バカげたアイデアもチーム全員で出し合う
篠田:なるほど。今のところ、もう1個だけうかがっていいですか。さっき、すごく野心的というか、ちょっと「えぇ!?」という目標が来ますとおっしゃっていましたが。
つまり、「今までと同じやり方をやっていたら、なかなかきついだろう」という意味だと解釈したので、やはり相当にやり方や発想を変えないといけない。
それをチームのみなさんとすり合わせていくにしても、そのクリエイティビティはどうやって生むんですか? 目標すり合わせ時におおむね相談して、「このアイデアだったらいけるんちゃう?」と言って合意してもらうのか。その時はぜんぜんアイデアが出ていないんだけど、「まぁ、あなたと私でなんとかしよう」みたいな(笑)。
(一同笑)
「これもいろいろですよ」ということなのかもしれませんが。
中谷:オフサイトとかやるよね。
水野:そうですね。
中谷:新しいアイデアを出す時は、みんなでアイデアジェネレーションを。
諸橋:そう。これ、1対1じゃないんですよ。
篠田:あ、これはおもしろい。
諸橋:だからそれが、まさに心理的安全性の中で、もうなんでも馬鹿みたいなアイデアも含めていろいろ出しつつ、けっこう大きな固まりとしては決めていて、それぞれ分担しなきゃいけない細かいものを1対1の中で決めていくという、そんな流れですかね。
篠田:なるほどですね。ありがとうございます。いや、心理的安全性を入り口にしましたけど、この何十分かだけでも、けっこうハードな仕事をなさっていて(笑)。しかもそれが、経験を積めばできるタイプのお仕事ではないぐらい高い目標という前提だから心理的安全性が必要なんですと。
それがないと野心的な目標に対して、運動量さえ増やせばいけるわけじゃないから。「もう、運動の仕方を変えなきゃいけないけど、どうする?」という話が必要なので、心理的安全性がすごく大事なキーワードになってきました。そういう流れが、やっとキャッチアップできてきた気がします。
権限委譲とプレイングマネージャーのジレンマ
中谷:10人から15人ぐらいチームメンバーがいると、たいてい誰かはやる気があって、「今まで言わなかったけど、こういうアイデアがあって、やってみたいんだよね」「良いじゃん、やりなよ」ということもあるし、「これ、俺はできないんだけど、あの人だったらできるかもしれない」という人も出てきます。

「じゃあ、2人でペアを組んで、ちょっと小さいプロジェクトでやっていいよ」「その分はこれだけターゲットを減らしてあげるから、やってみて」みたいな会話もみんなの前でできるので。みんなも、自分たちはアイデアがないんだから、この人たちのアイデアに乗るでしょうという会話もできる。
篠田:なるほどですね。いやぁ、ありがとうございます。だんだん温まってきたところで、次のテーマにいこうと思います(笑)。2つ目は「チームでパフォーマンスを出すってどうやるの?」。
特に日本企業では、いわゆる前線のマネージャーのみなさんはほとんどがプレイングマネージャーです。例えば営業であれば売上目標を持ち、担当顧客がいて、かつ、部下のフォローアップもするという立場にいらっしゃいます。
そうなるとなおのこと、自分がやったほうが早いなというほうにいきやすい。それこそスーパープレイヤーだったからマネージャーになったという自負もお持ちだったりするし、自分の経験値から部下にアドバイスをしてもうまく動いてくれなかったりするので、「だったら自分がいったほうが」というふうにどうしてもなる構造があるなと思います。
あと、いざ任せようと思っても、これは共通だと思うんですけど、本当にこの見極めが簡単ではなくて。それこそ権限委譲みたいな言葉は下りてくるんだけれども、「何をどう委譲したらいいんですかね?」というのがすごく難しいんじゃないかなと思います。
部下の持ち味をチームに活かすには
篠田:一方、いただいたご質問を見ていたら、優秀な部下が自分の領域を侵食してくる感じ……と具体的には書いていらっしゃらなかったんですが。私が想像すると、自分がマネージしている部下たちなんだけど、なんだか「この3人は私のチームです」みたいな、そういう力学が勝手に生まれてしまう。
漫画の中の「戦略はマネージャーの仕事だから」みたいなところに、ちょっと生意気な部下が(笑)、「いや、私が」みたいに食い込んでくるみたいな描かれ方をしている。
そういう、一方では権限委譲が悩ましい、一方では食われてきて、自分の立場が危うくなる不安感みたいな。チームに任せながら育てるって、ちょっと解像度を上げるとめちゃくちゃきれいごと感があるんですよね。
そういうスタートポイントを置いた時に、まずは「チームの持ち味を活かす」。さっきの1on1でそれぞれの持ち味はわかりました。でも、わかったことと、活かすことの間の距離をどうつなげるんですか? 実際に、ここのギャップが難しいなと思ったこと、ご苦労されたことからおうかがいできたらなと思いました。
中谷:例、あります?
水野:まぁ、なんとかしましたからね。
(一同笑)
篠田:そうですよね。それをどうやったのか……。
中谷:プレイングマネージャーの話だと、ジュンさんの場合、新卒で入った時からハイパフォーマンスなプレイヤーだから。そこで(マネージャーに)切り替わった時、プレイングマネージャー的なことだってできるし、自分のほうが普通のパフォーマンスが良かったりするじゃない。そこは、マネージャーになってからどういうふうに変えたの?
水野:僕の場合は間に1回、別のポジションを挟んだじゃないですか。プリンシパルというポジションがあって、マネージャーになる前に「マネージャー予備軍」みたいなポジションを1回やらせてもらって。ある程度はメンバーのコーチングと営業企画みたいなことに特化して動けるポジションを挟んでいたので、そこでいったんお客さんを持たない時間があったから、けっこう感覚が変わってきたなと思ったんです。
これも、さっきの野心的な成長と同じ話で。野心的な成長を目指していたらプレイングマネージャーをやれるはずがないと思うんですよね。だけども、プレイングマネージャーが関与できる範囲でしか成果が出ない組織というのは、手の届く範囲で終わりじゃないですか。
でも、あり得ないぐらいの成果を出そうと思ったら結局は掛け算にしなきゃいけないわけで。掛け算にしようと思ったら、自分以外に掛け算の元になる数字を増やしていかないといけない。仕事の目線が「自分が手を出してなんとかする」じゃなくて、「自分でいかに手を出さずになんとかするか」に変わるんですよね。
篠田:でも、それはめちゃくちゃ大事なことを言っていただいたなと思います。言葉として聞くとすごくシンプルですけど、実際に私が拝見している多くの日本企業は、そこの切り替えの難しさがあるし、マネージャーの方のある種の本音は、「みんなが自分と同じぐらいできたら楽なのに。以上」であって。
要は、自分ではできないような質の成長や成果はあんまりイメージされていない、あるいはできない構造になっちゃっていると、お話を聞きながら思い浮かべていました。