントです」って言わないと自分を守れないみたいな、そういう部分があるんじゃないかなって。
(チャットを読み上げる)「認識の違いに、早い段階で気づくにはどうすればいいのか? 同じことでも受け止めるほうの認識で意味が変わってしまう」と。そうなんですよ。世代によって受け止め方の感覚が違うというか。そこの違いを生んでいるのは何なのかみたいなところですよね。「認識の違いをどう確認していけばよいのでしょうか?」。